作成者別アーカイブ: 植松 あおい

ブランディングの進め方で、社長が気をつけたい7つのこと

社長は孤独だが・・・

「インナーブランディングで、うまく進めるコツはありますか?」初回のミーティング時に、社長様からよく質問されます。
ブランディングでは各部門から選ばれた社員たちが集まって、さまざまなフレームワークに取り組み、議論をかさねていくのですが、新たな取り組みだけに不安に思われるようです。

その時にかならずお伝えするのが、社長ご自身が気をつけてくださいね、というポイント。どうしても気合いが入ってしまうのは仕方がないのですが、「ここは、ぐっと堪えてください」と言いたくなる場面が実はよくあります。
今回は、そんな一生懸命な社長にむけて、ブランディングの進め方で気をつけたいポイントをご紹介したいと思います。


 

ブランディングの取り組みで、社長が気をつけたいこと


 

1.黒子になる

ブランディングのプロジェクトメンバーは、基本的には社員中心で構成することをおすすめしています。
年齢層はさまざまでよいと思いますが、できれば若手メンバーを中心に。入社3~4年以上で、自社や業界についても理解している人たち。
社長や管理職の方々がメンバーに入ることも多いのですが、その際は、できるだけ先輩方は盛り上げ役に徹していただくようお願いしています。

なぜなら、まじめな若手社員たちは日頃から上司や社長の意向を気にする場面が多いはず。「今回は好きなように発言していいよ」と言われても、すぐに切り替えるのは難しいものです。
何か意見をいう時に「自分の意見が合っているかどうか?」と気になってしまう人も多いのですが、ブランディングのプロジェクトでは、正しいか間違いかという基準はありません。好きなように発言できる雰囲気をつくってあげることが、まずは何より大切です。

ついでにお伝えすると、プロジェクトメンバーを選ぶ基準で、年齢よりも大切なのは、前向きな姿勢のひと。
ブランディングの活動とは、自社ならではの強みを再認識して、それを核に会社をさらに良くしていくこと。プロジェクトメンバーはその原動力になる人たちですから、グチっぽかったり斜に構えるタイプが入っていると議論が前へ進みにくくなります。


 

2.じっくり聞く

自社への想いをたっぷり持っているのは間違いなく社長なので、語りたいことや社員に望むことが山ほどあって当然です。しかしながら、ブランディングのフレームワークは、それを語る場ではありません。

まずは、ぐっと堪えて、社員たちの発言をうながしてあげてください。
ファシリテーターからの「お客様が自社商品を買ってくれる理由とは?」という問いかけに、社員が「うーん」と頭を抱えたときは、
「A社の◯◯さんとよく話しているやん。どんなこと聞かれるの?」
「競合のA社より、うちの商品は高いのに、なんで売れてるんやろな?」など、
わちゃわちゃと話しているうちに、「あ、そういえば」とアイデアの扉が徐々に開いてきます。

要は、話を引き出すきっかけづくり。小さなヒントを提供して、みんなが発言しやすい空気をつくり出すことです。
しかしながら、発言を誘導するのはいけません。たとえ口に出さなくても、「あれを言ってくれ」と言わんばかりの顔つきも同じことです(笑)。


 

3.認める、ほめる

これは社長だけに限ったことではありません。
ブランディング・ワークでの絶対ルールは、
・他人の発言を否定しない
・意見をいった人に拍手で返す
・フラットな関係性(名前もフランクに呼び合えるあだ名を決めます)

さらに、社長にお願いしたいのは、分かりやすくほめてあげてください。多少オーバーな表現くらいで大丈夫です。
「なるほどね、そこは私も気がつかなかった」
「さすが、◯◯さん。うちの営業は彼で持ってるんですよー(笑)」などなど。

え?その彼は営業トップではないって?
大丈夫です。次に語った営業スタッフにも、同じセリフで重ねて、笑いをとってください。大阪エリアの方なら、そのあたりはお得意かもしれませんね。


 

4.決して急がない

正直にお伝えすると、ワークを始めたばかりの段階ではそれほど盛り上がりません。だれもが自分自身について考えることが難しいように、自分の会社についても魅力や評価ポイントを考えるのは難しいことです(日本人は控えめな性格なのでその傾向が強いようです)。
また、ときには、プロジェクトの中盤まで進んだけれど、納得いかないので前のステップに後戻りして考えよう、という場合もあります。

それでも、どうか根気よく待ってください。
社長という立場の方は、先々を見据えて、考えながら走るという方が大半ですので、自分のスピード感とはまったく合わない・・・と落胆したくなる場面も出てきます。
しかしながら、答えを出すのは社長ではなく、コンサルタントでもなく、プロジェクトメンバーの社員たちです。多少の時間がかかっても、メンバー自身が悩みつつ答えを導き出すことに大きな意味があると理解してください。


 

5.関心を示す

逆に、放ったらかしというのも良くありません。社員たちは、日々の仕事に追われながらも必死で取り組んでいるのですから、ときどき励ましたり、労いの言葉も必要です。

ブランディング・ワークの実施は、約1ヵ月に1回程度の頻度で行うので、その後で振り返りミーティングを行ったり、宿題が出たときはたまに一緒に参加してみるなど。
「私たち、社長から期待されてるんだ」とメンバーが感じることは、プロジェクトが盛り上がっていく理由のひとつになります。

そのうちに間違いなく、メンバーの方々の目の輝きが変わる瞬間があります。
その発見は、私たちファシリテーターにとっても非常にうれしい瞬間なのですが、深く関わっておられる社長にとってはさぞ感慨深いことと想像します。


 

6.いつも味方でいる

ブランディング8つのステップのうち、中盤で行うブランドアイデンティティやブランドビジョンの設定。それが決まった段階で、プロジェクトメンバーが全社にむけてお披露目する機会をむかえます。

メンバーにとっては大きなハードルとなるはず。社内全体にむけて、自分たちが発表しなくてはならない。それだけでなく、質問やツッコミがはいっても、答えなければならない。同じ会社なので極端な反対意見はでないとしても、さまざまな相手を説得するのはなかなか難しいはずです。

基本的には、社内プレゼンも質疑応答も、プロジェクトメンバーに任せるべきですが、ここぞという時には社長の援護射撃をお願いします。
ブランディングに関して、社長はいつも自分たちとともにいてくれる、応援してくれているという感覚は、メンバーたちの行動や成長を後押ししてくれるはずです。


 

7.提案を実現する

ブランディングを進めるなかで、メンバーのなかにさまざまな気づきが生まれます。
「うちの会社は、技術開発がいちばんの売りなのに訴求できていない。新規顧客の工場訪問をはじめたい」
「誠実・安心が強みなのに、窓ガラスにヒビが入ったまま。新しいものに替えたい」など。

チームから提案されたら、以下の質問をしたうえで、必要と判断できたらできるだけ実現をお願いします。
・ブランドアイデンティティ、ブランドビジョンがベースにあるか
・そのアイデアを実現することで、どんな効果が期待できるか

もちろん、事業計画や予算などとの兼ね合いもありますが、まずは小さなことから始めてみる。プロジェクトがまだ途中であっても、ブランディングの成果としてアクションをおこすことが大事。社内全体へのアピールにもなります。


 

ブランディングの進め方Q&A


 

プロジェクトメンバーは何人くらいが適当?どうやって選ぶ?

ワークを行う人数に制限があるわけではありませんが、6~7人までが適切です。あまり人数が多くなると、意見がまとまりにくかったり、そのなかでも対立チームができてしまうのは好ましくありません。

メンバー選択は、上記でもご紹介したように、前向きな性格が絶対条件。キャラクターはいろいろあってよいと思いますが、発言力のありすぎる人、社内での影響力が強い人は避けてもらいましょう。物静かなタイプでも冷静に考えられる人、業務経験が浅くても広い視野で物が見られる人は向いています。


 

ブランディングの8ステップとは?

取り組みのステップとして、マーケティングのフレームワークを利用しながら、段階的に進めていきます。

1.環境分析による市場機会の発見(PEST分析、3C分析)
2.市場細分化(セグメンテーション)
3.見込み客の選定(ターゲティング、連想マップ)
4.独自性の発見(ポジショニング)
5.ブランドアイデンティティ(ブランドアイデンティティ、ブランドプロミス、ブランドビジョン、ブランドパーソナリティ)
6.具体化(4P/4C分析)
7.刺激の設計(ブランド要素/ブランド体験、推奨規定、禁止規定)
8.目標設定
その他にも、必要に応じて、異なるワークを組み込む場合もあります。


 

どのくらいの期間が必要?

ブランディング8ステップのうち、ステップ5のブランドアイデンティティ策定までで約半年は必要です。そこから具体的な目標設定の段階に入りますが、その内容や進め方によって異なります。
目標設定ができたところで一段落となりますが、そこからの運用が本番。小さな取り組みから実施していくので、何らかの変化がおこってきますが、事業計画レベルで結果が現れるには数年単位と考えておくべきでしょう。

ブランディングで効果が出ない理由とは?見直しポイントと次の一手

ブランディングを行う効果を書いた黒板

かなりの時間とお金をかけてブランディングに取り組んだ。ブランド・アイデンティティも掲げることができた。社内外へのアピールもやっている。それなのに、どうも効果が見えてこない・・・。
そんなモヤモヤを抱えているとしたら、ブランディングの進め方において課題があるのかもしれません。

最近になって、ブランディングに取り組む企業は多く見られるようになりましたが、その反面で同じような悩みを抱えているご担当者も少なくないようです。
今回は、ブランディングにおける見直しポイントと、結果につなげるためのさらなる一手についてご紹介します。


 

ブランディングで期待できる効果とは

そもそも、ブランディングを実施することで、どんな効果が得られるのか?確認しておきましょう。

 

1.「売れ続けるしくみ」を作れる

「ブランドとは売れ続けるしくみである」とブランディングの教科書には書かれています。ちなみに、マーケティングは「売れるしくみ」。
取り組みのなかで、市場分析などマーケティングのフレームワークを使う点では同じですが、ブランディングはそこに自社ならではの強みや可能性の観点を加えることで、競合他社がついてこられない領域へと踏み込むことができる。だから、売れるだけでなく売れ続けるしくみになります。

「売れ続けるしくみ」とは、具体的な効果を挙げると

・価格競争で戦う必要がなくなる

もし、あなたが「今日はごほうびにおいしいアイスを買おう」と思ったとき、どんな基準で商品を選ぶか。
私なら迷わず、ハーゲンダッツに手が伸びます。だって、間違いなくおいしいから。特別なミルクや高品質な素材を使い、安心できる生産体制のもと作られていて、格別のバニラやいちごの風味を楽しめるから。それがまさしくブランド価値というもの。他の商品より100円程度高くても、まっすぐ手を伸ばしてしまう理由があるのです。

・知名度が上がる、波及効果を生む

ハーゲンダッツのようにブランド価値が確立されると、ブランドは勝手に独り歩きをしてくれるようになります。
「ハーゲンダッツはアイスクリームの王様よ」と誰かが言い出すと「私もそう思う!ストロベリー味が最高」などと盛り上がる。その日、彼女たちが食後のデザートにハーゲンダッツを選ぶ可能性は高まり、またその会話を電車の中で聞いていたおじさんまでも、コンビニの前で足が止まるかもしれません。

・付加価値を生む

ブランドには感性的価値を生み出す力があります。そして、これが購買の際に大きな決定権をもつことになります。
しつこくハーゲンダッツで語ると、たとえば夕食のあとに贅沢なひとときを過ごせる、ちょっと疲れている友人を笑顔にしてあげられる、「さすが◯◯さんね」とセレクトした自分の価値まで上げてくれる。そんないいことが待っているから「買っちゃおう」と思うだけでなく、「買えて良かった」とさえ思ってしまう。人の消費行動は、感性的価値に大きく左右されるのです。


 

2.社内の意思統一、モチベーション向上

「お客様がうちの商品・サービスを買ってくれる理由は何だと思う?」
そう聞かれて、明確に即答できる人はどのくらいいるでしょうか?経営トップでさえ、新入社員にわかりやすい言葉で伝えてと言われたら、戸惑うかもしれません。それぞれが頭の中ではイメージしているけれど、それを表現してみると少しずつ異なっているはずです。
そんなふうにぼんやりしているイメージにピントを合わせ、「うちがどこにも負けないのはここ!」と宣言すること。それがブランディングです。

言葉で明確にすることで、どう変わるのか。
まず、全員の頭のなかのイメージが統一される。判断基準が定まる。それに基づいて行動が変わる。お客様への言動も変わっていく。
もっともわかりやすい例がスターバックス。どこのお店に行っても、同じように心地よい空間で、フレンドリーに迎えられて、コーヒーの時間を楽しめるのは、スタッフ?全員の意思統一がなされているからできることです。


 

3.採用活動で優位に立てる

極論でいうと、就活者が求めているのは「自分に合う会社」であること。自分の居場所がしっかりとあって、自身の力が発揮できて、さらに成長していける会社であること。給与や有休など条件面はもちろん大切ですが、それだけで決めるには絞り込めないはず。仕事を楽しめて、気の合う人たちと頑張れる環境はもっと優先順位が高くなるでしょう。

ブランド価値は、その判断基準となります。ブランドとは、競合他社にはない自社の強み。採用における競合他社にはなくて、就活者が求めていることに自社だけが応えられる魅力を明確化して、訴求することが採用におけるブランディングです。


 

4.企業として成長する基盤をつくれる

ブランディングのプロセスで確立されるのが、ブランド・アイデンティティ(ブランドの本質的な価値を分かりやすい言葉にしたもの)。そして、ブランド・ビジョン(ブランドがめざす理想。顧客をまきこんで社会にどう影響を与えていくか)、ブランド・プロミス(ブランドが顧客に約束すること)。

とくに、ブランド・ビジョンは、自社だけでなく顧客もまきこみつつ、社会のなかで影響力をもつ存在になろうとする主旨ですから、現状に満足していては達成できないわけです。全社で共有し、同じ目標にむけて走らないといけない。そのプロセスが企業の成長をうながすことになります。
また、社外にメッセージを発信することで、地域からも賛同・応援してもらえる可能性も高まります。


 

なぜ、ブランディングの効果が出ないのか?見直しポイントとは

ここからが本題です。大手広告代理店に依頼し、それなりの費用もかけて取り組んだのに、イマイチ効果を実感できていない。
その理由は、以下2つのどちらにあります。


 

1.社外むけのブランディングしかやっていないから

ブランディングには、社外むけ(エクスターナルブランディング、またはアウターブランディング)と社内むけ(インターナルブランディング、またはインナーブランディング)の2つがあります。両方が必要ですが、とくに第一段階として行うインターナルブランディングが大切。
なぜなら、ブランド価値(=競合他社が持ち得ない自社の強み)は自社を振り返ることでしか見つけられないからです。

自社ならではの魅力をとことん掘り下げずに行うブランディングは、本来のブランディングではありません。それは単なるマーケティングです。一時的には売れるかもしれないけれど、売れ続けるほどの力を持っていません。

ブランディングに対する勘違い:デザインだけを変えても意味はない


 

2.現実と理想の姿とのギャップを埋める努力をしていないから

こちらはインターナルブランディングもやったのに、効果が出ないという場合にあてはまります。
自社の強みを明確化し、プロモーションにも注力した。それなのに効果が出ていないのは、目標を実現するために実効性のある施策を打っていないからです。

たとえば、ある日用品メーカーがブランディングに取り組んだとしましょう。
主力商品であるティッシュペーパーは、知名度は低いものの、肌触りが絹のようにやさしい。吸収力も抜群なので、赤ちゃんのお尻ふきに最適と評価されており、一定のリピーターもついています。なんとかこのティッシュペーパーをきっかけに、業界シェアを高めて、ブランドの地位を確立させたい。

そこで、ブランディングに取り組み、自社ならではを訴求できるブランドアイデンティティを掲げました。
パッケージやPOPにも反映して、ドラッグストアの販売員さんにも同じようなメッセージを伝えてもらうように動きました。
でも、なぜか大した結果につながらない。

それは、現状の強みを見つけて、それを社内外に伝えることだけで満足しているからです。ほんとうは、そこからさらにステップアップしブランド価値を高めいくことで、目に見えて大きな効果が得られるのに、その手前でストップしているのです。


 

さらにブランディングの効果を上げる方法

それでは、いかにして結果につなげるか。以下のフローで考え、実行にうつします。

1.ブランド・アイデンティティをベースに、自社がめざす理想の姿を定める
2.その理想に近づくためには何が必要かをリストアップ
3.そこからさらに細分化し、各部署の取り組みとし、一つひとつに具体的な施策を立てる
4.施策は中期計画にも盛り込む
5.PDCAを回していく

ブランドアイデンティティは、現段階での強みや魅力がべースとなるもの。それを社内外に訴求・浸透していくことはブランディングにおける基本ですが、それだけだと右肩上がりのグラフ角度はそれほど高くはなりません。もっと角度を上げていくためには、現状からさらに上をめざした理想形を描き、そこから逆算していく働きを加えることをおすすめします。

WEB制作会社のかしこい選び方:見極めるための10のポイントとは

WEBのラフ作成を行うデザイナー

「WEB制作会社を選ぶのって難しいですよね」初めてお会いするお客様からよく聞くコメントです。
たしかに、WEB制作会社は世にあふれており、規模もさまざま。困ったことに、どこの実績を見てもそれなりにきれいなサイトが並んでいる。
「この値段の差って何なの?」「選択基準はどこにおけばいいの?」そう思われるのは当然のことでしょう。

WEB制作の品質には、見た目だけでは分かりにくい部分(たとえば、検索エンジン対策やシステムの使い勝手、セキュリティ面など)もあるので、業界に精通していない人には判断しにくい部分もあります。制作の進め方においても、クライアントの苦い経験談をきくと「それはいかんよなぁ」と襟を正したくなるようなケースも。

だから今回は、リニューアルなどでWEB制作会社を選ぶときに気をつけたいポイントをご紹介したいと思います。


 

WEB制作会社を見極める10のポイント


 

1.コンセプトを最後まで貫けること

リニューアルのコンセプトはどんな会社でも提案してくれますが、それを制作メンバーみんなが最後まで貫けるかは別のことです。
なぜなら、実際にリニューアル作業がスタートすると、発注側も制作側もとても忙しくなって、目の前の業務で頭がいっぱいになりがちだから。

発注側は、社内の意見集約や意思統一にかなりの労力をとられるため、ときには目標を忘れがちになります。たとえば、本部長から「もっと派手な色づかいにして」などと言われると、断りにくかったりする。
制作スタッフの方も、スケジュール内に納めるために必死なので、ついついお客様の言われるままに修正を加えたりする。
そんなことをくり返していくうちに、ふと気づくと「この表現、このデザイン、コンセプトからズレてない?」となりがちなのです。

そこで「ちょっと待った!」をかけるのは、発注側ではなく、WEB制作会社側の役割。とくに、プロジェクト全体を冷静に見渡せるディレクターの仕事です。

もっと言えば、コンセプトの設定はさらに大切。ゴールが明確化されていないと、みんなが道に迷ってしまいます。
リニューアルの背景にある、企業の課題や思いを解釈して、企業がめざすべき姿やWEBサイトで実現すべきことについて、しっかりとすり合わせすることが重要です。


 

2.制作者と直接にコミュニケーションがとれる環境である

下手な伝言ゲームほど、イライラすることはありません。ちょっとしたニュアンスの違いやメールの読み違いなどで、時間のロスが発生してしまいます。
延々とメールで説明するより、電話で担当者と話せば5分で完了する場合もある。制作会社との間に代理店が入っている場合でも、制作に関するやり取りは直接に話せる体制をつくってもらいましょう。


 

3.必要な修正にちゃんと対応してくれる

もしも、「デザイン修正は3回までです」といったルールを提示されたら、それは断るべきです。
その理由としては、

1. クライアント主導で制作が進む可能性が高い

本来なら、合意したコンセプトのもとデザインを行っているので、それほど大きなズレが発生することはないはず。わざわざルールを作るということは、修正回数を区切らないといけないほど煩雑な進め方であると予測できます。
コンセプト主導ではなく、クライアント主導に偏ってしまうと、チェックするタイミングや気持ちの変化によって修正が発生するのは当然なことです。

2.ワイヤーフレームでのすり合わせができていなかった。

1のような問題が起きないために、事前にワイヤーフレーム(ラフ+主旨説明)を作るのが賢明なやり方。原稿の詳細までは決められなくても「このような内容をこのような見せ方で掲載しますが、大丈夫ですか?」と確認し合うことで、大きなズレは発生しにくくなります。

いずれにせよ、企業が発信するWEBサイトは、コーポレートサイトであれ商品サイトであれ、企業の姿を映し出す鏡のようなもの。デザインに限らず、より良いものを目指そうという心意気が感じられる会社であってほしいと思います。


 

4.進捗管理がきっちりできる

WEBサイト制作会社に必要不可欠な能力のひとつとして、進捗管理があります。
納期に間に合わせることはもちろんですが、多くの人たちの意思決定を経て予定どおりに進行できるかは、おもに制作会社の進捗管理能力にかかっています。

見極めるポイントとしては

  • スケジュール管理はだれが担当するか?その人は適任か?
  • 管理方法は?(ツール、定例ミーティング実施など)
  • 制作チームの体制(役割分担がしっかりできそうか、途中で担当者は変わらないかなど)
  • 過去の事例など

大きなプロジェクトになればなるほど関わる人たちも増えてくるので、スケジュールはどうしても遅れがちになります。そんなときでも、うまくコミュニケーションをとりながら、ときには譲歩したり、ときにはお尻を叩いたり、進捗管理する人のセンスが左右するとも言えるでしょう。


 

5.原稿や素材はどこが準備するかを明確にしておく

コンテンツを作るにあたって、一番負荷がかかるのが原稿制作です。
製品特長や技術紹介、自社の強みなど、社内の人に文章で提出してもらうとかなりの時間が必要になるとともに、文章のクオリティも人によって差が出てきます。

また、WEBサイトはほとんどの場合、キーワード検索によって見つけてもらう性質のものですから、文字情報はとても大切。デザインがいくら美しくても、来てほしい人を呼んできてはくれません。ターゲット層が求めている情報を提供しつつ、SEOにも配慮した原稿を準備することが大切です。

ビジュアルについても、写真素材などはどちらが提供するか、各ページのイメージを決めるメインビジュアルはどちらが提示するかなども明確にしておくべきです。


 

6.ディレクターは、ロジカルな頭と熱いハートをもった人に頼みたい

先ほどの進捗管理やコンセプトの反映、情報整理においては、ロジカルに冷静に考えられる頭が必要です。けれども、それだけではおもしろくない。サイトの訪問者を感動させたり、納得させるためには、エモーショナルな要素も必要です。そんな人間くさい部分にもこだわってこそ、ほんとうに血の通ったWEBサイトになるはず。
ディレクターにすべてを求めるのは難しいかもしれませんが、少なくとも制作チーム全体としては、そんな両面性を兼ね備えているべきだと考えます。


 

7.頭のやわらかいデザイナーと、度量の大きいSEがいる会社

制作段階において、ディレクターに次いで接点が多いのは、デザイナーとSE(システムエンジニア)。どちらも能力の高さは必須条件ですが、その他の要素としてあげてみました。

WEBデザインにおいてとくに求められるのが、情報をデザインする力です。
WEBサイトは紙媒体のようにペラペラめくって全体像を知ることが難しいメディア。「これが知りたい」と思ってもらえないと、クリックはしてもらえません。限られた訪問時間とページビューのなかで、いかに訪問者ニーズに応えつつ、企業が伝えたいことを伝えられるか。そのために必要な文字や画像の情報をデザインします。
さらに、WEBの世界は新たな技術や見せ方がどんどん出てくる。昨年はこれが新しいと思っていたことが、今年はもう古いということもある。
そのようななかで、WEBデザイナーに求められるのは、柔軟な発想でものごとに取り組めること。自分の思考パターンや好き嫌いに縛られず、訪問者の視点にたって考えられることです。

SE(システムエンジニア)は、縁の下の力持ち的存在です。お問い合わせフォームはちゃんと動いて当たり前ですが、その背景にはSEが一文字も間違えずにプログラミングすることで成り立っています。そのためには事前にヒアリングして、仕様をきっちりと固め、セキュリティも担保してと、緻密な作業が必要です。
それだけに、途中から仕様を変えたいと言われると、SEはいちばん困るのです。そうならないように話を詰めることも必要ですが、それでも、ときには「うっかり忘れていた」「社内の情報システムからダメ出しされた」ということも出てくる。そんなときに、話を聞いて、適切な対処をしてくれるSEは相当優秀だといえます。


 

8.制作実績はかならずチェックしよう

WEB制作会社のクオリティを判断するには、事例において以下のポイントを質問してみましょう。

  • それぞれにどんな課題があってどのように解決できたか。ビジネスにどう貢献したか。
  • クライアントの強みがちゃんと表現されているか
  • 制作期間はどのくらいか
  • その後のメンテナンスについて、どの部分を請け負っているか
  • クライアントと長い期間つきあっているか
  • 担当ディレクターが関わった実績はどれか


 

9.社風を知るため、電話をかけてみよう

もし、営業担当者しか知らない場合は、さり気なく電話をかけてみるのもひとつ。できれば少し雑談などしてみると、電話をとってくれたスタッフの対応力や人柄などが感じられるものです。

仕事のパフォーマンスには、個人の能力✕事業内容✕チーム力✕職場環境が大きく関わるものですが、WEB制作会社の場合、とくにチーム力と職場環境は大きな要素。なぜなら、企画構成から、デザイン、コーディング、プログラミングなどそれぞれに専門性の高い業務のため担当者が分かれること。そして決められた時間内に連係してプロジェクトを進行していく必要があるため、チームワークや人柄、スタッフの定着性などがクオリティに関わってきます。

そのあたりを見極めるためにも、もし可能であれば、実際にオフィスを訪問して社内の雰囲気を見てみることをおすすめします。


 

10.セキュリティ対策にも明るいか?

WEBサイトを運営するということは、つねに情報改ざんや個人情報流出などの危険にさらされていることを意味します。ニュースでよく聞く個人情報流出は、サーバーセキュリティの甘さと個人情報の取り扱い方の問題。社内の情報システム関係者とともに、セキュリティ対策についてはしっかりと詰めておく必要があります。
また、第三者機関による脆弱性チェックについて、過去に対応した経験があるかも確認しておくべきです。


 

避けた方がいいWEB制作会社のタイプ

オマケ情報として、あまり悪口にならない程度にご紹介すると。


 

「どんな会社でもカッコよく見せますよ」的なオーラはあやしい

ダイレクトにそうは言わないけれど、そんな雰囲気が漂っていたらあやしいかもしれません。なぜなら、「カッコいい」の主語はクライアントでなく、自分たちにあると思っているから。
WEBサイトの見た目はとても大切だけれど、社名を差し替えるだけで成り立つようなカッコよさは意味がないはず。その企業の「らしさ」をしっかりと理解して、それを最大限に魅力的に見せてあげることがWEB制作会社の役割だと思います。


 

メンテナンス実績が少ない会社

サイト公開後、運営にも関わることで見えてくることは山ほどあります。まず、リニューアルの目的がどのくらい達成されたのか、上手くいかなかった場合はどのように対処するか。
また、クライアントと長くつきあうことで、さらなる要望に応えないといけないので、スタッフはもっと勉強しないといけない。そんな積み重ねが多くあるという意味で、WEBサイトのメンテナンス業務は制作会社を育ててくれると言えます。


 

スタッフが疲弊している会社

WEB制作会社はどこも労働時間が長いようですが、長く働くから良いというものではありません。電話をかけたときに元気のない人が多いとか、制作スタッフが疲れている様子があるなら、避けたほうがよいかもしれません。
どんなに優秀な人間でも、心と身体が健康でないと良いアイデアも出てこないもの。前向きにいっしょに考えてくれるパートナーを選ぶほうがよいでしょう。


 

たいへんな職務を軽減し、楽しめる運営にするために

WEB制作、とくにコーポレートサイトのリニューアルなど大きなプロジェクトになるほど、企業のご担当者もふくめて大きなタスクがかかります。社内外の多くの人とも関わるため、疲れるなぁと思うことも多々あるでしょう。
けれども、自社について振り返る機会というのはそんなにあるものではありません。創業者の思いや先輩方の歩み、それを受け継いだ社風、商品やサービスの良い部分を再発見したり、そんな貴重な体験を楽しんでみると得られるものも多くあるように思います。

そのようなプロセスを、傍でいっしょに楽しんでくれる。いっしょに悩みながら形にしてくれる。パートナーとして選ぶWEB制作会社には、そんな素養を期待したいですね。

ブランディングを真に成功させるには?

ブランディングはイメージアップ作戦ではない。

ブランディングを真に成功させるには?「当社はブランディングを始めます、かっこいいスローガンとWEBサイトを作りました!有名人を起用してキャンペーンもやります」。
そんなフレーズがちらほらと聞こえてきます。
ん?ブランディングのこと、少し勘違いしていませんか?

ブランディングすることで、商品やサービスが売れるようになる。そのこと自体は間違いではありません。
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会が発行する教本にも、「ブランディング=売れ続けるしくみ」と書かれています。しかし、大切なのは「売れ続ける」ことができるか、ということ。
どれだけ費用をかけて立派な販促活動を実施しても、「売れ続ける」までにはなかなか至らない。なぜなら、実施されている施策が一時的なプロモーションレベルのものだからです。

ブランディングは、マーケティングとも違う。

では、ブランディングとは何なのか?よく言われるマーケティングとどう違うのか?
言葉の意味を比べてみると、
マーケティングとは「売るための施策」
ブランディングとは「売れ続けるしくみ」

そこには、大きな違いがあります。簡単にまとめてしまうと、
売るための施策(マーケティング)は、販売目標達成のため、ターゲットとする市場に合わせた施策を立てること。
一方、売れ続けるしくみ(ブランディング)は、自社の商品・サービスの強み(差別化ポイント)を武器にして、それを求める市場で戦うことです。

また、マーケティングは、どこかの企業や商品の成功事例をマネすることもできますが、ブランディングにそれは当てはまりません。
ブランディングは、その会社や商品の存在価値そのものであり、他のどこにも同じものは存在しない。それだけに答えを見つけ出すことは簡単でないけれど、強みを活かせる市場で戦えば負けるはずがないのです。

ブランディングとマーケティングの比較表

ブランディング

定義 : 売れ続けるしくみ
取り組み期間 : 長期的
得られる効果 :
顧客:
探索コストの低減、価値獲得、自己イメージの投影、リスク低減
自社:
差別化、付加価値+価格決定権、法的保護、社内の意思統一やモチベーションアップ、ビジネスパートナー獲得、採用活動に貢献

マーケティング

定義 : 売るための施策
取り組み期間 : 短期的
得られる効果 :
顧客:探索コストの低減、価値獲得
自社:差別化、付加価値

ブランディングのメリットとは?

では、「ブランディング=売れ続けるしくみ」によって、具体的にどのような結果を得られるのでしょう。
顧客に対しては、

  • 指名買いが増える。
  • 値引きなしで売れる。
  • 新人営業スタッフであっても、自社のPRを端的に伝えられる。
  • 顧客からファンへと育てることができる。

その理由は、顧客が求めていることに対して、競合他社にはない答え(商品・サービス)で応えることができているから。
しかもそれは、自社が本来もっている強みに軸をおいているため、プロジェクトに取り組みやすく、継続もしやすいのです。

また、ブランディングは社内においても、大きな影響力をもちます。

  • ブランディングのプロセスで社内をふり返ることで、自社の良さを再確認できる。
  • ブランド価値を共有することで、社内の意思統一がしやすくなる、
  • プロモーション(WEBサイトやSNS、パンフレット、営業スタッフのセールストークなど)にブレがなくなる。
  • モチベーションアップにつながる。
  • 人材育成や採用活動に貢献する。

などなど。

自分たちの商品・サービスの魅力を再認識するということは、スタッフ一人ひとりが誇りを持つことにつながります。ですから、外向けの効果より、むしろ社内向けのメリットの方が大きい。ブランディングは、企業がさらに成長しつづけるための推進力にもなるのです。

ブランディングを成功させる秘訣とは

ご紹介してきたように、ブランディングによって得られる効果はとても大きいものの、正しい推進方法についてはまだまだ浸透していません。
それはブランディングは、エクスターナルブランディング(社外むけ)とインターナルブランディング(社内むけ)という2つの活動に大きく分けることができ、より華やかなエクスターナルブランディングの方に注目が集まりやすいせいかもしれません。
どちらも大事なステップですが、ブランディングの核となる自社の強みを見つけるには、まずインターナルブランディングが不可欠です。

また、自社の強みや弱みについて冷静にとらえ、深く掘り下げていく作業というのはなかなか難しいことでもあります。
スムーズに進めるためには、社外に信頼できる伴走者を見つけることです。なおかつ、パートナーは道を間違えないようサポートしながら、一緒に悩んでくれることも大切。
ブランディングは、長期的かつ着実に積み重ねていく作業であるため、じっくりと腰を据えて取り組んでいくことをおすすめします。

社長の指示なしで自走する会社の作り方

覚悟を決められるか?社員のために、会社のために。

株式会社エーディエフ
代表取締役 島本 敏 社長

株式会社エーディエフ代表取締役 島本 敏 社長

社員の成長を妨げていたのは?

社長:「来週の展示会、オレも行こうか?」
スタッフA:「いや、別にいいですよ」

スタッフB:「今度の新聞広告のペルソナ、もう少し具体的に固めたいんですが」
社長:「あ、ごめん。もう一回考えるわ」
島本敏社長が率いる株式会社エーディエフでは、そんな会話が日常の風景である。

ここだけを聞くと、ほんとに社長?と思われるかもしれないが、決してそんなことはない。
「以前はね、なんでも自分でやらないと気が済まなかった。いつもみんなを急かすし、待ちきれずに自分が先にやっちゃうし。かなり鬱陶しかったと思いますよ(笑)」。
中小企業の経営者にはありがちな話。自らが先頭を走ってきた経緯や事業への思い入れが強すぎて、つい手も口も出したくなる。
「しかしそんな自分の行動が、実は社員の成長をジャマしていたのだと、後になって分かりました」と、振り返る。

今日から何もやらない宣言。

それは今から8年前のこと。島本社長が大きく舵を切った日である。
「俺はもう、何もやらないから」。
めずらしく数日出社しなかった社長の顔は、ヒゲもそらず、少しやつれていた。
「かなりヤサグレてましてね、あの時は」。
自分の思い通りにみんなが動いてくれない、資金調達などを全力で支えてくれた父親が亡くなったことも重なって、かなり弱っていた時期だった。

社員たちは唖然としたことだろう。それまでは、営業も見積もりも、ときどき最終検品までこっそり社長がやっていたのだから・・・。
「でも、見積もり依頼きてますけど?」
「もう、やらん。お前やってくれ」
どうやら本気のようだ。社長がやらないと言うなら自分たちでやるしかない。戸惑いつつも社員たちは仕方なく動きはじめた。

「それがね、驚いたことに業績が落ちなかったんですよ」と島本社長。
自分なら今週中にやれると思うことが2~3週間かかったりするけれど、自分がやるよりもクオリティの高い成果を出してくれる。
「オレって、要らない存在だったんかも・・・、凹みましたね(笑)」。

しかし、そこで腐らず、前へ進むのはさすが。実務でやることがなくなったぶん、社長業を追求するようになっていく。
大阪府中小企業家同友会の支部幹事として活躍し、経営者仲間のフォローをするなかで経営や社内コミュニケーションについて学んだ。社員には実務の力をつけてもらう一方で、社長は社長にしかできない仕事をする。人の輝いている部分を見る力がついたのもこの時期らしい。

いつ芽を出すか。それは雑草自身が決めること。

株式会社エーディエフの社長とスタッフ社員が「自走してくれる集団」。中小企業の社長にとっては、まったく夢のような話だ。もしかすると、そんなことは理想にすぎないと諦めている方もおられるかもしれない。
ただ、エーディエフでは社長の「やらない宣言」後、社内が自走し始めた。
しかし、やらないと宣言するだけで本当にそうなっていくものなのか?
経営サイドにいる筆者も、ついつい前のめりになってしまう。

「雑草ってね、育てようとしても育たないって知ってますか?」
「へ?雑草ですか?」
「そう。同じ時期に種をまいても一緒には育たない。いつ芽を出すかはその雑草が決めるわけです。各自のベストタイミングで芽を出すから、環境変化にめちゃくちゃ強いらしい」。人の伸び方も同様だと、島本社長は語る。
最初からぐんぐん芽を出す人もいれば、なかなか出ない人もいる。それを社長が制御しようとするのは間違い。なにかのきっかけで腑に落ちて、本人が「よし、やろう」と、自ら動きはじめることに意味があるのだという。

「雑草の研究者が書いている本です。この本に出合ったのはかなり後ですが、エーディエフは雑草の集まりみたいなものだ、そう思えたらなんだか、今まで社員と向き合い切っていなかった自分がみじめで、涙が出ましたね」。
その言葉のなかに、詰み重ねてきた道のりの重さが感じられた。急かしてばかりの日々から一転、とにかく社員を信じて待つ。
社長がやるべきことは人を育てることではなく、社員が自ら育つ環境を用意してあげることだったのだ。

WEB事業部が立ち上がった。

株式会社エーディエフのスタッフ一つのいい例がある。
エーディエフはアルミフレームのメーカーでありながら、なぜかWEB事業部がある。数年の間に自社サイトを4つ立ち上げて、集客につなげるとともに、最近は取引先からも引き合いさえもらえるまでになってきた。2名の専従スタッフは、もともと製造業務で入社してきた人材だ。

事業部の立ち上げから責任者を務める池ノ上は、以前は設計業務を担当していた。製造や営業、展示会業務もこなしていたが、製造以外に何かできないかとWEB事業をスタートさせたのだ。
「僕はあれこれ言われるよりも、自分の裁量で進められるほうが断然いいです。事業部制にしてもらったのも、独立した事業として成長させたいから」。定款を書き換えたっていい。どんどんやろうやと社長が後押ししてくれるから、池ノ上も邁進できる。

制作担当の西は、入社4年目。WEB制作は趣味レベルだったのを、独学で学びながら制作や広報業務を担っている。
「やりたいことをやらせてもらって、本当に感謝しています。だから必死でスキルアップするのは当たり前のこと」。
就活イベントで、島本社長の話に惹きつけられて入社した一人だ。

「発想力や提案力も、ものづくりですよ。うちは製造業だからなんて言ってていいのか。ロボットに仕事をとられたなんて、バカな話はないです。そんなことになる前に、地頭を鍛えてロボットにできない仕事を創り出すことが大切です」。
「それにね、万が一なんらかの災害で工場が被災しても、再開するまでの収益源になってくれるかもしれないでしょう?」。
予想できないことが起こる時代、何かあったときにどう対処するか。WEB事業に限らずやわらかな地頭がそろっていれば、新しい道が開けるかもしれない。
たしかに、なにがあっても雑草はたくましく生き延びる。

一生を輝かせる場所となれるように。

株式会社エーディエフのスタッフ「やりたいと手を挙げる人にやってもらうのが一番いい。そのことに対する思いは誰よりも強いんだから」。
人は苦手を克服するより、得意なことに集中する方が成長は加速する。それが会社から期待されているなら、なおさらだろう。

島本社長が最近、考えていることがある。
「人生長くなったぶん、終身雇用なんてナンセンスになってきました。みんなスキルアップしたいし、世代によってやりたいことも変わっていく。それなら、世代やステージごとにチャレンジできる環境を整えてあげたら、エーディエフは社員が一生を輝かせられる舞台になれるかもしれない」。
それが今、自社広告でも打ち出している「結果的終身雇用」という考え方だ。

20代の社員が、奥さんの実家がある福岡に営業所を作りたいと言い出した。
「間違いなく誰よりも思いが強いわけです。もちろん結果を出してくれていますよ」。
また、30代のある社員は、もともと独立の志があったが、「ここでやりたいことができるから、独立する気がなくなった」そうだ(彼は今年、取締役に就任)。

独創的な雑草集団は、さらに進化していくだろう。
インタビューの帰り道。青い空を見上げると、もくもくと夏雲が湧きあがっていく。
さて、自分たちは経営者として、働く一個人として、どう動くべきか。大きな宿題をもらったような気がした。

ブランドが語るべき世界観とは?その価値と考え方

売っているのは商品でなく「世界観」

 

こんな暮らし方がしたい

理想の住まい

オンラインショップを開くと目にとびこんでくる、ポストカードのような一枚の写真。そのガラスの花瓶は凛とした佇まいで、生けられた緑の葉っぱがなんとも涼しげ。周囲にはゆったりとした時間が流れているようです。
商品ページで主に語られているのは、そのガラスの花瓶を手に入れると、いかに心豊かな日々が訪れるのか。ショップのスタッフたちが自宅でその花瓶とどのように暮らし、何を感じているのか。読み進めていくうちに、「うちにも、この花瓶が必要かも!」と気持ちが高まってくる。つい先ほどまでは3,000円の花瓶など買うつもりもなかったのに・・・。
これは筆者のリアルな体験。人気のEC雑貨ショップ「北欧暮らしの道具店」では、多くの人が魔法にかけられてしまうようです。

このオンラインショップで一貫して発信されているのは、自分らしく心地よく暮らすことへの提案。「こんな気持ちで生きていきたいよね。そう思わない?」。すぐ隣に座って、一緒に窓の外を眺めながら語りかけられているようで、「そうそう、その通り!」とポチってしまうのです。

 

いかに世界観を伝えるかがカギ

ものが売れにくくなった今。ブランドの世界観は、購買の理由として大きな意味をもつようになってきました。
ほぼ同じようなデザイン・機能性をもつ白いTシャツでも、どこで買うかを決めるのは消費者の心ひとつ。「ユニクロのほうが安くて長持ちするじゃないの」とお母さんに言われたって、「そんな理由じゃないのよ」と反論してもらえる原動力が今は必要なのです。

ブランドの価値というのは、消費者の心の中にあるもの。鮮明に焼きつけるためには、ブランドと消費者の間で共有される「世界観」が必要であり、それはB2C、B2Bに限らず重要になってきました。

ブランドの世界観って一体なに?

北欧暮らしの道具店

では、ブランドの世界観とはどんなものなのか?できるだけ具体的に掘り下げていきたいと思います。

世界観とは、単体のモノではなく、ライフスタイル。考え方や生き方。理想とする形。また、限られた時間ではなく、長い期間。有限ではなく無限な拡がり。機能面だけでなく、情緒的な満足感。いくつものストーリーが生まれる背景。どれだけ語っても語りつくせないような価値観です。
それだけに、伝えることが難しく、受け取る側にもいろいろな解釈があったりする。しかしながら、ターゲット層が求めているゾーンにぴったりはまると、惹きつける力は非常に大きい。お金には換算できない満足感が存在します。

実際の例を見てみると、
北欧暮らしの道具店:「フィットする暮らし、つくろう。」
自分の生き方を自分らしいと感じ、満足できることを「フィットする暮らし」と定義しています。

Apple:「自分らしく生きることを支援する」。
1997年に公開された有名なTV-CM 「Think different.」。アインシュタイン、パブロ・ピカソなど世の中を変えた天才たちの映像とともに「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが本当に世界を変えている」という、Appleが社会に強く提示したいメッセージが込められています。

スターバックスコーヒー:「人々の心を豊かで活力のあるものとするために」
あの独特の世界観をつくり出しているのは、そこで働くパートナー(従業員)の意識の高さにあります。彼らはマニュアルを必要とせず、上記の共通認識のもと、自分たちでその場に合わせて最善の方法を考えて対応する。質の高いホスピタリティがスターバックスの一番の強みなのでしょう。

こうやって見ていくと、ブランドの世界観は、消費者である自分たちが本来望んでいたことなのだと気づかされます。その特別な価値に共感し手に入れたいと思うから、そのブランドを選んでいる。そして、それを選んでいる自分自身に対しても満足しているのです。

自社ブランドの世界観。その作り方とは

駅での雑踏

では、自社ブランドの世界観について、どのように考えていけばよいのか?そうなんです。そこが一番むずかしいところです。

世界観というのは、そう簡単に作り出せるものではありません。ましてや、広告代理店など社外の人に考えてもらって「さあ、今日からこれでいこう」というようなものでもない。どんなにセンスがよく耳ざわりのいいフレーズができあがっても、それが実際のブランド価値と合っていなければ逆効果となるだけです。

まずは、自分たちのブランドが大切にしていることとは?そんな基本的なことについて、社内で議論することから始めてはどうでしょう。
たとえば、

  • 自社ブランドについて、誇りに思っていることは?
  • 愛用してくださるお客さまは、どこを気に入ってくれている?
  • 創業者の思いとは?
  • ブランドの存在が、社会に対してどのように貢献しているか?
  • サプライヤーはどのように感じている?
  • お客様相談室にはどんな声が届いている?

一人ひとりの受け止め方は違っていても、その中心には共通した価値観があるはずです。
絶対に曲げたくない信条、理想形、お客様とともに「そうありたいよね」と握手したくなる気持ち。そして、考えはじめるとちょっと胸が熱くなったりする。それこそが、日々自分たちが作り出しているブランドの価値、ブランドの世界観なのだと思います。

ブランディングサービス

SEOで忘れがちなポイント:商品名

SEOで忘れがちなポイント:商品名

今回は、検索エンジン対策として意外に見落とされがちなポイントです。

—商品名が、自社独自の言葉になっていませんか?—

たとえば、ある文房具屋さんのWEBサイトを仮定します。
自慢商品は「クリアファイル」、じつは業界では草分け的な存在です。
だから、商品名は発売当初からずっと変わらず「透明ファイル」。
社内も販売業者さんもみんな知っているので、WEBサイトでも「透明ファイル」で統一しています。

しかしながら、Googleでの月間検索数では
クリアファイル:27,100件
透明ファイル :320件
圧倒的な差があるため、クリアファイルで検索する人には見つけてもらいにくいのです。

かなり極端な例ではありますが、このケース、実はかなりよくあることです。
自社の商品名やサービス名で、SEO的に損をしていることはないでしょうか?
もしかして・・・?と思われたら、一度調べてみてください。

より詳しい数字を調べてみたい場合は、お気軽にお問い合わせください。

※「フレイバーズ月1メール」よりご紹介。
フレイバーズでは月1回程度の頻度で、皆さまにお役に立てそうな情報をお送りしています。

総務・人事・経理イベントに、約1.6万人が集まる理由

総務・人事・経理イベントに、約1.6万人が集まる理由

「えっ、9,000円もするんですか?」
告知内容をよく見ずに訪れた、「第4回[関西] 総務・人事・経理 Week」インテックス大阪の基調講演でのこと。ちょっと尻込みしてしまった私をよそに、続々と来場者が受付を済ませていきます。

失礼ながら、内容的にもっと地味な集まりかと思っていた私は、その盛況ぶりにびっくり。
そして、もっと驚かされたのは、イベント集客のしくみが実に上手くできていることでした。

1.集客の目玉は、有料でも行きたくなる基調講演
「ワーク・ライフ・バランス、経営戦略としての働き方改革」。
いまや注目が集まる働き方改革について、エキスパートが登壇されるセミナー。企業にとっては高くない料金設定であり、また無料でないだけに本気度の高い集客を見込めるはずです。

2.動線の工夫
その基調講演が開かれるのは、展示会場のいちばん奥。その行き帰りで、来場者は展示ブ
ースに立ち寄りやすくなります。

3.商談活用のアドバイスつき
「見込みの高い顧客候補を、VIP招待してください」
主催者は、出展企業にこんなアドバイスをしているのです。
招待された方は「おもしろそう、行ってみるか」と足を運び、その帰りに出展企業のブースにも立ち寄る。
「ありがとう、非常に参考になりましたよ」となれば、商談も進めやすくなるというもの。

4.結果が出ると、来年も出展したくなる
そんなアドバイスのせいか、「ビジネスにつながる」イベントとなれば、出展企業は来年
もまた出たくなる。という訳で、来年の出展リストはほぼ確定されているとか。

何事も、明確な目的をもって動くべきなのだと、改めて勉強させてもらった一日でした。

※「フレイバーズ月1メール」よりご紹介。
フレイバーズでは月1回程度の頻度で、皆さまにお役に立てそうな情報をお送りしています。

自社ブランドのファンを育てる方法

自社ブランドのファンを育てる方法

今回は、7月に開催された宣伝会議インターネットマーケティングフォーラムよりご報告です。

—「10人の飲み会イベントでも参加します」よなよなエールの場合—

クラフトビール「よなよなエール」を、飲んだことがありますか?

ビール全体からすると、約1%しかないクラフトビール市場のなかで、ヤッホーブルーイングは確実に売上げを伸ばしているブランド。

その売上推移のグラフと、同じ右肩上がりのカーブを描いているのが、ファンイベントで出会った人数。
1万人規模にまで広がった彼らのイベント、そこでスタッフやファン同士が交流することで、「このビールが好き」というだけでなく、価値観の共有や、活動による自己実現にまで発展するほど盛り上がっているのだとか。最近では、ファンが自発的に幹事になり開催されるイベントもあるそうです。

なぜ、そこまでファン育成が成功しているのか?という問いに、
・スタッフ自らが楽しんでいると、お客さまにも伝わる。
・「この指とまれ!」が明確だと、ファンが集まりやすい。
・ターゲットを絞る。100人のうち1人がめっちゃ好き!と思ってもらえたら十分。
・ただし、アンバサダーなど意図的な方法はとらない。まず楽しんでもらうことを優先。
という答えでした。

たしかに、楽しそうなこと。自分の価値観に合うこと。いい仲間に出会えること。
そんな場所なら、誰だってのぞいてみたくなるものです。

「新たなビール文化を創出することで、ビールファンにささやかな幸せをお届けする」というミッションからも、クラフトビールのおいしさを地道に伝えつつ、楽しい時間を共有することで、ささやかな幸せを届けたい。
そのことを真剣に考えつづけている姿勢がファンを惹きつけているのだと感じました。

よなよなエール(ヤッホーブルーイング)
https://yonayonaale.com/

※「フレイバーズ月1メール」よりご紹介。
フレイバーズでは月1回程度の頻度で、皆さまにお役に立てそうな情報をお送りしています。