コラム(ブランディング)

ブランディング 2024年4月2日

ブランディングの進め方で、社長が気をつけたい7つのこと

社長は孤独だが・・・

「インナーブランディングで、うまく進めるコツはありますか?」初回のミーティング時に、社長様からよく質問されます。
ブランディングでは各部門から選ばれた社員たちが集まって、さまざまなフレームワークに取り組み、議論をかさねていくのですが、新たな取り組みだけに不安に思われるようです。

その時にかならずお伝えするのが、社長ご自身が気をつけてくださいね、というポイント。どうしても気合いが入ってしまうのは仕方がないのですが、「ここは、ぐっと堪えてください」と言いたくなる場面が実はよくあります。
今回は、そんな一生懸命な社長にむけて、ブランディングの進め方で気をつけたいポイントをご紹介したいと思います。


 

ブランディングの取り組みで、社長が気をつけたいこと


 

1.黒子になる

ブランディングのプロジェクトメンバーは、基本的には社員中心で構成することをおすすめしています。
年齢層はさまざまでよいと思いますが、できれば若手メンバーを中心に。入社3~4年以上で、自社や業界についても理解している人たち。
社長や管理職の方々がメンバーに入ることも多いのですが、その際は、できるだけ先輩方は盛り上げ役に徹していただくようお願いしています。

なぜなら、まじめな若手社員たちは日頃から上司や社長の意向を気にする場面が多いはず。「今回は好きなように発言していいよ」と言われても、すぐに切り替えるのは難しいものです。
何か意見をいう時に「自分の意見が合っているかどうか?」と気になってしまう人も多いのですが、ブランディングのプロジェクトでは、正しいか間違いかという基準はありません。好きなように発言できる雰囲気をつくってあげることが、まずは何より大切です。

ついでにお伝えすると、プロジェクトメンバーを選ぶ基準で、年齢よりも大切なのは、前向きな姿勢のひと。
ブランディングの活動とは、自社ならではの強みを再認識して、それを核に会社をさらに良くしていくこと。プロジェクトメンバーはその原動力になる人たちですから、グチっぽかったり斜に構えるタイプが入っていると議論が前へ進みにくくなります。


 

2.じっくり聞く

自社への想いをたっぷり持っているのは間違いなく社長なので、語りたいことや社員に望むことが山ほどあって当然です。しかしながら、ブランディングのフレームワークは、それを語る場ではありません。

まずは、ぐっと堪えて、社員たちの発言をうながしてあげてください。
ファシリテーターからの「お客様が自社商品を買ってくれる理由とは?」という問いかけに、社員が「うーん」と頭を抱えたときは、
「A社の◯◯さんとよく話しているやん。どんなこと聞かれるの?」
「競合のA社より、うちの商品は高いのに、なんで売れてるんやろな?」など、
わちゃわちゃと話しているうちに、「あ、そういえば」とアイデアの扉が徐々に開いてきます。

要は、話を引き出すきっかけづくり。小さなヒントを提供して、みんなが発言しやすい空気をつくり出すことです。
しかしながら、発言を誘導するのはいけません。たとえ口に出さなくても、「あれを言ってくれ」と言わんばかりの顔つきも同じことです(笑)。


 

3.認める、ほめる

これは社長だけに限ったことではありません。
ブランディング・ワークでの絶対ルールは、
・他人の発言を否定しない
・意見をいった人に拍手で返す
・フラットな関係性(名前もフランクに呼び合えるあだ名を決めます)

さらに、社長にお願いしたいのは、分かりやすくほめてあげてください。多少オーバーな表現くらいで大丈夫です。
「なるほどね、そこは私も気がつかなかった」
「さすが、◯◯さん。うちの営業は彼で持ってるんですよー(笑)」などなど。

え?その彼は営業トップではないって?
大丈夫です。次に語った営業スタッフにも、同じセリフで重ねて、笑いをとってください。大阪エリアの方なら、そのあたりはお得意かもしれませんね。


 

4.決して急がない

正直にお伝えすると、ワークを始めたばかりの段階ではそれほど盛り上がりません。だれもが自分自身について考えることが難しいように、自分の会社についても魅力や評価ポイントを考えるのは難しいことです(日本人は控えめな性格なのでその傾向が強いようです)。
また、ときには、プロジェクトの中盤まで進んだけれど、納得いかないので前のステップに後戻りして考えよう、という場合もあります。

それでも、どうか根気よく待ってください。
社長という立場の方は、先々を見据えて、考えながら走るという方が大半ですので、自分のスピード感とはまったく合わない・・・と落胆したくなる場面も出てきます。
しかしながら、答えを出すのは社長ではなく、コンサルタントでもなく、プロジェクトメンバーの社員たちです。多少の時間がかかっても、メンバー自身が悩みつつ答えを導き出すことに大きな意味があると理解してください。


 

5.関心を示す

逆に、放ったらかしというのも良くありません。社員たちは、日々の仕事に追われながらも必死で取り組んでいるのですから、ときどき励ましたり、労いの言葉も必要です。

ブランディング・ワークの実施は、約1ヵ月に1回程度の頻度で行うので、その後で振り返りミーティングを行ったり、宿題が出たときはたまに一緒に参加してみるなど。
「私たち、社長から期待されてるんだ」とメンバーが感じることは、プロジェクトが盛り上がっていく理由のひとつになります。

そのうちに間違いなく、メンバーの方々の目の輝きが変わる瞬間があります。
その発見は、私たちファシリテーターにとっても非常にうれしい瞬間なのですが、深く関わっておられる社長にとってはさぞ感慨深いことと想像します。


 

6.いつも味方でいる

ブランディング8つのステップのうち、中盤で行うブランドアイデンティティやブランドビジョンの設定。それが決まった段階で、プロジェクトメンバーが全社にむけてお披露目する機会をむかえます。

メンバーにとっては大きなハードルとなるはず。社内全体にむけて、自分たちが発表しなくてはならない。それだけでなく、質問やツッコミがはいっても、答えなければならない。同じ会社なので極端な反対意見はでないとしても、さまざまな相手を説得するのはなかなか難しいはずです。

基本的には、社内プレゼンも質疑応答も、プロジェクトメンバーに任せるべきですが、ここぞという時には社長の援護射撃をお願いします。
ブランディングに関して、社長はいつも自分たちとともにいてくれる、応援してくれているという感覚は、メンバーたちの行動や成長を後押ししてくれるはずです。


 

7.提案を実現する

ブランディングを進めるなかで、メンバーのなかにさまざまな気づきが生まれます。
「うちの会社は、技術開発がいちばんの売りなのに訴求できていない。新規顧客の工場訪問をはじめたい」
「誠実・安心が強みなのに、窓ガラスにヒビが入ったまま。新しいものに替えたい」など。

チームから提案されたら、以下の質問をしたうえで、必要と判断できたらできるだけ実現をお願いします。
・ブランドアイデンティティ、ブランドビジョンがベースにあるか
・そのアイデアを実現することで、どんな効果が期待できるか

もちろん、事業計画や予算などとの兼ね合いもありますが、まずは小さなことから始めてみる。プロジェクトがまだ途中であっても、ブランディングの成果としてアクションをおこすことが大事。社内全体へのアピールにもなります。


 

ブランディングの進め方Q&A


 

プロジェクトメンバーは何人くらいが適当?どうやって選ぶ?

ワークを行う人数に制限があるわけではありませんが、6~7人までが適切です。あまり人数が多くなると、意見がまとまりにくかったり、そのなかでも対立チームができてしまうのは好ましくありません。

メンバー選択は、上記でもご紹介したように、前向きな性格が絶対条件。キャラクターはいろいろあってよいと思いますが、発言力のありすぎる人、社内での影響力が強い人は避けてもらいましょう。物静かなタイプでも冷静に考えられる人、業務経験が浅くても広い視野で物が見られる人は向いています。


 

ブランディングの8ステップとは?

取り組みのステップとして、マーケティングのフレームワークを利用しながら、段階的に進めていきます。

1.環境分析による市場機会の発見(PEST分析、3C分析)
2.市場細分化(セグメンテーション)
3.見込み客の選定(ターゲティング、連想マップ)
4.独自性の発見(ポジショニング)
5.ブランドアイデンティティ(ブランドアイデンティティ、ブランドプロミス、ブランドビジョン、ブランドパーソナリティ)
6.具体化(4P/4C分析)
7.刺激の設計(ブランド要素/ブランド体験、推奨規定、禁止規定)
8.目標設定
その他にも、必要に応じて、異なるワークを組み込む場合もあります。


 

どのくらいの期間が必要?

ブランディング8ステップのうち、ステップ5のブランドアイデンティティ策定までで約半年は必要です。そこから具体的な目標設定の段階に入りますが、その内容や進め方によって異なります。
目標設定ができたところで一段落となりますが、そこからの運用が本番。小さな取り組みから実施していくので、何らかの変化がおこってきますが、事業計画レベルで結果が現れるには数年単位と考えておくべきでしょう。

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執筆:植松 あおい

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