中小企業にとってWEBサイトは営業や採用などにおいて、知名度の高い大企業よりもずっと重要な役割を果たす「顔」のような存在。しかし、社内に専門のWEB担当者がいない、更新や改善のノウハウが不足しているという理由から、改善が後回しになってしまっているケースも少なくありません。この記事では、「感覚で気づける」ことから始めて、「成果につながる」までの実践的な改善の流れを5つのステップで紹介します。

執筆した人:平田弘幸
株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。
1. まずは「なんとなく」でOK:感覚的に改善ポイントを挙げてみよう
WEBサイトの改善というと、「データに基づいた分析が必要」「専門家の意見が不可欠」と思われがちですが、最初の一歩はもっとシンプルで構いません。まずは、自分がそのサイトを使って「なんとなく使いづらい」「読みにくい」「迷う」と感じるポイントをリストアップすることから始めましょう。
例としては以下のような視点があります
- スマホで見たときに文字が小さすぎる
- メニューの場所がわかりにくい
- 問い合わせフォームが長すぎて入力する気が失せる
- 古い情報が載ったままになっている
また、自分ひとりの視点だけでなく、家族や社内の同僚、友人などに「このサイトどう思う?」と見てもらうことも大切です。とくにWEBに詳しくない人の意見は、実際のユーザーに近い視点での気づきを与えてくれるから。
そして、この段階で「自社サイトの目的」を再確認しておくことも重要です。問い合わせを増やしたいのか、採用エントリーを増やしたいのか。目的がはっきりすれば、どこを重点的に見直すべきか、最終目的のためにこの部分はどうあるべきなのか、あるいは重箱の隅を突くような改善は今は必要ないのかが明確になります。
2. 仮説を立てて小さく改善:改善案を実行する
改善ポイントが挙がったら、それぞれについて「こうすれば良くなるのでは?」という仮説を立てて、小さく改善してみましょう。完璧なデザインや文章をいきなり作ろうとする必要はありません。大切なのは、スピーディに、そして現実的な範囲で改善を進めることです。
例えば、以下のような施策
- 問い合わせボタンの色を目立つ色に変える
- トップページに問い合わせへの導線を明記する
- スマホ用のフォントサイズを調整する
- フォームの入力項目を3つに減らす
改善を実施する前には、必ず現在の状態を記録しておきましょう(スクリーンショットやメモなど)。こうしておくことで、後で「改善の前後でどう変わったか」を比較しやすくなります。
CMS(WordPressなど)を使っていれば、ある程度の編集は自社内でも可能です。外部に依頼する場合も、ピンポイントで「ここだけ変えたい」という要望が出せれば、コストも抑えられます。
3. Googleアナリティクスで結果をチェックする
改善を行ったら、最低でも2週間〜1ヵ月ほどは様子を見ましょう。そのうえで、Googleアナリティクス(GA4)を使ってアクセス状況を確認します。
見るべきポイントは以下のようなものです
- セッション数:訪問者数に変化はあるか
- 平均エンゲージメント時間:サイト内での滞在時間が増えたか
- 離脱率:特定ページからの離脱が減ったか
- コンバージョン数:問い合わせや資料請求が増えたか
たとえば「フォームを簡略化したらコンバージョンが増えた」など、仮説に対する結果が数値として見えてきます。もし数字に変化がない場合でも、それは「効果がなかった」という大事な情報です。次の施策を考えるヒントになります。
※セッション数
ユーザーがWebサイトに訪問してから離脱するまでの一連の行動を「1セッション」としてカウントします。ページを複数見ても、離脱するまでが1回のセッションとされます。
※平均エンゲージメント時間
訪問者がWebサイト上で「実際にアクションをしていた時間」の平均値です。単に滞在しているだけでなく、スクロールやクリックなど、積極的に見ていた時間を示します。
※離脱率
ページを最後に見てサイトを離れたユーザーの割合です。特定のページで多ければ、そこに問題がある可能性があります。
※コンバージョン数
訪問者がWebサイト上で目的の行動(例:問い合わせフォーム送信、資料請求、購入など)を完了した回数です。
4. なぜその結果になったのかを考える
数字を見て終わり、ではありません。最も重要なのは、「なぜその結果になったのか?」を自分なりに考えることです。
たとえば
- CTAボタンを赤に変えた → クリック率が上がった → ボタンがより目立つようになったから?
- フォームを短くした → コンバージョン率は変わらなかった → 実は入力項目ではなく、誘導文が問題だった?
このように、うまくいった場合でも、そうでなかった場合でも「仮説と結果のズレ」を見つけて言語化するクセをつけると、次の改善の精度が上がります。
また、成功した施策は再現性のある手法として記録しておきましょう。今後、他のページや別のプロジェクトにも応用できます。
※CTA(Call to Action)
WEBサイト上でユーザーに特定の行動を促すボタンやリンク、テキストのこと。たとえば「お問い合わせはこちら」「資料をダウンロード」「無料で試してみる」などがCTAです。ユーザーのアクションを引き出し、コンバージョンにつなげる重要な要素です。
5. ヒートマップで「もっと伝わる」改善を
Googleアナリティクスでは「何人が見たか」は分かっても、「どう見たか」はわかりません。そこで活用したいのが、ヒートマップツールです。
ヒートマップを使うと
- ページ内のどこが注目されているか(クリックやスクロールの位置)
- どのコンテンツが読まれていないか(すぐにスクロールされている)
- ユーザーの視線が止まるポイント
などが一目でわかります。
たとえば、「重要な説明文が下の方にあって読まれていない」なら、順番を入れ替えるべきですし、「ボタンの直前で多くのユーザーが離脱している」なら、説明が長すぎるか、信頼感に欠ける表現になっているのかもしれません。
無料で使えるツールもあるので、まずは1〜2ページから導入して、ユーザーの動きを「可視化」することから始めてみてください。
よくある失敗例:リニューアルだけして満足してしまう
中小企業のWEB改善でよくある失敗のひとつが、「サイトを一新したことで満足してしまう」ことです。見た目を整え、最新のデザインにしたことで「これで完成」と思ってしまい、その後の検証や改善が行われないケースは少なくありません。
リニューアルはあくまでスタート地点であり、本当に大切なのはその後の数値の変化を見て、仮説を立てて再調整する作業です。新しいデザインが目的を達成しているかどうかは、ユーザーの反応やデータを見なければわかりません。
「作って終わり」にしないためには、公開後の動きを3ヵ月単位で振り返るルールを設けたり、改善のための担当者やWEB改善会議を月1回でも設定することが有効です。
馴れない業務を片手間に実施するのは、時間も労力も想像以上にかかります。
とくに中小企業では担当者が兼任であることがほとんど。調査・実装・検証までをすべて自社で完結させるのは現実的に難しいでしょう。
そうしたときには、一部を外注し、専門家の視点を借りながら自社でできる範囲を進めるという方法が、結果的にもっともコストパフォーマンスが良いやり方になります。
外注=丸投げではなく、「方向性の確認」「改善箇所の優先度づけ」だけでもプロに頼ることで、無駄な工数や迷走を防げます。
中小企業が自力でできるWEBサイト改善の進め方
中小企業にとって、WEBサイト改善は「特別な知識」や「高額な外注費」がなくても、感覚的な気づきからスタートし、数値やツールを使って着実に成果へつなげることができます。
重要なのは以下の5ステップを、無理のない範囲で繰り返すこと
- まずは感覚的に「使いにくい」と感じる部分を洗い出す
- 仮説を立てて小さく改善してみる
- Googleアナリティクスで数字の変化をチェック
- なぜ変化が起きたのかを自分なりに考察する
- ヒートマップでユーザー行動を可視化し、さらに精度の高い改善へ
このように、「感覚 → 実行 → 分析 →再改善」の流れを継続することで、中小企業でも自社WEBサイトを成果につながる営業ツールに進化させることが可能です。
初めから完璧を目指す必要はありません。むしろ「まず動いてみる」ことが、改善への第一歩です。
ブランディングの議論が社内で本格化すると、最初にぶつかる壁が「どこから手をつければいいのか分からない」という状態です。そんなとき、ありがちなのがフレームワークを導入して全体像を整理しようとする動き。とくに「3C分析」や「SWOT」など、マーケティングの基本フレームは使いやすさもあって選ばれやすい傾向にあります。
「顧客視点で考えよう」と言いながら、出てくる要素が「安い」「早い」「便利」ばかりでは意味がありません。それは表面的な選定理由であって、ブランドを選ぶ理由ではないからです。
顧客の選定理由には、本人が意識していない「無意識の価値判断」が数多く含まれています。たとえば、「高いけどなぜかあのブランドを選ぶ」という行動には、価格や性能では測れない「好感」や「信頼感」が影響しています。
「ブランディング、3C分析」というワードで検索してください。無数のテンプレートや図解が出てきます。しかし、それらを形式的に埋めるだけでは、顧客の心には届きません。
中小企業、とくに製造業では「良いモノを作れば売れる」という考えが根強く残っています。製品の品質やスペックを高めることに全力を注ぐ一方で、「自社の製品が顧客にとって何をもたらすのか」という視点を持つことを忘れてしまいがちです。
「ブランディング=おしゃれなロゴやパッケージデザイン」と誤解しているケースが少なくありません。もちろんビジュアル面も重要ですが、それはあくまで表層部分。根本は「自社製品が誰にとってどんな意味を持つのか」を明確にし、それを一貫して伝えることにあります。
誰に向けて製品を届けたいのかをはっきりさせます。どのような人が自社製品の導入を検討してくれそうか。
製品ブランディングは一度作って終わりではありません。市場や顧客の変化に合わせて、伝え方を見直したり、新たな価値を提案したりする柔軟さも必要です。小回りが利くのは中小企業の大きな強み。大企業にできないスピード感で変化に対応していきましょう。
「求人を出しても応募がこない」
社員のリアルな声を引き出すには、第三者の存在が欠かせません。社内の人間関係が影響しない「外の人」が話を聞くことで、社員は忖度なしで本音を話しやすくなります。
採用ブランディングは、1回やって終わりの「施策」ではありません。
中小企業を対象とした景況調査の結果、値上げができている会社は業績が上向き傾向にあるとのこと(大阪府中小企業家同友会調べ)。わかってはいるものの、顧客が離れてしまうのではといった怖れも含め、値上げに踏み切ることをかんたんに決断できるものではありません。
中小といえども、ブランド力がある企業は単に商品やサービスを提供するだけでなく、「この会社だから買いたい」「このブランドなら信頼できる」 という付加価値を顧客に感じさせることができます。これは、価格決定権を企業側が握ることにつながり、値上げをしても顧客が納得しやすくなる要因となります。
ブランドは、一貫したメッセージとビジュアルによって形成されます。マーケティングやブランディングにおいて、最も注意しなければいけないのがこの一貫性です。もし、社内のあちこちで一貫性のないコミュニケーションが社外とやりとりされれば、それだけで発しているメッセージとのさが目につき、信頼は薄らいでしまいます。
値上げを成功させるためには、単に価格を上げるのではなく、顧客に納得感を持たせるブランド力を磨くことが不可欠。これまでお伝えしてきたことをもういちどまとめておきます。





