コラムの冒頭ではありますが、中小企業こそブランディングの成果が出やすい ── このことを、経営者の方に強く伝えたいと思います。実は「中小企業 ブランディング」の成功は、大企業よりも早く、そして深く実感できるのです。
なぜかといえば、ブランディングは、ロゴや広告のような“外向き”ではなく、社員の意識や行動を変える「内向きの取り組み」が核。この「人を動かす力」が問われる活動こそ、中小企業の規模感に最も適しているのです。
具体的に言うと、ブランディングを進める過程で、ブランドアイデンティティやミッション、理念などを社内に浸透させようとするとき、社内を変えていかないとそれは成功しない。しかし、それをスムーズに進められないのは「人を動かす」ことが容易ではないからです。
中小企業なら、数人~百人ほどの「人を動かす」だけで済みますが、大企業となると千人~数万人規模で浸透させなければなりません。どれほどの労力、時間が必要でしょうか。さらに中小企業であれば、経営者の目の届く範囲に社員はいますが、大企業になると経営者が名前を知らない社員がほとんど。この環境下で、全社員に同じ方向を向かせるのは簡単ではないわけです。
中小企業の経営者であるあなたに、もうひとつ伝えたいことがあります。
御社にも、まだ気づいていない、言葉に落とし込めていないだけで、すでにしっかりした「ブランド」があります。それをフレームワークなどを使って、ていねいに内省し、社内の合意を得ていくプロセスがブランディング。このプロセスを経ることが、次に挙げるメリットを生むのです。
中小企業がブランディングを実施するメリット
1. 認知度の向上
ブランディングは、企業や製品の認知度を向上させるための手段でもあります。正しいブランディング戦略を持つことで、顧客は企業や製品を認識しやすくなり、購買意欲が高まります。とくに中小企業の場合、知名度を上げることは新規顧客を獲得するうえで非常に重要なポイントとなります。
星野リゾートの星野佳路社長が、まだまだ今のような規模でなかったとき、リピーターを徹底的に調査しました。なぜこの旅館に繰り返し来てくれるのか。そこには確固たる理由があるはずで、その理由が分かれば、まだ見ぬ同じ価値観を持つ顧客にも訴求すれば、新規客が増えるはずだと。
星野社長は、経営学の権威が主張する理論を徹底的に実践することで有名なので、おそらくブランディングの理論にどこかで触れられたのだと思います。その結果は、あなたもご存知のとおり。まだ中小企業だった星野リゾートが成長する源泉にもなったのです。
2. 競合他社との差別化
競争が激しい市場では、自社の製品やサービスを差別化することが生き残る条件です。ブランディングのプロセスで最初に行うフレームワークはクロス3C。顧客が求める購買条件のひとつを自社だけが持つ優位性で賄えるかを確認する作業(ブルー・オーシャンを見つける)です。他社も同様の優位性を持っているなら、それはレッドオーシャン。血の雨が降る海ですから、消耗戦になってしまいます。体力のない中小企業は、ここで戦ってはいけません。
ブランディングを通じて、企業は独自の優位性に基づく価値提案や個性を表現し、競合他社との差別化を図ることができるようになります。また、顧客にとっても、製品を選ぶ理由が明確になるのです。
3. 信頼とロイヤルティの構築
正しいブランディングは、顧客との信頼関係を築く基盤となり得ます。企業が一貫したメッセージや価値観を伝えることで、顧客は安心し、継続的な購買や応援をしてくれるようになります。もちろん、つまみ食いはするかもしれませんが、結局あなたの会社で得ていた満足感を消し去ることはできず、再度顧客として戻ってくるようになります。
ブランディングは、LTV(顧客生涯価値)を多く生み出してくれる顧客が多く現れる可能性を秘めています。言い換えれば、自社を長く継続させるための施策とも言えるのです。
4. 成長と展開の支援
あなたは融資を受ける際、金融機関の担当者に自社の強みを胸を張って語っているでしょうか。金融庁は、中小企業への融資について、現状だけを見るのではなく、将来性も含めて勘案するように通達を出しています。
ブランディングを行うことにより、自社の優位性、自社を端的に表現することができるようになり、金融機関の担当者の記憶にも残りやすくなるでしょう。
ブランディングは、企業の成長や発展をサポートする重要な施策。正しいブランディングを推進する企業は、新しい市場や顧客層に訴求しやすくなるのです。
5. 社員が考えはじめる社風をつくるきっかけに
フレイバーズがコンサルティングするブランディングは、プロジェクトチームを導きますが、決して答えを教えることはしません。すべてのプロセスでプロジェクトメンバーは、悩み、考え、ときに言い合いをしながら、自ら答えを導き出していきます。
中小企業にありがちなのは、トップの指示を実行するだけになってしまっている組織。経営者であれば、自走してくれる組織に変革しないと、社長が本来やるべき仕事がいつまでたってもできない事態に陥ってしまいます。ブランディングを実行することで得られる副産物として大きいのは、社員が自ら考え動く経験ができることと、視座を高く持てるようになること。
ブランディングは、通常の業務では果たせない社員教育にも寄与してくれるのです。
中小企業が輝く存在であるために
日本の全労働人口の70%を占める中小企業。日本にとって、この大きな存在である中小企業が元気で輝いていないと、この国の将来は危ういものになってしまいます。
これまでみてきたように、ブランディングは中小企業にとって厳しい市場で成功するために欠かせない要素であり、十分に検討する価値がある施策です。経営者は、今だけを見るのではなく、20年後この会社をどうしたいかを考えるのがほんとうの仕事。今いる社員のために、ぜひブランディングの導入をご検討ください。
ブランディングが失敗に終わる理由とは?
ブランディングとは、企業や商品、サービスの特長や価値を顧客にわかりやすく伝えることで、認知度や好感度を高めていく活動。「売れ続けるしくみ」を創ることと言ってもいいものです。ただ、ブランディングには推進の方法によっては効果が出ないこともあります。
経営陣の大きな期待を背負って始めた活動であるにもかかわらず、労力と費用をかけた割には思い描いた効果が出ない。広告代理店や制作プロダクションが口を開けば「ブランディング」と言いはじめる時代になったのに、失敗も数知れず・・・。
本コラムでは、ブランディングの失敗例やその原因、対策を紹介することで、これからブランディングを始めようとする企業に、成功に近づいてもらおうという意図でお伝えしていきます。

執筆した人:平田弘幸
株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。
本記事で分かること
ブランディングが成功しない原因は、大きく3つ。まず、ブランドメッセージが一貫していないこと。社内統一ができず、担当者や地域によって伝え方にムラがあり、顧客に混乱や不信を招きます。次に、メッセージが時代や顧客ニーズに合っていないこと。自社視点の思い込みだけで進めると、対象顧客からズレた発信になりがちです。そして、進め方・人・方法論・改善の欠如というプロジェクト運営の課題も深刻です。社内浸透や外部視点、市場や理想とのギャップ分析が不足していると、ゴールに届かない。こうした要因を理解し、対策を立てれば、ブランディングは成功に近づくでしょう。
ブランディングの落とし穴
市場調査や分析、クリエイティブにいたるまで、多くの労力をかけたのに失敗するブランディング。活動が上手くいかないポイントとしては、以下のようなものがあります。
ブランドのメッセージが一貫していない
社内にブランドメッセージが周知されておらず、担当者によって顧客への伝え方、行動が異なる場合。同じ商品でも、国や地域によって、ブランディング活動によって得た結果とはニュアンスが異なってしまっていて、顧客を混乱させるばかりか、不信を招いてしまう。
インターナル(社内)ブランディングができていないことによるものです。ブランディングといえども、最後は社員一人ひとりが媒体となって社外にメッセージを伝えていくことになります。社内の体制が構築できていなければ、外向けの活動も上手くはいきません。
ブランドのメッセージが時代に合わない
SDGsの考えが浸透しはじめているなかで、男女を分けてしまうような採用活動をしたり。そういう社員を経営陣が望んでいるからといって、モーレツに働く先輩社員の姿を伝えたり。Z世代から反発を受けるのは容易に想像できますね。
ブランドのメッセージが顧客のニーズに応えない
ひと時代前の家電製品は、ひとつまえのモデルより機能をひとつ加えて販売価格を維持する製品開発が主流でした。そうするとたくさんのボタンが並んだリモコンが生まれ、一回も使われずに寿命を終えるといったことに。売上を上げる、維持するための製品開発なので、顧客のニーズなどとは無縁なのです。
前項の時代に合わないメッセージも同じで、綿密な市場調査を行わず、ブランドホルダー側の身勝手な思い込みが強すぎると、このような結果となってしまいます。
ブランディング失敗の原因と対策
ブランディングの失敗は、いくつかの原因に集約されます。進め方の問題、組織(=人)の問題、知識(=方法論)の問題、社内浸透に関する不徹底の問題などです。
進め方の問題
社内だけでブランディングを進めようとすると、とくに市場分析などの場面で社内の至らない点が数多く挙げられる「グチ大会」に陥り、やっぱりウチはだめだ・・・ということになりがちです。中小企業に多く見られる傾向ですが、今まで生き残ってこられたのには顧客側から意味のある理由があるからです。
会社に対するリスペクトをベースに社外のナビゲーターが導くと、逆に「うちも案外いい会社なのかも」とプロジェクトメンバーが思い直す場面も出てきます。
組織(=人)の問題
ブランディングした結果を社内に浸透させようとすると、必ず人の問題が出てきます。インターナル(社内)ブランディングは、人の問題と言い切っても差し支えないほどです。
この大きな壁をどう乗り越えるかがブランディングを成功に導くかどうかの分岐点ともいえます。この障壁を取り除かなければ、冒頭でお話したような部門、地域によって、人によってブランドメッセージの伝わり方に差が出ることとなります。
知識(=方法論)の問題
ブランデイングに関するそもそもの知識が不足していることによる失敗があります。ブランディングは市場における自社のステータスやターゲット顧客、社風などを絡めて、独自のポジショニングを行っていくプロセスです。これに加えて理想の姿とのギャップを埋めていく作業も含まれます。
こういった各プロセスにおける調査、分析の仕方やまとめ方、経験などが社内だけでは決定的に不足しています。
改善活動をしない
多くの難解なプロセスを経たからといって、必ず正解を導き出しているわけではありません。ブランディングによるクリエイティブがターゲット顧客と上手くコミュニケーションできていないのであれば、調整が必要です。
ターゲット顧客に伝わらない=ブランディングの失敗なわけですから、できるだけスピーディに調査を行い、改善を進めていきたいところです。
ブランディングを失敗させないために
ブランディングが成功するか失敗してしまうかにフォーカスすると、テクニック的な議論になってしまうかもしれません。それより、ブランディングを行うことによって、得られる未来を思い描くことに重きをおいたほうが推進力は生まれるのではないかと感じています。
ブランディングは自社の足元(理念やパーパス、社風をはじめとする各種リソース)を分析することから始め、競合他社との関係性、ターゲット顧客の絞り込みを行うことにより、自社独自のポジションを確立することです。しかしそれだけでは、理想の未来とのギャップが大きすぎて、いつになったら理想に近づけるのかわからない・・・という状況を生むので、中期計画などを立案し、そのギャプをどうやって埋めていくかを行うことが必須なのです。
もしかすると、ブランディングの失敗は、まだ道半ばなだけなのかもしれません。いまいちどこれまでのプロセスを顧みて、自社がどこにいるのかを確認してみることも必要でしょう。
リブランディングとは?その意味と具体例
リブランディングとは、企業や製品が新たなアイデンティティを構築し、市場において競争優位性を確立する手法のこと。企業が長期的に成功するために必要な戦略のひとつといえます。
リブランディングにおいて成功するためには、市場調査と顧客の理解が不可欠。自社ブランドの本質的な価値を強調し、それを視覚的にわかりやすく伝えるデザインやコミュニケーション戦略を推進することを実施することもリブランディングを推進するうえでは、重要な要素です。
顧客の理解を深めるために
市場調査と分析
顧客のニーズや嗜好を理解するために、しっかりとした市場調査が必要です。競合分析やトレンドの把握も併せておこなってください。
顧客インタビューやフィードバック
顧客と直接対話し、意見を収集することで、彼らの期待や要求をより具体的に把握できます。
データ分析
ウェブやSNSの分析を通じて、顧客の行動パターンや好みを把握しましょう。
ペルソナの作成
代表的な顧客像であるペルソナを作成し、そのペルソナに基づいてブランド戦略を構築します。
社会文化の理解
顧客が生活する社会や文化を理解することで、彼らの価値観や行動に対する深い洞察が得られます。
これらの調査、分析を行うとともに、継続的に顧客の変化を注視していくことを行います。
ブランドの本質的な価値を事例で紹介
ブランドの本質的な価値は、そのブランドが提供する独自のメリットや特長を示しており、顧客がまさに望む価値をその企業でしか満足させられない方法で提供することです。
信頼性と品質
トヨタは「信頼性と耐久性」を強調し、高品質で信頼性のある自動車を提供しています。データ偽装などの問題により、この信頼性は揺らぐことになるが、従来はこれにより、顧客は安心してトヨタの製品を選択できるのです。
創造性とイノベーション
アップルはデザインと革新性に焦点を当てながら、顧客に最新のテクノロジーと洗練された製品を提供し続けています。これにより、顧客にとってアップルは「先進的でスタイリッシュなテクノロジー」の象徴となっています。
社会的責任と持続可能性
パタゴニアは環境への取り組みや社会的な責任を重視。サステナビリティに焦点を当てています。顧客はパタゴニアの製品を購入することで、環境に配慮した選択をしていると自身の選択に誇りさえ感じるのです。
カスタマーエクスペリエンス
ネスプレッソは高品質なコーヒー体験を提供。顧客が簡単ながらも贅沢な方法でコーヒーを楽しむことを可能にしています。ブランドの本質的な価値は、上質なカフェ体験を提供することにあります。
これらの例は、それぞれ異なる本質的な価値を示していますが、共通しているのは顧客に独自かつ魅力的な価値を提供しているということです。
リブランディングは、顧客と新しい約束を結ぶこと
ブランドホルダーがリブランディングにおいて、もっとも重視すべきは顧客にどのような体験を約束するかということ。さらにそれが競合他社が秀でていない価値で実施できるということ。顧客はその本質的な価値に触れることで、その選択に誇りを持ち、間違っていないと確信できることがたいせつなのです。
ブランディングに対する勘違い:デザインだけを変えても意味はない
あなたは、ブランディング=かっこいいキャッチコピーやデザイン、という勘違いをしていないでしょうか?もしそうだとすれば、それは会社にとってもマイナスな状態。この機会にブランディングがほんとうに機能する考え方を理解して、あなたの会社のブランドを理想のかたちにしていきましょう。
世のなかで目にするブランドメッセージは、それぞれたしかにかっこいい。けれど、ああなりたいと、見た目やイメージだけに偏ってしまうのは非常に危険。なぜなら、いくら社外向けに華やかなスローガンを打ち出しても、ブランドを体現している社内の人たちがそれを意識していなければ、ただの絵空ごとになってしまうから。
ニュースで世間を騒がす偽装事件などは、それが空回りしてしまった悪い例の最たるものです。
今回は、ブランディングとは一体どういうことなのか、ブランディングを進めるうえで忘れてはいけないこと、勘違いしてはいけないことについてご紹介します。
ブランド価値を下げてしまうのは、つねに「人」
「信頼できる商品だと思っていたのに」「ずっと使ってきたのに、もう買わない」
せっかくのユーザーをがっかりさせてしまう事件が、後を絶ちません。なぜ、そんなことが起きてしまうのでしょう?
わたしたちブランディングの専門家からすると、企業が常に大切にすべきブランド(=提供する製品・サービスの真の価値。お客さまとの約束でもある)を認識できていないから。
たとえば、ブランドアイデンティティとして「安全な車社会を・・・」を掲げている企業。TV-CMでは家族みんながニコニコと車で出かけるシーンが映し出されているのに、ある日「安全評価基準の結果を偽装していた」というニュースが流れて、ブランドを信じてファミリーカーに選んだユーザーはがっかりどころか憤慨することになってしまうでしょう。
そのような不正が起こってしまうのは、関係者たちが「社内の目標納期に間に合わせるために、評価テストにパスすること」が第一優先になってしまっていたから。そこにお客様の姿はありません。本当なら、第一優先はブランドアイデンティティで掲げている「安全な車社会を・・・」のために「安全な車をつくる」であるはずなのに。
それはすなわち、ブランディングが機能していない、ということを意味します。
変わらない真実。ブランドの価値をおとしめてしまうのは、必ず「人」です。思っていたより、サービスが低くてがっかりするのも、梱包がおおざっぱで運ばれた商品が壊れていたのも、データを偽装して製品の品質がカタログデータに満たないのも、すべて「人」がやっているのです。
このようにブランド価値が下がっている状態のことを、ブランディングでは「ブランドマイナス」と呼んでいます。
なぜ、ブランドマイナスの原因は人なのか?
では、なぜ原因はいつも「人」なのか?
答えは、ブランドを守り支えているのが「人」だから。世のなかのほぼすべてのビジネスは、人が関わっています。
接客業はもちろんのこと、メーカーでいくら機械化が進んでもコントロールするのは人。オンラインショップでもサイトを運営したり商品を発送するのも人です。
そのうちに、100%がAIというビジネスも出てくるかもしれませんが、今のところはあり得ないでしょう。
とにかく、ブランドを実際に動かしているのが「人」である以上、関係者一人ひとりがブランドをどのように捉えて行動するかによって、ブランドマイナスにもブランドプラスにもなり得る。
ブランディングという言葉は、マーケティングの手法のひとつだと捉えられている風潮があるけれど、ブランドってそんなに薄っぺらいものではないのです。
本当のブランディングって何?
それなら、ブランディングでやるべきことは何なのか?
ここまでご紹介したとおり、おしゃれなロゴマークやスローガンを作ることではないことは、おわかりいただけたと思います。外向けへの刺激として、広告表現はもちろん外せないものではありますが、もしあなたの会社のブランディングがそれだけにとどまっているとしたら、そのブランディングは間違いなく失敗に終わります。
ブランディングでもっとも大切なことは、あなたの会社が顧客から支持されているほんとうの理由を見つけ出すこと。競合他社にはない優位性を再認識し、それをより強くできるよう磨いていくことです。さらに、思い描いた理想のかたちとのギャップを将来に向けてどうやって埋めていくかを考えていく作業を怠らないこと。
これらをやってはじめて、ブランディングは機能するのです。
なぜ、ブランディングの勘違いは起きる?
ここは、はっきりと言わせてもらいましょう。
勘違いが起きる原因は、ブランディングの本質を理解していない広告代理店や制作会社が多く存在するからです。
ブランディングのスタート地点で、軽いヒアリングだけを終えて、今までと違うテイストのロゴデザインやキャッチコピー提案から始めようとするなら、そのプロダクションとのお付き合いはお断りするべきです。
彼らがなぜブランディングのプロセスを経ないでそのような提案をしてくるかというと、制作でしか料金を請求しようと考えていないから。早く売り上げを上げたいから、流行りのブランディングという言葉をネタに、制作物を収めようとしているだけなのです。
本当にブランディングという概念を理解しているなら、まずは今あるブランド価値を見つける作業をおこなってから、その価値を反映できるアウトプット手法を考えるはずです。
その背景には、ブランディングという概念がまだ浸透していないことがあるのかもしれませんが、ブランディングの勘違いが大手を振って歩いているように思います。
それと同時に、ブランディングの勘違いについて、今まで大きな声で批判をしてこなかった私たちを含めたブランディングを行っている者の力不足も反省すべきだと感じています。
正しくブランディングしよう
ブランディングは、手間はかかるけれどていねいに実施すれば、あなたの会社の魅力を引き出し、競合他社との差別化に寄与することはもちろん、長く売れ続けるしくみをつくってくれる武器になります。
さらには、社内の風土改革にも確実に貢献してくれる強い味方でもあります。
まずはブランディングに対する理解を深めるために、評価の高い書籍を一冊読み進めましょう。それでも、はっきりわからない・・・という方は①とにかく本通りに自力で進めてみる、②外部の力を借りて、ナビゲートしてもらうのがいいと思います。
アメリカの起業家、マイケル・マスターソンが言っています。
構え!撃て!狙え!
そう。狙いを定める前に、まず撃ってみる。ブランディングも実行あるのみです。
ビギナー向け、ブランドアイデンティティ策定の進め方と注意点
ブランドアイデンティティとは、ブランドの本質的な価値を分かりやすい言葉にまとめたもの。ブランドアイデンティティを明確にすることは、ブランドに関わるすべての人に共通認識をもたらします。その結果、ブランドを守り育てる人たちが同じゴールを目指せるようになり、ブランディングの成果も高くなります。
「それなら、作らない手はない。しかし、難しそうだ」という方のために、ブランドアイデンティティ策定のフレームワークとその進め方をご紹介します。外してはいけないポイントや迷ったときの対処方法も参考にしてください。
ブランドアイデンティティ策定の道のり、策定後の活動
進め方をご紹介する前に、ブランディングという活動のなかでブランドアイデンティティがどのような位置づけにあるかを把握しておきましょう。その存在感の大きさを知ることでプロジェクトメンバーの熱意もきっと変わってくるはずです。
ブランディングには8つのステップ(ブランドマネージャー認定協会が推奨)があります。
それを大きく2つに分けると、ブランドの価値を明確化するプロセスと、その価値を伝えていくプロセス。そのちょうど中間点に位置するのがブランドアイデンティティです。ブランド価値というのは、今までの自分たちの歩みのなかに必ず存在するもの。それがあるからこそ顧客から受け入れられてきたわけで、その価値を振り返り再発見することで、ブランドアイデンティティの輪郭がはっきりとしてきます。
そして、自分たちが大切にしてきたブランドの価値を明確化し、それをみんなで共有できる言葉に表す(ブランドアイデンティティ策定)ことができれば、そこからブランディングの活動は大きく加速し始めます。なぜなら、ブランドに関わるすべての人が同じ目標をもって動くことができるから。
それは、今まで個人がそれぞれの心のなかでぼんやりと抱いていたイメージが共通化され、目指すべきゴールに焦点があう瞬間。各人が納得できる言葉にすることで「そうそう、それだ」とチームに連帯感が生まれ、何かが始まりそうな予感さえしてくる。それがブランドアイデンティティ策定の醍醐味なのです。
ブランディング8つのステップ
- クロス3C分析(自社の振り返りと強み分析)
- セグメンテーション(狙うべき市場を見つける)
- ターゲティング(訴求する相手を決める)
- ポジショニング(自社が支持される理由を明確化)
- ブランドアイデンティティ策定
- 具体化(4P/4C分析)
- 刺激の設計(ブランド要素とブランド体験)
- 目標設定

1.自社の振り返りと強み分析(クロス3C分析)
ブランディングの全体像がわかったところで、いよいよブランドアイデンティティ策定のための4つのステップをご紹介していきます。
最初のステップは「自社独自の強み」を見つけるということ。競合他社にはなくて、自社だけがお客様の要望や不安に応えられているポイントについて、客観的かつ徹底的に分析することです。
「そんなものはないのでは?」と心配になったあなた、そんなことはありません。意識できていないだけで必ず存在しています。その強みがあるからこそ、今まで会社は存続し、顧客に受け入れられてきたのです。自社や自社が提供している製品・サービスについて、しっかりと振り返ってみてください。
そこで有効な方法となるのが、マーケティングツールの一つ「クロス3C分析」です。クロス3C分析とは、外部環境(競合他社)、内部環境(自社)、顧客環境の3つの要素を分析することで、自社のポジションや競争力を明確にするためのフレームワークです。
これら3つの要素を交差させることで、競合他社が持ち合わせていなくて、自社だけがもつ強みで、なおかつ顧客が求めているもの(=ブルーオーシャン)を見つけ出すことが目的です。
クロス3C分析の各要素とは
・外部環境 (競合他社の強みと弱み)
一般的に「外部環境」とは、自社が直接コントロールはできないが、業績や戦略に大きな影響を及ぼす要因(たとえば、市場の動向や、競合他社の行動、政治経済や技術のトレンドなど)を意味します。しかし、ブランディングにおけるクロス3C分析では、外部環境=競合他社の強みと弱みに絞り込む方が考えやすいでしょう。
・内部環境 (自社の強みと弱み)
内部環境は、自社が直接的にコントロールできる要因を意味します。自社の能力、組織文化、ブランド価値、製品やサービスの特長、従業員のスキルなどが含まれます。内部環境を分析して、自社の強みや弱みを洗い出し、競争優位性を保つためのポイントを把握します。
・顧客環境 (顧客の要望、不安、不満など)
顧客が望んでいることや行動パターン、購買動機、不安や不満など「不」がつく要素を洗い出します。この段階では、まだターゲットとする市場もぼんやりしているかもしれませんが、まずは思いつくままに書き出してみましょう。
クロス3C分析で気をつけたいポイント
・自社の弱みは考えなくてよい
内部環境(自社)について分析するとき、どうしても強みよりも弱みが出てきやすいもの。集められたメンバーがまじめなほど、その傾向は強くなるのかもしれません。ただ、自社や自社製品の弱点に目をむけても、社内のグチ大会になってしまったり本来の強みに目が向かなくなる恐れも。
だから、強みや良いところにフォーカスしてください。もし、出てこなくても、周囲の人たちに聞く、第三者やネットの声を見てみるなど、できるだけ客観的な視点を大切に探してみてください。
・ブルーオーシャンが見つからなくても気にしない
クロス3C分析の結論であるブルーオーシャン(顧客の要望に対して、競合にはなく、自社だけが応えられる強み)が見つからないというケースも、最初の段階ではよくあることです。どうもしっくりくる答えが出ない、競合他社の方が強みが多いかも・・・。
でも、落ち込まないで!ゆったり構えてください。いま会社が存在するということは、それだけ顧客を惹きつける理由があるからです。どうしても答えが見つからないなら、急がずそのまま放置してもOKです。
次のステップを進めていくうちに、必ず見えてくるので慌てる必要はありません。
・自社の強みが競合他社にも当てはまっていないか?
自社だけでなく競合他社も得意としていることなら、それは独自の強みとは言えません。それが顧客が望んでいることだとしたら、それはまさにレッドオーシャン。そこでは戦ってはいけないポイントになります。
・顧客の視点で考えること
自社の特長や優位性を見極める際に欠かせないのは、お客さまの視点に立つこと。実はこれが一番むずかしいポイントです。日常的にお客さまと接することの多い方は別として、間接部門の方にはなかなかイメージしにくいものです。
いったん、頭のなかを真っ白な状態にして、徹底的にお客さまの立場から自社や競合を分析してみることです。
2.セグメンテーション(Segmentation):狙うべき市場を見つける
自社の強みが見えてきたら、ここからはSTP分析の段階。
S:市場の細分化(セグメンテーション)、T:ターゲット層の抽出(ターゲティング)、P:競合との差別化(ポジショニング)の頭文字をとった言葉で、事業戦略やマーケティング戦略で使われるフレームワークのこと。フィリップ・コトラーが提唱した概念です。
STP分析のうち、まずは狙うべき市場(セグメンテーション)を見つけ出す作業です。セグメントとは市場を分けることであり、お客様をどう分類するかを考えること。たとえば、市場全体を年齢や性別、ライフスタイル、興味関心などいくつかの軸を決めてセグメントすることで、自社が狙うべき市場が見えてきます。
セグメンテーションで気をつけたいポイント
・もう一歩、細分化してみる
「市場を分けるといわれても、最初はピンとこない」という人がほとんど。ありがちな迷いとして、セグメンテーションをしたものの市場がぼんやりしている、ということ。
たとえば、自然食品を販売しているブランドがあるとします。その市場を「健康志向が高い人」と「30~40代女性」という2つの軸で分類しました。
自分たちが狙うべき市場は見えてきたものの、なんだかまだぼんやりしている。市場の絞り込みが広すぎると、ターゲットとする顧客の顔が浮かんでこない=どんな生活スタイルで、どんな悩みがあって、どんなことに興味があるのかがイメージできないままになってしまいます。
そんなぼんやり感があるときは、もう一歩踏み込んでみる。アレルギーをもつ子どもに悩んでいるママ、キャリア志向で忙しいだけに体調をくずしがちな女性、などと、もう一歩具体性をもたせることで、ターゲット層の顔を思い浮かべやすくなるのです。
ただし、細分化といっても、あまり絞り込みすぎるのも危険。その結果、マーケットが小さくなりすぎる可能性もあるのでバランスを考えながら軸を見つけていきましょう。
・既存の枠組みにとらわれない
セグメンテーションの成功事例として、ホンダの「スーパーカブ」があります。1959年、ホンダがアメリカ市場へ進出する際にとった有名な戦略。
当時のアメリカでは、ハーレーダビッドソンが約8割のシェアを誇っていたなかで、ホンダが選んだ軸の一つは「バイクに乗らない人」でした。ハーレーのようなワイルドなバイクでブンブンやりたい人ではなく、今はバイクを持っていないけれど日常の便利な足としてバイクを必要とする人。
この狙いは市場ニーズにぴったりはまり、その後ホンダは大きなシェアを獲得することになるのです。
既存のターゲット層ももちろん大切ですが、それ以外に見つけられていない市場やきっかけはないか?そんな視点でとらえてみることも必要です。
・BtoBとBtoCでは軸の取り方が異なる
BtoCの市場に関しては、比較的セグメンテーションしやすいかもしれません。年齢や性別、ライフスタイルといった軸が当てはまりやすいのですが、BtoBの場合は異なる視点が必要です。
主な例としては、業種や産業分野、企業の規模、地理的な位置、ニーズや課題、社風、購買プロセス(意思決定段階など)などが挙げられます。
3.ターゲティング(Targeting): 訴求する相手を決める
市場を細分化できたら、そのセグメントに属する具体的なユーザー層を調べます。顧客の詳細な特性や好みを具体的に思い描くと、ターゲットに合った施策が打ちやすくなるので、戦術もより具体的になり、成功する確率も飛躍的に高まります。
ターゲティングで気をつけたいポイント
・情報収集はしっかりと行う
ここで大切なのは、想像の範囲でターゲット層を決めないこと。社内外からの情報収集はしっかりと行ったうえで、事実にもとづいて組み立てていきましょう。
・市場規模がある程度見込めること
釣り糸を垂らすときは、それなりの数の魚が泳いでいる釣り堀をさがすこと。あまりにもニッチな市場をえらぶと、マーケティングにかけるコストに見合わないという可能性も。かならず市場規模の有効性、市場の将来性を把握したうえでターゲティングを行ってください。
4.ポジショニング(Positioning): 競合との差異化(自社が指示される理由)を明確にする
これまでの経緯をおさらいすると、自社の強みを明確化して、それを訴求すべき市場を定めて、訴求する相手を確認してきました。最後にもうひとつ大切な要素が、誰とどのように戦うのか。お客さまが競合他社と自社を比較したときに、「〇〇だから買いたい」と思ってもらえる基準をはっきりさせることです。
そのためには、まずお客様が購買する理由(Key Buying Factor:KBF)をリストアップします。思いつく理由をいくつでもよいので書き出してみてください。
リストアップができたら、それをカテゴリー分けしてみる。それによって競合他社との差異化を示す軸が見えてきます。
2つの軸をとり、そのマップ上で競合他社2~3社と自社の位置づけを確認することができます(ポジショニングマップ)。
ポジショニングで気をつけたいポイント
・顧客視点で考える
ポジショニングにおいてもっとも大切なことは、お客様の視点で考えること。いつも熱心に仕事に取り組んでいる人ほど自社視点になってしまいがちなので、頭の切り替えが必要かもしれません。
どうしてもイメージできないというときは、実際の売り場に身を置いてみる。ネットなどで顧客のリアルな声をさがす。営業担当者などいつもお客さまと接している人の意見を聞いてみるなど、立場を切り替えるスイッチが必要です。
・競合他社を明確に意識する
当たり前ながら、具体的な会社名をあげて、できるだけ具体的に比較をすることが大切です。競合が分からない場合でも、今の時代、ChatGPTなどいろいろ手を尽くせば何か情報収集はできるはず。ここは踏ん張って、ていねいに進めていきたいところです。
5.ブランドアイデンティティの策定
これまでの4つのステップを振り返りながら、いよいよ自社の強みや差別化ポイントをもとに、ブランドアイデンティティを策定します。
ただ、このプロセスまでくると、プロジェクトメンバーの頭の中にはいくつかのキーワードが浮かんでいるはずです。
逆に、まだぼんやりしている状態なら、これまでのプロセスが消化不良になっているということ。明確になっていないポイントに立ち返り、再考してみてください。
ブランドアイデンティティとは、お客さまに対する約束。ブランドがどれだけ有益な価値を提供し、どのような体験を約束するかを伝えるものです。
伝えたい想いをライティングによって整えていくことになりますが、その際にもお客さまの視点を常に意識するようにしましょう。
ブランドアイデンティティ策定のプロセスが、ブランディングの成果を左右する
自社ブランドが市場で優位性を保つためには、ご紹介したマーケティングのレームワークによって導き出した、ブランドアイデンティティを掲げることが不可欠であることが理解いただけたでしょうか。
そのなかでも重要なのは、メンバーみんなで段階を踏みながら進めていくプロセスそのもの。一人ひとりが頭で汗をかき、ときには意見がぶつかったり前段階に戻ったりしながらも、自社ブランドについて考え抜くことが大切です。そんな時間の経過があってこそ、みんなが納得できるし、ブランドの魅力を再確認できるのです。
ブランディングプロジェクトのメンバーには、次のステップとして、自分たちが導き出したブランドアイデンティティを社内の他のメンバーに伝えていくという大きな役割が待っています。ときには、熱量の異なる人や違う意見をもった人を説得しなければいけない場面もあるでしょう。そのためにも、まずは自分たち主要メンバーの気持ちを一つにしておく必要があります。悩んだり凹んだりという場面があるのは当然のプロセスと受け止め、あきらめずに前へ進んでください。
あなたは自社ブランドの未来を背負っていくという、とてつもなく価値のある仕事をまかされているのですから。
オウンドメディアとSEO、5つの即効テク
Googleだけでも大きな検索ボリューム(2023年11月時点で18,100件/月)を誇るキーワード「オウンドメディア」。
オウンドメディアとSEOの間には、密接な関係がある。筆者の主張は、検索ユーザーのためになる記事(○○○を探しているなら、これだけは押さえておくべき、的な記事)を書けば、共感を呼び、SNSでバズられるし、ナチュラルリンクも多く張ってもらえる。たとえプチバブルが去ったとしても、悩みを抱える検索ユーザーたちに響くコンテンツとして長く影響を与え続けられる、というものだ。
さらに、その記事がトリガーとなって、お問い合わせや資料請求、見積もり依頼などにコンバージョンするように設計しておけば完璧。そしてさらに、渾身の力を注いで執筆したあなたの記事から実際のビジネスに発展する引き合いを得ることができれば、WEB担当者冥利に尽きる。
この記事では、オウンドメディアにSEOの視点を組み込む方法を明かし、コンバージョンに結びつけるテクニックを紹介する。
オウンドメディア:ユーザー視点への大転換を

自社サイトでオウンドメディアを始める前に、あなたが肝に銘じておくべきは、自社が発信したい情報を提示することではなく、ユーザーから望まれるコンテンツを創り出すことだ。製品・サービスに関する情報を一方的に公開しても、ユーザーのニーズがないのだから、集客にはつながらない。
ものづくりをしている企業やサービスを提供している企業は、顧客に情報を提供しようとするとき、どうしても「ウチの製品は」「ウチのサービスは」となってしまう。そこに顧客が「こう望んでいるからできた製品、サービス」という確固たるマーケティング結果があって、そのニーズを中心にストーリーを展開するのであれば問題ないが、「ウチ中心」に製品やサービスを見てしまうことが多いのだ。
検索ユーザーの悩みや課題に応え、コンバージョンに結び付けるためには、その悩みや課題がどういったものなのかをリサーチすることから始めよう。
基本的に製品やサービスはニーズを満たすために生まれるもので、開発担当者のエゴや思いつきで作られるものではないはずだ。開発者が「こういうものを創りたい」と願う気持ちは、何らかのニーズや一ユーザーとしての視点、明確な目標があってこそ多額のコストと労力、時間をかけて誕生したものであるはずなのだ。
コンテンツも同じ。
できあがってきた製品やサービスを市場で目立たせることがマーケティング担当者の仕事であり、ここで手を抜いてしまうと画期的な製品やサービスも、それによって解決されるはずの悩みや課題を持った人たちの目に触れる機会を失ってしまう。
あなたが担当する製品やサービスをオウンドメディアを使って紹介する前に、まず考えておかないといけないのが「購買プロセス」だ。
1.検索ユーザーの購買プロセスに対する成熟段階を意識する

ユーザーは、いくつかのプロセスを経ながら製品・サービスの購入に至る。
自社の製品・サービスを購入してもらううえで、どのようなプロセスをたどっていることが多いのか。WEBサイトはそのプロセスのなかで、どの部分にあたるのかを知っておくこと。自社のWEBサイトでオウンドメディアを展開する際に必要なのは、ここだ。
下記のプロセスが一般的だが、製品・サービスによっては多少異なるものもある。
- 製品・サービスや該当機能の認知
- 興味関心
- 価値認識、購入検討
- 製品・サービスの購入
- リピート購入
- 製品・サービスや提供者に対するファン化
購入に至る前に、あなたは顧客候補に相当量の情報を提供しなければいけない、その情報が他社に渡ることが許されないといった制約がかかった状態で、購入する気満々の検索ユーザーを想定したコンテンツを展開しても成果には結びつかない。
たとえば、購入する製品・サービスの大枠が決まっても、契約前に細かな仕様を詰めなければいけないようなビジネスモデルだと、すぐにでも購入したいという引き合いが入ることは100%ありえない。
オウンドメディアをそういった製品やサービスで展開するなら、その製品・サービスを選ぶことによって得られるベネフィットや将来像を顧客候補の頭に描かせることで、顧客候補が次のステップに向かいやすい状態をつくることの方が大切だ。そのために必要なコンテンツを多くの角度から提供していくことこそが、オウンドメディアのキモなのだ。
さらに、オウンドメディアは集客することが目的ではない。訪問者に何らかのアクションをとってもらうための仕掛けを施し、コンバージョンに結びつけることもあらかじめ検討しておくべき要素だ。
2.コンバージョンに結びつける設計図を用意しよう

「ウチの製品を買ってくれる人は、まず上司に打診することから始まるな」
たったいま、あなたはWEBサイトのゴールについて、非常に重要な独り言をつぶやいた。
この場合、WEBサイトの目標は、「担当者の上司を納得させられるだけの視点を持った資料を提供すること、またはそのサポート」となる。
あなたの会社の製品を選択肢のひとつに残すWEBサイトのコンテンツ設計はこうだ。
おそらく購買プロセス1.製品・サービスや該当機能の認知は済んでいるとして、
- (ツカミ)担当者レベルでの課題解決:興味関心
- (本題)信頼性、思想、実績:価値認識
- (落とし込み)上司を納得させるだけの経営的視点を持つ説明資料:購入検討
ツカミは、製品にまつわる新たなコンテンツで展開できそうだ。信頼性や製品やビジネスに関する思想は会社情報、実績は事例集や製品情報といった既存コンテンツで賄える。
初期コンタクト~担当者コンタクトへのストーリーはこうだ。
- 悩みや課題を抱えた検索ユーザーの欲求を満たすコンテンツを差し出し、課題解決の糸口を見せる。
- なぜ課題解決に向けた活動をしているのかを説明する。
- 興味を持った検索ユーザーは、会社情報や製品情報をチェックする。
- 総合的な課題解決策をまとめたダウンロード資料でコンタクトを誘う。
- リード情報(具体的な問い合わせ情報)をくれた訪問者にステップメールを送付する。
これまでの準備が整ったところで、集客のためのSEOキーワード選びについて考えてみよう。
3.SEOを意識したキーワード選び

SEOキーワードを選択する際に、ぜひ積極的に活用してほしいツールがある。Googleアドワーズ内の、「キーワードプランナー」だ。
キーワードプランナーは4種類の方法で、広告出稿のためのキーワード選びをアドバイスしてくれるツールだが、手っ取り早くSEOキーワードを探したい人のために、裏ワザをお教えしよう。
キーワードプランナーを開くと、4つの方法で対策キーワードを探し出せる。そのなかで上から2つめの「フレーズ、ウェブサイト、カテゴリを使用してキーワードを検索」を開く。
入力ボックスのひとつ、「ランディング ページ」を使う。
これは、いわゆるランディングページ、検索ユーザーに検索してほしいページの内容をGoogleが吟味して、このページにはこういうキーワードが適切ではないかと教えてくれるものだ。これを応用して、ライバルサイトが取り込んでいるユーザーが検索したキーワードを調べてしまうのだ。
やり方は簡単。
ライバルサイトの対象とするページのURLを「ランディング ページ」の入力ボックスに記入するだけ。そうすると、Googleはライバルサイトが持っているコンテンツの内容から判断して、対象とすべきキーワードを教えてくれる。このツールを利用すれば、競合他社の担当者さえ気づいていないお宝キーワードにめぐり合えるかもしれない。
表示されたキーワードをダウンロードして、前述の自社製品・サービスの購買プロセスに合うと思われるキーワードをピックアップする。
そのキーワードに応じたコンテンツを作りこんでいけば、今まではあなたのサイトを訪問することがなかった新たなユーザー候補が来てくれるかもしれない。
その他にもSEOキーワードを選定する方法やコンテンツの作成方法について、別コラムで詳しく紹介しているので、これらの記事も参考にしてほしい。
4.シェアされやすいコンテンツを知る

あなたが取り組もうとしている記事のテーマについて、バズられやすいコンテンツとはどういったものなのかを知ることも大切だ。FAQサイトやキュレーションサイトを見て回ろう。
もちろん、バズられることが最終目的ではないので、そのテーマに対する人気がなかったとしても、テーマ自体をボツにするといったことはしないようにしよう。バズられることが目標になってしまうと、とんでもない方向を目指すことになり、自社コンテンツとしてアリだったのかということにもなりかねない。
オウンドメディアを行う本来の目的は、あなたが営業部門やサービス部門から聞いたお得意様の悩みや自らの体験をもとに、きっと世の中に同じような悩みや課題を持つ人たちがいて、その役に立ちたいという熱い使命感でテーマを決めたはずだ。そのモチベーションに基づいて作られたコンテンツは、必ず誰かの役に立つ。
FAQサイトやキューレーションサイトで、キーワード検索を行う。
検索結果から、あなたが考えていたテーマに近いものの閲覧数をチェックしよう。人気の高いものを読み込むと、テーマの扱い方や視点、イメージしていなかった主張が見えてくるはずだ。
世の中の人は、そういった記事を好んでチェックしていることが、おおまかにでも理解できる。
5.SEOの決め手は、ユーザーの心をつかむこと

Googleの上位表示アルゴリズムの進化で、SEOの内部対策、外部対策が検索結果ランキングに与える影響は少なくなってきた。キーワードを詰め込まなくても、内容さえ良ければ上位表示も可能なほど内部対策も以前より重要度は低くなってきている。
要は、ユーザーニーズを捉え、それに応じたコンテンツを提供することで、上位表示は果たせると考えてもいいぐらいなのだ。
あなたの記事に出会って、人生さえ変わってしまったという人がいたらどうだろう?
我々の記事を読んで求人に応募してきた若者のなかには、「こんな記事を書く人たちと一緒に仕事をしたい」と言ってくれる人も増えてきた。明らかにWEB制作コラムを始める前と後では、応募してくれる人の質が変わってきたのだ。
自分の考えていることや製品・サービスが持つ魅力をストレートに、正確に、相手が理解できるように伝えることは難しいものだ。
すぐにできるようになるものでもないが、その域に到達できるように努力しなければ何も変わらないし、もし現時点で思うような結果が出せていなくても、何度でもトライすればいいのだ。言葉を変え、内容を変えながら、何度も記事を重ねていくことで、あなたがその情報を知って欲しいと考えているその人に伝わるまで粘り強く続けることでしか理想には近づかない。
繰り返しチャレンジすることで、必ずいつかあなたの記事は高い評価を得られるようになるはずだ。
ブランド・アイデンティティを定めるメリット、成果につながる進め方
ブランド・アイデンティティとは
ブランド・アイデンティティとは、その企業ならではの魅力や特長的なポイントを端的に表した言葉。ブランド・アイデンティティを定めることでそのブランドに関わるすべての人が共通認識をもつことができる、ブランディングにおける旗印のようなものです。
たとえば、お客様から「他社と比べてどこが違うの?」と聞かれたとき、新商品開発のコンセプト設定で迷ったとき、採用活動におけるメッセージを考えるとき。
自分たちのブランドが何を目指しているかを思い起こし、進むべき方向を示してくれるのがブランド・アイデンティティ。判断に迷ったときばかりではなく、進んでいる方向が間違っていないか、つねにブランド・アイデンティティと照らし合わせ、確認し続けることがたいせつなのです。
ブランド・アイデンティティを定めるメリットは4つある
ブランド・アイデンティティの4つの効果とは、
- ブランドに関わる人すべての行動基準となる
- 顧客にむけて、ブランドの想いを伝えるメッセージとなる
- 競合との差異を際立たせることができる
- 企業が成長していく原動力となる
1.ブランドに関わる人すべての行動基準となる
先述したように、ブランド運営に関わるすべての人にとって、考えたり行動を起こす基準となるのがブランド・アイデンティティ。その内容を決める際には、ブランドや組織がもつ特長的な部分にフォーカスし等身大の言葉で表現するわけですから、そもそも誰もが受け入れやすく、その意図するところにそって自らの行動基準をはかりやすい価値基準でもあるのです。
2.顧客にむけて、ブランドの想いを伝えるメッセージとなる
顧客が知りたいのは、商品・サービスを手に入れることで自分にどのような価値があるのか、いかに自分を幸せにしてくれるのか、ということ。ブランドはお客様との約束。それを言葉で伝えるのがブランド・アイデンティティです。また、人を説得するうえで有効とされる「ゴールデンサークル理論(サイモン・シネック)」にに照らし合わせて考えても、ブランド・アイデンティティが重要であることがわかります。ものごとを説明するときには、まず、どのような想いのもと(WHY)→ その想いをどのような手段で実現させようとし(HOW)→ 結果として成果物に何を提供するのか(WHAT)という順番で語ると、人は納得しやすいというもの。ブランド・アイデンティティは、人を説得する際の最初の「WHY」を語る大きな役割を担っているのです。
3.競合との差異を際立たせる
ブランド・アイデンティティとは、他社にはない自社の強み(ブルーオーシャン)をベースとして導き出されたものです。競合他社との差異化ができているのは言うまでもありません。逆をいえば、ブランド・アイデンティティをいい加減に据えてしまうと、実像との乖離によってさまざまな違和感が生じてしまいます。とくに、ブランドを運営する社員にとっては深刻です。本来ならば、ブランド・アイデンティティをもとに考え行動するプロセスが一番大切なのに、「なんだかしっくりこない」となると、社員は思考停止に陥ってしまう。それどころか、他社との差異化ができていないと、もっとも避けるべきレッドオーシャンで戦うことになり、組織が疲弊するばかりか、利益も減ってしまうことになりかねません。ブランド・アイデンティティを正しく作ることの重要性はここにもあります。
4.ブランドや企業が成長していく原動力となる
組織には多くの人が集まるだけに、目指す方向に多少のズレは起こりがちです。そんなとき、ブランド・アイデンティティを旗印として、各人が考え、みんなで議論し、実践を続けていくプロセスは大きな意味をもちます。「こんな時どう行動したらいいのだろう?」「(ブランド・アイデンティティの)この言葉、このようにも解釈できるよね?」各人が何回でも、深く考え、捉え続けることにより、ブランド・アイデンティティへの理解はさらに深まっていきます。幾度も繰り返しブランド・アイデンティティがうたう世界観に触れることにより、結果としてブランドや企業の成長につながっていくのです。
ブランド・アイデンティティ策定の進め方。成功のカギ3つ
では、上記のメリットを最大限に享受するため、ブランド・アイデンティティの策定はどのように進めていくべきなのか。大切なポイントは3つあります。
1.社内プロジェクトチームを組む
まずは、社内においてプロジェクトチームを作ることが第一ステップです。できるだけ各部門からメンバーを選出してチームを組みます。外部のコンサルタントに入ってもらう場合でも、プロジェクトの中心となるのは必ず社内のチームと考えてください。メンバーの素養としては、柔軟な発想をもち前向きに取り組める人を。チームの使命は、ブランド・アイデンティティを作ることがゴールでなく、その後も社内浸透を担っていくことになるため、リーダーシップ力をもつ顔ぶれがベストと言えます。
傾向としていえるのは、社歴の長い方や役職についている人は現状に満足されている場合が多いため、入社後数年の経験をもつ若手メンバーで構成する方が私たちの経験上、進めやすいと感じています。
2.答えは、必ず社内から見つける
ブランド・アイデンティティの策定にあたっては、プロジェクトメンバーでいくつかのフレームワークを実施することになります。その際の大切なルールは、以下のとおりです。
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チームメンバー全員が発言できるように
声の大きな人も小さな人も、できるだけ同じように発言する機会をもつようにしてください。メンバー全員が初めての体験です。すぐに素晴らしい意見が出てくることはありません。口ごもっているメンバーがいても、粘り強く意見を吸い上げるようにしましょう。
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どんな意見も尊重する
さまざまな立場の人が自由に発言できることが大切。自分とは違う意見が出たとしても、決して否定しないこと。各人が発言するたびに、全員が拍手で応えるようなムード作りが非常に大切です。どんな細かなことでも気軽に発言できる、心理的な安全性を保てる場をつくれば、「そんなことでもいいんだ」と他のメンバーも認識し、ディスカッションが活性化されます。
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ファシリテーターは意見を誘導しない
ファシリテーターは、みんなの意見を引き出し、傾聴することに徹しましょう。決して答えを誘導してはいけませんし、持論を延々と話し続けるようなことがあってはいけません。
フレームワークを進めるなかで、どんなに答えが見つからなかったとしても、結論を急ぐ必要はありません。たとえば、最初のステップで行う3C分析は誰もが悩む課題の一つですが、どうしても結論が出ない場合は保留にしておけばよいのです。別のフレームワークを進めるなかで気づくことも多々あるため、いくつかのプロセスを経てから考え直してみるとクリアになることがあります。さらに、外部のブレインが答えを出してしまうのはご法度です。自社ならではの持ち味を本当に分かっているのは、そこで働く人たち。どんなに経験豊富な専門家であっても結果を出すことに焦ってはいけません。
3.理想像をブランド・アイデンティティにしない
ブランド・アイデンティティは、現状のブランドや企業がもつ魅力がベースとなるもの。今より少し背伸びした表現は問題ないですが、「今は持ち合わせていないけど、将来こうなりたい理想像」は当てはまりません。実像と異なってしまうと、ブランドに関わるすべての人たちの心を動かすことができないため、共感の原動力とならないからです。
よく考えてみてください。いま自社が存在できているのは、既存のお客様からの支持があるから。自社の製品やサービスを支持してくれる理由があるからこそ、会社は続いているのです。言い換えれば、ブランディングは、お客様が支持してくださっている理由を探し出すプロセスでもあるのです。
「最初はよく分からなかったけど、振り返ってみると自分が大切にしていることだった」「こんなふうにも解釈できるね」といった反応が出てくるのがブランディング・プロジェクト。その結果として自社の存在理由を短くまとめた言葉がブランド・アイデンティティ。そこからすべてが始まり、放っておいても新たな成長が始まるのです。
ブランド・アイデンティティ策定のメリットは、会社成長のカギとなること
ブランド・アイデンティティは外部ブレインに任せて作ってもらうものではなく、今っぽい言い回しにする必要もありません。自社をよく言い表し、社内のだれもが「そうだね」と納得できれば、ベタな言葉でも十分です。
また、ブランド・アイデンティティは、行動規定のように誰もが解釈を間違えないような明確な表現になっていてはいけません。少し抽象的な部分が残しておくことで、のちに解釈を深めたり、想像を膨らませたりできる余地を残しておくこともブランドアイデンティティ策定のポイントのひとつです。
繰り返しになりますが、ブランド・アイデンティティは自分たちのブランド価値を伝え、理解し、成長させていくために必要なもの。社内を振り返り、なぜ自分たちの商品やサービスが顧客に買っていただいているのか、取引が続いているのかを考え、培われてきた社風について棚卸を行いながら、意見を出し合ってみてください。
インターナルブランディングが、会社の未来を明るくする

会社を良くしたいと思うのは、経営者ばかりではありません。
経営者と視座はちがうかもしれませんが、一般社員も自分がしている仕事を意味のあるものにしたい、しっかりとした存在意義のある良い会社にしたいと考えていることは、たしかなことだと思います。
経営層と一般社員、立場や視座は違えど、同じことを考えている人たちが集まった組織が、同じ方向を向いて事業を進めるためにあるのがインターナルブランディングという企業活動です。これは、組織の根源ともいえる考え方を端的な言葉(ブランド・アイデンティティー)に集約、全社でその御旗を共有し、事業を進めるうえでの拠りどころにするというものです。
ドラッカーも伝える、インターナルブランディングの基本
ビジネスピープルなら、誰もが知っているP・F・ドラッカー。彼は著書「プロフェッショナルの条件」のなかで、こう伝えています。
成果を上げるために必要なキーワードは「貢献」。この貢献が意味するのは、
① 所属する組織が社会にどのような貢献をしようとしているかを深く理解する。
② その組織が自分にどのような貢献をしてほしいか考えて行動する。
①は、この数年注目されているパーパス、つまり会社の存在意義です。なぜ会社が事業をしているのかを明確に理解すること。ただ実際のところ、経営層も含めた全社員が同じように自分たちの存在意義を明確に定義できているかは、残念ながら疑問です。②は、会社の存在意義を実現するために、個々の社員が何をなすべきかを理解し、行動すること。すべての人が同じことができるようになる必要はないとも彼は著書のなかで述べています。たとえば、セールスは苦手だけど、コンセプトの立案や緻密な資料づくりが得意な人は、セールスは得意だけど事務仕事は苦手な人を補完すればいい。チームとして全体が強くなれば、大きな成果が期待できるということです。
インターナルブランディングは考え方だけを共有して終わりではなく、活動の結果個々人が何をなすべきかにまで至ってこそ会社が次の階層へと進みます。P・F・ドラッカーのプロフェッショナルの条件その1にある考え方を理解し、実践することで結果につながっていくのです。
退職理由から考える、ブランディングの必要性

厚生労働省が発表した「雇用動向調査」(令和3年上期統計)で明らかになった退職理由(20歳~39歳)は、男女ともに給与、労働条件などの待遇面が1位、2位を占めていますが、「会社の将来が不安」(男性28.3%=4位、女性30.7%=3位)にも注目すべきです。財務的な問題もあるとは考えられますが、「仕事の内容に興味を持てなかった」(男性19.4%=5位、女性15.4%=6位)と併せて考えると、会社が社員に希望を与えられていなかったことも大きな要因のひとつになっている気がしてなりません。
もし、自分たちが存在する理由(=パーパス)を明確にし、共有ができていれば、この数字はもっと低いものになったのではないか、と感じてしまうのです。
前述したように、一般社員も自分が働く環境を良くしたいと考えています。ただ、視座が異なるぶん、経営者から見れば甘いと感じるかもしれません。しかし、そうやってバッサリ斬ってしまうと、なにも良くはなりません。いろいろな意見や視点を聞きながら、なにがいまベストなのかを考えていくことが肝要なのです。
社内でのすり合わせがインターナルブランディングの要諦

ここまでで、全社が同じ御旗(ブランド・アイデンティティー)を見据えながら個々の仕事の質を高めたり、やるべきことを定めたり、判断したりできるようになることが大切だとお伝えしました。その御旗がブランド・アイデンティティーではなく、それが企業理念であったり、社訓であったり、ミッションであったりしても構いません。
要するに、同じものさしを持ってものごとを考えていく、ということが大切なのです。
しかし実際にこの活動を進めていくと、課題が出てきます。
Aさんは、ミッションから考えると、答えは〇だと。Bさんは△だという。この際に、なぜ〇なのか、△なのかを話し合い、理解するということ。Aさんが△もアリだねと納得できることで、ミッションに対する社内の規格(許容範囲といってもいいかもしれません)ができていくのです。
たとえば、Aさんは営業部門、Bさんは製造部門だったとしましょう。
Aさんが主張していた〇は迅速な納期のこと。Bさんの△は、ていねいに作り上げた製品を出荷するということ。ミッションにしたがってAさんは早く多くの方が喜ぶ顔が見たかった。他方、Bさんは間違いのない製品で、良い暮らしの一助になりたいと考えたのです。メーカーである限り、人々の暮らしを支える製品をつくる。品質が低いものを急いで出荷しては本末転倒だ、とAさんが理解したわけです。
インターナルブランディングでたいせつなことは、定めた御旗(ブランド・アイデンティティーや理念、ミッション)について、社内でいろいろな捉え方、感じ方をすり合わせていくこと。この活動が絶え間なく続いていく組織になれれば、つねに判断基準が御旗に沿うことになり、全社がそれぞれ近い思考を持つことになります。もちろん、狭い規格のなかに全社員がおさまるようにすることが活動の要諦ではありません。多様な考え方があってこそ、すり合わせという作業がはじめて起こるのですから。
経営層が動くと、全社が動く

社内でのすり合わせ作業をどうやって行っていくかは、非常に大きな課題です。
ブランド・アイデンティティーは決めたけれど、ミッションは定まったけれど、そこがゴールになってしまっては、何の意味もありません。すり合わせが行われなければ、ほんとうに何の意味もないのです。
インターナルブランディングの要諦、社内でのすり合わせについては、経営層にひと肌脱いでいただきたい、と強くお伝えしておきます。
社員の輪のなかで、この言葉について自分はこう感じるのだけれど、みんなはどう思う?と問いかけます。正反対の意見が出てきても、そういう捉え方もできるのかと気づき、学んでいく。社員も同じように気づき、学ぶ。そこは、こうあるべきだろうと範囲を超えたと思われる考え方は、納得するまで話し合って解決する。
こういったプロセスを設けることが社内の考え方をまとめ、向かうべき方向に導くことにつながるのです。間違いなくそれは、長い旅。でも、どこかの時点で「ミッションに照らし合わせて考えると」という議論が社内のどこかから聞こえてきます。想像してみてください。きっとそれは会社の明るい未来です。
女性誌の秀逸キャッチコピーから盗む!クリックさせるテクニック
電車の中吊り広告で、女性誌の秀逸なキャッチコピーに思わず感心してしまったことはないだろうか?
「ゆるエレ服」「アガる↑夏靴」「脱げるカラダになる」「艶シンプルでいこう!」などなど。省略形やカタカナ混在、刺激的なもの、よく分からないけどなんとなく惹かれそうなものまで実に多彩。おおよそ男性誌よりずっとキャッチーであり、感覚的だ。
女性に聞いてみると、やはり中吊り広告で気になった雑誌は、店舗で手に取ってみることが多いという。女性誌のキャッチコピーは、まさにターゲットを行動させる力を持っているということになる。
女性誌の秀逸なキャッチコピーのように、ターゲットを行動に至らせるポイントをつかめば、あなたの会社の販促に役立つことは間違いない。マーケティングは、ターゲットを行動させてこそ価値があるのだから。
なぜそれほどまでに女性誌のキャッチコピーは秀逸なのか?
端的な答えは、それで雑誌の売上がまったく変わるから。
1996年をピークに、売上が減少し続ける出版業界。雑誌の売上も年々落ち込んでおり、2013年の5,879億円は2000年に比べると32.4%もの減少となる。この雑誌不況ともいえる状況で、女性誌を出版する各社は驚くような「おまけ」戦術や流行語にもなってしまうような言葉を創造し、いかにターゲットの目を引くかに苦心している。
こういった切実な背景もあり、女性誌の見出しはよりキャッチーに、過激に進化しているというわけだ。
キャッチコピーの秀逸さは、リズム感、キーワードの心地よさにある。
目を引く女性誌のキャッチコピーは、総じて短い。3文字、4文字、6文字といった創作キーワードを中心に据えた組み合わせだ。
「ゆるエレ」は、「ゆるめだけどエレガント」の略。「艶シンプル」は「艶やかだけど、ゴタゴタした感じではない」。「○○○だけど△△△」のように、今まで結びつかなかった「○○○」と「△△△」を結びつける公式が多く、そこから生まれるリズム感を大切にしている。
日本語として正しいかどうかなど、問題ではない。女性たちは感覚的にピンとくるかどうかを重視するのだ。
「○○○だけど△△△」といった意外性を強調したキャッチコピーは、テレビ番組のウケ狙い企画と似ている。
視聴者は「小学生なのに、剣道八段」や「かわいいのに大食い」など、「えっ?」と感じてしまう企画だ大好きだ。女性誌の企画も、「えっ?」と感じさせ、ちょっと誌面をチェックしたいと強力に惹き付けることが大切なのだ。
秀逸なキャッチコピーを作るヒケツ
読者がイメージしやすい、やさしい言葉を使う

瞬間的に理解できるように、言葉はやさしいものであるべきだ。おそらく読者は、コンマ数秒で「好き」「嫌い」を判断してしまう。イメージしにくかったり、何通りにもとれる言葉を使うと、それを頭のなかで咀嚼するだけでコンマ数秒しか使わない判断のための時間をオーバーしてしまう。
キャッチコピーの意味を咀嚼などさせてはいけないのだ。
短く、短く
これも時間と関係する。
読ませるのではなく、見せるということだ。長い一文をじっくり味わいながら読み進むのは、女性誌の中吊り広告をチェックしている私くらいのもので、一般の読者は一瞥するだけだ。瞬間的に理解できるように、短く伝えることが大切だ。
企画内容や商品の本質を伝える
やさしい言葉で短くまとめる。
そんな簡単にできることではないが、それ以上に必要なのは、きちんと伝えるべきコトを伝えるということだ。秀逸なキャッチコピーのサンプルを見る前に、冒頭でいきなりハードルを上げてしまった気がするが、これを外すわけにはいかないので仕方ない。しかし、仕事としてコピーライティングをする以上、必須項目だ。
これまで見てきたように、女性誌のコピーにも「奥深さ」がありました。
「ふつう」だとしか思えないあなたのブランドにも、奥深さを感じてもらえるストーリーを紡ぎましょう。
ブランディングは、ふつうの言葉を「選ばれる言葉」に変える力 です。