コラム(ブランディング)
ブランディング 2025年5月13日
ブランディング手法を徹底解説。会社を成長させる4つの実践例

「ブランディング手法」は、競合との差別化や顧客との信頼構築に欠かせない重要なマーケティング戦略です。本記事では、ビジネス成果に直結する4つの主要手法をわかりやすく解説します。
ブランディングという「売れ続けるしくみ」を作り上げるプロセスで、顧客の心をつかみ、ロイヤリティを生み出しましょう。
ブランディング手法①:差別化戦略とは?
競争が激化する現代の市場では、新しい製品やサービスであってもすぐに模倣され、コモディティ化してしまうリスクがあります。こうした状況で企業が生き残るためには、「ブランディング手法」としての差別化戦略が不可欠です。単なるスペックや機能だけで勝負する時代は終わり、ブランドとしての独自性が問われています。
差別化戦略とは、競合他社と明確に異なる価値を顧客に提示することで、ブランドの魅力を際立たせるブランディング手法のひとつです。特に、機能や価格以外の軸——たとえば世界観や体験価値、ストーリー性などを通じて「選ばれる理由」を作ることが重要です。
差別化を図るうえでの基本的な考え方としては、以下の2つがポイントです:
1.ブランド独自の価値やストーリーを明確に伝えること
2.顧客の共感やロイヤルティを引き出すコミュニケーション設計
なお、「価格を極端に下げて競合との差をつける」といった施策も差別化の一種ですが、それは「価格戦略」と分類されるため、本記事では取り上げません。
他社と差をつけるイメージ戦略による差別化手法
差別化戦略においては、他社と異なる切り口でブランドのイメージを構築することが重要です。これは、ブランディング手法の中でも「イメージ戦略」として分類されるアプローチです。
たとえば、口紅の広告を考えてみましょう。一般的には「つやつや」「ぷるぷる」「かわいい」など、見た目の美しさを前面に押し出すプロモーションが多く見られます。しかし、これを「社会を楽しくするためのアイテム」と再定義すれば、まったく異なる価値訴求が可能になります。
このように、同じ商品でも視点を変えることでブランドの伝え方に差が生まれ、それが差別化につながるのです。この手法は、企業広告やブランドステートメントと親和性が高く、感情的な共鳴を生むブランドづくりに有効です。
購買動機をずらす:訴求ポイントの再設計による差別化戦略
差別化戦略を考える際に、競合他社とほぼ同じスペックで「少しだけ優れている点」にフォーカスしても、それは本質的な差別化とは言えません。スペック上の優位性がわずかであれば、ユーザーに響かない可能性が高いのです。
ブランディング手法として有効なのは、訴求ポイントそのものを再定義することです。たとえ同じ性能・同じ価格帯であっても、競合が強調していない別の魅力にフォーカスすることで、まったく違う購買動機を刺激できます。
たとえば、競合が「耐久性」や「性能」を押し出している製品に対して、自社は「使いやすさ」や「デザイン性」を前面に打ち出すという方法です。このように“訴求軸をずらす”ことが、ユーザーの特定セグメントに刺さり、差別化戦略として成立します。
ブランディング手法②:感情戦略でブランドロイヤルティを高める
「ブランディング手法」の中でも近年注目されているのが感情戦略です。市場では、製品やサービスのスペックを比較するだけのビジネスライクな意思決定だけでなく、購入者の感情に基づく判断も大きな影響を及ぼしています。なぜなら、最終的な購買決定を下すのは、感情を持つ“人間”だからです。
このような人間の感情に訴えかけるアプローチが、「感情戦略(エモーショナルブランディング)」と呼ばれます。顧客の感情とブランドを結びつけることで、単なる機能的な価値ではなく、共感や信頼といった情緒的な価値を提供できるのです。
たとえば、
・製品開発の裏側にある感動的なストーリー
・ターゲット層の共感を呼ぶキャンペーンやメッセージ設計
といった手法が有効です。
さらに、企業姿勢をブランディングに取り込むことも効果的です。たとえば、「ダイバーシティ推進のために、コストがかかっても既存製品を改良した」という事実を訴求すれば、マイノリティや価値観重視の消費者層に対する強い共感と信頼を生み出すことができます。
ブランディング手法③:一貫性の確保でブランド信頼を構築する
ブランディング手法の中で見落とされがちですが、「一貫性の確保」はブランド価値を維持・強化するための極めて重要な戦略です。ブランディング活動を全社的に統一するのは手間がかかりますが、それを怠ると、メッセージのブレが信頼低下につながるリスクがあります。
顧客や社会に対してブランドを訴求する際、すべてのコミュニケーションや行動がブランドの理念や価値観と一致していることが求められます。たとえメッセージが良くても、担当する部署や担当者によって表現が変わってしまえば、その一貫性の欠如によってブランドの印象は弱まってしまいます。
たとえば、広報が運営するコーポレートサイト、営業が担当するSNS、企画部門が制作する製品カタログといったように、発信チャネルごとに担当が分かれている場合、一貫性を保つのはさらに困難になります。ここで必要なのは、以下のような対策です:
・ブランドミッション・ビジョン・バリューを明文化し、全社で共有するブランドガイドラインを作成
・各部署にブランドトーンを教育し、メッセージの統一ルールを設ける
・SNS運用や販促資料など、あらゆるアウトプットにおいて部門間の連携体制を強化
このように、「一貫性のあるブランディング手法」は、顧客との信頼関係を築き、ブランドの認知と評価を長期的に高める土台となります。
ブランディング手法④:エンゲージメントの促進で顧客との関係性を深める
たとえば、クラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」は、定期的にファンミーティングを開催し、顧客とブランド担当者が一緒に商品を楽しむ機会を提供しています。担当者がユーザー主催の飲み会に参加するなど、ブランドと顧客が双方向で関わる関係性を築いています。
こうした施策は、単なる消費者を熱心な“ブランド推進者”へと変えるきっかけになります。
■ B2Bの場合:顧客の声をブランド価値に転換
B2B領域でも、製品を利用している顧客の声や活用事例を積極的に取り上げ、成功事例として発信することで、ブランドの信頼性や優位性を強化できます。これは、顧客自身をブランドの担い手として巻き込む代表的なエンゲージメント手法です。
■ SNSとコミュニティ活用でエンゲージメントを拡張
SNSやオンラインコミュニティを活用すれば、顧客との日常的なコミュニケーションが可能になります。ユーザー投稿のシェア、コメントへの返信、共創型キャンペーンなどを通じて、「自分もこのブランドの一部だ」と感じさせる“参加感”を生み出すことができます。
このように、エンゲージメントを促進するブランディング手法は、顧客のロイヤリティや継続購入の可能性を高めるうえで非常に有効です。
ブランディングは一朝一夕で完成しない
ここまで紹介したように、複数のブランディング手法を戦略的に組み合わせることで、企業はブランドの独自性を高め、顧客ロイヤリティの向上につなげることができます。ただし、重要なのは、ブランディングとは単なるロゴデザインや広告展開ではなく、顧客との信頼関係を長期的に築く活動であるという本質を理解することです。
では、どれくらいの期間でブランディングが「成功した」と言えるようになるのでしょうか?
実のところ、明確な期間やゴールは存在しません。
・なぜなら、ブランディングは終わりのないプロセスであり、一度始めたら放棄しない限り、継続的に取り組む必要があるからです。
・そして、何をもって「成功」と定義するかも、企業や業種、タイミングによって変わります。
・さらに言えば、誰も正解を持っていないのがブランド戦略の難しさであり、奥深さでもあります。
特にコーポレートブランディングにおいては、企業が存続する限り、そのブランドも生き続けるものです。だからこそ、ブランディングは“やるか・やらないか”ではなく、“どう続けていくか”という視点で考えるべき戦略なのです。