作成者別アーカイブ: 植松 あおい

製造業のブランディング手法、今日から始める5ステップ

「品質には自信がある。でも最近、他社と何が違うのかと言われることが増えてきた」こんな声を、製造業の経営者の方からよく耳にします。
技術力には誇りがある。長年お客様に信頼されてきた自負もある。それでも、価格競争に巻き込まれたり、選ばれる理由をうまく伝えられなかったりして、もどかしさを感じている方も多いのではないでしょうか。

その原因のひとつが、「自社らしさを伝える力=ブランディング」の不足だと思われます。
「BtoC企業でもないのに、ブランディングと言われても・・・」そう思われるかもしれません。しかし、製造業には、そもそもブランドの“核”となる価値がすでに備わっています。
必要なのは、それを“見える形”にし、伝える方法を少し変えることです。今回は、未経験の方でも取り組めるように、実践的なブランディングのステップをご紹介します。

本記事で分かること

製造業にとって、ブランディングは難しく聞こえるかもしれません。でも今、品質や技術だけでは選ばれにくくなっています。この記事では、自社の“想い”を伝わる形に変え、ブランドとして育てていくための5つのステップを、実践しやすい方法でわかりやすく解説します。

 

ブランディングとは「表面的な装飾」ではない

まず大前提として、ブランディングとは「かっこいいロゴを作ること」でも「SNSでバズること」でもありません。最近は、ブランディングを広告戦略の一つのように扱われている傾向がありますが、それは大きな誤解です。
ブランディングとは、“あなたの会社がなぜこの仕事をしているのか。何を大切にしているか”を、社内にも、社外にも、ちゃんと伝わるように言語化し、訴求していくことです。製造業にとってのブランディングとは、「想いと技術を、価値として“伝える技術”」です。

では、そうした“想いを伝える力”を、どうやって社内に築き、外へ伝えていけばよいのでしょうか。
実際に取り組もうとすると、「どこから手をつけていいか分からない」と感じる方も多いはずです。
そこでここからは、未経験でも着実に進められる、製造業のためのブランディング実践ステップをご紹介します。

 

製造業のためのブランディング実践5ステップ

STEP 1:Why(なぜ)を言語化する

ブランディングを進めるなかで、大切にしたい「ゴールデンサークル理論」というフレームをご存知でしょうか。これは、“Why(なぜやるのか)→ How(どうやるのか)→ What(何をやっているのか)”の順で伝えると、人の共感を得やすくなるというもの。一般的には「What=製品・サービスの説明」から話しがちですが、それだけでは他社と差別化されにくくなっています。
たとえば、「自社の強みは何ですか?」と聞かれたら、多くの製造業は「高精度」「短納期対応」「コスト競争力」と答えるでしょう。しかし、それはWhatやHowにすぎません。
本当に顧客の心に届くのは、「なぜその製品を作っているのか?なぜその技術を守っているのか?」という想い=「Why」です。それは創業者の想いであったり、地域との関係性、守りたい文化、届けたい未来など、表には出していなかった「根っこ」のようなもの。製造業を営むなかで、会社がずっと大切にしてきた想いを掘り起こすことで、それは必ず見つかります。

進め方のヒント
・創業ストーリーを振り返る
・「なぜこの製品を作っているのか?」と社員に聞いてみる
・「うちの技術が社会にどう役立っているのか」を一言で言うと?
・経営者・幹部で「うちが本当に大切にしていること」を3つ挙げてみる
・創業者や先代の言葉・信条にヒントがあることも多い
ポイントとしては、「かっこいい言葉」を考えるより、「正直な気持ち」を見つけるほうが伝わりやすくなります。

 

STEP 2:顧客像を再定義する

ブランディングを進めるうえで次に大切なのは、ターゲットを明確にするということ。「誰に何を届けたいのか」が明確になると、伝えたいメッセージもより具体的になってきます。
たとえば、「業界問わず対応可能」ではなく、「品質を重視し、安定調達を望む医療機器メーカーの開発担当者」など、顔が浮かぶレベルで具体化することが大切です。ターゲットを絞るほど、ブランドの言葉は強く・明確になります。

進め方のヒント
・過去3年で一番満足してくれた顧客を3社ピックアップ
・「どんな課題を抱えていて」「なぜ当社を選んだのか」を書き出す
・「この人のために商品を届けたい」と思える顧客像を言葉にしてみる
・顧客インタビューを実施し、価値を感じたポイントを把握する

 

STEP 3:強みの“見せ方”を整える

製造業には、現場に根ざした本物の強みがあります。ただ、それが「見える形」になっていなければ、外部の人には伝わりません。

たとえば、ウェブサイトや会社案内で「柔軟な対応」「豊富な実績」「確かな技術」といった表現を並べても、他社と似た印象になることがよくあります。
本当に伝えるべきなのは、“なぜそれを実現できているのか”という背景や考え方です。

進め方のヒント

1.言葉の見直し
「何をしているか」ではなく、「どんな想いでやっているか」を一文で表す。
✕「樹脂加工の専門メーカー」
○「開発者の“あと一歩”に応える、精密樹脂加工の専門家」

2.表現の再構成
・製品紹介ページに「開発の裏側」や「困難をどう乗り越えたか」を加える
・会社案内に「選ばれる理由」や「お客様の声」を挿入して信頼感を補強

3.情報の見せ方
・トップページや営業資料の冒頭に「どんな価値を提供する会社か」を一言で書く
・設備や数字より、働いている人の姿や想いを写真や言葉で伝える

 

STEP 4:共感を生むストーリーを語る

ブランディングにおけるストーリーとは「感情が動く背景」のこと。自慢話ではなく、挑戦・失敗・改善・信念といったリアルなエピソードの中に共感は宿ります。
たとえば、「若手社員が初めてリードしたプロジェクトで納期遅延寸前だったが、ベテランの支えで乗り切った話」「昔からの取引先に“御社の姿勢が好き”と言われたエピソード」など、そんな“人間味”こそがブランドになります。

進め方のヒント
・これまでで一番苦労したプロジェクトと、その乗り越え方を書き出してみる
・現場のスタッフに「印象に残っている仕事」を聞いてみる
・「最初の失敗」「顧客との忘れられないやりとり」などを1枚の紙に書く
・自社の強みが伝わる“実話エピソード”を3つピックアップする
ポイントとしては、きれいな話より人間味のある話の方が、人の記憶に残るものです。

 

STEP 5:ブランドを社内に浸透させる

ブランドのメッセージが明確になってきた。社外に対しての見せ方も分かった。でも、本当に大切なのは、ここからです。ブランド価値を守り育てていくためには、全社的な共感と協力が不可欠です。「経営者だけが分かっている状態」ではなく、社員一人ひとりが「うちの会社はこういう考えで動いている」と自然に語れるようになったとき、はじめてブランドは“会社全体の力”になります。

ある製造業では、社員向けに「うちの技術のすごさを語るプレゼン大会」を開催したことで、営業・設計・製造の間に一体感が生まれました。その結果、営業担当が顧客に語る言葉にも自信と説得力が生まれたそうです。
社内で浸透させる時に気をつけたいのは、「ブランド浸透=研修」ではないこと。日常の会話や現場の言葉に落とし込むことがカギとなります。

進め方のヒント
・朝礼や社内ミーティングで「なぜこの事業をやっているか」を話してみる
・社内共有スライドやポスターに“Why”や“ビジョン”を載せてみる
・社員同士で「うちの会社の魅力って何?」を話し合う機会をつくる
・若手社員に「この会社に入って感じたこと」を発表してもらう
トップダウンではなく“共通言語化”を目指すことがカギです。

 

製造業こそ、想いを“伝える技術”を持つべき

モノづくりの現場には、語るべき価値や想いがすでにあります。ただ、それが“伝わる形”になっていないだけかもしれません。
品質や技術に誇りを持ってきた製造業だからこそ、これからはその姿勢や価値観を、言葉として届ける力が求められます。
無理に飾る必要はありません。ありのままの想いを、少しずつでも外に見せていくこと。それが、価格ではなく“共感”で選ばれるブランドへの第一歩となるはずです。
ただ、言葉にすることや、社内に浸透させることは、実際に取り組んでみると意外と難しいもの。だからこそ、できるところから少しずつ始めてみるのが良いかもしれません。
また、外部の視点があるとスムーズに進む場面もあるため、必要に応じて相談できる選択肢を持っておくのも一つの方法です。

 

よくあるご質問(Q&A)

Q1. 製造業にとって、本当にブランディングは必要なのでしょうか?

A. はい、むしろ製造業こそ必要です。
品質や性能での差別化が難しくなってきた今、「なぜその製品を作るのか」「どんな姿勢で仕事をしているのか」といった企業の“姿勢”が選ばれる理由になってきています。
まじめにものづくりを続けてきた企業ほど、ブランディングの核となる“伝える価値”をすでに持っています。

 

Q2. ブランディングというと、デザインや広告の話でしょうか?

A. 一部そうした要素も含みますが、本質はそこではありません。
ブランディングとは、「自社がどんな想いで事業をしているのか」「誰にどんな価値を届けたいのか」を明確にし、それを社内外に一貫して伝える活動です。
デザインは“表現の手段”にすぎず、核は「企業の言葉・哲学・方向性」にあります。

 

Q3. 社長や上層部の想いはあるけど、言葉にするのが難しいです。

A.経営者の方は、日々の経営判断や現場対応で多忙な中で、“当たり前にやっていること”の価値に気づきにくくなるのは当然のことだと思います。自分自身のことが一番分からないと言われるのと同様に、自社について改めて考えるというのはなかなか難しい作業でもありますが、少しずつ続けていくうちに楽しみにもなっていくはずです。
私たちはヒアリングを通して、その“当たり前”の中から言語化できる本質を一緒に見つけ出すサポートをしています。

 

Q4. 中小規模の製造業でも、ブランディングは効果がありますか?

A. むしろ中小企業こそ、大手と違う“理由”で選ばれる必要があります。
地域密着、少量対応、職人の技、スピード感、誠実な対応、そうした強みをブランディングによって明確に伝えることで、価格以外で選ばれる会社になることができます。

 

Q5. まず何から始めればいいですか?

A. 最初のステップは、「自社のWhy(なぜ)」を考えてみることです。
創業の背景、譲れない価値観、こだわりを一度言葉にしてみてください。それがすべての出発点です。
もし整理が難しいと感じたら、ぜひご相談ください。第三者が入ることで見えることもたくさんあります。

 

ご相談・ご質問はこちらから

ブランディングに関心はあるけれど、
「どこから始めたらいいのか分からない」
「うちの会社でもできるのか不安」
そんなときは、お気軽にご相談ください。
私たちは、製造業の現場と価値を深く理解し、経営者の“想い”をかたちにするプロフェッショナルです。
まずはオンライン面談や簡単なヒアリングだけでも構いません。お問い合わせフォームより、いつでもご連絡いただけます。

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製造業は今こそブランディング。成功事例と戦略を解説

「品質がすべて」。
この考え方は、今も現場に深く根付いています。そして、それは決して間違いではありません。多くの製造業がその信念をもとに、誰にも真似できないモノづくりをしてきました。
ひとつひとつ丁寧に、精度と耐久性を追求し、数えきれない製品を世に送り出してきた実績。そこには確かな誇りがあるはずです。

だからこそ、「なぜ最近、選ばれにくくなっているのか」が分からない。そんな戸惑いが生まれても不思議ではありません。

 

品質の良さが見えにくくなっている現実

以前は、「壊れにくい」「精度が高い」といった性能や品質こそが、他社との明確な差でした。
しかし現在、各業界ともに製造技術の水準が上がり、ある程度の品質まではどこでも実現できる時代になっています。だから、顧客の側から見れば、各社の製品の違いが分かりづらくなっているという現実があります。

たとえば、図面上では同じ精度でも、実際のこだわりや努力は簡単には伝わらない。これは、製造業全体が真面目に努力してきた結果でもありますが、皮肉にもその努力が“見えにくさ”を生んでしまっています。

結果として、価格だけで比較されてしまったり、「なんとなく」で他社に流れてしまったりするケースが増えてきているのです。

 

顧客が求めているのは“違い”ではなく“意味”

今の市場では、「何を作っているか」だけではなく、「なぜそれを作っているのか」が問われるようになっています。
品質やスペックだけでは響かなくなり、「この会社は、なぜこの製品を作っているのか」「この会社と取引する意味は何か」といった“背景”が重視されるようになってきたのです。

たとえば、同じような機能の製品が並んでいるとき、選ばれるのは「考え方に共感できる企業」や「信頼できるストーリーを持つ会社」です。
その企業がどんな姿勢で社会に向き合っているのか。どんな価値観を持ってモノづくりをしているのか。
そうした“見えない部分”が、購入や取引の最終的な判断基準になっているケースが増えています。

そして、これはBtoCの話だけではありません。むしろ、BtoBの製造業にこそ当てはまる重要な変化なのです。

 

製造業が陥りやすい“語り方”のギャップ

多くの製造業企業では、自社の強みを「性能」「精度」「導入実績」「技術力」といった実利で語ります。それは正しいアプローチではあるのですが、どの企業も似たような切り口になるため、差が見えづらくなってしまうのです。

聞き手(顧客)の側からすると、「すごそうだけど、他社と何が違うのか分からない」と感じることが少なくありません。

ここで、ひとつ重要な視点があります。
それは、「何を作っているか(What)」ではなく、「なぜ作っているのか(Why)」を語るという視点です。

 

ゴールデンサークル理論に学ぶ、“Why”からの発信

マーケティングの世界でよく知られているのが、サイモン・シネック氏の「ゴールデンサークル理論」です。
この理論では、以下の3つの順序で物事を伝える重要性が説かれています。

  • Why(なぜやるのか)
  • How(どうやってやるのか)
  • What(何をやっているのか)

多くの企業が「What」から語り始めますが、人の心を動かすのは「Why」です。

たとえばAppleが人々に強く支持されているのは、単に「スマートな製品を作っているから」ではありません。彼らは「私たちは常識を疑い、世界を変えるために製品をつくっている」と明確な“Why”を掲げ、それが多くの共感を呼んでいます。
その理念を実現するHowとして、「Think Different(常識を疑う、型破りな考え方)」という姿勢があり、
その結果として生まれてくるWhatが、「iPhone」「Mac」「AirPods」などの製品です。
この順番で語られているからこそ、「ただのスマートフォン」ではなく、「Appleだから欲しい」と思わせるブランドになっています。

これは製造業でも同じです。
「なぜこの技術を守り続けているのか」
「なぜこの精度にこだわるのか」
「なぜこの業界に貢献したいのか」

そうした“Why”を伝えることが、製品や会社に“意味”を与え、顧客の記憶に残るようになります。

 

成功事例:ブランディングで選ばれる製造業へ

製造業ブランディングにいち早く取り組んでいる企業の事例をご紹介します。

 

1. オカムラ(オフィス家具・店舗什器)ーーWhyの言語化により価格競争から脱却

オカムラは、製品スペックではなく「働く環境をどう豊かにするか」というコンセプトを強く打ち出すことで、オフィス家具業界の中でも独自の立ち位置を確立しました。

たとえば、「働き方の未来を支える」というビジョンを前面に出し、製品単体ではなく“空間”や“体験”で価値を語るスタイルにシフト。
その結果、単なる「高品質な椅子」ではなく、「この会社と一緒にオフィスを作りたい」と選ばれるようになっています。

オカムラ

 

2. 能作(鋳物メーカー/富山県)ーー 製品ではなく“企業の世界観”がブランドになった事例

もともとは仏具などを製造していた町工場が、自社の技術や素材の魅力を再解釈し、「錫(すず)」を活かしたデザイン商品を展開。「伝統技術と現代の暮らしの融合」というストーリーが広まり、国内外で注目されるブランドに成長しました。

工場見学やワークショップなど、体験を通じたブランド価値の浸透にも積極的。単なる製品販売ではなく、企業そのものへのファンづくりに成功しています。

能作

 

3. ダイソン(イギリス)ーーWhyがブランドそのものであり、強い価格耐性を生む事例

製造業というよりプロダクト企業という印象が強いですが、ダイソンは“なぜ”を徹底して伝える会社です。

「従来の不満をゼロにする」という創業者ジェームズ・ダイソンの哲学がブランドの核になっており、製品の独自性もそこから生まれています。
スペックではなく「理念」で売ることで、価格帯の高い商品でも選ばれるブランド地位を築いています。

ダイソン

 

4. ミスミグループ本社(FA部品・金型部品)ーーBtoBでも、ブランドが信頼の源になる好事例

同社は「精密部品の調達リードタイムをゼロにする」という目標を掲げ、部品調達の“常識”を変える挑戦をブランドにしています。

結果、納期・価格・在庫に対する信頼性がブランド価値となり、エンジニアの中で“まずミスミを見る”という習慣が生まれています。

ミスミグループ

 

今こそ、ブランディングで先手を打つチャンス

製造業では、まだまだ「ブランディングはBtoC企業がやるもの」と捉えられている傾向があります。
だからこそ、今ブランディングに本気で取り組むことで、他社より一歩も二歩も先を行ける可能性があります。

競合他社がまだ気づいていない今のタイミングで「自社の想いや価値観」を言語化し、外に発信できれば、価格だけに左右されない強い選ばれ方ができるようになります。

ブランドは、単なる見た目の話ではありません。信頼や共感といった“無形資産”を築くための基盤です。そしてそれは、一朝一夕で作れるものではありませんが、積み重ねることで確実に効いてきます。

製品ブランディング

 

ブランディングとは、想いを形にし、届ける技術

最後にもう一度確認したいのは、「ブランディング=見せ方」ではないということです。ロゴやパンフレットを整えることだけがブランディングではありません。自社の価値観や信念、こだわりといった“根っこ”の部分を明確にし、それを社員や顧客と共有し、育てていく。それが、本来のブランディングの意味です。

製造業だからこそ、モノづくりの現場にある情熱や姿勢、譲れない想いを言語化し、届けることに価値があります。それは価格やスペックでは測れない「意味」を与え、顧客との関係をより深く、強いものにしていきます。

 

品質 × ブランディングが、これからの勝ち筋

品質が重要であることは、これからも変わりません。
しかし、その良さが“伝わらない”なら、それは存在していないのと同じです。

これからの製造業には、「品質」だけでなく、「伝える力=ブランド」が必要です。
そして、まだ多くの企業がそこに本格的に取り組んでいない今だからこそ、先手を打てば競争優位を築くことができるのです。

中小企業のブランディングはなぜ難しい?よくある課題と、成功へつなげる実践ヒント

ブランドって、やっぱりあったほうがいいよね」
「デザイン会社に頼んだけど、なんだかピンとこなかった」
「うちみたいな会社がブランディングなんて、まだ早いかも…」
中小企業の経営者の方々と話していると、こうした声をよく耳にします。
ブランディングは大切だと頭ではわかっていても、いざ実行しようとすると、
・何から始めればいいかわからない
・社内で協力が得られない。
・結局、表面的なロゴやスローガンだけで終わってしまう。
そんな“モヤモヤ”や“手ごたえのなさ”を感じている方も多いのではないでしょうか。

このコラムでは、中小企業にありがちなブランディングの課題を整理し、なぜそれが起きてしまうのか、どうすれば一歩進めるのかを紐解いていきます。

 

それでも、いま中小企業こそブランディングに取り組むべき理由

「中小企業にブランディングなんて本当に必要?」
そんな疑問を持っておられる方に、答えは間違いなくYESです。実は、中小企業のほうがブランディングの成果は出やすいというのが私たちの実感です。その理由としては、

 

1. 意思決定が速く、組織の変化に強い

中小企業は意思決定のスピードが速く、経営者の言葉や方針が現場にすぐ伝わる環境にあります。だからこそ、ブランドの方向性が定まれば、組織が一丸となって動きやすいという強みがあります。

 

2. 顧客との距離が近く、信頼関係を築きやすい

中小企業の多くは、地域密着型やリピート顧客中心のビジネスです。顧客の声をダイレクトに受け取り、それをブランド改善につなげるサイクルを回しやすいのは大企業にはない利点です。

 

3. 人材定着や採用に大きな差がつく

「何のために働くのか」「どんな会社を目指すのか」を明確に伝えられる会社は、社員の定着率が高く、共感でつながる人材採用が可能になります。資金力ではなく、価値観で選ばれる時代において、中小企業こそブランディングの効果が大きく発揮されます。

 

4. 小さな成果が次の変化につながる

中小企業では、たった一つの表現の変化、営業トークの見直し、理念の言語化だけでも、組織全体に大きな影響を与えることができます。この「変化の手応え」を早く感じられるのも魅力です。

 

ブランディングとは、広告のことでも、オシャレなロゴのことでもありません。「この会社は何のために存在しているのか」「何を大切にしているのか」。その「らしさ」を社内全体で共有し、お客様に届けるための営み。上記の理由から考えても、やらない理由はないと断言できます。

中小企業白書・第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組

 

よくある誤解と失敗:なぜブランディングがうまくいかないのか?

ブランディングに取り組もうとすると、つい「見た目」の整備から入ってしまいがちです。ロゴを刷新したり、パンフレットを一新したり。それ自体が悪いわけではありませんが、表層を整えるだけでは、本質的な効果は期待できません。

とくに中小企業の場合、下記のような誤解がブランディングの失敗を引き起こしやすくなります。
・「ブランド=ロゴやデザイン」と思い込んでいる
・広告施策と混同してしまい、短期的な反応を期待してしまう
・現場社員が「なぜこの取組をするのか」を理解していない
つまり、中身の言語化や組織浸透がないまま、「ブランディング風」の見た目だけを整えて終わってしまうのです。

 

中小企業にありがちなブランディングの課題5つ

 

1.「誰に、何を、どう伝えるか」が曖昧

多くの中小企業では、「うちは何屋か」は言えても、「誰に、どんな価値を、どう届けているか」が明確に言語化されていません。たとえば
・ウェブサイトに「お客様第一」「信頼と実績」など、どの会社でも言える言葉が並ぶ
・パンフレットや営業資料に「自社らしさ」よりも業界の一般論が多い
・ターゲットの年齢や業種、課題感が不明確なまま施策を打っている
その結果として、ユーザーに響かず、価格比較や条件比較に埋もれてしまいます。

 

2.社員に共通言語がない(理念・価値観の形骸化)

「経営理念」や「ミッション」は掲げていても、それが現場で語られることはほとんどない。そんな会社も少なくありません。
・入社時に冊子を渡されただけで、普段の会話では理念が出てこない
・「行動指針は?」と聞かれても、社員が答えられない
・上司ごとに指示や価値観が違うので、若手が混乱している
これは、「経営者と社員が見ている景色が違う」状態です。

 

3.外と中で言っていることが違う(言行不一致)

・採用サイトでは「風通しの良い職場」とうたっているが、実際はトップダウンで誰も発言しない
・営業では「ていねいなサポート」を売りにしているが、サポート部署は人手不足で電話にも出られない
・SNSでは「お客様視点」を強調しているのに、実際は納期最優先で対応が雑になっている
このように社外向けの言葉と実態が乖離していると、ブランディングは逆効果に。ブランド価値を下げてしまうブランドマイナスを引き起こすことになりかねません。

 

4.属人的な営業・採用に頼っている

・社長がカリスマ型で、営業も採用も「社長が口説いてくるスタイル」
・顧客の信頼は「◯◯さんだから頼んでいる」という属人的なもの
・マニュアルやトーン設計がなく、担当者ごとに対応のブレが大きい
こうした状態は、担当者が変わるたびに信頼がリセットされるリスクをはらんでいます。

 

5.体制がない、優先度が低い(継続できない)

・ブランディングを「プロジェクト」ではなく「イベント」として扱ってしまう
・忙しくなると、更新や発信が止まる
・「いまは営業が忙しいから」「採用が落ち着いてから」など、後回しの常連
このタイプの企業では、「一度やったから終了」という認識が強く、ブランドが育たないまま放置されがちです。
「うちも、思い当たるところがある」と感じた方は、悲観する必要はありません。課題に気づいた瞬間こそが、ブランディングの出発点です。

 

ブランディングが経営にもたらす5つの価値

 

1.価格競争からの脱却

「安さ」で勝負するのではなく、「選ばれる理由」が明確になれば、価格で比較されにくくなります。ブランドがあれば、価値を感じてもらえるため、値下げ交渉に応じる必要が減り、利益率を維持しやすくなります。

 

2.採用力の強化

理念や社風に共感する人材が集まりやすくなり、離職率も下がります。「この会社で働きたい」と感じる人が集まることで、採用のコストやミスマッチも減少。採用競争の激しい中で、ブランディングは強力な武器になります。

 

3.社員の行動に一貫性が生まれる

ブランディングが定着すると、社員一人ひとりが「うちの会社はこうあるべき」という行動指針を持てるようになります。トップの指示を待たずとも、現場での判断に一貫性が生まれ、組織としてのスピード感と柔軟性が高まります。

 

4.顧客との信頼が深まる

一貫したメッセージや対応を続けることで、「この会社は期待を裏切らない」という安心感につながります。顧客満足度やリピート率が上がり、紹介や口コミによる新規顧客の獲得にもつながります。

 

5.経営者の想いが、会社の軸になる

社長の考え方や信念が、組織のブレない軸として言語化され、社員に共有されることで、社員が「何のために働いているか」を理解しやすくなります。これは、組織の結束力や自走力を高める源になります。

 

解決のヒント:小さく始めて、確実に進める

「ブランディングは大きな投資が必要」と思われがちですが、実際には小さな気づきと実践から始めることで十分に前進できます。
たとえば、次のようなステップから始めてみましょう。

・「自社の良さ・強み」を社員同士で話し合う場を設ける(例:ランチMTG)
・ 社内報や掲示板で「らしさ」に関する発見や事例を共有する
・SNSや会社ブログで「何を大切にしているか」を、具体的なエピソードで伝える
・顧客アンケートやレビューを分析し、「どんな価値を感じてくれているか」を把握する
・ブランドの方向性を1枚のシートにまとめて、社内共有する

ポイントは、完璧を目指さず、社内の会話から「らしさ」を発見すること。まずは小さな実験を繰り返しながら、会社全体でブランドを「育てる」姿勢が大切です。
「ブランディングができる会社」ではなく、「ブランディングに取り組み続けられる会社」を目指しましょう。

 

小さなことを続けるためのヒント集

1.言葉の力を活かす

言葉は文化をつくり、価値観を共有する強力なツールです。中小企業のブランディングにおいても、社員の言動や資料、発信に繰り返し登場する共通のキーワードがあると、一貫性と共感を育てやすくなります。
たとえば、
「うちらしさ」 … 自社の個性や判断基準を柔らかく共有できる言葉。
「らしさが出てたね」 … 社員の行動をブランド視点で承認する一言。
「それ、わたしたちらしい?」 …判断の軸として使える問い。
「私たちは〇〇を大事にしています」 …価値観の宣言文として定番化。
「〇〇さんらしい対応でしたね」 …個の行動とブランドの一致を褒める表現。
「選ばれる理由」 …提案資料や営業トークで繰り返し伝えるフレーズ。

「安心感」「誠実さ」「ていねい」「挑戦」など 、自社らしさを表すキーワードを繰り返し使い込むことで、社内に定着します。
大事なのは、「うまい言葉」よりも「使い続けられる言葉」。社員の口から自然と出るようになった時、ブランディングは根付き始めています。

2.「見つける」ことから始める

社員の発言や顧客の声の中にある「らしさ」を見逃さない。気づいたらすぐにメモする習慣を。

3.記録する仕組みをつくる

「今月のブランドらしい出来事」など、共有フォルダや壁新聞に書き留める場所をつくる。

4.月1でふりかえりをする

「今月、うちらしい行動って何だった?」といった軽い問いでチームMTGを始めてみる。

5.習慣化のタイミングを決める

「毎月第1月曜の朝礼はブランディング話」といったルーティン化で無理なく定着。

6.「できていること」に目を向ける

「うちはまだまだ」と思うより、「これってうちらしいよね」と言える事実を見つけて肯定する。

「続けること」を難しくしない。「らしさ」は日常の中にある。それに気づき、拾い、積み上げていくことが、ブランディングの一歩一歩につながります。

 

はじめの一歩は、「できること」からでいい

ブランディングは、一部の先進的な企業や、大企業のためだけの戦略ではありません。
むしろ、小さな組織だからこそ、社長の言葉がまっすぐ現場に届き、社員の共感と行動変化が早く起こる。それが中小企業の強みです。

大きな投資や完璧な準備は必要ありません。まずは、「うちらしさって、なんだろう?」と問いかけてみること。
一人で答えを出す必要もありません。社員と一緒に言葉にしていくことで、社内に共通の軸が生まれ、少しずつ行動も揃ってきます。
「ブランディングが目的ではなく、会社を良くしたい、その想いを共有したい」。その気持ちさえあれば、今日から始められます。

ブランディングの進め方:社長が押さえるべき7つのポイント

社長は孤独だが・・・

「インナーブランディングで、うまく進めるコツはありますか?」初回のミーティング時に、社長様からよく質問されます。
ブランディングでは各部門から選ばれた社員たちが集まって、さまざまなフレームワークに取り組み、議論をかさねていくのですが、新たな取り組みだけに不安に思われるようです。

その時にかならずお伝えするのが、社長ご自身が気をつけてくださいね、というポイント。どうしても気合いが入ってしまうのは仕方がないのですが、「ここは、ぐっと堪えてください」と言いたくなる場面が実はよくあります。
今回は、そんな一生懸命な社長にむけて、ブランディングの進め方で気をつけたいポイントをご紹介したいと思います。


 

社長がブランディングで注意すべき7つのポイント


 

1.社長や管理職は黒子に徹する:若手が主役のプロジェクトに

ブランディングのプロジェクトメンバーは、基本的には社員中心で構成することをおすすめしています。
年齢層はさまざまでよいと思いますが、できれば若手メンバーを中心に。入社3~4年以上で、自社や業界についても理解している人たち。
社長や管理職の方々がメンバーに入ることも多いのですが、その際は、できるだけ先輩方は盛り上げ役に徹していただくようお願いしています。

なぜなら、まじめな若手社員たちは日頃から上司や社長の意向を気にする場面が多いはず。「今回は好きなように発言していいよ」と言われても、すぐに切り替えるのは難しいものです。
何か意見をいう時に「自分の意見が合っているかどうか?」と気になってしまう人も多いのですが、ブランディングに「正解」はありません。自由に意見を言える空気づくりこそが、最も大事な土台です。

また、プロジェクトメンバーを選ぶ基準で、年齢よりも大切なのは、前向きな姿勢のひと。
ブランディングの活動とは、自社ならではの強みを再認識して、それを核に会社をさらに良くしていくこと。プロジェクトメンバーはその原動力になる人たちですから、グチっぽかったり斜に構えるタイプが入っていると議論が前へ進みにくくなります。


 

2.話したい気持ちを抑えて、まずは社員の声を引き出す

自社への強い想いを持っているのは、間違いなく社長です。社員に伝えたいことも山ほどあるでしょう。でも、**ブランディングの場は“語る場”ではなく、“引き出す場”**です。

まずは、じっくり聞いてください。ファシリテーターが「お客様がうちの商品を買ってくれる理由は?」と投げかけたとき、社員が戸惑っていても、すぐに答えを与えるのではなく、小さなヒントで促してみましょう。

たとえばこんなふうに:

「A社の◯◯さんって、最近どんなこと言ってた?」
「うちの商品って、競合より高いのに、どうして選ばれてるんやろうね?」

社員同士が「そういえば…」と会話を始める中で、本音や気づきが少しずつ出てきます。アイデアの扉が開くのは、強制ではなく共感からです。

ただし、注意点もあります。
ヒントは出しても、答えを“誘導”してはいけません。
たとえ言葉に出さなくても、「あれを言え」と言いたげな顔をしていれば、もうアウト(笑)。


 

3.意見を引き出す最大の武器は「承認」と「称賛」

ブランディング・ワークでの絶対ルールがあります。

・他人の発言を否定しない
・意見を言った人には拍手で返す
・メンバーはフラットな関係(あだ名で呼び合うなど)

これは社長だけでなく、参加者全員に求められるスタンスです。

そのうえで、社長にはぜひ“わかりやすく”ほめてほしいのです。少しオーバーなくらいがちょうどいい。

たとえば:
「なるほどね、それは私も気づかなかった」
「さすが◯◯さん。うちの営業は彼で持ってるんですよ(笑)」

え?その彼は営業トップじゃない?
大丈夫。次の人にも、同じセリフで重ねてください。笑いと称賛は、場の空気を明るくします。

関西エリアの方なら、むしろ得意かもしれませんね(笑)。


 

4.決して急がない

正直にお伝えすると、ワークを始めたばかりの段階ではそれほど盛り上がりません。だれもが自分自身について考えることが難しいように、自分の会社についても魅力や評価ポイントを考えるのは難しいことです(日本人は控えめな性格なのでその傾向が強いようです)。
また、ときには、プロジェクトの中盤まで進んだけれど、納得いかないので前のステップに後戻りして考えよう、という場合もあります。

それでも、どうか根気よく待ってください。
社長という立場の方は、先々を見据えて、考えながら走るという方が大半ですので、自分のスピード感とはまったく合わない・・・と落胆したくなる場面も出てきます。
しかしながら、答えを出すのは社長ではなく、コンサルタントでもなく、プロジェクトメンバーの社員たちです。多少の時間がかかっても、メンバー自身が悩みつつ答えを導き出すことに大きな意味があると理解してください。


 

5.関心を示す

逆に、放ったらかしというのも良くありません。社員たちは、日々の仕事に追われながらも必死で取り組んでいるのですから、ときどき励ましたり、労いの言葉も必要です。

ブランディング・ワークの実施は、約1ヵ月に1回程度の頻度で行うので、その後で振り返りミーティングを行ったり、宿題が出たときはたまに一緒に参加してみるなど。
「私たち、社長から期待されてるんだ」とメンバーが感じることは、プロジェクトが盛り上がっていく理由のひとつになります。

そのうちに間違いなく、メンバーの方々の目の輝きが変わる瞬間があります。
その発見は、私たちファシリテーターにとっても非常にうれしい瞬間なのですが、深く関わっておられる社長にとってはさぞ感慨深いことと想像します。


 

6.いつも味方でいる

ブランディング8つのステップのうち、中盤で行うブランドアイデンティティやブランドビジョンの設定。それが決まった段階で、プロジェクトメンバーが全社にむけてお披露目する機会をむかえます。

メンバーにとっては大きなハードルとなるはず。社内全体にむけて、自分たちが発表しなくてはならない。それだけでなく、質問やツッコミがはいっても、答えなければならない。同じ会社なので極端な反対意見はでないとしても、さまざまな相手を説得するのはなかなか難しいはずです。

基本的には、社内プレゼンも質疑応答も、プロジェクトメンバーに任せるべきですが、ここぞという時には社長の援護射撃をお願いします。
ブランディングに関して、社長はいつも自分たちとともにいてくれる、応援してくれているという感覚は、メンバーたちの行動や成長を後押ししてくれるはずです。


 

7.提案を実現する

ブランディングを進めるなかで、メンバーのなかにさまざまな気づきが生まれます。
「うちの会社は、技術開発がいちばんの売りなのに訴求できていない。新規顧客の工場訪問をはじめたい」
「誠実・安心が強みなのに、窓ガラスにヒビが入ったまま。新しいものに替えたい」など。

チームから提案されたら、以下の質問をしたうえで、必要と判断できたらできるだけ実現をお願いします。
・ブランドアイデンティティ、ブランドビジョンがベースにあるか
・そのアイデアを実現することで、どんな効果が期待できるか

もちろん、事業計画や予算などとの兼ね合いもありますが、まずは小さなことから始めてみる。プロジェクトがまだ途中であっても、ブランディングの成果としてアクションをおこすことが大事。社内全体へのアピールにもなります。


 

ブランディングの進め方Q&A


 

プロジェクトメンバーは何人くらいが適当?どうやって選ぶ?

ワークを行う人数に制限があるわけではありませんが、6~7人までが適切です。あまり人数が多くなると、意見がまとまりにくかったり、そのなかでも対立チームができてしまうのは好ましくありません。

メンバー選択は、上記でもご紹介したように、前向きな性格が絶対条件。キャラクターはいろいろあってよいと思いますが、発言力のありすぎる人、社内での影響力が強い人は避けてもらいましょう。物静かなタイプでも冷静に考えられる人、業務経験が浅くても広い視野で物が見られる人は向いています。


 

ブランディングの8ステップとは?

取り組みのステップとして、マーケティングのフレームワークを利用しながら、段階的に進めていきます。

1.環境分析による市場機会の発見(PEST分析、3C分析)
2.市場細分化(セグメンテーション)
3.見込み客の選定(ターゲティング、連想マップ)
4.独自性の発見(ポジショニング)
5.ブランドアイデンティティ(ブランドアイデンティティ、ブランドプロミス、ブランドビジョン、ブランドパーソナリティ)
6.具体化(4P/4C分析)
7.刺激の設計(ブランド要素/ブランド体験、推奨規定、禁止規定)
8.目標設定
その他にも、必要に応じて、異なるワークを組み込む場合もあります。


 

どのくらいの期間が必要?

ブランディング8ステップのうち、ステップ5のブランドアイデンティティ策定までで約半年は必要です。そこから具体的な目標設定の段階に入りますが、その内容や進め方によって異なります。
目標設定ができたところで一段落となりますが、そこからの運用が本番。小さな取り組みから実施していくので、何らかの変化がおこってきますが、事業計画レベルで結果が現れるには数年単位と考えておくべきでしょう。

ブランディングで効果が出ない理由とは?見直しポイントと次の一手

ブランディングを行う効果を書いた黒板

かなりの時間とお金をかけてブランディングに取り組んだ。ブランド・アイデンティティも掲げることができた。社内外へのアピールもやっている。それなのに、どうも効果が見えてこない・・・。
そんなモヤモヤを抱えているとしたら、ブランディングの進め方において課題があるのかもしれません。

最近になって、ブランディングに取り組む企業は多く見られるようになりましたが、その反面で同じような悩みを抱えているご担当者も少なくないようです。
今回は、ブランディングにおける見直しポイントと、結果につなげるためのさらなる一手についてご紹介します。


 

ブランディングで期待できる効果とは

そもそも、ブランディングを実施することで、どんな効果が得られるのか?確認しておきましょう。

 

1.「売れ続けるしくみ」を作れる

「ブランドとは売れ続けるしくみである」とブランディングの教科書には書かれています。ちなみに、マーケティングは「売れるしくみ」。
取り組みのなかで、市場分析などマーケティングのフレームワークを使う点では同じですが、ブランディングはそこに自社ならではの強みや可能性の観点を加えることで、競合他社がついてこられない領域へと踏み込むことができる。だから、売れるだけでなく売れ続けるしくみになります。

「売れ続けるしくみ」とは、具体的な効果を挙げると

・価格競争で戦う必要がなくなる

もし、あなたが「今日はごほうびにおいしいアイスを買おう」と思ったとき、どんな基準で商品を選ぶか。
私なら迷わず、ハーゲンダッツに手が伸びます。だって、間違いなくおいしいから。特別なミルクや高品質な素材を使い、安心できる生産体制のもと作られていて、格別のバニラやいちごの風味を楽しめるから。それがまさしくブランド価値というもの。他の商品より100円程度高くても、まっすぐ手を伸ばしてしまう理由があるのです。

・知名度が上がる、波及効果を生む

ハーゲンダッツのようにブランド価値が確立されると、ブランドは勝手に独り歩きをしてくれるようになります。
「ハーゲンダッツはアイスクリームの王様よ」と誰かが言い出すと「私もそう思う!ストロベリー味が最高」などと盛り上がる。その日、彼女たちが食後のデザートにハーゲンダッツを選ぶ可能性は高まり、またその会話を電車の中で聞いていたおじさんまでも、コンビニの前で足が止まるかもしれません。

・付加価値を生む

ブランドには感性的価値を生み出す力があります。そして、これが購買の際に大きな決定権をもつことになります。
しつこくハーゲンダッツで語ると、たとえば夕食のあとに贅沢なひとときを過ごせる、ちょっと疲れている友人を笑顔にしてあげられる、「さすが◯◯さんね」とセレクトした自分の価値まで上げてくれる。そんないいことが待っているから「買っちゃおう」と思うだけでなく、「買えて良かった」とさえ思ってしまう。人の消費行動は、感性的価値に大きく左右されるのです。


 

2.社内の意思統一、モチベーション向上

「お客様がうちの商品・サービスを買ってくれる理由は何だと思う?」
そう聞かれて、明確に即答できる人はどのくらいいるでしょうか?経営トップでさえ、新入社員にわかりやすい言葉で伝えてと言われたら、戸惑うかもしれません。それぞれが頭の中ではイメージしているけれど、それを表現してみると少しずつ異なっているはずです。
そんなふうにぼんやりしているイメージにピントを合わせ、「うちがどこにも負けないのはここ!」と宣言すること。それがブランディングです。

言葉で明確にすることで、どう変わるのか。
まず、全員の頭のなかのイメージが統一される。判断基準が定まる。それに基づいて行動が変わる。お客様への言動も変わっていく。
もっともわかりやすい例がスターバックス。どこのお店に行っても、同じように心地よい空間で、フレンドリーに迎えられて、コーヒーの時間を楽しめるのは、スタッフ?全員の意思統一がなされているからできることです。


 

3.採用活動で優位に立てる

極論でいうと、就活者が求めているのは「自分に合う会社」であること。自分の居場所がしっかりとあって、自身の力が発揮できて、さらに成長していける会社であること。給与や有休など条件面はもちろん大切ですが、それだけで決めるには絞り込めないはず。仕事を楽しめて、気の合う人たちと頑張れる環境はもっと優先順位が高くなるでしょう。

ブランド価値は、その判断基準となります。ブランドとは、競合他社にはない自社の強み。採用における競合他社にはなくて、就活者が求めていることに自社だけが応えられる魅力を明確化して、訴求することが採用におけるブランディングです。


 

4.企業として成長する基盤をつくれる

ブランディングのプロセスで確立されるのが、ブランド・アイデンティティ(ブランドの本質的な価値を分かりやすい言葉にしたもの)。そして、ブランド・ビジョン(ブランドがめざす理想。顧客をまきこんで社会にどう影響を与えていくか)、ブランド・プロミス(ブランドが顧客に約束すること)。

とくに、ブランド・ビジョンは、自社だけでなく顧客もまきこみつつ、社会のなかで影響力をもつ存在になろうとする主旨ですから、現状に満足していては達成できないわけです。全社で共有し、同じ目標にむけて走らないといけない。そのプロセスが企業の成長をうながすことになります。
また、社外にメッセージを発信することで、地域からも賛同・応援してもらえる可能性も高まります。


 

なぜ、ブランディングの効果が出ないのか?見直しポイントとは

ここからが本題です。大手広告代理店に依頼し、それなりの費用もかけて取り組んだのに、イマイチ効果を実感できていない。
その理由は、以下2つのどちらにあります。


 

1.社外むけのブランディングしかやっていないから

ブランディングには、社外むけ(エクスターナルブランディング、またはアウターブランディング)と社内むけ(インターナルブランディング、またはインナーブランディング)の2つがあります。両方が必要ですが、とくに第一段階として行うインターナルブランディングが大切。
なぜなら、ブランド価値(=競合他社が持ち得ない自社の強み)は自社を振り返ることでしか見つけられないからです。

自社ならではの魅力をとことん掘り下げずに行うブランディングは、本来のブランディングではありません。それは単なるマーケティングです。一時的には売れるかもしれないけれど、売れ続けるほどの力を持っていません。

ブランディングに対する勘違い:デザインだけを変えても意味はない


 

2.現実と理想の姿とのギャップを埋める努力をしていないから

こちらはインターナルブランディングもやったのに、効果が出ないという場合にあてはまります。
自社の強みを明確化し、プロモーションにも注力した。それなのに効果が出ていないのは、目標を実現するために実効性のある施策を打っていないからです。

たとえば、ある日用品メーカーがブランディングに取り組んだとしましょう。
主力商品であるティッシュペーパーは、知名度は低いものの、肌触りが絹のようにやさしい。吸収力も抜群なので、赤ちゃんのお尻ふきに最適と評価されており、一定のリピーターもついています。なんとかこのティッシュペーパーをきっかけに、業界シェアを高めて、ブランドの地位を確立させたい。

そこで、ブランディングに取り組み、自社ならではを訴求できるブランドアイデンティティを掲げました。
パッケージやPOPにも反映して、ドラッグストアの販売員さんにも同じようなメッセージを伝えてもらうように動きました。
でも、なぜか大した結果につながらない。

それは、現状の強みを見つけて、それを社内外に伝えることだけで満足しているからです。ほんとうは、そこからさらにステップアップしブランド価値を高めいくことで、目に見えて大きな効果が得られるのに、その手前でストップしているのです。


 

さらにブランディングの効果を上げる方法

それでは、いかにして結果につなげるか。以下のフローで考え、実行にうつします。

1.ブランド・アイデンティティをベースに、自社がめざす理想の姿を定める
2.その理想に近づくためには何が必要かをリストアップ
3.そこからさらに細分化し、各部署の取り組みとし、一つひとつに具体的な施策を立てる
4.施策は中期計画にも盛り込む
5.PDCAを回していく

ブランドアイデンティティは、現段階での強みや魅力がべースとなるもの。それを社内外に訴求・浸透していくことはブランディングにおける基本ですが、それだけだと右肩上がりのグラフ角度はそれほど高くはなりません。もっと角度を上げていくためには、現状からさらに上をめざした理想形を描き、そこから逆算していく働きを加えることをおすすめします。

WEB制作会社のかしこい選び方:見極めるための10のポイントとは

WEBのラフ作成を行うデザイナー

「WEB制作会社を選ぶのって難しいですよね」初めてお会いするお客様からよく聞くコメントです。
たしかに、WEB制作会社は世にあふれており、規模もさまざま。困ったことに、どこの実績を見てもそれなりにきれいなサイトが並んでいる。
「この値段の差って何なの?」「選択基準はどこにおけばいいの?」そう思われるのは当然のことでしょう。

WEB制作の品質には、見た目だけでは分かりにくい部分(たとえば、検索エンジン対策やシステムの使い勝手、セキュリティ面など)もあるので、業界に精通していない人には判断しにくい部分もあります。制作の進め方においても、クライアントの苦い経験談をきくと「それはいかんよなぁ」と襟を正したくなるようなケースも。

だから今回は、リニューアルなどでWEB制作会社を選ぶときに気をつけたいポイントをご紹介したいと思います。


 

WEB制作会社を見極める10のポイント


 

1.コンセプトを最後まで貫けること

リニューアルのコンセプトはどんな会社でも提案してくれますが、それを制作メンバーみんなが最後まで貫けるかは別のことです。
なぜなら、実際にリニューアル作業がスタートすると、発注側も制作側もとても忙しくなって、目の前の業務で頭がいっぱいになりがちだから。

発注側は、社内の意見集約や意思統一にかなりの労力をとられるため、ときには目標を忘れがちになります。たとえば、本部長から「もっと派手な色づかいにして」などと言われると、断りにくかったりする。
制作スタッフの方も、スケジュール内に納めるために必死なので、ついついお客様の言われるままに修正を加えたりする。
そんなことをくり返していくうちに、ふと気づくと「この表現、このデザイン、コンセプトからズレてない?」となりがちなのです。

そこで「ちょっと待った!」をかけるのは、発注側ではなく、WEB制作会社側の役割。とくに、プロジェクト全体を冷静に見渡せるディレクターの仕事です。

もっと言えば、コンセプトの設定はさらに大切。ゴールが明確化されていないと、みんなが道に迷ってしまいます。
リニューアルの背景にある、企業の課題や思いを解釈して、企業がめざすべき姿やWEBサイトで実現すべきことについて、しっかりとすり合わせすることが重要です。


 

2.制作者と直接にコミュニケーションがとれる環境である

下手な伝言ゲームほど、イライラすることはありません。ちょっとしたニュアンスの違いやメールの読み違いなどで、時間のロスが発生してしまいます。
延々とメールで説明するより、電話で担当者と話せば5分で完了する場合もある。制作会社との間に代理店が入っている場合でも、制作に関するやり取りは直接に話せる体制をつくってもらいましょう。


 

3.必要な修正にちゃんと対応してくれる

もしも、「デザイン修正は3回までです」といったルールを提示されたら、それは断るべきです。
その理由としては、

1. クライアント主導で制作が進む可能性が高い

本来なら、合意したコンセプトのもとデザインを行っているので、それほど大きなズレが発生することはないはず。わざわざルールを作るということは、修正回数を区切らないといけないほど煩雑な進め方であると予測できます。
コンセプト主導ではなく、クライアント主導に偏ってしまうと、チェックするタイミングや気持ちの変化によって修正が発生するのは当然なことです。

2.ワイヤーフレームでのすり合わせができていなかった。

1のような問題が起きないために、事前にワイヤーフレーム(ラフ+主旨説明)を作るのが賢明なやり方。原稿の詳細までは決められなくても「このような内容をこのような見せ方で掲載しますが、大丈夫ですか?」と確認し合うことで、大きなズレは発生しにくくなります。

いずれにせよ、企業が発信するWEBサイトは、コーポレートサイトであれ商品サイトであれ、企業の姿を映し出す鏡のようなもの。デザインに限らず、より良いものを目指そうという心意気が感じられる会社であってほしいと思います。


 

4.進捗管理がきっちりできる

WEBサイト制作会社に必要不可欠な能力のひとつとして、進捗管理があります。
納期に間に合わせることはもちろんですが、多くの人たちの意思決定を経て予定どおりに進行できるかは、おもに制作会社の進捗管理能力にかかっています。

見極めるポイントとしては

  • スケジュール管理はだれが担当するか?その人は適任か?
  • 管理方法は?(ツール、定例ミーティング実施など)
  • 制作チームの体制(役割分担がしっかりできそうか、途中で担当者は変わらないかなど)
  • 過去の事例など

大きなプロジェクトになればなるほど関わる人たちも増えてくるので、スケジュールはどうしても遅れがちになります。そんなときでも、うまくコミュニケーションをとりながら、ときには譲歩したり、ときにはお尻を叩いたり、進捗管理する人のセンスが左右するとも言えるでしょう。


 

5.原稿や素材はどこが準備するかを明確にしておく

コンテンツを作るにあたって、一番負荷がかかるのが原稿制作です。
製品特長や技術紹介、自社の強みなど、社内の人に文章で提出してもらうとかなりの時間が必要になるとともに、文章のクオリティも人によって差が出てきます。

また、WEBサイトはほとんどの場合、キーワード検索によって見つけてもらう性質のものですから、文字情報はとても大切。デザインがいくら美しくても、来てほしい人を呼んできてはくれません。ターゲット層が求めている情報を提供しつつ、SEOにも配慮した原稿を準備することが大切です。

ビジュアルについても、写真素材などはどちらが提供するか、各ページのイメージを決めるメインビジュアルはどちらが提示するかなども明確にしておくべきです。


 

6.ディレクターは、ロジカルな頭と熱いハートをもった人に頼みたい

先ほどの進捗管理やコンセプトの反映、情報整理においては、ロジカルに冷静に考えられる頭が必要です。けれども、それだけではおもしろくない。サイトの訪問者を感動させたり、納得させるためには、エモーショナルな要素も必要です。そんな人間くさい部分にもこだわってこそ、ほんとうに血の通ったWEBサイトになるはず。
ディレクターにすべてを求めるのは難しいかもしれませんが、少なくとも制作チーム全体としては、そんな両面性を兼ね備えているべきだと考えます。


 

7.頭のやわらかいデザイナーと、度量の大きいSEがいる会社

制作段階において、ディレクターに次いで接点が多いのは、デザイナーとSE(システムエンジニア)。どちらも能力の高さは必須条件ですが、その他の要素としてあげてみました。

WEBデザインにおいてとくに求められるのが、情報をデザインする力です。
WEBサイトは紙媒体のようにペラペラめくって全体像を知ることが難しいメディア。「これが知りたい」と思ってもらえないと、クリックはしてもらえません。限られた訪問時間とページビューのなかで、いかに訪問者ニーズに応えつつ、企業が伝えたいことを伝えられるか。そのために必要な文字や画像の情報をデザインします。
さらに、WEBの世界は新たな技術や見せ方がどんどん出てくる。昨年はこれが新しいと思っていたことが、今年はもう古いということもある。
そのようななかで、WEBデザイナーに求められるのは、柔軟な発想でものごとに取り組めること。自分の思考パターンや好き嫌いに縛られず、訪問者の視点にたって考えられることです。

SE(システムエンジニア)は、縁の下の力持ち的存在です。お問い合わせフォームはちゃんと動いて当たり前ですが、その背景にはSEが一文字も間違えずにプログラミングすることで成り立っています。そのためには事前にヒアリングして、仕様をきっちりと固め、セキュリティも担保してと、緻密な作業が必要です。
それだけに、途中から仕様を変えたいと言われると、SEはいちばん困るのです。そうならないように話を詰めることも必要ですが、それでも、ときには「うっかり忘れていた」「社内の情報システムからダメ出しされた」ということも出てくる。そんなときに、話を聞いて、適切な対処をしてくれるSEは相当優秀だといえます。


 

8.制作実績はかならずチェックしよう

WEB制作会社のクオリティを判断するには、事例において以下のポイントを質問してみましょう。

  • それぞれにどんな課題があってどのように解決できたか。ビジネスにどう貢献したか。
  • クライアントの強みがちゃんと表現されているか
  • 制作期間はどのくらいか
  • その後のメンテナンスについて、どの部分を請け負っているか
  • クライアントと長い期間つきあっているか
  • 担当ディレクターが関わった実績はどれか


 

9.社風を知るため、電話をかけてみよう

もし、営業担当者しか知らない場合は、さり気なく電話をかけてみるのもひとつ。できれば少し雑談などしてみると、電話をとってくれたスタッフの対応力や人柄などが感じられるものです。

仕事のパフォーマンスには、個人の能力✕事業内容✕チーム力✕職場環境が大きく関わるものですが、WEB制作会社の場合、とくにチーム力と職場環境は大きな要素。なぜなら、企画構成から、デザイン、コーディング、プログラミングなどそれぞれに専門性の高い業務のため担当者が分かれること。そして決められた時間内に連係してプロジェクトを進行していく必要があるため、チームワークや人柄、スタッフの定着性などがクオリティに関わってきます。

そのあたりを見極めるためにも、もし可能であれば、実際にオフィスを訪問して社内の雰囲気を見てみることをおすすめします。


 

10.セキュリティ対策にも明るいか?

WEBサイトを運営するということは、つねに情報改ざんや個人情報流出などの危険にさらされていることを意味します。ニュースでよく聞く個人情報流出は、サーバーセキュリティの甘さと個人情報の取り扱い方の問題。社内の情報システム関係者とともに、セキュリティ対策についてはしっかりと詰めておく必要があります。
また、第三者機関による脆弱性チェックについて、過去に対応した経験があるかも確認しておくべきです。


 

避けた方がいいWEB制作会社のタイプ

オマケ情報として、あまり悪口にならない程度にご紹介すると。


 

「どんな会社でもカッコよく見せますよ」的なオーラはあやしい

ダイレクトにそうは言わないけれど、そんな雰囲気が漂っていたらあやしいかもしれません。なぜなら、「カッコいい」の主語はクライアントでなく、自分たちにあると思っているから。
WEBサイトの見た目はとても大切だけれど、社名を差し替えるだけで成り立つようなカッコよさは意味がないはず。その企業の「らしさ」をしっかりと理解して、それを最大限に魅力的に見せてあげることがWEB制作会社の役割だと思います。


 

メンテナンス実績が少ない会社

サイト公開後、運営にも関わることで見えてくることは山ほどあります。まず、リニューアルの目的がどのくらい達成されたのか、上手くいかなかった場合はどのように対処するか。
また、クライアントと長くつきあうことで、さらなる要望に応えないといけないので、スタッフはもっと勉強しないといけない。そんな積み重ねが多くあるという意味で、WEBサイトのメンテナンス業務は制作会社を育ててくれると言えます。


 

スタッフが疲弊している会社

WEB制作会社はどこも労働時間が長いようですが、長く働くから良いというものではありません。電話をかけたときに元気のない人が多いとか、制作スタッフが疲れている様子があるなら、避けたほうがよいかもしれません。
どんなに優秀な人間でも、心と身体が健康でないと良いアイデアも出てこないもの。前向きにいっしょに考えてくれるパートナーを選ぶほうがよいでしょう。


 

たいへんな職務を軽減し、楽しめる運営にするために

WEB制作、とくにコーポレートサイトのリニューアルなど大きなプロジェクトになるほど、企業のご担当者もふくめて大きなタスクがかかります。社内外の多くの人とも関わるため、疲れるなぁと思うことも多々あるでしょう。
けれども、自社について振り返る機会というのはそんなにあるものではありません。創業者の思いや先輩方の歩み、それを受け継いだ社風、商品やサービスの良い部分を再発見したり、そんな貴重な体験を楽しんでみると得られるものも多くあるように思います。

そのようなプロセスを、傍でいっしょに楽しんでくれる。いっしょに悩みながら形にしてくれる。パートナーとして選ぶWEB制作会社には、そんな素養を期待したいですね。

ブランディングを真に成功させるには?

ブランディングはイメージアップ作戦ではない。

ブランディングを真に成功させるには?「当社はブランディングを始めます、かっこいいスローガンとWEBサイトを作りました!有名人を起用してキャンペーンもやります」。
そんなフレーズがちらほらと聞こえてきます。
ん?ブランディングのこと、少し勘違いしていませんか?

ブランディングすることで、商品やサービスが売れるようになる。そのこと自体は間違いではありません。
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会が発行する教本にも、「ブランディング=売れ続けるしくみ」と書かれています。しかし、大切なのは「売れ続ける」ことができるか、ということ。
どれだけ費用をかけて立派な販促活動を実施しても、「売れ続ける」までにはなかなか至らない。なぜなら、実施されている施策が一時的なプロモーションレベルのものだからです。

ブランディングは、マーケティングとも違う。

では、ブランディングとは何なのか?よく言われるマーケティングとどう違うのか?
言葉の意味を比べてみると、
マーケティングとは「売るための施策」
ブランディングとは「売れ続けるしくみ」

そこには、大きな違いがあります。簡単にまとめてしまうと、
売るための施策(マーケティング)は、販売目標達成のため、ターゲットとする市場に合わせた施策を立てること。
一方、売れ続けるしくみ(ブランディング)は、自社の商品・サービスの強み(差別化ポイント)を武器にして、それを求める市場で戦うことです。

また、マーケティングは、どこかの企業や商品の成功事例をマネすることもできますが、ブランディングにそれは当てはまりません。
ブランディングは、その会社や商品の存在価値そのものであり、他のどこにも同じものは存在しない。それだけに答えを見つけ出すことは簡単でないけれど、強みを活かせる市場で戦えば負けるはずがないのです。

ブランディングとマーケティングの比較表

ブランディング

定義 : 売れ続けるしくみ
取り組み期間 : 長期的
得られる効果 :
顧客:
探索コストの低減、価値獲得、自己イメージの投影、リスク低減
自社:
差別化、付加価値+価格決定権、法的保護、社内の意思統一やモチベーションアップ、ビジネスパートナー獲得、採用活動に貢献

マーケティング

定義 : 売るための施策
取り組み期間 : 短期的
得られる効果 :
顧客:探索コストの低減、価値獲得
自社:差別化、付加価値

ブランディングのメリットとは?

では、「ブランディング=売れ続けるしくみ」によって、具体的にどのような結果を得られるのでしょう。
顧客に対しては、

  • 指名買いが増える。
  • 値引きなしで売れる。
  • 新人営業スタッフであっても、自社のPRを端的に伝えられる。
  • 顧客からファンへと育てることができる。

その理由は、顧客が求めていることに対して、競合他社にはない答え(商品・サービス)で応えることができているから。
しかもそれは、自社が本来もっている強みに軸をおいているため、プロジェクトに取り組みやすく、継続もしやすいのです。

また、ブランディングは社内においても、大きな影響力をもちます。

  • ブランディングのプロセスで社内をふり返ることで、自社の良さを再確認できる。
  • ブランド価値を共有することで、社内の意思統一がしやすくなる、
  • プロモーション(WEBサイトやSNS、パンフレット、営業スタッフのセールストークなど)にブレがなくなる。
  • モチベーションアップにつながる。
  • 人材育成や採用活動に貢献する。

などなど。

自分たちの商品・サービスの魅力を再認識するということは、スタッフ一人ひとりが誇りを持つことにつながります。ですから、外向けの効果より、むしろ社内向けのメリットの方が大きい。ブランディングは、企業がさらに成長しつづけるための推進力にもなるのです。

ブランディングを成功させる秘訣とは

ご紹介してきたように、ブランディングによって得られる効果はとても大きいものの、正しい推進方法についてはまだまだ浸透していません。
それはブランディングは、エクスターナルブランディング(社外むけ)とインターナルブランディング(社内むけ)という2つの活動に大きく分けることができ、より華やかなエクスターナルブランディングの方に注目が集まりやすいせいかもしれません。
どちらも大事なステップですが、ブランディングの核となる自社の強みを見つけるには、まずインターナルブランディングが不可欠です。

また、自社の強みや弱みについて冷静にとらえ、深く掘り下げていく作業というのはなかなか難しいことでもあります。
スムーズに進めるためには、社外に信頼できる伴走者を見つけることです。なおかつ、パートナーは道を間違えないようサポートしながら、一緒に悩んでくれることも大切。
ブランディングは、長期的かつ着実に積み重ねていく作業であるため、じっくりと腰を据えて取り組んでいくことをおすすめします。

社長の指示なしで自走する会社の作り方

覚悟を決められるか?社員のために、会社のために。

株式会社エーディエフ
代表取締役 島本 敏 社長

株式会社エーディエフ代表取締役 島本 敏 社長

社員の成長を妨げていたのは?

社長:「来週の展示会、オレも行こうか?」
スタッフA:「いや、別にいいですよ」

スタッフB:「今度の新聞広告のペルソナ、もう少し具体的に固めたいんですが」
社長:「あ、ごめん。もう一回考えるわ」
島本敏社長が率いる株式会社エーディエフでは、そんな会話が日常の風景である。

ここだけを聞くと、ほんとに社長?と思われるかもしれないが、決してそんなことはない。
「以前はね、なんでも自分でやらないと気が済まなかった。いつもみんなを急かすし、待ちきれずに自分が先にやっちゃうし。かなり鬱陶しかったと思いますよ(笑)」。
中小企業の経営者にはありがちな話。自らが先頭を走ってきた経緯や事業への思い入れが強すぎて、つい手も口も出したくなる。
「しかしそんな自分の行動が、実は社員の成長をジャマしていたのだと、後になって分かりました」と、振り返る。

今日から何もやらない宣言。

それは今から8年前のこと。島本社長が大きく舵を切った日である。
「俺はもう、何もやらないから」。
めずらしく数日出社しなかった社長の顔は、ヒゲもそらず、少しやつれていた。
「かなりヤサグレてましてね、あの時は」。
自分の思い通りにみんなが動いてくれない、資金調達などを全力で支えてくれた父親が亡くなったことも重なって、かなり弱っていた時期だった。

社員たちは唖然としたことだろう。それまでは、営業も見積もりも、ときどき最終検品までこっそり社長がやっていたのだから・・・。
「でも、見積もり依頼きてますけど?」
「もう、やらん。お前やってくれ」
どうやら本気のようだ。社長がやらないと言うなら自分たちでやるしかない。戸惑いつつも社員たちは仕方なく動きはじめた。

「それがね、驚いたことに業績が落ちなかったんですよ」と島本社長。
自分なら今週中にやれると思うことが2~3週間かかったりするけれど、自分がやるよりもクオリティの高い成果を出してくれる。
「オレって、要らない存在だったんかも・・・、凹みましたね(笑)」。

しかし、そこで腐らず、前へ進むのはさすが。実務でやることがなくなったぶん、社長業を追求するようになっていく。
大阪府中小企業家同友会の支部幹事として活躍し、経営者仲間のフォローをするなかで経営や社内コミュニケーションについて学んだ。社員には実務の力をつけてもらう一方で、社長は社長にしかできない仕事をする。人の輝いている部分を見る力がついたのもこの時期らしい。

いつ芽を出すか。それは雑草自身が決めること。

株式会社エーディエフの社長とスタッフ社員が「自走してくれる集団」。中小企業の社長にとっては、まったく夢のような話だ。もしかすると、そんなことは理想にすぎないと諦めている方もおられるかもしれない。
ただ、エーディエフでは社長の「やらない宣言」後、社内が自走し始めた。
しかし、やらないと宣言するだけで本当にそうなっていくものなのか?
経営サイドにいる筆者も、ついつい前のめりになってしまう。

「雑草ってね、育てようとしても育たないって知ってますか?」
「へ?雑草ですか?」
「そう。同じ時期に種をまいても一緒には育たない。いつ芽を出すかはその雑草が決めるわけです。各自のベストタイミングで芽を出すから、環境変化にめちゃくちゃ強いらしい」。人の伸び方も同様だと、島本社長は語る。
最初からぐんぐん芽を出す人もいれば、なかなか出ない人もいる。それを社長が制御しようとするのは間違い。なにかのきっかけで腑に落ちて、本人が「よし、やろう」と、自ら動きはじめることに意味があるのだという。

「雑草の研究者が書いている本です。この本に出合ったのはかなり後ですが、エーディエフは雑草の集まりみたいなものだ、そう思えたらなんだか、今まで社員と向き合い切っていなかった自分がみじめで、涙が出ましたね」。
その言葉のなかに、詰み重ねてきた道のりの重さが感じられた。急かしてばかりの日々から一転、とにかく社員を信じて待つ。
社長がやるべきことは人を育てることではなく、社員が自ら育つ環境を用意してあげることだったのだ。

WEB事業部が立ち上がった。

株式会社エーディエフのスタッフ一つのいい例がある。
エーディエフはアルミフレームのメーカーでありながら、なぜかWEB事業部がある。数年の間に自社サイトを4つ立ち上げて、集客につなげるとともに、最近は取引先からも引き合いさえもらえるまでになってきた。2名の専従スタッフは、もともと製造業務で入社してきた人材だ。

事業部の立ち上げから責任者を務める池ノ上は、以前は設計業務を担当していた。製造や営業、展示会業務もこなしていたが、製造以外に何かできないかとWEB事業をスタートさせたのだ。
「僕はあれこれ言われるよりも、自分の裁量で進められるほうが断然いいです。事業部制にしてもらったのも、独立した事業として成長させたいから」。定款を書き換えたっていい。どんどんやろうやと社長が後押ししてくれるから、池ノ上も邁進できる。

制作担当の西は、入社4年目。WEB制作は趣味レベルだったのを、独学で学びながら制作や広報業務を担っている。
「やりたいことをやらせてもらって、本当に感謝しています。だから必死でスキルアップするのは当たり前のこと」。
就活イベントで、島本社長の話に惹きつけられて入社した一人だ。

「発想力や提案力も、ものづくりですよ。うちは製造業だからなんて言ってていいのか。ロボットに仕事をとられたなんて、バカな話はないです。そんなことになる前に、地頭を鍛えてロボットにできない仕事を創り出すことが大切です」。
「それにね、万が一なんらかの災害で工場が被災しても、再開するまでの収益源になってくれるかもしれないでしょう?」。
予想できないことが起こる時代、何かあったときにどう対処するか。WEB事業に限らずやわらかな地頭がそろっていれば、新しい道が開けるかもしれない。
たしかに、なにがあっても雑草はたくましく生き延びる。

一生を輝かせる場所となれるように。

株式会社エーディエフのスタッフ「やりたいと手を挙げる人にやってもらうのが一番いい。そのことに対する思いは誰よりも強いんだから」。
人は苦手を克服するより、得意なことに集中する方が成長は加速する。それが会社から期待されているなら、なおさらだろう。

島本社長が最近、考えていることがある。
「人生長くなったぶん、終身雇用なんてナンセンスになってきました。みんなスキルアップしたいし、世代によってやりたいことも変わっていく。それなら、世代やステージごとにチャレンジできる環境を整えてあげたら、エーディエフは社員が一生を輝かせられる舞台になれるかもしれない」。
それが今、自社広告でも打ち出している「結果的終身雇用」という考え方だ。

20代の社員が、奥さんの実家がある福岡に営業所を作りたいと言い出した。
「間違いなく誰よりも思いが強いわけです。もちろん結果を出してくれていますよ」。
また、30代のある社員は、もともと独立の志があったが、「ここでやりたいことができるから、独立する気がなくなった」そうだ(彼は今年、取締役に就任)。

独創的な雑草集団は、さらに進化していくだろう。
インタビューの帰り道。青い空を見上げると、もくもくと夏雲が湧きあがっていく。
さて、自分たちは経営者として、働く一個人として、どう動くべきか。大きな宿題をもらったような気がした。

ブランドが語るべき世界観とは?その価値と考え方

売っているのは商品でなく「世界観」

 

こんな暮らし方がしたい

理想の住まい

オンラインショップを開くと目にとびこんでくる、ポストカードのような一枚の写真。そのガラスの花瓶は凛とした佇まいで、生けられた緑の葉っぱがなんとも涼しげ。周囲にはゆったりとした時間が流れているようです。
商品ページで主に語られているのは、そのガラスの花瓶を手に入れると、いかに心豊かな日々が訪れるのか。ショップのスタッフたちが自宅でその花瓶とどのように暮らし、何を感じているのか。読み進めていくうちに、「うちにも、この花瓶が必要かも!」と気持ちが高まってくる。つい先ほどまでは3,000円の花瓶など買うつもりもなかったのに・・・。
これは筆者のリアルな体験。人気のEC雑貨ショップ「北欧暮らしの道具店」では、多くの人が魔法にかけられてしまうようです。

このオンラインショップで一貫して発信されているのは、自分らしく心地よく暮らすことへの提案。「こんな気持ちで生きていきたいよね。そう思わない?」。すぐ隣に座って、一緒に窓の外を眺めながら語りかけられているようで、「そうそう、その通り!」とポチってしまうのです。

 

いかに世界観を伝えるかがカギ

ものが売れにくくなった今。ブランドの世界観は、購買の理由として大きな意味をもつようになってきました。
ほぼ同じようなデザイン・機能性をもつ白いTシャツでも、どこで買うかを決めるのは消費者の心ひとつ。「ユニクロのほうが安くて長持ちするじゃないの」とお母さんに言われたって、「そんな理由じゃないのよ」と反論してもらえる原動力が今は必要なのです。

ブランドの価値というのは、消費者の心の中にあるもの。鮮明に焼きつけるためには、ブランドと消費者の間で共有される「世界観」が必要であり、それはB2C、B2Bに限らず重要になってきました。

ブランドの世界観って一体なに?

北欧暮らしの道具店

では、ブランドの世界観とはどんなものなのか?できるだけ具体的に掘り下げていきたいと思います。

世界観とは、単体のモノではなく、ライフスタイル。考え方や生き方。理想とする形。また、限られた時間ではなく、長い期間。有限ではなく無限な拡がり。機能面だけでなく、情緒的な満足感。いくつものストーリーが生まれる背景。どれだけ語っても語りつくせないような価値観です。
それだけに、伝えることが難しく、受け取る側にもいろいろな解釈があったりする。しかしながら、ターゲット層が求めているゾーンにぴったりはまると、惹きつける力は非常に大きい。お金には換算できない満足感が存在します。

実際の例を見てみると、
北欧暮らしの道具店:「フィットする暮らし、つくろう。」
自分の生き方を自分らしいと感じ、満足できることを「フィットする暮らし」と定義しています。

Apple:「自分らしく生きることを支援する」。
1997年に公開された有名なTV-CM 「Think different.」。アインシュタイン、パブロ・ピカソなど世の中を変えた天才たちの映像とともに「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが本当に世界を変えている」という、Appleが社会に強く提示したいメッセージが込められています。

スターバックスコーヒー:「人々の心を豊かで活力のあるものとするために」
あの独特の世界観をつくり出しているのは、そこで働くパートナー(従業員)の意識の高さにあります。彼らはマニュアルを必要とせず、上記の共通認識のもと、自分たちでその場に合わせて最善の方法を考えて対応する。質の高いホスピタリティがスターバックスの一番の強みなのでしょう。

こうやって見ていくと、ブランドの世界観は、消費者である自分たちが本来望んでいたことなのだと気づかされます。その特別な価値に共感し手に入れたいと思うから、そのブランドを選んでいる。そして、それを選んでいる自分自身に対しても満足しているのです。

自社ブランドの世界観。その作り方とは

駅での雑踏

では、自社ブランドの世界観について、どのように考えていけばよいのか?そうなんです。そこが一番むずかしいところです。

世界観というのは、そう簡単に作り出せるものではありません。ましてや、広告代理店など社外の人に考えてもらって「さあ、今日からこれでいこう」というようなものでもない。どんなにセンスがよく耳ざわりのいいフレーズができあがっても、それが実際のブランド価値と合っていなければ逆効果となるだけです。

まずは、自分たちのブランドが大切にしていることとは?そんな基本的なことについて、社内で議論することから始めてはどうでしょう。
たとえば、

  • 自社ブランドについて、誇りに思っていることは?
  • 愛用してくださるお客さまは、どこを気に入ってくれている?
  • 創業者の思いとは?
  • ブランドの存在が、社会に対してどのように貢献しているか?
  • サプライヤーはどのように感じている?
  • お客様相談室にはどんな声が届いている?

一人ひとりの受け止め方は違っていても、その中心には共通した価値観があるはずです。
絶対に曲げたくない信条、理想形、お客様とともに「そうありたいよね」と握手したくなる気持ち。そして、考えはじめるとちょっと胸が熱くなったりする。それこそが、日々自分たちが作り出しているブランドの価値、ブランドの世界観なのだと思います。

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