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中小企業がAIを使い、経費ゼロでブランディング

中小企業のブランディング完全ガイド|AIと今ある資源で始める実践法

 

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

 

景気が不透明ないま、中小企業にこそ必要なのは「ブランド力」

「安うしときまっせ」では、もう勝てない。
大阪産業局が2025年4月に行った景況調査では、今後景気が「伸びる」と見ている企業はわずか19.9%。
一方で「横ばい」が約半数、「悪くなる」と答えた企業も4社に1社。
つまり多くの中小企業が、「先行きの見通しが立たない」状況に置かれています。

そんななかで求められるのは、「安さ頼み」から抜け出すこと。
限られた資源の中でもしっかり選ばれる会社=「ブランド」のある会社になることです。

本記事では、大阪の中小企業がいまある手持ち資源で始められるブランディングについて、ChatGPTなどの無料ツールも活用しながら、わかりやすく解説します。
今日からでもすぐに取り組めるよう、テンプレートやチェックリストも用意しました。

 

なぜいま、中小企業にブランディングが必要なのか?

「うちは金ないから、宣伝なんてやってられへん」・・・ブランディングなら、やる価値はあります。
ブランディングと聞いて、「それは大企業の話」「うちは普通の町工場やから」と思ったことはありませんか?
でも実は、中小企業こそ「ブランド」をつくるべきなのです。

なぜか?

中小企業は広告費も、マンパワーも限られている。知名度だって、たかだかしれている。
だからこそ、新規の顧客候補に「この会社、信頼できるかも」「なんかええ感じやな」と思われる理由=ブランドがなければ、価格勝負になってしまうから。

ブランドは、毎日のやり取りの「にじみ」からできている

誤解されがちですが、ブランドはロゴやキャッチコピーを据え、きれいなWEBサイトをつくることではありません。

  • 初めての問い合わせにどう返すか
  • 商品やサービスにどんな言葉を添えるか
  • 社員さんたちがどんな態度で顧客と接するか
  • WEBサイトやSNSの言葉づかいはどうか

こうした「日々のコンタクトポイント(接点)※」での積み重ねが、「あの会社、なんか好きやな」という印象=ブランドになっていきます。

つまり、大きな予算をかけなくても、意識と工夫でブランドはつくれる。

ここから先は、そんなブランドをどうやって「自社らしく」つくるかを、5つの視点とAIツールを交えながら紹介していきます。

※コンタクトポイント
顧客と自社が接するあらゆる接点のこと。たとえば、電話対応、WEBサイト、会社案内、SNS、請求書、名刺、事務所など。目にふれる・声を聞く・接する場面はすべて「ブランドの顔」になるという考え方です。

 

自社ブランドをつくる5つの視点【テンプレート付き】

「うちらしさ」を言葉と形にするための軸は、次の5つ。
この章では、それぞれを簡単なテンプレート付きで紹介していきます。紙でもPCでも、形にしながら読み進めてください。

 

① ポジショニング(立ち位置)

うちは何屋で、誰にとって、どう役立つのか?

【テンプレート】
「うちは ○○向けに、△△を通じて、□□な価値を届けている会社です」

例:
「うちは飲食店向けに、手間のかからない業務用食材を通じて、“日替わりメニューが楽に決まる”という価値を届けている会社です」

 

② ペルソナ(顧客のキャラクター)

誰に選ばれたいのか?“一人に絞る”勇気を持とう

【テンプレート】
名前:_____さん(年齢)
職業・役職:__________________
抱えている悩み・課題は?____________
うちの商品・サービスでどう変わる?________

※実在の顧客を思い浮かべて書くと、リアルに思い描けるようになります。見落としがちですが、とてもたいせつなテンプレートで、どんな施策を考えるときも、ペルソナの◯◯さんなら、どう感じてくれるだろうと立ち返ることが、アイデアがブレないようになります。

 

③ ブランドストーリー(なぜ、この会社をやっているのか)

会社の原点に「らしさ」が詰まっている

【テンプレート】
「最初は○○だった。でも、△△な経験をきっかけに□□を目指すようになった」

例:
「最初は町の電気屋だった。でも、大手量販店の進出で経営が厳しくなり、“近所のお年寄りの困りごとを解決する店”として舵を切った」

 

④ トーン&スタイル(伝え方)

言葉・デザインに「らしさ」を込める

  • かっちり丁寧?
  • 親しみやすくフレンドリー?
  • 熱意あふれる情熱タイプ?
  • 職人肌の寡黙系?

SNS、チラシ、WEBサイトなど、すべてのコンタクトポイントで「同じ雰囲気」が感じられるように統一します。

【チェック】
□ 自社の言葉づかいは決まっているか?
□ 社名・商品名・キャッチコピーに統一感があるか?
□ フォントや色、デザインに一貫性があるか?

 

⑤ コンタクトポイント(接点)

お客さんと接する「あらゆる場面」がブランドをつくる

  • 電話応対
  • 見積書・請求書
  • 商品に添えるメッセージ
  • WEBサイトやLINE公式アカウントのトーク画面
  • 事務所の雰囲気

これらすべてが「ブランドの顔」になる場面です。
だからこそ、1つひとつを「うちらしい」に整えていきましょう。

マーケティングやブランディングで重要なのが、「一貫性を保つ」ということ。ある施策では◯◯と伝え、別の施策では△△となっている。これでは社内外で、どれがほんとうの姿なのかがわからなくなってしまいます。
中小企業に限らず、大企業でさえ、この一貫性を保つことは難しく、せっかくの施策が効果を発揮できないのです。

 

無料ツールとAIでコストゼロでもできる!中小企業のブランディング実践法

「うちには専門のデザイナーも、コピーライターもおらへん」
でも大丈夫。今の時代、無料のAIツールやテンプレアプリを使えば、「自社らしさ」は十分カタチにできます。

ここでは、ChatGPTやCanvaなど、誰でも使えるツールを例に、具体的な使い方を紹介します。

 

ChatGPTでつくる「キャッチコピー」と「ブランドメッセージ」

例:タグライン(短いひとこと)を考える

【プロンプト(指示)例】
「中小企業向けに業務効率化をサポートしている会社のキャッチコピーを5つ考えてください。“信頼感”と“親しみやすさ”が伝わるように」

→ 例として出てくるのはこんな感じ:

  • 「明日も安心、うちが支える」
  • 「小さな会社に、大きなチカラを」
  • 「業務のムダ、今日で終わり」

そのなかから、「うちらしい」ものを選ぶか、ちょっと変えて使うだけ、と言いたいところですが、バクっとChatGPTに投げても、「うちらしい」ものは出てきません。これまで考えてきた自社の背景や、顧客にとってのメリット、自社が実践していること、ペルソナなどをヒントに、ていねいに尋ねてみましょう。

ChatGPT

 

Canvaでつくる「統一感のある見た目」

Canvaは、無料で使えるデザインツール。ロゴや名刺、チラシ、SNS画像などがテンプレから簡単に作れます。

【活用TIPS】

  • ブランドカラーを1〜2色決めて、すべてに反映
  • フォント(文字の形)を固定してブレない印象に
  • 無料テンプレから「それっぽく見える」デザインを流用

→ プロじゃなくても、「きっちりしてる会社やな」という印象をつくれます。

Canva

そのほか使える無料ツールも紹介

用途 ツール名 特徴
ロゴ作成 Looka / LogoMakr クリックだけで簡単に生成
フォント選定 Google Fonts 日本語もOK、無料で商用利用可
カラーパレット Coolors ブランドカラーに悩んだときの味方
顧客管理 Notion / Google スプレッドシート 情報を整理して顧客対応の精度UP

ポイントは、「完璧じゃなくてええ。揃ってることがたいせつ」
たとえ手作りでも、言葉と見ため、発信のトーンに一貫性があれば、それが「信頼感」に変わる。
誰もが最初は素人。だからこそ、揃えることを最優先にして、できることから始めましょう。

 

中小企業からよくある質問とその答え【ブランディングQ&A】

Q. ブランディングって、ほんまに売上に直結するん?

すぐに売上にはつながらないかもしれません。
でも、他社との違いをはっきり伝えられるようになれば、「比較されにくくなる」「問い合わせの質が上がる」「値引きせんでも契約になる」という変化がじわじわ起きてきます。ブランディングは、長い期間をかけて取り組んでいくもの。じっくり腰をすえていきましょう。

 

Q. 社員に伝えても、ピンときてない感じが・・・。

ブランドは社長がひとりで考えた方針を「浸透させる」よりも、一緒につくるほうが早いんです。
全員が同じテンプレートを使って、ポジショニングやペルソナを出し合うだけでも、意識がガラッと変わります。

 

Q. 外注せず、自社だけでやっても大丈夫なん?

大丈夫、大丈夫。むしろ最初は「自社の言葉」で考えることに意義があります。もうこれ以上は無理やってなったときに、外部のブレーンに、「これがうちらの軸ですねん」と渡せば、話しは早いし、ブレずに進められるでしょう。

 

今日からできる!中小企業のためのブランディングチェックリスト

「よし、ブランディングやろう」と思っても、いきなり全部やろうとすると手が止まりがち。
まずはこの3つだけでいい。「15分でできる第一歩」をここにまとめました。

ステップ①:自社の「ポジショニング」を1文で書いてみる
「うちは誰に、何を、どうやって届けているのか?」
この1文があるだけで、SNSでも営業でも言葉がブレにくくなります。

【例文テンプレート】

うちは〇〇業界向けに、△△を通じて、□□な価値を届けている会社です。

→ 書いたものをスタッフと共有すれば、認識のズレをなくす会話のきっかけにもなります。

ステップ②:ChatGPTでキャッチコピーやブランド文を出してみる
「いいフレーズが浮かばへん・・・」そんな時の補助輪がAIです。
たとえばこんなふうに入力してみてください👇

【入力例】
「高齢者向けの配食サービスをしている会社のキャッチコピーを考えて。安心感と親しみやすさを出してほしい」

→ 5案くらい出てくるので、そこからピンとくるものを選ぶ or 組み合わせて使うだけ。
「考えすぎて止まる」時間をなくせます。

ステップ③:ホームページ・SNS・名刺を見直してみる
「伝えたいこと、伝わってるか?」を確認するだけでも効果あり。

【確認ポイント】

  • トーン(言葉づかい)は揃っているか?
  • 色やフォントは会社の印象に合っているか?
  • 「誰向けか」がハッキリ伝わる内容になっているか?

→ 小さな修正だけでも、「ちゃんとしてる会社やな」という印象に変わります。

まずは1つだけでもやってみてください。
完璧を目指すのはやめましょう。
上記の3つのうち、「一番手をつけやすそうなもの」から始めてみてください。
それだけで、あなたの会社は「ただの中小企業から、選ばれる会社」に一歩近づきます。

ブランディング

 

安売りせずに選ばれる中小企業になるために、今すぐできること

「ブランド」と聞くと、どこか遠い話に思えるかもしれません。

でも実際にブランドをつくっているのは、毎日の一言、ちょっとした気づかい、スタッフとの会話。
つまり、今のあなたの仕事そのものです。

完璧なロゴも、高価な広告もいりません。
「うちらしさ」を言葉にして、伝えるだけで、お客さんの見る目は変わります。

中小企業だからこそ、「ブランド」で逆転できる。
知名度がない。人手が足りない。予算に限りがある。
だからこそ、伝え方を整えるだけで、強い武器になる。

「この会社、なんか好きやな」
「ちょっと話を聞いてみたい」
そんなふうに選ばれる会社は、派手なことをしてるわけじゃない。
「軸」があって、「ちゃんと伝えてる」だけなんです。

フレイバーズは、そんな中小企業の「らしさ探し」に本気で向き合います。

  • 自社で考える時間がない
  • 社内で話し合っても、なかなか言語化できない
  • 社長ひとりで抱えてしまっている

そんなときこそ、お声がけください。
プロの視点で「御社らしさ、こういうことですね」とヒアリングを重ね、良いところ、他社と差別化できるポイントを整理していきます。

事業を良くするために必要なのは、①正しい方法を見つけること、②どうすれば最短で到達できるかを考えること、③改善しながら、突き進むこと、だと言われます。
その「正しい方法」を一緒に悩んで、一緒に笑って、あなたの会社だけのブランドという形でご提示できれば最高の仕事だと考えています。迷ったときは、ぜひ当社にお問い合わせください。

中小企業のブランディングはなぜ難しい?よくある課題と、成功へつなげる実践ヒント

ブランドって、やっぱりあったほうがいいよね」
「デザイン会社に頼んだけど、なんだかピンとこなかった」
「うちみたいな会社がブランディングなんて、まだ早いかも…」
中小企業の経営者の方々と話していると、こうした声をよく耳にします。
ブランディングは大切だと頭ではわかっていても、いざ実行しようとすると、
・何から始めればいいかわからない
・社内で協力が得られない。
・結局、表面的なロゴやスローガンだけで終わってしまう。
そんな“モヤモヤ”や“手ごたえのなさ”を感じている方も多いのではないでしょうか。

このコラムでは、中小企業にありがちなブランディングの課題を整理し、なぜそれが起きてしまうのか、どうすれば一歩進めるのかを紐解いていきます。

 

それでも、いま中小企業こそブランディングに取り組むべき理由

「中小企業にブランディングなんて本当に必要?」
そんな疑問を持っておられる方に、答えは間違いなくYESです。実は、中小企業のほうがブランディングの成果は出やすいというのが私たちの実感です。その理由としては、

 

1. 意思決定が速く、組織の変化に強い

中小企業は意思決定のスピードが速く、経営者の言葉や方針が現場にすぐ伝わる環境にあります。だからこそ、ブランドの方向性が定まれば、組織が一丸となって動きやすいという強みがあります。

 

2. 顧客との距離が近く、信頼関係を築きやすい

中小企業の多くは、地域密着型やリピート顧客中心のビジネスです。顧客の声をダイレクトに受け取り、それをブランド改善につなげるサイクルを回しやすいのは大企業にはない利点です。

 

3. 人材定着や採用に大きな差がつく

「何のために働くのか」「どんな会社を目指すのか」を明確に伝えられる会社は、社員の定着率が高く、共感でつながる人材採用が可能になります。資金力ではなく、価値観で選ばれる時代において、中小企業こそブランディングの効果が大きく発揮されます。

 

4. 小さな成果が次の変化につながる

中小企業では、たった一つの表現の変化、営業トークの見直し、理念の言語化だけでも、組織全体に大きな影響を与えることができます。この「変化の手応え」を早く感じられるのも魅力です。

 

ブランディングとは、広告のことでも、オシャレなロゴのことでもありません。「この会社は何のために存在しているのか」「何を大切にしているのか」。その「らしさ」を社内全体で共有し、お客様に届けるための営み。上記の理由から考えても、やらない理由はないと断言できます。

中小企業白書・第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組

 

よくある誤解と失敗:なぜブランディングがうまくいかないのか?

ブランディングに取り組もうとすると、つい「見た目」の整備から入ってしまいがちです。ロゴを刷新したり、パンフレットを一新したり。それ自体が悪いわけではありませんが、表層を整えるだけでは、本質的な効果は期待できません。

とくに中小企業の場合、下記のような誤解がブランディングの失敗を引き起こしやすくなります。
・「ブランド=ロゴやデザイン」と思い込んでいる
・広告施策と混同してしまい、短期的な反応を期待してしまう
・現場社員が「なぜこの取組をするのか」を理解していない
つまり、中身の言語化や組織浸透がないまま、「ブランディング風」の見た目だけを整えて終わってしまうのです。

 

中小企業にありがちなブランディングの課題5つ

 

1.「誰に、何を、どう伝えるか」が曖昧

多くの中小企業では、「うちは何屋か」は言えても、「誰に、どんな価値を、どう届けているか」が明確に言語化されていません。たとえば
・ウェブサイトに「お客様第一」「信頼と実績」など、どの会社でも言える言葉が並ぶ
・パンフレットや営業資料に「自社らしさ」よりも業界の一般論が多い
・ターゲットの年齢や業種、課題感が不明確なまま施策を打っている
その結果として、ユーザーに響かず、価格比較や条件比較に埋もれてしまいます。

 

2.社員に共通言語がない(理念・価値観の形骸化)

「経営理念」や「ミッション」は掲げていても、それが現場で語られることはほとんどない。そんな会社も少なくありません。
・入社時に冊子を渡されただけで、普段の会話では理念が出てこない
・「行動指針は?」と聞かれても、社員が答えられない
・上司ごとに指示や価値観が違うので、若手が混乱している
これは、「経営者と社員が見ている景色が違う」状態です。

 

3.外と中で言っていることが違う(言行不一致)

・採用サイトでは「風通しの良い職場」とうたっているが、実際はトップダウンで誰も発言しない
・営業では「ていねいなサポート」を売りにしているが、サポート部署は人手不足で電話にも出られない
・SNSでは「お客様視点」を強調しているのに、実際は納期最優先で対応が雑になっている
このように社外向けの言葉と実態が乖離していると、ブランディングは逆効果に。ブランド価値を下げてしまうブランドマイナスを引き起こすことになりかねません。

 

4.属人的な営業・採用に頼っている

・社長がカリスマ型で、営業も採用も「社長が口説いてくるスタイル」
・顧客の信頼は「◯◯さんだから頼んでいる」という属人的なもの
・マニュアルやトーン設計がなく、担当者ごとに対応のブレが大きい
こうした状態は、担当者が変わるたびに信頼がリセットされるリスクをはらんでいます。

 

5.体制がない、優先度が低い(継続できない)

・ブランディングを「プロジェクト」ではなく「イベント」として扱ってしまう
・忙しくなると、更新や発信が止まる
・「いまは営業が忙しいから」「採用が落ち着いてから」など、後回しの常連
このタイプの企業では、「一度やったから終了」という認識が強く、ブランドが育たないまま放置されがちです。
「うちも、思い当たるところがある」と感じた方は、悲観する必要はありません。課題に気づいた瞬間こそが、ブランディングの出発点です。

 

ブランディングが経営にもたらす5つの価値

 

1.価格競争からの脱却

「安さ」で勝負するのではなく、「選ばれる理由」が明確になれば、価格で比較されにくくなります。ブランドがあれば、価値を感じてもらえるため、値下げ交渉に応じる必要が減り、利益率を維持しやすくなります。

 

2.採用力の強化

理念や社風に共感する人材が集まりやすくなり、離職率も下がります。「この会社で働きたい」と感じる人が集まることで、採用のコストやミスマッチも減少。採用競争の激しい中で、ブランディングは強力な武器になります。

 

3.社員の行動に一貫性が生まれる

ブランディングが定着すると、社員一人ひとりが「うちの会社はこうあるべき」という行動指針を持てるようになります。トップの指示を待たずとも、現場での判断に一貫性が生まれ、組織としてのスピード感と柔軟性が高まります。

 

4.顧客との信頼が深まる

一貫したメッセージや対応を続けることで、「この会社は期待を裏切らない」という安心感につながります。顧客満足度やリピート率が上がり、紹介や口コミによる新規顧客の獲得にもつながります。

 

5.経営者の想いが、会社の軸になる

社長の考え方や信念が、組織のブレない軸として言語化され、社員に共有されることで、社員が「何のために働いているか」を理解しやすくなります。これは、組織の結束力や自走力を高める源になります。

 

解決のヒント:小さく始めて、確実に進める

「ブランディングは大きな投資が必要」と思われがちですが、実際には小さな気づきと実践から始めることで十分に前進できます。
たとえば、次のようなステップから始めてみましょう。

・「自社の良さ・強み」を社員同士で話し合う場を設ける(例:ランチMTG)
・ 社内報や掲示板で「らしさ」に関する発見や事例を共有する
・SNSや会社ブログで「何を大切にしているか」を、具体的なエピソードで伝える
・顧客アンケートやレビューを分析し、「どんな価値を感じてくれているか」を把握する
・ブランドの方向性を1枚のシートにまとめて、社内共有する

ポイントは、完璧を目指さず、社内の会話から「らしさ」を発見すること。まずは小さな実験を繰り返しながら、会社全体でブランドを「育てる」姿勢が大切です。
「ブランディングができる会社」ではなく、「ブランディングに取り組み続けられる会社」を目指しましょう。

 

小さなことを続けるためのヒント集

1.言葉の力を活かす

言葉は文化をつくり、価値観を共有する強力なツールです。中小企業のブランディングにおいても、社員の言動や資料、発信に繰り返し登場する共通のキーワードがあると、一貫性と共感を育てやすくなります。
たとえば、
「うちらしさ」 … 自社の個性や判断基準を柔らかく共有できる言葉。
「らしさが出てたね」 … 社員の行動をブランド視点で承認する一言。
「それ、わたしたちらしい?」 …判断の軸として使える問い。
「私たちは〇〇を大事にしています」 …価値観の宣言文として定番化。
「〇〇さんらしい対応でしたね」 …個の行動とブランドの一致を褒める表現。
「選ばれる理由」 …提案資料や営業トークで繰り返し伝えるフレーズ。

「安心感」「誠実さ」「ていねい」「挑戦」など 、自社らしさを表すキーワードを繰り返し使い込むことで、社内に定着します。
大事なのは、「うまい言葉」よりも「使い続けられる言葉」。社員の口から自然と出るようになった時、ブランディングは根付き始めています。

2.「見つける」ことから始める

社員の発言や顧客の声の中にある「らしさ」を見逃さない。気づいたらすぐにメモする習慣を。

3.記録する仕組みをつくる

「今月のブランドらしい出来事」など、共有フォルダや壁新聞に書き留める場所をつくる。

4.月1でふりかえりをする

「今月、うちらしい行動って何だった?」といった軽い問いでチームMTGを始めてみる。

5.習慣化のタイミングを決める

「毎月第1月曜の朝礼はブランディング話」といったルーティン化で無理なく定着。

6.「できていること」に目を向ける

「うちはまだまだ」と思うより、「これってうちらしいよね」と言える事実を見つけて肯定する。

「続けること」を難しくしない。「らしさ」は日常の中にある。それに気づき、拾い、積み上げていくことが、ブランディングの一歩一歩につながります。

 

はじめの一歩は、「できること」からでいい

ブランディングは、一部の先進的な企業や、大企業のためだけの戦略ではありません。
むしろ、小さな組織だからこそ、社長の言葉がまっすぐ現場に届き、社員の共感と行動変化が早く起こる。それが中小企業の強みです。

大きな投資や完璧な準備は必要ありません。まずは、「うちらしさって、なんだろう?」と問いかけてみること。
一人で答えを出す必要もありません。社員と一緒に言葉にしていくことで、社内に共通の軸が生まれ、少しずつ行動も揃ってきます。
「ブランディングが目的ではなく、会社を良くしたい、その想いを共有したい」。その気持ちさえあれば、今日から始められます。

中小企業向けブランディング手法|成功事例と実践ステップ

 

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

1. なぜ今、中小企業にブランディングが必要なのか?

中小企業にこそ、今「ブランディング手法」が必要とされる理由は明確です。価格競争に巻き込まれ、広告では資本力のある大企業に勝てない――そんな中で選ばれるには、「なぜこの会社なのか」という理由をユーザーに示す必要があります。

製品やサービスだけで差がつきにくい時代。鍵になるのが「ブランド」です。中小企業は経営者の思いや理念を反映しやすく、意思決定も速いため、ブランドの核を定めれば一貫した発信が可能になります。

その価値観を社内に浸透させ、外部にもぶれないメッセージを発信できれば、価格競争から抜け出し、独自のブランド価値で選ばれる企業になれます。

2. よくある誤解:ブランディング=ロゴやデザインではない

よくある誤解のひとつが、「ブランディング=ロゴやデザイン」だという考えです。実際、「ブランディング手法に取り組みたい」と言いながら、まずロゴの刷新やWebサイトのリニューアルから始める経営者は少なくありません。

もちろん見た目は大事ですが、それだけでは本質に届きません。ブランディングの中核は、自社の「らしさ」を明確にし、それを社員と顧客の両方に一貫して伝えること。存在意義、価値観、顧客との関係性――それらを言語化し、日々の行動に落とし込んでこそ、ブランディング手法は機能します。

ロゴやデザインは、その「軸」を支えるツールにすぎません。土台が曖昧なまま見た目だけ整えても、顧客の心には響きません。

3. 中小企業が今すぐ取り入れるべき3つの実践的ブランディング手法

3-1. コアバリューの明文化と社内共有

ブランディング手法の第一歩は、「自社が何のために存在するのか」「どんな価値を大切にしているのか」を明確にすること、つまり“コアバリュー”の明文化です。これを曖昧にしたまま発信を始めても、他社と変わらない言葉が並ぶだけで、顧客の記憶には残りません。

重要なのは、経営者が納得できる言葉で定義すること。そして、それを社員全員に共有すること。社長だけが理解していても意味がありません。現場のスタッフ一人ひとりがその価値観を理解し、行動の軸として使えるようになってはじめて、顧客との接点に一貫性が生まれ、ブランドが育ちはじめます。

 

3-2. ブランディング手法の核心:ペルソナ設計とターゲットメッセージの明確化

「当社は幅広いお客様に対応できます」と言ってしまう企業ほど、結局は誰の心にも残りません。中小企業だからこそ、特定の顧客層に刺さる“ブランディング手法”が必要です。

そのための第一歩が、理想的な顧客像(=ペルソナ)の明確化です。年齢や職業だけでなく、「どんな悩みを持っているのか」「何を重視して選ぶのか」といった感情や価値観まで具体的に描きましょう。

そして、その人に向けて、どんな言葉で、どんなメッセージを伝えるかを決めることで、発信の軸がブレなくなります。

難しく考える必要はありません。今いるお客様の中から典型的な一人を象徴的に設定するだけでも十分です。

結果として、「これは自分のための商品・サービスだ」と感じる瞬間が増え、ブランドへの信頼が自然に積み重なっていきます。

 

3-3. 顧客体験を活かすブランディング手法:CXをブランド資産に変える

商品やサービスの品質だけでなく、問い合わせ対応や納品、アフターフォローといった“顧客体験(CX)”全体をブランディング手法に組み込むことが、いまや不可欠です。

たとえば、返答の速さ、スタッフの振る舞い、トラブル時の対応――こうした小さな接点こそが、ブランドの印象を決定づけます。一貫して「自社らしさ」を伝えられるかどうかで、顧客はリピートするか、他社に乗り換えるかを判断します。

このCXを社内で言語化し、マニュアル化して共有すれば、誰が対応してもブランド品質がブレなくなります。属人化を防ぎ、ブランディングの効果を持続・拡大するための重要な手法です。

4. 成功事例:地方の中小企業がブランディングで勝ち残ったケース

事例①:老舗の製造業が若者を惹きつけるブランドに変貌

創業70年の金属加工会社は、技術力はあるのに、価格競争に疲弊していた。社長が「職人の誇りと、モノづくりの美学」を軸にブランド再構築を決意。

製品にストーリー性を持たせ、SNSで発信。さらに若手社員を「語り部」としてメディアに登場させた結果、新卒採用が過去最多を記録し、地元紙で話題に。新規顧客も開拓できるようになり、価格ではなく「想い」で選ばれる企業へとシフトしはじめています。

 

事例②:地域密着型の工務店がリブランディングで単価アップ

低価格帯リフォームで顧客を集めていた工務店は、やはり利益が出ず経営は苦しい状態に。そこで「家族の人生に寄り添う家づくり」を掲げ、ペルソナを40代共働き夫婦に設定。

施工中のフォロー体制やアフターサポートの流れを再構築し、全社員が「家守り」という共通の意識を持つよう教育を強化。その結果、受注単価は1.8倍に。紹介顧客も増え、広告費を抑えられる結果に。

 

事例③:地場の印刷会社がBtoB特化のブランドで受注拡大

下請け中心の体質から脱却したいと考えていた中規模の印刷会社が、「中小企業の広報を支援する印刷会社」というブランドポジションを明確に打ち出しました。

販促提案やデザインディレクションも含めた「提案型営業」に切り替え、業種ごとの専用パッケージを整備。下請けからの脱却が進み、顧客単価は2.3倍に上昇。さらに、新たな次の一手を検討中。

経済産業省「ミラサポ」ブランディング事例

5. 今すぐ始めるためのステップとポイント

ステップ①:社内対話で「自社らしさ」を言語化する

ワークショップ形式で、社員から「この会社の好きなところ」「誇れる点」を集めてみましょう。経営者の視点と現場の声を重ねることで、リアルでブレないコアバリューが見えてきます。

 

ステップ②:コンタクトポイント(顧客との接点)ごとに「一貫性」があるか点検

営業・接客・WEB・SNS・アフターサポートなど、顧客とのあらゆる接点を洗い出し、「言っていることと、やっていることが一致しているか」を確認。ここにズレがあると、ブランドは育ちません。

 

ステップ③:必要に応じて外部の力を借りる

ブランディングは専門的な視点も必要です。言語化やデザイン、マーケティング戦略などは、プロの支援を受けることで、スピードも精度も上がります。一方で、経営者自身が軸を持ち続けることも最大のポイントです。

信頼の積み重ねが、すべてのブランディング手法の起点になる

選ぶ理由のあるブランドへの図ブランドとは「約束」です。そして、その約束を日々の顧客接点で守り抜くことこそが、ブランディングの核心です。

もう一つ忘れてはならないのが、すでに自社を選んでくれている顧客の存在。なぜ選ばれているのか、どんな点に共感されているのかを見直すことは、自社の「らしさ」――つまりブランドの核を掘り起こす手がかりになります。

普段あたり前にやっている行動や文化の中に、実は強力なブランディング手法のヒントが眠っています。それを言語化し、軸として定着・発信することが、信頼を積み上げ、他社と差別化されたブランドを築く最短ルートです。

まずは、今いる顧客に「自社の魅力は何か?」を聞くことから始めてみてください。

ブランディング
ブランディングに関するコラム

ブランディングの手法で、よくある質問(Q&A)

Q. ブランディングに取り組むと、売上はすぐに伸びますか?

A. 短期的な売上増よりも「選ばれる理由」を積み重ねていくなかで、価格競争に巻き込まれない受注や、リピート率の向上につながるのがブランディングの本質です。ブランディングは売れ続けるしくみをつくることと称されます。今まで培ってきた売上の土壌はすぐにできたものではないはず。長い目で考えてください。

Q. 社内の理解が薄い場合、どう進めればいいですか?

A. 小さな成功体験を共有することが効果的です。例えば「SNSで反応があった」「お客様から共感の声をもらった」といった具体例をもとに、社員の共感と行動を少しずつ引き出していきましょう。
経営者がブレないこと。その本気度を社内に常に共有すること。ことあるごとに言葉にして伝え続けることが徐々に社内からの賛同を得るための方法です。

Q. 競合が多い業界で差別化は本当に可能?

A. 可能です。「何を売るか」より「なぜ売るのか」「どう売るのか」でブランドは差別化できます。競合が価格で勝負しているなら、そこから外れた独自の土俵をつくるのがブランディングの強みです。

中小企業のためのWEBサイト改善術:成果へつなげる5ステップ

中小企業にとってWEBサイトは営業や採用などにおいて、知名度の高い大企業よりもずっと重要な役割を果たす「顔」のような存在。しかし、社内に専門のWEB担当者がいない、更新や改善のノウハウが不足しているという理由から、改善が後回しになってしまっているケースも少なくありません。この記事では、「感覚で気づける」ことから始めて、「成果につながる」までの実践的な改善の流れを5つのステップで紹介します。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


 

1. まずは「なんとなく」でOK:感覚的に改善ポイントを挙げてみよう

WEBサイトの改善というと、「データに基づいた分析が必要」「専門家の意見が不可欠」と思われがちですが、最初の一歩はもっとシンプルで構いません。まずは、自分がそのサイトを使って「なんとなく使いづらい」「読みにくい」「迷う」と感じるポイントをリストアップすることから始めましょう。

例としては以下のような視点があります

  • スマホで見たときに文字が小さすぎる
  • メニューの場所がわかりにくい
  • 問い合わせフォームが長すぎて入力する気が失せる
  • 古い情報が載ったままになっている

また、自分ひとりの視点だけでなく、家族や社内の同僚、友人などに「このサイトどう思う?」と見てもらうことも大切です。とくにWEBに詳しくない人の意見は、実際のユーザーに近い視点での気づきを与えてくれるから。
そして、この段階で「自社サイトの目的」を再確認しておくことも重要です。問い合わせを増やしたいのか、採用エントリーを増やしたいのか。目的がはっきりすれば、どこを重点的に見直すべきか、最終目的のためにこの部分はどうあるべきなのか、あるいは重箱の隅を突くような改善は今は必要ないのかが明確になります。

 

2. 仮説を立てて小さく改善:改善案を実行する

改善ポイントが挙がったら、それぞれについて「こうすれば良くなるのでは?」という仮説を立てて、小さく改善してみましょう。完璧なデザインや文章をいきなり作ろうとする必要はありません。大切なのは、スピーディに、そして現実的な範囲で改善を進めることです。

例えば、以下のような施策

  • 問い合わせボタンの色を目立つ色に変える
  • トップページに問い合わせへの導線を明記する
  • スマホ用のフォントサイズを調整する
  • フォームの入力項目を3つに減らす

改善を実施する前には、必ず現在の状態を記録しておきましょう(スクリーンショットやメモなど)。こうしておくことで、後で「改善の前後でどう変わったか」を比較しやすくなります。
CMS(WordPressなど)を使っていれば、ある程度の編集は自社内でも可能です。外部に依頼する場合も、ピンポイントで「ここだけ変えたい」という要望が出せれば、コストも抑えられます。

 

3. Googleアナリティクスで結果をチェックする

改善を行ったら、最低でも2週間〜1ヵ月ほどは様子を見ましょう。そのうえで、Googleアナリティクス(GA4)を使ってアクセス状況を確認します。

見るべきポイントは以下のようなものです

  • セッション数:訪問者数に変化はあるか
  • 平均エンゲージメント時間:サイト内での滞在時間が増えたか
  • 離脱率:特定ページからの離脱が減ったか
  • コンバージョン数:問い合わせや資料請求が増えたか

たとえば「フォームを簡略化したらコンバージョンが増えた」など、仮説に対する結果が数値として見えてきます。もし数字に変化がない場合でも、それは「効果がなかった」という大事な情報です。次の施策を考えるヒントになります。

セッション数
ユーザーがWebサイトに訪問してから離脱するまでの一連の行動を「1セッション」としてカウントします。ページを複数見ても、離脱するまでが1回のセッションとされます。

平均エンゲージメント時間
訪問者がWebサイト上で「実際にアクションをしていた時間」の平均値です。単に滞在しているだけでなく、スクロールやクリックなど、積極的に見ていた時間を示します。

離脱率
ページを最後に見てサイトを離れたユーザーの割合です。特定のページで多ければ、そこに問題がある可能性があります。

コンバージョン数
訪問者がWebサイト上で目的の行動(例:問い合わせフォーム送信、資料請求、購入など)を完了した回数です。

 

4. なぜその結果になったのかを考える

数字を見て終わり、ではありません。最も重要なのは、「なぜその結果になったのか?」を自分なりに考えることです。

たとえば

  • CTAボタンを赤に変えた → クリック率が上がった → ボタンがより目立つようになったから?
  • フォームを短くした → コンバージョン率は変わらなかった → 実は入力項目ではなく、誘導文が問題だった?

このように、うまくいった場合でも、そうでなかった場合でも「仮説と結果のズレ」を見つけて言語化するクセをつけると、次の改善の精度が上がります。
また、成功した施策は再現性のある手法として記録しておきましょう。今後、他のページや別のプロジェクトにも応用できます。

CTA(Call to Action)
WEBサイト上でユーザーに特定の行動を促すボタンやリンク、テキストのこと。たとえば「お問い合わせはこちら」「資料をダウンロード」「無料で試してみる」などがCTAです。ユーザーのアクションを引き出し、コンバージョンにつなげる重要な要素です。

 

5. ヒートマップで「もっと伝わる」改善を

Googleアナリティクスでは「何人が見たか」は分かっても、「どう見たか」はわかりません。そこで活用したいのが、ヒートマップツールです。

ヒートマップを使うと

  • ページ内のどこが注目されているか(クリックやスクロールの位置)
  • どのコンテンツが読まれていないか(すぐにスクロールされている)
  • ユーザーの視線が止まるポイント

などが一目でわかります。
たとえば、「重要な説明文が下の方にあって読まれていない」なら、順番を入れ替えるべきですし、「ボタンの直前で多くのユーザーが離脱している」なら、説明が長すぎるか、信頼感に欠ける表現になっているのかもしれません。
無料で使えるツールもあるので、まずは1〜2ページから導入して、ユーザーの動きを「可視化」することから始めてみてください。

ヒートマップツール(マイクロソフトClarify)

 

よくある失敗例:リニューアルだけして満足してしまう

中小企業のWEB改善でよくある失敗のひとつが、「サイトを一新したことで満足してしまう」ことです。見た目を整え、最新のデザインにしたことで「これで完成」と思ってしまい、その後の検証や改善が行われないケースは少なくありません。
リニューアルはあくまでスタート地点であり、本当に大切なのはその後の数値の変化を見て、仮説を立てて再調整する作業です。新しいデザインが目的を達成しているかどうかは、ユーザーの反応やデータを見なければわかりません。
「作って終わり」にしないためには、公開後の動きを3ヵ月単位で振り返るルールを設けたり、改善のための担当者やWEB改善会議を月1回でも設定することが有効です。

馴れない業務を片手間に実施するのは、時間も労力も想像以上にかかります。

とくに中小企業では担当者が兼任であることがほとんど。調査・実装・検証までをすべて自社で完結させるのは現実的に難しいでしょう。
そうしたときには、一部を外注し、専門家の視点を借りながら自社でできる範囲を進めるという方法が、結果的にもっともコストパフォーマンスが良いやり方になります。
外注=丸投げではなく、「方向性の確認」「改善箇所の優先度づけ」だけでもプロに頼ることで、無駄な工数や迷走を防げます。

 

中小企業が自力でできるWEBサイト改善の進め方

中小企業にとって、WEBサイト改善は「特別な知識」や「高額な外注費」がなくても、感覚的な気づきからスタートし、数値やツールを使って着実に成果へつなげることができます。

重要なのは以下の5ステップを、無理のない範囲で繰り返すこと

  1. まずは感覚的に「使いにくい」と感じる部分を洗い出す
  2. 仮説を立てて小さく改善してみる
  3. Googleアナリティクスで数字の変化をチェック
  4. なぜ変化が起きたのかを自分なりに考察する
  5. ヒートマップでユーザー行動を可視化し、さらに精度の高い改善へ

このように、「感覚 → 実行 → 分析 →再改善」の流れを継続することで、中小企業でも自社WEBサイトを成果につながる営業ツールに進化させることが可能です。
初めから完璧を目指す必要はありません。むしろ「まず動いてみる」ことが、改善への第一歩です。

難解そうなWEBサイトの改善について、ご相談を承ります

中小企業のための製品ブランディング入門

中小企業、とくに製造業では「良いモノを作れば売れる」という考えが根強く残っています。製品の品質やスペックを高めることに全力を注ぐ一方で、「自社の製品が顧客にとって何をもたらすのか」という視点を持つことを忘れてしまいがちです。
しかし、どれだけ高性能な製品でも、顧客がその価値を実感できなければ、選ばれることはありません。本コラムでは中小企業の製品ブランディングをテーマに、なぜ自社製品の「意味」や「価値」を明確に伝えることが重要なのか、そしてそれをどう実践するかについて具体的に解説していきます。製造業の中小企業だからこそできる、本質的なブランディングの方法をお伝えしていきます。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


 

なぜ中小企業に製品ブランディングが必要なのか

大企業とは異なり、中小企業は宣伝費や知名度において不利な立場にあります。こうした状況であっても他社製品との差別化を図り、永続的に事業を発展させていかねばなりません。そのためには、製品そのものに「ストーリー」や「信念」を乗せて発信する必要があるのです。
つまり、「何を作っているのか」ではなく、「なぜそれを作るのか」「どんな価値を届けたいのか」という部分を伝えるのが、製品ブランディングの本質です。
製品ブランディングを強化することで、価格競争に巻き込まれるリスクも減らせ、顧客は単なる「モノ」としてではなく、「このブランドだから買いたい」と感じるように。これは中小企業にとって非常に大きな武器となることでしょう。

 

中小企業が陥りがちなブランディングの誤解

「ブランディング=おしゃれなロゴやパッケージデザイン」と誤解しているケースが少なくありません。もちろんビジュアル面も重要ですが、それはあくまで表層部分。根本は「自社製品が誰にとってどんな意味を持つのか」を明確にし、それを一貫して伝えることにあります。
また、すべてを完璧に整えようとしてスタートが遅れるのもよくある問題です。中小企業に求められるのは、まず自分たちの強みや思いを素直に言葉にし、それを市場にぶつけてみる行動力です。
短いサイクルでトライ&エラーを繰り返せるのが中小企業の強み。経営者が陣頭指揮をとり、新たな局面を模索することを始めましょう。

 

中小企業が製品ブランディングを始めるためのステップ

ここからは具体的なステップについて見ていきましょう。

 

1.ターゲットを明確にする

誰に向けて製品を届けたいのかをはっきりさせます。どのような人が自社製品の導入を検討してくれそうか。
年齢、性別、ライフスタイル、価値観など、できるだけ具体的にイメージします。ここでのポイントは、狭くても良いのでターゲットを明確に絞り込むこと。ターゲットを絞り込んだとしても、自社の売上は大企業ほど大きなものでなくても十分なはず。中小企業だからこそ、広く浅くではなく、狭く深くターゲットを絞り込むことが結果的に効果的なものになります。

 

2.自社の「強み」と「想い」を言語化する

他社と比べて自社製品は何が違うのか、なぜそれを作っているのか、なぜ顧客に届けたいのか。これらをシンプルな言葉でまとめることが大切です。特別な表現はいりません。素直な言葉こそが中小企業の強みになります。
また、長く購買してくれている現在の顧客に、「なぜ自社から買ってくれているのか」を聞いてみましょう。その理由がわかれば、まだ見ぬ顧客にも刺さるポイントが浮かび上がってきます。

 

3.ブランドメッセージを設計する

ターゲットに対して、自社製品がどんな価値を提供できるのかを一言で表せるメッセージを作りましょう。このメッセージは、コンタクトポイント(自社が顧客と接する場所、ツール)WEBサイト、SNS、パンフレット、名刺、事務所などすべての発信活動の軸になります。

 

4.一貫した発信を続ける

ブランドメッセージに沿った情報発信を地道に続けることが重要です。SNSなら、製品開発の裏話、スタッフの想い、お客様の声など、できる限りリアルな情報を発信しましょう。事例は、導入を検討している顧客候補の背中を強く押してくれます。すぐに大きな反響を期待してはいけません。粘り強く発信を積み重ねていくと、ある地点から乗数的に影響力を持つことに気づくでしょう。

 

中小企業ならではの製品ブランディング事例

例えば、地元の素材にこだわった食品メーカーが「地元の美味しさを全国に届けたい」というメッセージを掲げ、農家との共同開発ストーリーを発信し続けた結果、地域ブランドとしての地位を確立した例があります。
また、小さな工房が「一つひとつ手作業で仕上げる丁寧なモノづくり」を前面に出し、量産品との差別化に成功したケースもあります。
いずれも、特別な広告費をかけたわけではなく、「ほかにはない自分たちの強みを正直に伝え続けた」ことが成功要因です。

 

製品ブランディングを継続するために

製品ブランディングは一度作って終わりではありません。市場や顧客の変化に合わせて、伝え方を見直したり、新たな価値を提案したりする柔軟さも必要です。小回りが利くのは中小企業の大きな強み。大企業にできないスピード感で変化に対応していきましょう。
また、社員全員がブランドの考え方を共有することも大切です。経営者だけが意識しても、現場がバラバラではブランドイメージは伝わりません。社内ミーティングや勉強会を通じて、製品ブランディングに対する共通認識を持つことをおすすめします。

 

中小企業だからこそできる、強力な製品ブランディングを

製品ブランディングは単なるマーケティングテクニックではなく、企業の存在意義そのものを市場に伝える行為です。限られたリソースでも、強いブランドを築くことは可能です。自社の強みと想いを明確にし、それを一貫して発信し続けることで、価格競争に巻き込まれず、ファンを増やすことができます。
今日からできる小さな一歩として、自社の製品について「誰に、どんな価値を、どう伝えたいのか」を整理してみてください。中小企業だからこそできる製品ブランディングで、未来を切り開いていきましょう。

中小企業が採用ブランディングで成功するための基本戦略

「求人を出しても応募がこない」
「ようやく面接まで進んでも辞退される」・・・

そんな悩みを抱える中小企業が急増しています。人手不足が深刻化するなか、新規事業の立ち上げすら見送らざるを得ないケースも少なくありません。

この状況を打開するカギが、「採用ブランディング」です。
これからの採用は、「人を集める」のではなく、「選ばれる企業になる」ことが本質。そのためには、自社の魅力を明確にし、言葉と形で伝える準備が必要です。

ただし、ここでいうブランディングは、ロゴやデザインを整えることではありません。
たいせつなのは、「なぜ、今いる社員たちはこの会社を選んだのか?」という問いに向き合い、その答えを採用のメッセージに変えていくことです。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


 

ブランディングは社内の声から生まれる-でも、独りでは掘り出せるものではない

採用ブランディングで最も信頼できる材料は、すでに会社の中にあります。それは、今働いている社員たちが感じている「この会社の良いところ」です。これを掘り起こし、言語化し、求職者に伝える。それが中小企業にとって最も効果的で、再現性のあるブランディングのやり方です。

重要なのは「再現性」です。いま在籍している社員たちは、何らかの理由でこの会社に定着しています。その理由には、これから入社する人にも響く「共感の種」があるはず。だからこそ、それをうまく言葉に変えて伝えることで、「この会社、なんかいいかも」と感じる人が現れてくれます。

ただし、ここにひとつ大きな課題があります。
それは、経営者が社員に直接ヒアリングしても、本音を引き出すのは難しいということ。どれだけオープンな社風でも、社員はどうしても忖度してしまいます。「ここが良い」「ここは微妙」という本音を引き出すには、第三者の視点やファシリテーションが欠かせません。


 

「社外の聞き手」だからこそ、本音が出てくる

社員のリアルな声を引き出すには、第三者の存在が欠かせません。社内の人間関係が影響しない「外の人」が話を聞くことで、社員は忖度なしで本音を話しやすくなります。

たとえば、採用ブランディングの一環として外部にヒアリングやインタビューを依頼すれば、社員の言葉から会社の“本当の魅力”が見えてきます。経験ある聞き手であれば、単なる印象論ではなく、言語化されていない価値観や空気感を言葉にしていくことも可能です。

実際、私たちがインタビューを行った中小企業では、こんな声が出てきました。

「正直、最初は待遇よりも人の良さで決めた」
「決め手は社長が面接で家族の話を聞いてくれたこと」
「大企業では味わえない“自分ごと感”があるのが魅力」

こうした言葉は、社長の前ではなかなか出てこないものですが、まさにその企業らしさがにじみ出た「選ばれる理由」です。求職者にとっても強く響くメッセージになります。


 

「見つけた強み」を育てるのは、経営者の仕事

採用ブランディングの図採用ブランディングの図社員の声から見えてくる自社の魅力。
それは、他社にはない「選ばれる理由」の原石です。

たとえば、

「小さい会社だけど、一人ひとりが主役になれる」
「上下関係がフラットで話しやすい雰囲気がある」
「社長が現場に顔を出してくれるのが安心感につながっている」

こうした声は、単なる満足度ではありません。むしろ、「ブランドの種」です。そして、その種をどう育て、どう磨いていくかは、まさに経営者の役割です。

たとえば「距離の近さ」が強みなら、雑談やミニミーティングを制度化して文化として根づかせる。「挑戦できる風土」が評価されているなら、小さなトライを応援する仕組みをつくる。
こうして“良さ”を仕組みに変えることで、社内に根づき、外からも見えるようになっていきます。

採用ブランディングとは、表面的なアピールではなく、内側からにじみ出る魅力を整えて、伝わる形にすること。だからこそ、社員の声を聞くだけでは終わりません。その声に応え、未来につなげていく行動こそが、採用力を本物に変えていくのです。


 

中堅企業の採用ブランディング成功事例とその後の課題対応

当社クライアントの中堅企業が採用ブランディングを実施、それまで少なかった応募者数が増加し、採用サイトをリニューアルした翌年には求人枠をすべて充足できるまでになりました。加えて、応募者の質も向上することにもつながり、社風に憧れを持ち、より高いスキルを持った人材を採用できるようになった点も大きな成果でした。こうした実績は、採用ブランディングによって企業の魅力が適切に伝わり、求職者とのマッチングが改善された結果といえます。

成果として見られた変化:

・応募者数の大幅な増加
・採用目標の早期達成
・応募者の質の向上(スキル・志向の両面)

一方で、採用活動の競争が年々厳しくなるなか、新たな課題も浮かび上がります。とくに、大手企業から内定を受けた学生による内定辞退が相次ぐようになり、せっかく確保した優秀な人材の取りこぼしが増えてしまったのです。これは知名度の差や安定志向が背景にあり、中堅企業にとっては乗り越えるべき大きなハードルです。

新たに直面した課題:

・内定辞退の増加(特に大手内定者)
・企業の知名度や安定性への懸念
・入社意思決定への影響

この課題に対応するため、採用サイトの再リニューアルではブランディングをさらに強化。「大手よりも活躍の舞台が大きい」「若手が早くから裁量を持てる」といったメッセージを前面に打ち出し、企業としての価値や成長機会を明確に伝える工夫を施しました。

再リニューアル時に行った施策:

・メッセージ性を強化(活躍機会・裁量の早期付与を訴求)
・求職者視点でのコンテンツ設計
・ブランディング要素の再整理

その結果、内定辞退の割合は減少し一定数の質の高い応募者を安定して確保できる状況に改善しています。このように、採用ブランディングは一度きりではなく、市場環境に合わせて柔軟に進化させていくことが、採用活動を成功に導くカギとなります。

地域で活躍する中小企業の採用と定着 成功事例集(厚生労働省)


 

「続けるブランディング」が、採用の質を底上げする

採用ブランディングは、1回やって終わりの「施策」ではありません。
むしろ、“企業文化の育成そのもの”です。日々の仕事と同じように、継続して取り組んでこそ、本当の効果が見えてきます。

せっかく社員の声から「うちの良さ」が見えてきても、それを放置していては意味がありません。まずは、年に1〜2回でもいいので、定期的に社員インタビューや価値観の棚卸しを行う仕組みを作りましょう。
外部のパートナーと一緒に行えば、より客観的な視点で社内の変化を捉えられます。

そして見えてきた魅力は、採用コンテンツに反映していきます。
ホームページや採用ページ、SNS、会社説明会など、あらゆる接点で一貫性を持って伝えることが、「なんとなく応募」ではなく「ここで働きたい」という共感に変わっていきます。

さらに見逃せないのは、ブランディングの効果が“社外”だけにとどまらないこと。
社員が「うちの会社って、意外といいな」と再確認する機会にもなり、エンゲージメントが高まります。結果として離職も防げ、自然と友人や知人にも勧めたくなる。そうしてリファラル採用が生まれ、また新しい“共感できる仲間”が集まってくる。

継続的な採用ブランディングは、単なる採用活動ではありません。
人が集まり、育ち、定着し、つながっていく——中小企業の人材戦略そのものの土台になるのです。


 

「見つけた強み」を育て続ける会社が、人から選ばれる

採用に悩む中小企業は少なくありません。でも、その答えは外にはありません。
今いる社員たちが日々感じている「うちの会社、けっこういいじゃん」という実感こそ、最大の武器です。

その声を、外部の視点も借りながら丁寧にすくい上げ、言葉にして伝えていく。
そして経営者がその強みを信じ、育てる姿勢を持ち続けることで、会社は着実に変わっていきます。

「この会社に入れたらいいな」ではなく、
「ここで働きたい」と心から思ってもらえる場所へ。

採用ブランディングは、派手な施策ではなく、日々の積み重ねです。
けれどそれは、確実に“選ばれる企業”への道をつくっていく力になる。

今、手の中にある小さな強みに気づき、育てていくこと。
そこから、採用も組織も、きっと変わっていきます。

採用サイト制作
採用サイト戦略の立て方

中小企業の業績を上向かせる、ブランディングの力

中小企業を対象とした景況調査の結果、値上げができている会社は業績が上向き傾向にあるとのこと(大阪府中小企業家同友会調べ)。わかってはいるものの、顧客が離れてしまうのではといった怖れも含め、値上げに踏み切ることをかんたんに決断できるものではありません。
値上げは、顧客に受け入れざるを得ないなと感じさせるだけの、他社にはない優位性やブランド力を持つ企業にのみ許されるものです。それが中小企業でも持てるのか。そこが経営者すべてが憂慮するポイントでしょう。
今回のコラムは、賃上げや原料費の高騰、燃料費の上昇などによる環境の変化を乗り切るためには、自社の優位性を振り返り、ブランド力を高めなければいけないという主旨になります。うちには目立った優位性などないから・・・と感じた方でも、大丈夫です。業績を改善させ、中長期的に胸を張って事業を進められる体制を作っていきましょう。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

ブランド力が価格決定権を生む

中小といえども、ブランド力がある企業は単に商品やサービスを提供するだけでなく、「この会社だから買いたい」「このブランドなら信頼できる」 という付加価値を顧客に感じさせることができます。これは、価格決定権を企業側が握ることにつながり、値上げをしても顧客が納得しやすくなる要因となります。

では、中小企業がブランド力を高め、「値上げしても選ばれる企業」になるためには、どのような取り組みを行うべきでしょうか?

 

1. 自社の強みを明確に

ブランディングの第一歩は、「自社の強みは何か?」を明確にすること。例えば、以下のような視点で考えてみましょう。

  • 技術力・専門性:他社にはない独自の技術やノウハウ
  • 品質・こだわり:素材や製造工程での工夫
  • 顧客対応:御社が顧客に提供している価値
  • 評価:顧客が他社ではなく、御社から購入している理由
  • ストーリー性:創業の背景や理念、社長・社員の想い

「うちは〇〇だから選ばれている」と言えるポイント。それがブランドの核となります。

 

2. 価格競争からの脱却:付加価値の提供

値上げが難しいのは、「価格以外の差別化ポイントが伝わっていない」からかもしれません。単なる機能やスペックではなく、「顧客にとってのメリット」 を強く打ち出すことで、価格以上の価値を感じてもらえる可能性があります。

例えば、以下のような付加価値を提供できるか検討しましょう。

  • 長期保証やアフターサービスの充実
  • 特定の業界・顧客に特化した専門性の高さ
  • 環境に配慮したエコな製品やSDGsへの取り組み
  • 地域密着型のサポートや関係性の深さ

価格だけでなく、「この会社だからお願いしたい」と感じさせる付加価値を持つことで、値上げを受け入れてもらいやすくなります。

 

3. 一貫性のあるブランドイメージに

ブランドは、一貫したメッセージとビジュアルによって形成されます。マーケティングやブランディングにおいて、最も注意しなければいけないのがこの一貫性です。もし、社内のあちこちで一貫性のないコミュニケーションが社外とやりとりされれば、それだけで発しているメッセージとのさが目につき、信頼は薄らいでしまいます。
一貫性の維持を担うのは経営者。常に社内に対して、ブランドメッセージを伝え、啓蒙していくことが必須条件です。
具体的には、企業ロゴ、Webサイト、SNS、パンフレット、メール対応から発せられるメッセージのすべてが統一されたブランドイメージを持つことです。

  • 視覚的統一:ロゴ、カラー、フォント、デザインの統一
  • メッセージの統一:「何を大切にしている会社か?」が一目で伝わる発信
  • トーン&マナーの統一:顧客対応の言葉遣いや雰囲気の一貫性
  • 社員から発するメッセージ、サービスでの一貫性

「なんとなく安定感がある」「なんとなく安心できる」と思われる企業は、ブランド力がある企業。この「なんとなく」を意図的に作り出すことが重要なのです。

 

4. 顧客との信頼関係を強化する

ブランド力の本質は、顧客との信頼関係にあります。顧客の声に耳を傾け、誠実な対応を続けることで、自然とファンが増え、口コミやリピート購入につながります。

  • 購入後のフォローを徹底する(アフターフォローの連絡やサポート)
  • 顧客の声を活かす(レビューを収集し、改善に活用)
  • リピーターを大切にする(特典やイベントで関係を強化)

「この会社の商品なら間違いない」と思われるようになれば、多少の値上げがあっても顧客は離れません。

 

5. 専門性の高さを訴求する

ブランドの信頼性を確立するために、高い専門性があることは競合他社との差別化ポイントとして重要な要素です。

専門知識や業界の最新情報を発信することによって、顧客候補に「この分野のプロフェッショナル」と認識されやすくなります。

方法は業界によって異なりますが、専門コラムやセミナー、SNSなどを使った情報提供を継続すると、少しずつ注目されるようになります。たとえば加工業、メーカーなどであれば、保有する工作機械の紹介は技術者同士の共通言語であり、その会社にどの程度のレベルがあるかよくわかる指標にもなるでしょう。

ペルソナを設定し、理想的な顧客の分析を行う

ブランディングの成功は、適切なターゲットに向けた訴求が不可欠になります。そのために重要なのが「ペルソナ設定」と「ターゲット分析」。ペルソナとは、理想的な(今まで取引しているなかで、多数を占めるモデルでも可)顧客像を具体的に描いた架空の人物モデルのことで、年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観(自社の事業領域に関する)などを詳細に設定します。

あえてペルソナという「個」に絞り込み、明確にすることで、顧客層のニーズや課題を深く理解し、それに沿ったマーケティング戦略を立てることができるようになります。例えば、ターゲットが忙しいビジネスパーソンであれば、自社製品やサービスを短時間で理解できるコンテンツになど、効果的なアプローチにつながります。

また、ターゲット分析を行うことによって、どの市場に強いニーズがあるのか、どのチャンネルを活用すればリーチしやすいのかも把握できます。SNSの使用傾向や購買行動データを分析し、ターゲットに合わせたメッセージを届けることで、ブランドの認知度と信頼度が向上します。

ペルソナ設定とターゲット分析を適切に行うことで、より効果的なブランディングが可能となり、競争の激しい市場でも差別化されたポジションを築くことができるのです。

ブランド力が中小企業の未来を左右する

値上げを成功させるためには、単に価格を上げるのではなく、顧客に納得感を持たせるブランド力を磨くことが不可欠。これまでお伝えしてきたことをもういちどまとめておきます。

  • 自社の強みを明確にし、付加価値を提供する
  • 一貫性のあるブランドイメージを作る
  • 顧客との信頼関係を深める

このブランディング、大企業ほど実施は容易ではありません。なぜなら、組織が大きい分社内に浸透させるのに時間と手間がかかるから。ただ、現状を考えると値上げに踏み切れているのは、ほとんどが大企業です。彼らはブランディングを意識している、いないに関わらず、これまでに蓄積してきた資産(=顧客からの信頼)があるので値上げができています。

こんどは中小企業でも価格転嫁を含めた値上げを実施するために、価格競争に巻き込まれない戦略に切り替えるために、自社の優位点を振り返ることからはじめる。ブランディングは長期的な投資です。すぐに売上が向上するわけではありませんが、中長期的な視点、つまり自社を継続させようと考えた場合に非常に重要な取り組みになります。少し取り組んで効果が現れないからといって、やめてしまったり、路線を変更してしまったりすることは厳禁です。つねに訴求に一貫性を保ちながら、少しずつ大きな負担にならないような取り組みを積み上げていくイメージを心がけてください。

優位点の見つけ方、ブランディングの進め方については、社内だけで進めるのは自社を知りすぎているために、難しいことがあります。あえて業界に詳しくない外部の目を入れることが課題解決の近道になりますので、お気軽にご相談いただければ、アドバイスをさしあげます。

ブランディングについて

中小企業のブランディングとは?成功させる5つのメリットと実践方法

中小企業の経営者

コラムの冒頭ではありますが、中小企業こそブランディングの成果が出やすい ── このことを、経営者の方に強く伝えたいと思います。実は「中小企業 ブランディング」の成功は、大企業よりも早く、そして深く実感できるのです。

なぜかといえば、ブランディングは、ロゴや広告のような“外向き”ではなく、社員の意識や行動を変える「内向きの取り組み」が核。この「人を動かす力」が問われる活動こそ、中小企業の規模感に最も適しているのです。
具体的に言うと、ブランディングを進める過程で、ブランドアイデンティティやミッション、理念などを社内に浸透させようとするとき、社内を変えていかないとそれは成功しない。しかし、それをスムーズに進められないのは「人を動かす」ことが容易ではないからです。

中小企業なら、数人~百人ほどの「人を動かす」だけで済みますが、大企業となると千人~数万人規模で浸透させなければなりません。どれほどの労力、時間が必要でしょうか。さらに中小企業であれば、経営者の目の届く範囲に社員はいますが、大企業になると経営者が名前を知らない社員がほとんど。この環境下で、全社員に同じ方向を向かせるのは簡単ではないわけです。

中小企業の経営者であるあなたに、もうひとつ伝えたいことがあります。
御社にも、まだ気づいていない、言葉に落とし込めていないだけで、すでにしっかりした「ブランド」があります。それをフレームワークなどを使って、ていねいに内省し、社内の合意を得ていくプロセスがブランディング。このプロセスを経ることが、次に挙げるメリットを生むのです。

中小企業がブランディングを実施するメリット

1. 認知度の向上

ブランディングは、企業や製品の認知度を向上させるための手段でもあります。正しいブランディング戦略を持つことで、顧客は企業や製品を認識しやすくなり、購買意欲が高まります。とくに中小企業の場合、知名度を上げることは新規顧客を獲得するうえで非常に重要なポイントとなります。

星野リゾートの星野佳路社長が、まだまだ今のような規模でなかったとき、リピーターを徹底的に調査しました。なぜこの旅館に繰り返し来てくれるのか。そこには確固たる理由があるはずで、その理由が分かれば、まだ見ぬ同じ価値観を持つ顧客にも訴求すれば、新規客が増えるはずだと。
星野社長は、経営学の権威が主張する理論を徹底的に実践することで有名なので、おそらくブランディングの理論にどこかで触れられたのだと思います。その結果は、あなたもご存知のとおり。まだ中小企業だった星野リゾートが成長する源泉にもなったのです。


 

2. 競合他社との差別化

競争が激しい市場では、自社の製品やサービスを差別化することが生き残る条件です。ブランディングのプロセスで最初に行うフレームワークはクロス3C。顧客が求める購買条件のひとつを自社だけが持つ優位性で賄えるかを確認する作業(ブルー・オーシャンを見つける)です。他社も同様の優位性を持っているなら、それはレッドオーシャン。血の雨が降る海ですから、消耗戦になってしまいます。体力のない中小企業は、ここで戦ってはいけません。

ブランディングを通じて、企業は独自の優位性に基づく価値提案や個性を表現し、競合他社との差別化を図ることができるようになります。また、顧客にとっても、製品を選ぶ理由が明確になるのです。


 

3. 信頼とロイヤルティの構築

正しいブランディングは、顧客との信頼関係を築く基盤となり得ます。企業が一貫したメッセージや価値観を伝えることで、顧客は安心し、継続的な購買や応援をしてくれるようになります。もちろん、つまみ食いはするかもしれませんが、結局あなたの会社で得ていた満足感を消し去ることはできず、再度顧客として戻ってくるようになります。

ブランディングは、LTV(顧客生涯価値)を多く生み出してくれる顧客が多く現れる可能性を秘めています。言い換えれば、自社を長く継続させるための施策とも言えるのです。


 

4. 成長と展開の支援

あなたは融資を受ける際、金融機関の担当者に自社の強みを胸を張って語っているでしょうか。金融庁は、中小企業への融資について、現状だけを見るのではなく、将来性も含めて勘案するように通達を出しています。
ブランディングを行うことにより、自社の優位性、自社を端的に表現することができるようになり、金融機関の担当者の記憶にも残りやすくなるでしょう。

ブランディングは、企業の成長や発展をサポートする重要な施策。正しいブランディングを推進する企業は、新しい市場や顧客層に訴求しやすくなるのです。


 

5. 社員が考えはじめる社風をつくるきっかけに

フレイバーズがコンサルティングするブランディングは、プロジェクトチームを導きますが、決して答えを教えることはしません。すべてのプロセスでプロジェクトメンバーは、悩み、考え、ときに言い合いをしながら、自ら答えを導き出していきます。

中小企業にありがちなのは、トップの指示を実行するだけになってしまっている組織。経営者であれば、自走してくれる組織に変革しないと、社長が本来やるべき仕事がいつまでたってもできない事態に陥ってしまいます。ブランディングを実行することで得られる副産物として大きいのは、社員が自ら考え動く経験ができることと、視座を高く持てるようになること。
ブランディングは、通常の業務では果たせない社員教育にも寄与してくれるのです。

インターナルブランディングの進め方

中小企業が輝く存在であるために

日本の全労働人口の70%を占める中小企業。日本にとって、この大きな存在である中小企業が元気で輝いていないと、この国の将来は危ういものになってしまいます。
これまでみてきたように、ブランディングは中小企業にとって厳しい市場で成功するために欠かせない要素であり、十分に検討する価値がある施策です。経営者は、今だけを見るのではなく、20年後この会社をどうしたいかを考えるのがほんとうの仕事。今いる社員のために、ぜひブランディングの導入をご検討ください。

中小企業庁「中小企業白書」:第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組