コラム(ブランディング)

ブランディング 2023年4月14日

ブランドアイデンティティを定めるメリット、成果につながる進め方

ブランドアイデンティティとは

ブランドアイデンティティを定めるメリット、成果につながる進め方ブランドアイデンティティとは、その企業ならではの魅力や特長的なポイントを端的に表した言葉。ブランドアイデンティティを定めることでそのブランドに関わるすべての人が共通認識をもつことができる、ブランディングにおける旗印のようなものです。
たとえば、お客様から「他社と比べてどこが違うの?」と聞かれたとき、新商品開発のコンセプト設定で迷ったとき、採用活動におけるメッセージを考えるとき。自分たちのブランドが何を目指しているかを思い起こし、進めべき方向を示してくれるのがブランドアイデンティティです。

ブランドアイデンティティを定めるメリットは4つある

ブランドアイデンティティの4つの効果とは、

  1. ブランドに関わる人すべての行動基準となる
  2. 顧客にむけて、ブランドの想いを伝えるメッセージとなる
  3. 競合との差異を際立たせることができる
  4. 企業が成長していく原動力となる

1.ブランドに関わる人すべての行動基準となる

先述したように、ブランド運営に関わるすべての人にとって、考えたり行動を起こす基準となるのがブランドアイデンティティ。
その内容を決める際には、ブランドや組織がもつ特長的な部分にフォーカスし等身大の言葉で表現する訳ですから、そもそも誰もが受け入れやすく実行しやすい価値基準なのです。

2.顧客にむけて、ブランドの想いを伝えるメッセージとなる

顧客が知りたいのは、商品・サービスを手に入れることで自分にどのような価値があるのか、いかに自分を幸せにしてくれるのか、ということ。
ブランドはお客様との約束。それを言葉で伝えるのがブランドアイデンティティです。

また、人を説得するうえで有効とされる「ゴールデンサークル理論(サイモン・シネック)」においても、ブランドアイデンティティは重要です。物事を説明するときには、まず、どのような想いのもと(WHY)→どのような手段で(HOW)→何を提供するのか(WHAT)という順番で語る方が人は納得しやすいというもの。ブランドアイデンティティは、WHYを語る役割を担っているのです。

3.競合との差異を際立たせる

ブランドアイデンティティとは、他社にはない自社の強み(ブルーオーシャン)をベースとして導き出されたもの。競合他社との差異化ができているのは言うまでもありません。

逆をいえば、ブランドアイデンティティをいい加減に据えてしまうと、実像との乖離によってさまざまな違和感が生じてしまいます。
とくに、ブランドを運営する社員にとっては深刻です。本来ならば、ブランドアイデンティティをもとに考え行動するプロセスが一番大切なのに、「なんだかしっくりこない」となると、社員は思考停止に陥ってしまう。それどころか、他社との差異化ができていないと、もっとも避けるべきレッドオーシャンで戦うことになってしまう。ブランドアイデンティティを正しく作ることの重要性はここにもあります。

4.ブランドや企業が成長していく原動力となる

組織には多くの人が集まるだけに、目指す方向に多少のズレは起こりがちです。そんなとき、ブランドアイデンティティを旗印として、各人が考え、みんなで議論し、実践を続けていくプロセスは大きな意味をもちます。
「こんな時どう行動したらいいのだろう?」「(ブランドアイデンティティの)この言葉、このようにも解釈できるよね?」
各人が何回でも、深く考え続けることにより、ブランドアイデンティティへの理解はさらに深まっていきます。その結果として、ブランドや企業の成長につながっていきます。

ブランドアイデンティティ策定の進め方。成功のカギ3つ

ブランドアイデンティティを定めるメリット、成果につながる進め方では、上記のメリットを最大限に享受するため、ブランドアイデンティティの設定はどのように進めていくべきなのか。大切なポイントは3つあります。

1.社内プロジェクトチームを組む

まずは、社内においてプロジェクトチームを作ることが第一ステップです。できるだけ各部門からメンバーを選出してチームを組みます。
外部のコンサルタントに入ってもらう場合でも、プロジェクトの中心となるのは必ず社内のチームと考えてください。

メンバーの素養としては、柔軟な発想をもち前向きに取り組める人を。チームの使命は、ブランドアイデンティティを作ることがゴールでなく、その後も社内浸透を担っていくことになるため、リーダーシップ力をもつ顔ぶれがベストと言えます。傾向としていえるのは、社歴の長い方や役職についている人は現状に満足されている場合が多いため、入社後数年の経験をもつ若手メンバーで構成する方が進めやすいと考えます。

2.答えは、必ず社内から見つける

ブランドアイデンティティの策定にあたっては、プロジェクトメンバーでいくつかのフレームワークを実施することになります。
その際の大切なルールは、以下のとおりです。

  • チームメンバー全員が発言できるように

    声の大きな人も小さな人も、できるだけ同じように発言する機会をもつようにしてください。

  • どんな意見も尊重する

    さまざまな立場の人が自由に発言できることが大切。自分とは違う意見が出たとしても、決して否定しないこと。各人が発言するたびに、全員が拍手で応えるムード作りが非常に大切です。

  • ファシリテーターは意見を誘導しない

    ファシリテーターは、みんなの意見を引き出し、傾聴することに徹しましょう。決して答えを誘導してはいけません。

フレームワークを進めるなかで、どんなに答えが見つからなかったとしても、結論を急ぐ必要はありません。たとえば、最初のステップで行う3C分析は誰もが悩む課題の一つですが、どうしても結論が出ない場合は保留にしておけばよいのです。別のフレームワークを進めるなかで気づくことは多々あるため、いくつかのプロセスを経てから考え直してみるとクリアになることが多いものです。

そして、外部のブレインが答えを出してしまうのはご法度です。自社ならではの持ち味を本当に分かっているのは、そこで働く人たち。どんなに経験豊富な専門家であっても無理なことです。

3.理想像をブランドアイデンティティにしない

ブランドアイデンティティは、現状のブランドや企業がもつ魅力がベースとなるもの。今より少し背伸びした表現は問題ないですが、「今は持ち合わせていないけど、将来こうなりたい理想像」は当てはまりません。
実像と異なってしまうと、ブランドに関わるすべての人たちの心を動かすことができないため、共感の原動力とならないからです。

「最初はよく分からなかったけど、振り返ってみると自分が大切にしていることだった」「こんなふうにも解釈できるね」といった反応が出てくるのがブランドアイデンティティ。そこからすべてが始まり、放っておいても背伸びが始まるのです。

ブランドアイデンティティは、行動規定ではありません。もっと自由度があり、誰もが深く考えたり想像したりできる余地を残しておくことが大切です。
また、ブランドアイデンティティは外部ブレインに任せて作ってもらうものでもありません。今っぽい言い回しにする必要もありません。
自分たちのブランド価値を伝え、理解し、成長させていくために必要なものとして、じっくりと考えてみてください。