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オウンドメディアで始める、ブランディング戦略

専門家としての知見を掲示すれば、オウンドメディアは成功する

オウンドメディアとは、企業が企画運営を担当する広報メディアのことであり、ウェブサイトはもちろん、ブログ、SNSなどを指します。ネット上ではユーザーにとって有意義なコンテンツが勝利するので、中小企業も大企業を凌駕することも十分にあり得ます。顧客層を拡大したい、狙ったターゲットにメッセージを伝えたいなら、すぐにでも始めるべきツールです。

当社もこのコラムのコンテンツを通じて、何社も新規顧客を獲得してきました。
顧客候補にとって、信頼を得るに足りる内容があれば、製品、サービスに対して引き合いが入ってくることを経験しているからこその考え方、方法論をお伝えしていきます。

オウンドメディアを運営するメリット

1.自社の考え方(価値観)を伝えられる

オウンドメディアを通じてコンテンツを追加していくことで、自社の価値観やストーリー、その分野に対する知見の広さ、実績などを伝えることができます。

たとえば、価値観。オウンドメディアを通じて、ダイレクトに製品・サービスの売り込みをしないほうがいい。ただし、その事業が生まれた背景、実現したい意義(価値観)を伝えることはやっておきたい。あなたの会社の価値観に共感してくれる顧客候補は、コーポレートサイトにある製品・サービスのコンテンツに興味を持ってくれるかもしれない。
その場合、次のようなステップを踏んで語っていくことをおすすめします。これは経営コンサルタントのサイモン・シネックがTEDのなかで提唱した理論で、人はWHY、HOW、WHATの順で話をすると説得されやすいというもの。

A.なぜ、その事業は生まれたのか(WHY)
B.ミッションを実現するために、どのような方法を採っているか(HOW)
C.結果生まれた製品・サービスは顧客にどのような価値をもたらすのか(WHAT)

ゴールデン・サークル理論(YouTube)


 

2.知見の広さを披露し、新規客を集める

その道の専門家集団である企業には、事業に関する幅広く深い知見が集まっています。その情報を知りたい人に向けて、ていねいに説明してあげることで、御社のステータスは上がります。しかも専門家集団ですから、いくらでも説くネタはあるはあずです。
とはいえ、オウンドメディア担当の悩みは、「何を取り上げたらいいか」でしょう。なぜ方向が定まらないか、なぜ筆が進まないのかといえば、聞きたいと考えている人に尋ねていないから。これまでの顧客とのコミュニケーションのなかで交わしたはずの話題を忘れているから。
当社のクライアントに製品サービスの説明文を求めても、興味をそそられる文面は出てこないのに、取材をするといくらでもネタを引き出せるのと同じです。ごく些細なことでもいいのです。必ずそれを求めている人はいるし、それによって御社の専門家としてのステータスは上がるのですから。


 

3.自社ならではの実績を伝え、共感を呼ぶ

たとえば、顧客との程よい距離感を大切にする接客業の場合。
店舗で日々起こる顧客とのコミュニケーションやエピソードを自社の理念に基づいたアレンジで伝えましょう。
サービス業にとって、顧客とのコミュニケーションの質は、生命線ともいうべきものであり、顧客側にも心地よいもてなしをしてくれる店を探しているセグメントが一定数存在します。この関係を取り持ってくれるのが自社運営の嘘偽りのないオウンドメディア。そのサービスを経験したいと思う顧客候補が店のドアを開いてくれるようになります。


 

4.顧客を選べるようになる

自社が得意とする分野に興味を持ってくれる顧客を開拓したいと考えているなら、その分野に関するコンテンツを深く発信していくべきです。これまで見てきたように、業界の一般的な話題ではなく、狭くても自社の得意な部分のコンテンツを発信していくことで、そこに興味を持つ顧客候補がオウンドメディアに集まります。

つまり、オウンドメディアは新規客を選別する集客装置でもあるのです。

当社であれば、ブランデイング、SEO、コピーライティング、WordPressを用いたシステム構築といった分野のコラムを数多く発信していますので、この分野に対する引き合いが集まります。WEB企画制作が主たる事業となっていますが、オウンドメディアで発信している分野を集中させているので、そうなるわけです。それでも、その戦略は成功していると考えています。それが当社の得意分野ですから、受注率も高くなります。


 

5.SEO効果も絶大

Googleは、検索結果の上位表示の条件として「検索者のためになる」こと、「スペシャリストとしての知見」を挙げています。これまで述べてきたように、自社の専門知識や実績をオウンドメディアに蓄積していけば、Googleの評価は必ず上がります。それは自社サイトへの集客へとつながり、まだ見ぬ顧客へのアプローチに強力に貢献してくれるようになります。


 

オウンドメデイアでブランディングを推進

コーポレートサイトのリニューアルを検討されている担当者で、「それならフレイバーズだ」と思ってくれる方は残念ながら一人もいません(既存のクライアントは別)。世の中の同業者も同じ状況にあります。ではなぜ、当社は生き残れているのでしょうか。

コンペで偶然気に入ってもらえた、見積もりが安かった、担当者の食い合わせが悪かった・・・

そんなはずはありません。
自社の優位性をきちんと説明し、そのポイントが担当者の望むものと合致していたからです。ブランディングで策定するブランドアイデンティティを打ち出し、コンペの要件にフィットさせてきたことが理由だと考えています。

知名度の低い中小企業であっても、ブランディング戦略に即したオウンドメディアを運営することで、自社の独自性や魅力を振り返り、伝えることができます。顧客からの共感を集め、ロイヤルティを高める。ブランディング戦略の中核に、オウンドメディアを活用することで、顧客とのコミュニケーションを強化、また顧客候補とのコミュニケーションを行うことになります。コラムやSNSを通じて、顧客との対話を行うことで、顧客のニーズや要望を把握しやすくもなります。より顧客中心のサービス提供にもつながるでしょう。

これらの結果を社内で共有すれば、社員レベルでも顧客への理解が深まることもオウンドメディアを運営するメリットのひとつです。社内外でブランディングの効果を発揮するオウンドメディアは、会社の規模を問わず活用できるツール。ぜひ、社内でも導入の検討、運営の改善を行ってください。

コラム「オウンドメディア」

中小企業のブランディング、大きなメリット5つ

中小企業の経営者

コラムの冒頭ではありますが、中小企業の経営者の方々に断言してもいい。ブランディングに取り組めば、中小企業のほうが大企業よりも効果は早く出ます。なぜかといえば、ブランディングは外向けのエクスターナル(アウター)よりも、インターナル(インナー)のほうがたいせつで、インターナルはほぼ「人を動かす」課題を多く含んでいるから。
具体的に言うと、ブランディングを進める過程で、ブランドアイデンティティやミッション、理念などを社内に浸透させようとするとき、社内を変えていかないとそれは成功しない。しかし、それをスムーズに進められないのは「人を動かす」ことが容易ではないからです。

中小企業なら、数人~百人ほどの「人を動かす」だけで済みますが、大企業となると千人~数万人規模で浸透させなければなりません。どれほどの労力、時間が必要でしょうか。さらに中小企業であれば、経営者の目の届く範囲に社員はいますが、大企業になると経営者が名前を知らない社員がほとんど。この環境下で、全社員に同じ方向を向かせるのは簡単ではないわけです。

中小企業の経営者であるあなたに、もうひとつ伝えたいことがあります。
御社にも、まだ気づいていない、言葉に落とし込めていないだけで、すでにしっかりした「ブランド」があります。それをフレームワークなどを使って、ていねいに内省し、社内の合意を得ていくプロセスがブランディング。このプロセスを経ることが、次に挙げるメリットを生むのです。

中小企業がブランディングを実施するメリット

1. 認知度の向上

ブランディングは、企業や製品の認知度を向上させるための手段でもあります。正しいブランディング戦略を持つことで、顧客は企業や製品を認識しやすくなり、購買意欲が高まります。とくに中小企業の場合、知名度を上げることは新規顧客を獲得するうえで非常に重要なポイントとなります。

星野リゾートの星野佳路社長が、まだまだ今のような規模でなかったとき、リピーターを徹底的に調査しました。なぜこの旅館に繰り返し来てくれるのか。そこには確固たる理由があるはずで、その理由が分かれば、まだ見ぬ同じ価値観を持つ顧客にも訴求すれば、新規客が増えるはずだと。
星野社長は、経営学の権威が主張する理論を徹底的に実践することで有名なので、おそらくブランディングの理論にどこかで触れられたのだと思います。その結果は、あなたもご存知のとおり。まだ中小企業だった星野リゾートが成長する源泉にもなったのです。


 

2. 競合他社との差別化

競争が激しい市場では、自社の製品やサービスを差別化することが生き残る条件です。ブランディングのプロセスで最初に行うフレームワークはクロス3C。顧客が求める購買条件のひとつを自社だけが持つ優位性で賄えるかを確認する作業(ブルー・オーシャンを見つける)です。他社も同様の優位性を持っているなら、それはレッドオーシャン。血の雨が降る海ですから、消耗戦になってしまいます。体力のない中小企業は、ここで戦ってはいけません。

ブランディングを通じて、企業は独自の優位性に基づく価値提案や個性を表現し、競合他社との差別化を図ることができるようになります。また、顧客にとっても、製品を選ぶ理由が明確になるのです。


 

3. 信頼とロイヤルティの構築

正しいブランディングは、顧客との信頼関係を築く基盤となり得ます。企業が一貫したメッセージや価値観を伝えることで、顧客は安心し、継続的な購買や応援をしてくれるようになります。もちろん、つまみ食いはするかもしれませんが、結局あなたの会社で得ていた満足感を消し去ることはできず、再度顧客として戻ってくるようになります。

ブランディングは、LTV(顧客生涯価値)を多く生み出してくれる顧客が多く現れる可能性を秘めています。言い換えれば、自社を長く継続させるための施策とも言えるのです。


 

4. 成長と展開の支援

あなたは融資を受ける際、金融機関の担当者に自社の強みを胸を張って語っているでしょうか。金融庁は、中小企業への融資について、現状だけを見るのではなく、将来性も含めて勘案するように通達を出しています。
ブランディングを行うことにより、自社の優位性、自社を端的に表現することができるようになり、金融機関の担当者の記憶にも残りやすくなるでしょう。

ブランディングは、企業の成長や発展をサポートする重要な施策。正しいブランディングを推進する企業は、新しい市場や顧客層に訴求しやすくなるのです。


 

5. 社員が考えはじめる社風をつくるきっかけに

フレイバーズがコンサルティングするブランディングは、プロジェクトチームを導きますが、決して答えを教えることはしません。すべてのプロセスでプロジェクトメンバーは、悩み、考え、ときに言い合いをしながら、自ら答えを導き出していきます。

中小企業にありがちなのは、トップの指示を実行するだけになってしまっている組織。経営者であれば、自走してくれる組織に変革しないと、社長が本来やるべき仕事がいつまでたってもできない事態に陥ってしまいます。ブランディングを実行することで得られる副産物として大きいのは、社員が自ら考え動く経験ができることと、視座を高く持てるようになること。
ブランディングは、通常の業務では果たせない社員教育にも寄与してくれるのです。

インターナルブランディングの進め方

中小企業が輝く存在であるために

日本の全労働人口の70%を占める中小企業。日本にとって、この大きな存在である中小企業が元気で輝いていないと、この国の将来は危ういものになってしまいます。
これまでみてきたように、ブランディングは中小企業にとって厳しい市場で成功するために欠かせない要素であり、十分に検討する価値がある施策です。経営者は、今だけを見るのではなく、20年後この会社をどうしたいかを考えるのがほんとうの仕事。今いる社員のために、ぜひブランディングの導入をご検討ください。

中小企業庁「中小企業白書」:第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組

ブランディングが失敗に終わる理由とは?

リブランドは、顧客との約束

ブランディングとは、企業や商品、サービスの特長や価値を顧客にわかりやすく伝えることで、認知度や好感度を高めていく活動。「売れ続けるしくみ」を創ることと言ってもいいものです。ただ、ブランディングには推進の方法によっては効果が出ないこともあります。
経営陣の大きな期待を背負って始めた活動であるにもかかわらず、労力と費用をかけた割には思い描いた効果が出ない。広告代理店や制作プロダクションが口を開けば「ブランディング」と言いはじめる時代になったのに、失敗も数知れず・・・。

本コラムでは、ブランディングの失敗例やその原因、対策を紹介することで、これからブランディングを始めようとする企業に、成功に近づいてもらおうという意図でお伝えしていきます。

ブランディングの落とし穴

市場調査や分析、クリエイティブにいたるまで、多くの労力をかけたのに失敗するブランディング。活動が上手くいかないポイントとしては、以下のようなものがあります。

ブランドのメッセージが一貫していない

社内にブランドメッセージが周知されておらず、担当者によって顧客への伝え方、行動が異なる場合。同じ商品でも、国や地域によって、ブランディング活動によって得た結果とはニュアンスが異なってしまっていて、顧客を混乱させるばかりか、不信を招いてしまう。

インターナル(社内)ブランディングができていないことによるものです。ブランディングといえども、最後は社員一人ひとりが媒体となって社外にメッセージを伝えていくことになります。社内の体制が構築できていなければ、外向けの活動も上手くはいきません。

ブランドのメッセージが時代に合わない

SDGsの考えが浸透しはじめているなかで、男女を分けてしまうような採用活動をしたり。そういう社員を経営陣が望んでいるからといって、モーレツに働く先輩社員の姿を伝えたり。Z世代から反発を受けるのは容易に想像できますね。

ブランドのメッセージが顧客のニーズに応えない

ひと時代前の家電製品は、ひとつまえのモデルより機能をひとつ加えて販売価格を維持する製品開発が主流でした。そうするとたくさんのボタンが並んだリモコンが生まれ、一回も使われずに寿命を終えるといったことに。売上を上げる、維持するための製品開発なので、顧客のニーズなどとは無縁なのです。

前項の時代に合わないメッセージも同じで、綿密な市場調査を行わず、ブランドホルダー側の身勝手な思い込みが強すぎると、このような結果となってしまいます。

ブランディング失敗の原因と対策

ブランディングの失敗は、いくつかの原因に集約されます。進め方の問題、組織(=人)の問題、知識(=方法論)の問題、社内浸透に関する不徹底の問題などです。

進め方の問題

社内だけでブランディングを進めようとすると、とくに市場分析などの場面で社内の至らない点が数多く挙げられる「グチ大会」に陥り、やっぱりウチはだめだ・・・ということになりがちです。中小企業に多く見られる傾向ですが、今まで生き残ってこられたのには顧客側から意味のある理由があるからです。
会社に対するリスペクトをベースに社外のナビゲーターが導くと、逆に「うちも案外いい会社なのかも」とプロジェクトメンバーが思い直す場面も出てきます。

組織(=人)の問題

ブランディングした結果を社内に浸透させようとすると、必ず人の問題が出てきます。インターナル(社内)ブランディングは、人の問題と言い切っても差し支えないほどです。
この大きな壁をどう乗り越えるかがブランディングを成功に導くかどうかの分岐点ともいえます。この障壁を取り除かなければ、冒頭でお話したような部門、地域によって、人によってブランドメッセージの伝わり方に差が出ることとなります。

知識(=方法論)の問題

ブランデイングに関するそもそもの知識が不足していることによる失敗があります。ブランディングは市場における自社のステータスやターゲット顧客、社風などを絡めて、独自のポジショニングを行っていくプロセスです。これに加えて理想の姿とのギャップを埋めていく作業も含まれます。
こういった各プロセスにおける調査、分析の仕方やまとめ方、経験などが社内だけでは決定的に不足しています。

改善活動をしない

多くの難解なプロセスを経たからといって、必ず正解を導き出しているわけではありません。ブランディングによるクリエイティブがターゲット顧客と上手くコミュニケーションできていないのであれば、調整が必要です。
ターゲット顧客に伝わらない=ブランディングの失敗なわけですから、できるだけスピーディに調査を行い、改善を進めていきたいところです。

ブランディングを失敗させないために

ブランディングが成功するか失敗してしまうかにフォーカスすると、テクニック的な議論になってしまうかもしれません。それより、ブランディングを行うことによって、得られる未来を思い描くことに重きをおいたほうが推進力は生まれるのではないかと感じています。

ブランディングは自社の足元(理念やパーパス、社風をはじめとする各種リソース)を分析することから始め、競合他社との関係性、ターゲット顧客の絞り込みを行うことにより、自社独自のポジションを確立することです。しかしそれだけでは、理想の未来とのギャップが大きすぎて、いつになったら理想に近づけるのかわからない・・・という状況を生むので、中期計画などを立案し、そのギャプをどうやって埋めていくかを行うことが必須なのです。

もしかすると、ブランディングの失敗は、まだ道半ばなだけなのかもしれません。いまいちどこれまでのプロセスを顧みて、自社がどこにいるのかを確認してみることも必要でしょう。

ビギナー向け、ブランドアイデンティティ策定の進め方と注意点

プロジェクトチームがブランディングを進める

ブランドアイデンティティとは、ブランドの本質的な価値を分かりやすい言葉にまとめたもの。ブランドアイデンティティを明確にすることは、ブランドに関わるすべての人に共通認識をもたらします。その結果、ブランドを守り育てる人たちが同じゴールを目指せるようになり、ブランディングの成果も高くなります。

「それなら、作らない手はない。しかし、難しそうだ」という方のために、ブランドアイデンティティ策定のフレームワークとその進め方をご紹介します。外してはいけないポイントや迷ったときの対処方法も参考にしてください。

ブランドアイデンティティ策定の道のり、策定後の活動

進め方をご紹介する前に、ブランディングという活動のなかでブランドアイデンティティがどのような位置づけにあるかを把握しておきましょう。その存在感の大きさを知ることでプロジェクトメンバーの熱意もきっと変わってくるはずです。

ブランディングには8つのステップ(ブランドマネージャー認定協会が推奨)があります。
それを大きく2つに分けると、ブランドの価値を明確化するプロセスと、その価値を伝えていくプロセス。そのちょうど中間点に位置するのがブランドアイデンティティです。ブランド価値というのは、今までの自分たちの歩みのなかに必ず存在するもの。それがあるからこそ顧客から受け入れられてきたわけで、その価値を振り返り再発見することで、ブランドアイデンティティの輪郭がはっきりとしてきます。

そして、自分たちが大切にしてきたブランドの価値を明確化し、それをみんなで共有できる言葉に表す(ブランドアイデンティティ策定)ことができれば、そこからブランディングの活動は大きく加速し始めます。なぜなら、ブランドに関わるすべての人が同じ目標をもって動くことができるから。
それは、今まで個人がそれぞれの心のなかでぼんやりと抱いていたイメージが共通化され、目指すべきゴールに焦点があう瞬間。各人が納得できる言葉にすることで「そうそう、それだ」とチームに連帯感が生まれ、何かが始まりそうな予感さえしてくる。それがブランドアイデンティティ策定の醍醐味なのです。

ブランディング8つのステップ

  1. クロス3C分析(自社の振り返りと強み分析)
  2. セグメンテーション(狙うべき市場を見つける)
  3. ターゲティング(訴求する相手を決める)
  4. ポジショニング(自社が支持される理由を明確化)
  5. ブランドアイデンティティ策定
  6. 具体化(4P/4C分析)
  7. 刺激の設計(ブランド要素とブランド体験)
  8. 目標設定


ブランディングの全体像

1.自社の振り返りと強み分析(クロス3C分析)

ブランディングの全体像がわかったところで、いよいよブランドアイデンティティ策定のための4つのステップをご紹介していきます。

最初のステップは「自社独自の強み」を見つけるということ。競合他社にはなくて、自社だけがお客様の要望や不安に応えられているポイントについて、客観的かつ徹底的に分析することです。
「そんなものはないのでは?」と心配になったあなた、そんなことはありません。意識できていないだけで必ず存在しています。その強みがあるからこそ、今まで会社は存続し、顧客に受け入れられてきたのです。自社や自社が提供している製品・サービスについて、しっかりと振り返ってみてください。

そこで有効な方法となるのが、マーケティングツールの一つ「クロス3C分析」です。クロス3C分析とは、外部環境(競合他社)、内部環境(自社)、顧客環境の3つの要素を分析することで、自社のポジションや競争力を明確にするためのフレームワークです。
これら3つの要素を交差させることで、競合他社が持ち合わせていなくて、自社だけがもつ強みで、なおかつ顧客が求めているもの(=ブルーオーシャン)を見つけ出すことが目的です。

クロス3C分析の各要素とは

・外部環境 (競合他社の強みと弱み)

一般的に「外部環境」とは、自社が直接コントロールはできないが、業績や戦略に大きな影響を及ぼす要因(たとえば、市場の動向や、競合他社の行動、政治経済や技術のトレンドなど)を意味します。しかし、ブランディングにおけるクロス3C分析では、外部環境=競合他社の強みと弱みに絞り込む方が考えやすいでしょう。

・内部環境 (自社の強みと弱み)

内部環境は、自社が直接的にコントロールできる要因を意味します。自社の能力、組織文化、ブランド価値、製品やサービスの特長、従業員のスキルなどが含まれます。内部環境を分析して、自社の強みや弱みを洗い出し、競争優位性を保つためのポイントを把握します。

・顧客環境 (顧客の要望、不安、不満など)

顧客が望んでいることや行動パターン、購買動機、不安や不満など「不」がつく要素を洗い出します。この段階では、まだターゲットとする市場もぼんやりしているかもしれませんが、まずは思いつくままに書き出してみましょう。

クロス3C分析で気をつけたいポイント

・自社の弱みは考えなくてよい

内部環境(自社)について分析するとき、どうしても強みよりも弱みが出てきやすいもの。集められたメンバーがまじめなほど、その傾向は強くなるのかもしれません。ただ、自社や自社製品の弱点に目をむけても、社内のグチ大会になってしまったり本来の強みに目が向かなくなる恐れも。
だから、強みや良いところにフォーカスしてください。もし、出てこなくても、周囲の人たちに聞く、第三者やネットの声を見てみるなど、できるだけ客観的な視点を大切に探してみてください。

・ブルーオーシャンが見つからなくても気にしない

クロス3C分析の結論であるブルーオーシャン(顧客の要望に対して、競合にはなく、自社だけが応えられる強み)が見つからないというケースも、最初の段階ではよくあることです。どうもしっくりくる答えが出ない、競合他社の方が強みが多いかも・・・。
でも、落ち込まないで!ゆったり構えてください。いま会社が存在するということは、それだけ顧客を惹きつける理由があるからです。どうしても答えが見つからないなら、急がずそのまま放置してもOKです。
次のステップを進めていくうちに、必ず見えてくるので慌てる必要はありません。

・自社の強みが競合他社にも当てはまっていないか?

自社だけでなく競合他社も得意としていることなら、それは独自の強みとは言えません。それが顧客が望んでいることだとしたら、それはまさにレッドオーシャン。そこでは戦ってはいけないポイントになります。

・顧客の視点で考えること

自社の特長や優位性を見極める際に欠かせないのは、お客さまの視点に立つこと。実はこれが一番むずかしいポイントです。日常的にお客さまと接することの多い方は別として、間接部門の方にはなかなかイメージしにくいものです。
いったん、頭のなかを真っ白な状態にして、徹底的にお客さまの立場から自社や競合を分析してみることです。

2.セグメンテーション(Segmentation):狙うべき市場を見つける

自社の強みが見えてきたら、ここからはSTP分析の段階。
S:市場の細分化(セグメンテーション)、T:ターゲット層の抽出(ターゲティング)、P:競合との差別化(ポジショニング)の頭文字をとった言葉で、事業戦略やマーケティング戦略で使われるフレームワークのこと。フィリップ・コトラーが提唱した概念です。

STP分析のうち、まずは狙うべき市場(セグメンテーション)を見つけ出す作業です。セグメントとは市場を分けることであり、お客様をどう分類するかを考えること。たとえば、市場全体を年齢や性別、ライフスタイル、興味関心などいくつかの軸を決めてセグメントすることで、自社が狙うべき市場が見えてきます。

セグメンテーションで気をつけたいポイント

・もう一歩、細分化してみる

「市場を分けるといわれても、最初はピンとこない」という人がほとんど。ありがちな迷いとして、セグメンテーションをしたものの市場がぼんやりしている、ということ。

たとえば、自然食品を販売しているブランドがあるとします。その市場を「健康志向が高い人」と「30~40代女性」という2つの軸で分類しました。
自分たちが狙うべき市場は見えてきたものの、なんだかまだぼんやりしている。市場の絞り込みが広すぎると、ターゲットとする顧客の顔が浮かんでこない=どんな生活スタイルで、どんな悩みがあって、どんなことに興味があるのかがイメージできないままになってしまいます。
そんなぼんやり感があるときは、もう一歩踏み込んでみる。アレルギーをもつ子どもに悩んでいるママ、キャリア志向で忙しいだけに体調をくずしがちな女性、などと、もう一歩具体性をもたせることで、ターゲット層の顔を思い浮かべやすくなるのです。

ただし、細分化といっても、あまり絞り込みすぎるのも危険。その結果、マーケットが小さくなりすぎる可能性もあるのでバランスを考えながら軸を見つけていきましょう。

・既存の枠組みにとらわれない

セグメンテーションの成功事例として、ホンダの「スーパーカブ」があります。1959年、ホンダがアメリカ市場へ進出する際にとった有名な戦略。
当時のアメリカでは、ハーレーダビッドソンが約8割のシェアを誇っていたなかで、ホンダが選んだ軸の一つは「バイクに乗らない人」でした。ハーレーのようなワイルドなバイクでブンブンやりたい人ではなく、今はバイクを持っていないけれど日常の便利な足としてバイクを必要とする人。
この狙いは市場ニーズにぴったりはまり、その後ホンダは大きなシェアを獲得することになるのです。

既存のターゲット層ももちろん大切ですが、それ以外に見つけられていない市場やきっかけはないか?そんな視点でとらえてみることも必要です。

・BtoBとBtoCでは軸の取り方が異なる

BtoCの市場に関しては、比較的セグメンテーションしやすいかもしれません。年齢や性別、ライフスタイルといった軸が当てはまりやすいのですが、BtoBの場合は異なる視点が必要です。
主な例としては、業種や産業分野、企業の規模、地理的な位置、ニーズや課題、社風、購買プロセス(意思決定段階など)などが挙げられます。

3.ターゲティング(Targeting): 訴求する相手を決める

市場を細分化できたら、そのセグメントに属する具体的なユーザー層を調べます。顧客の詳細な特性や好みを具体的に思い描くと、ターゲットに合った施策が打ちやすくなるので、戦術もより具体的になり、成功する確率も飛躍的に高まります。

ターゲティングで気をつけたいポイント

・情報収集はしっかりと行う

ここで大切なのは、想像の範囲でターゲット層を決めないこと。社内外からの情報収集はしっかりと行ったうえで、事実にもとづいて組み立てていきましょう。

・市場規模がある程度見込めること

釣り糸を垂らすときは、それなりの数の魚が泳いでいる釣り堀をさがすこと。あまりにもニッチな市場をえらぶと、マーケティングにかけるコストに見合わないという可能性も。かならず市場規模の有効性、市場の将来性を把握したうえでターゲティングを行ってください。

4.ポジショニング(Positioning): 競合との差異化(自社が指示される理由)を明確にする

これまでの経緯をおさらいすると、自社の強みを明確化して、それを訴求すべき市場を定めて、訴求する相手を確認してきました。最後にもうひとつ大切な要素が、誰とどのように戦うのか。お客さまが競合他社と自社を比較したときに、「〇〇だから買いたい」と思ってもらえる基準をはっきりさせることです。

そのためには、まずお客様が購買する理由(Key Buying Factor:KBF)をリストアップします。思いつく理由をいくつでもよいので書き出してみてください。
リストアップができたら、それをカテゴリー分けしてみる。それによって競合他社との差異化を示す軸が見えてきます。
2つの軸をとり、そのマップ上で競合他社2~3社と自社の位置づけを確認することができます(ポジショニングマップ)。

ポジショニングで気をつけたいポイント

・顧客視点で考える

ポジショニングにおいてもっとも大切なことは、お客様の視点で考えること。いつも熱心に仕事に取り組んでいる人ほど自社視点になってしまいがちなので、頭の切り替えが必要かもしれません。
どうしてもイメージできないというときは、実際の売り場に身を置いてみる。ネットなどで顧客のリアルな声をさがす。営業担当者などいつもお客さまと接している人の意見を聞いてみるなど、立場を切り替えるスイッチが必要です。

・競合他社を明確に意識する

当たり前ながら、具体的な会社名をあげて、できるだけ具体的に比較をすることが大切です。競合が分からない場合でも、今の時代、ChatGPTなどいろいろ手を尽くせば何か情報収集はできるはず。ここは踏ん張って、ていねいに進めていきたいところです。

5.ブランドアイデンティティの策定

これまでの4つのステップを振り返りながら、いよいよ自社の強みや差別化ポイントをもとに、ブランドアイデンティティを策定します。
ただ、このプロセスまでくると、プロジェクトメンバーの頭の中にはいくつかのキーワードが浮かんでいるはずです。
逆に、まだぼんやりしている状態なら、これまでのプロセスが消化不良になっているということ。明確になっていないポイントに立ち返り、再考してみてください。

ブランドアイデンティティとは、お客さまに対する約束。ブランドがどれだけ有益な価値を提供し、どのような体験を約束するかを伝えるものです。
伝えたい想いをライティングによって整えていくことになりますが、その際にもお客さまの視点を常に意識するようにしましょう。

ブランドアイデンティティ策定のプロセスが、ブランディングの成果を左右する

自社ブランドが市場で優位性を保つためには、ご紹介したマーケティングのレームワークによって導き出した、ブランドアイデンティティを掲げることが不可欠であることが理解いただけたでしょうか。
そのなかでも重要なのは、メンバーみんなで段階を踏みながら進めていくプロセスそのもの。一人ひとりが頭で汗をかき、ときには意見がぶつかったり前段階に戻ったりしながらも、自社ブランドについて考え抜くことが大切です。そんな時間の経過があってこそ、みんなが納得できるし、ブランドの魅力を再確認できるのです。

ブランディングプロジェクトのメンバーには、次のステップとして、自分たちが導き出したブランドアイデンティティを社内の他のメンバーに伝えていくという大きな役割が待っています。ときには、熱量の異なる人や違う意見をもった人を説得しなければいけない場面もあるでしょう。そのためにも、まずは自分たち主要メンバーの気持ちを一つにしておく必要があります。悩んだり凹んだりという場面があるのは当然のプロセスと受け止め、あきらめずに前へ進んでください。
あなたは自社ブランドの未来を背負っていくという、とてつもなく価値のある仕事をまかされているのですから。

ブランドが語るべき世界観とは?その価値と考え方

売っているのは商品でなく「世界観」

 

こんな暮らし方がしたい

理想の住まい

オンラインショップを開くと目にとびこんでくる、ポストカードのような一枚の写真。そのガラスの花瓶は凛とした佇まいで、生けられた緑の葉っぱがなんとも涼しげ。周囲にはゆったりとした時間が流れているようです。
商品ページで主に語られているのは、そのガラスの花瓶を手に入れると、いかに心豊かな日々が訪れるのか。ショップのスタッフたちが自宅でその花瓶とどのように暮らし、何を感じているのか。読み進めていくうちに、「うちにも、この花瓶が必要かも!」と気持ちが高まってくる。つい先ほどまでは3,000円の花瓶など買うつもりもなかったのに・・・。
これは筆者のリアルな体験。人気のEC雑貨ショップ「北欧暮らしの道具店」では、多くの人が魔法にかけられてしまうようです。

このオンラインショップで一貫して発信されているのは、自分らしく心地よく暮らすことへの提案。「こんな気持ちで生きていきたいよね。そう思わない?」。すぐ隣に座って、一緒に窓の外を眺めながら語りかけられているようで、「そうそう、その通り!」とポチってしまうのです。

 

いかに世界観を伝えるかがカギ

ものが売れにくくなった今。ブランドの世界観は、購買の理由として大きな意味をもつようになってきました。
ほぼ同じようなデザイン・機能性をもつ白いTシャツでも、どこで買うかを決めるのは消費者の心ひとつ。「ユニクロのほうが安くて長持ちするじゃないの」とお母さんに言われたって、「そんな理由じゃないのよ」と反論してもらえる原動力が今は必要なのです。

ブランドの価値というのは、消費者の心の中にあるもの。鮮明に焼きつけるためには、ブランドと消費者の間で共有される「世界観」が必要であり、それはB2C、B2Bに限らず重要になってきました。

ブランドの世界観って一体なに?

北欧暮らしの道具店

では、ブランドの世界観とはどんなものなのか?できるだけ具体的に掘り下げていきたいと思います。

世界観とは、単体のモノではなく、ライフスタイル。考え方や生き方。理想とする形。また、限られた時間ではなく、長い期間。有限ではなく無限な拡がり。機能面だけでなく、情緒的な満足感。いくつものストーリーが生まれる背景。どれだけ語っても語りつくせないような価値観です。
それだけに、伝えることが難しく、受け取る側にもいろいろな解釈があったりする。しかしながら、ターゲット層が求めているゾーンにぴったりはまると、惹きつける力は非常に大きい。お金には換算できない満足感が存在します。

実際の例を見てみると、
北欧暮らしの道具店:「フィットする暮らし、つくろう。」
自分の生き方を自分らしいと感じ、満足できることを「フィットする暮らし」と定義しています。

Apple:「自分らしく生きることを支援する」。
1997年に公開された有名なTV-CM 「Think different.」。アインシュタイン、パブロ・ピカソなど世の中を変えた天才たちの映像とともに「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが本当に世界を変えている」という、Appleが社会に強く提示したいメッセージが込められています。

スターバックスコーヒー:「人々の心を豊かで活力のあるものとするために」
あの独特の世界観をつくり出しているのは、そこで働くパートナー(従業員)の意識の高さにあります。彼らはマニュアルを必要とせず、上記の共通認識のもと、自分たちでその場に合わせて最善の方法を考えて対応する。質の高いホスピタリティがスターバックスの一番の強みなのでしょう。

こうやって見ていくと、ブランドの世界観は、消費者である自分たちが本来望んでいたことなのだと気づかされます。その特別な価値に共感し手に入れたいと思うから、そのブランドを選んでいる。そして、それを選んでいる自分自身に対しても満足しているのです。

自社ブランドの世界観。その作り方とは

駅での雑踏

では、自社ブランドの世界観について、どのように考えていけばよいのか?そうなんです。そこが一番むずかしいところです。

世界観というのは、そう簡単に作り出せるものではありません。ましてや、広告代理店など社外の人に考えてもらって「さあ、今日からこれでいこう」というようなものでもない。どんなにセンスがよく耳ざわりのいいフレーズができあがっても、それが実際のブランド価値と合っていなければ逆効果となるだけです。

まずは、自分たちのブランドが大切にしていることとは?そんな基本的なことについて、社内で議論することから始めてはどうでしょう。
たとえば、

  • 自社ブランドについて、誇りに思っていることは?
  • 愛用してくださるお客さまは、どこを気に入ってくれている?
  • 創業者の思いとは?
  • ブランドの存在が、社会に対してどのように貢献しているか?
  • サプライヤーはどのように感じている?
  • お客様相談室にはどんな声が届いている?

一人ひとりの受け止め方は違っていても、その中心には共通した価値観があるはずです。
絶対に曲げたくない信条、理想形、お客様とともに「そうありたいよね」と握手したくなる気持ち。そして、考えはじめるとちょっと胸が熱くなったりする。それこそが、日々自分たちが作り出しているブランドの価値、ブランドの世界観なのだと思います。

ブランディングサービス

インターナルブランディングが、会社の未来を明るくする

社内で相談する男女

会社を良くしたいと思うのは、経営者ばかりではありません。
経営者と視座はちがうかもしれませんが、一般社員も自分がしている仕事を意味のあるものにしたい、しっかりとした存在意義のある良い会社にしたいと考えていることは、たしかなことだと思います。
経営層と一般社員、立場や視座は違えど、同じことを考えている人たちが集まった組織が、同じ方向を向いて事業を進めるためにあるのがインターナルブランディングという企業活動です。これは、組織の根源ともいえる考え方を端的な言葉(ブランド・アイデンティティー)に集約、全社でその御旗を共有し、事業を進めるうえでの拠りどころにするというものです。

 

ドラッカーも伝える、インターナルブランディングの基本

ビジネスピープルなら、誰もが知っているP・F・ドラッカー。彼は著書「プロフェッショナルの条件」のなかで、こう伝えています。
成果を上げるために必要なキーワードは「貢献」。この貢献が意味するのは、

① 所属する組織が社会にどのような貢献をしようとしているかを深く理解する。
② その組織が自分にどのような貢献をしてほしいか考えて行動する。

①は、この数年注目されているパーパス、つまり会社の存在意義です。なぜ会社が事業をしているのかを明確に理解すること。ただ実際のところ、経営層も含めた全社員が同じように自分たちの存在意義を明確に定義できているかは、残念ながら疑問です。②は、会社の存在意義を実現するために、個々の社員が何をなすべきかを理解し、行動すること。すべての人が同じことができるようになる必要はないとも彼は著書のなかで述べています。たとえば、セールスは苦手だけど、コンセプトの立案や緻密な資料づくりが得意な人は、セールスは得意だけど事務仕事は苦手な人を補完すればいい。チームとして全体が強くなれば、大きな成果が期待できるということです。

インターナルブランディングは考え方だけを共有して終わりではなく、活動の結果個々人が何をなすべきかにまで至ってこそ会社が次の階層へと進みます。P・F・ドラッカーのプロフェッショナルの条件その1にある考え方を理解し、実践することで結果につながっていくのです。

インターナルブランディング

退職理由から考える、ブランディングの必要性

 

職場で悩む男性

厚生労働省が発表した「雇用動向調査」(令和3年上期統計)で明らかになった退職理由(20歳~39歳)は、男女ともに給与、労働条件などの待遇面が1位、2位を占めていますが、「会社の将来が不安」(男性28.3%=4位、女性30.7%=3位)にも注目すべきです。財務的な問題もあるとは考えられますが、「仕事の内容に興味を持てなかった」(男性19.4%=5位、女性15.4%=6位)と併せて考えると、会社が社員に希望を与えられていなかったことも大きな要因のひとつになっている気がしてなりません。

もし、自分たちが存在する理由(=パーパス)を明確にし、共有ができていれば、この数字はもっと低いものになったのではないか、と感じてしまうのです。

前述したように、一般社員も自分が働く環境を良くしたいと考えています。ただ、視座が異なるぶん、経営者から見れば甘いと感じるかもしれません。しかし、そうやってバッサリ斬ってしまうと、なにも良くはなりません。いろいろな意見や視点を聞きながら、なにがいまベストなのかを考えていくことが肝要なのです。

社内でのすり合わせがインターナルブランディングの要諦

 

部門別のミッションの捉え方の違い

ここまでで、全社が同じ御旗(ブランド・アイデンティティー)を見据えながら個々の仕事の質を高めたり、やるべきことを定めたり、判断したりできるようになることが大切だとお伝えしました。その御旗がブランド・アイデンティティーではなく、それが企業理念であったり、社訓であったり、ミッションであったりしても構いません。

要するに、同じものさしを持ってものごとを考えていく、ということが大切なのです。

しかし実際にこの活動を進めていくと、課題が出てきます。
Aさんは、ミッションから考えると、答えは〇だと。Bさんは△だという。この際に、なぜ〇なのか、△なのかを話し合い、理解するということ。Aさんが△もアリだねと納得できることで、ミッションに対する社内の規格(許容範囲といってもいいかもしれません)ができていくのです。

たとえば、Aさんは営業部門、Bさんは製造部門だったとしましょう。
Aさんが主張していた〇は迅速な納期のこと。Bさんの△は、ていねいに作り上げた製品を出荷するということ。ミッションにしたがってAさんは早く多くの方が喜ぶ顔が見たかった。他方、Bさんは間違いのない製品で、良い暮らしの一助になりたいと考えたのです。メーカーである限り、人々の暮らしを支える製品をつくる。品質が低いものを急いで出荷しては本末転倒だ、とAさんが理解したわけです。

インターナルブランディングでたいせつなことは、定めた御旗(ブランド・アイデンティティーや理念、ミッション)について、社内でいろいろな捉え方、感じ方をすり合わせていくこと。この活動が絶え間なく続いていく組織になれれば、つねに判断基準が御旗に沿うことになり、全社がそれぞれ近い思考を持つことになります。もちろん、狭い規格のなかに全社員がおさまるようにすることが活動の要諦ではありません。多様な考え方があってこそ、すり合わせという作業がはじめて起こるのですから。

経営層が動くと、全社が動く

 

社員の打合せ風景

社内でのすり合わせ作業をどうやって行っていくかは、非常に大きな課題です。
ブランド・アイデンティティーは決めたけれど、ミッションは定まったけれど、そこがゴールになってしまっては、何の意味もありません。すり合わせが行われなければ、ほんとうに何の意味もないのです。

インターナルブランディングの要諦、社内でのすり合わせについては、経営層にひと肌脱いでいただきたい、と強くお伝えしておきます。

社員の輪のなかで、この言葉について自分はこう感じるのだけれど、みんなはどう思う?と問いかけます。正反対の意見が出てきても、そういう捉え方もできるのかと気づき、学んでいく。社員も同じように気づき、学ぶ。そこは、こうあるべきだろうと範囲を超えたと思われる考え方は、納得するまで話し合って解決する。
こういったプロセスを設けることが社内の考え方をまとめ、向かうべき方向に導くことにつながるのです。間違いなくそれは、長い旅。でも、どこかの時点で「ミッションに照らし合わせて考えると」という議論が社内のどこかから聞こえてきます。想像してみてください。きっとそれは会社の明るい未来です。

自社ブランドのファンを育てる方法

自社ブランドのファンを育てる方法

今回は、7月に開催された宣伝会議インターネットマーケティングフォーラムよりご報告です。

—「10人の飲み会イベントでも参加します」よなよなエールの場合—

クラフトビール「よなよなエール」を、飲んだことがありますか?

ビール全体からすると、約1%しかないクラフトビール市場のなかで、ヤッホーブルーイングは確実に売上げを伸ばしているブランド。

その売上推移のグラフと、同じ右肩上がりのカーブを描いているのが、ファンイベントで出会った人数。
1万人規模にまで広がった彼らのイベント、そこでスタッフやファン同士が交流することで、「このビールが好き」というだけでなく、価値観の共有や、活動による自己実現にまで発展するほど盛り上がっているのだとか。最近では、ファンが自発的に幹事になり開催されるイベントもあるそうです。

なぜ、そこまでファン育成が成功しているのか?という問いに、
・スタッフ自らが楽しんでいると、お客さまにも伝わる。
・「この指とまれ!」が明確だと、ファンが集まりやすい。
・ターゲットを絞る。100人のうち1人がめっちゃ好き!と思ってもらえたら十分。
・ただし、アンバサダーなど意図的な方法はとらない。まず楽しんでもらうことを優先。
という答えでした。

たしかに、楽しそうなこと。自分の価値観に合うこと。いい仲間に出会えること。
そんな場所なら、誰だってのぞいてみたくなるものです。

「新たなビール文化を創出することで、ビールファンにささやかな幸せをお届けする」というミッションからも、クラフトビールのおいしさを地道に伝えつつ、楽しい時間を共有することで、ささやかな幸せを届けたい。
そのことを真剣に考えつづけている姿勢がファンを惹きつけているのだと感じました。

よなよなエール(ヤッホーブルーイング)
https://yonayonaale.com/

※「フレイバーズ月1メール」よりご紹介。
フレイバーズでは月1回程度の頻度で、皆さまにお役に立てそうな情報をお送りしています。