コラム(ブランディング)

ブランディング 2024年4月2日

ブランディングで効果が出ない理由とは?見直しポイントと次の一手

ブランディングを行う効果を書いた黒板

かなりの時間とお金をかけてブランディングに取り組んだ。ブランド・アイデンティティも掲げることができた。社内外へのアピールもやっている。それなのに、どうも効果が見えてこない・・・。
そんなモヤモヤを抱えているとしたら、ブランディングの進め方において課題があるのかもしれません。

最近になって、ブランディングに取り組む企業は多く見られるようになりましたが、その反面で同じような悩みを抱えているご担当者も少なくないようです。
今回は、ブランディングにおける見直しポイントと、結果につなげるためのさらなる一手についてご紹介します。


 

ブランディングで期待できる効果とは

そもそも、ブランディングを実施することで、どんな効果が得られるのか?確認しておきましょう。

 

1.「売れ続けるしくみ」を作れる

「ブランドとは売れ続けるしくみである」とブランディングの教科書には書かれています。ちなみに、マーケティングは「売れるしくみ」。
取り組みのなかで、市場分析などマーケティングのフレームワークを使う点では同じですが、ブランディングはそこに自社ならではの強みや可能性の観点を加えることで、競合他社がついてこられない領域へと踏み込むことができる。だから、売れるだけでなく売れ続けるしくみになります。

「売れ続けるしくみ」とは、具体的な効果を挙げると

・価格競争で戦う必要がなくなる

もし、あなたが「今日はごほうびにおいしいアイスを買おう」と思ったとき、どんな基準で商品を選ぶか。
私なら迷わず、ハーゲンダッツに手が伸びます。だって、間違いなくおいしいから。特別なミルクや高品質な素材を使い、安心できる生産体制のもと作られていて、格別のバニラやいちごの風味を楽しめるから。それがまさしくブランド価値というもの。他の商品より100円程度高くても、まっすぐ手を伸ばしてしまう理由があるのです。

・知名度が上がる、波及効果を生む

ハーゲンダッツのようにブランド価値が確立されると、ブランドは勝手に独り歩きをしてくれるようになります。
「ハーゲンダッツはアイスクリームの王様よ」と誰かが言い出すと「私もそう思う!ストロベリー味が最高」などと盛り上がる。その日、彼女たちが食後のデザートにハーゲンダッツを選ぶ可能性は高まり、またその会話を電車の中で聞いていたおじさんまでも、コンビニの前で足が止まるかもしれません。

・付加価値を生む

ブランドには感性的価値を生み出す力があります。そして、これが購買の際に大きな決定権をもつことになります。
しつこくハーゲンダッツで語ると、たとえば夕食のあとに贅沢なひとときを過ごせる、ちょっと疲れている友人を笑顔にしてあげられる、「さすが◯◯さんね」とセレクトした自分の価値まで上げてくれる。そんないいことが待っているから「買っちゃおう」と思うだけでなく、「買えて良かった」とさえ思ってしまう。人の消費行動は、感性的価値に大きく左右されるのです。


 

2.社内の意思統一、モチベーション向上

「お客様がうちの商品・サービスを買ってくれる理由は何だと思う?」
そう聞かれて、明確に即答できる人はどのくらいいるでしょうか?経営トップでさえ、新入社員にわかりやすい言葉で伝えてと言われたら、戸惑うかもしれません。それぞれが頭の中ではイメージしているけれど、それを表現してみると少しずつ異なっているはずです。
そんなふうにぼんやりしているイメージにピントを合わせ、「うちがどこにも負けないのはここ!」と宣言すること。それがブランディングです。

言葉で明確にすることで、どう変わるのか。
まず、全員の頭のなかのイメージが統一される。判断基準が定まる。それに基づいて行動が変わる。お客様への言動も変わっていく。
もっともわかりやすい例がスターバックス。どこのお店に行っても、同じように心地よい空間で、フレンドリーに迎えられて、コーヒーの時間を楽しめるのは、スタッフ?全員の意思統一がなされているからできることです。


 

3.採用活動で優位に立てる

極論でいうと、就活者が求めているのは「自分に合う会社」であること。自分の居場所がしっかりとあって、自身の力が発揮できて、さらに成長していける会社であること。給与や有休など条件面はもちろん大切ですが、それだけで決めるには絞り込めないはず。仕事を楽しめて、気の合う人たちと頑張れる環境はもっと優先順位が高くなるでしょう。

ブランド価値は、その判断基準となります。ブランドとは、競合他社にはない自社の強み。採用における競合他社にはなくて、就活者が求めていることに自社だけが応えられる魅力を明確化して、訴求することが採用におけるブランディングです。


 

4.企業として成長する基盤をつくれる

ブランディングのプロセスで確立されるのが、ブランド・アイデンティティ(ブランドの本質的な価値を分かりやすい言葉にしたもの)。そして、ブランド・ビジョン(ブランドがめざす理想。顧客をまきこんで社会にどう影響を与えていくか)、ブランド・プロミス(ブランドが顧客に約束すること)。

とくに、ブランド・ビジョンは、自社だけでなく顧客もまきこみつつ、社会のなかで影響力をもつ存在になろうとする主旨ですから、現状に満足していては達成できないわけです。全社で共有し、同じ目標にむけて走らないといけない。そのプロセスが企業の成長をうながすことになります。
また、社外にメッセージを発信することで、地域からも賛同・応援してもらえる可能性も高まります。


 

なぜ、ブランディングの効果が出ないのか?見直しポイントとは

ここからが本題です。大手広告代理店に依頼し、それなりの費用もかけて取り組んだのに、イマイチ効果を実感できていない。
その理由は、以下2つのどちらにあります。


 

1.社外むけのブランディングしかやっていないから

ブランディングには、社外むけ(エクスターナルブランディング、またはアウターブランディング)と社内むけ(インターナルブランディング、またはインナーブランディング)の2つがあります。両方が必要ですが、とくに第一段階として行うインターナルブランディングが大切。
なぜなら、ブランド価値(=競合他社が持ち得ない自社の強み)は自社を振り返ることでしか見つけられないからです。

自社ならではの魅力をとことん掘り下げずに行うブランディングは、本来のブランディングではありません。それは単なるマーケティングです。一時的には売れるかもしれないけれど、売れ続けるほどの力を持っていません。

ブランディングに対する勘違い:デザインだけを変えても意味はない


 

2.現実と理想の姿とのギャップを埋める努力をしていないから

こちらはインターナルブランディングもやったのに、効果が出ないという場合にあてはまります。
自社の強みを明確化し、プロモーションにも注力した。それなのに効果が出ていないのは、目標を実現するために実効性のある施策を打っていないからです。

たとえば、ある日用品メーカーがブランディングに取り組んだとしましょう。
主力商品であるティッシュペーパーは、知名度は低いものの、肌触りが絹のようにやさしい。吸収力も抜群なので、赤ちゃんのお尻ふきに最適と評価されており、一定のリピーターもついています。なんとかこのティッシュペーパーをきっかけに、業界シェアを高めて、ブランドの地位を確立させたい。

そこで、ブランディングに取り組み、自社ならではを訴求できるブランドアイデンティティを掲げました。
パッケージやPOPにも反映して、ドラッグストアの販売員さんにも同じようなメッセージを伝えてもらうように動きました。
でも、なぜか大した結果につながらない。

それは、現状の強みを見つけて、それを社内外に伝えることだけで満足しているからです。ほんとうは、そこからさらにステップアップしブランド価値を高めいくことで、目に見えて大きな効果が得られるのに、その手前でストップしているのです。


 

さらにブランディングの効果を上げる方法

それでは、いかにして結果につなげるか。以下のフローで考え、実行にうつします。

1.ブランド・アイデンティティをベースに、自社がめざす理想の姿を定める
2.その理想に近づくためには何が必要かをリストアップ
3.そこからさらに細分化し、各部署の取り組みとし、一つひとつに具体的な施策を立てる
4.施策は中期計画にも盛り込む
5.PDCAを回していく

ブランドアイデンティティは、現段階での強みや魅力がべースとなるもの。それを社内外に訴求・浸透していくことはブランディングにおける基本ですが、それだけだと右肩上がりのグラフ角度はそれほど高くはなりません。もっと角度を上げていくためには、現状からさらに上をめざした理想形を描き、そこから逆算していく働きを加えることをおすすめします。

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執筆:植松 あおい

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