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中小企業のブランディング戦略:8つの課題を克服する進め方のキモ

「いいものを作れれば売れるんだ」―そう信じて、ずっと努力してきた。
それが中小企業の多くに共通する、ものづくりに対する考え方の基本ではないでしょうか。

でも、現実はどうでしょう。
いいものを作っても、簡単に引き合いが来るわけではない。
しかし市場を見ると、品質がそこそこのものでも注目され、売れている。
「あれよりうちのほうが断然いいはずなのに」そう思っても、現実が動くはずもなく。
どこか納得できない。けれど、理由がはっきりわからない。

なぜ選ばれないのか。どうすれば、選ばれる存在になれるのか。
その問いに向き合ったときに浮かび上がるのが、「ブランディング」というキーワードです。

ただし、ここでいうブランディングは、ロゴやパッケージをおしゃれにすることではありません。
中小企業に必要なのは、「この会社に頼みたい」「あの人だから信頼できる」と指名される状態をつくること。
つまり、信頼される「理由」を見える形にし、伝わるように整えるのが本質です。

とはいえ、多くの中小企業がブランディングに踏み出せずにいます。
「人も時間も足りない」「何から手をつけていいかわからない」そんな課題にどう向き合えばいいのでしょう?

この記事では、中小企業が直面する8つのブランディング課題と、限られたリソースでも進められる優先順位のつけ方を紹介します。
小さな一歩が、あなたの会社が指名される未来への第一歩になっていくはずです。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

中小企業が生き残るには、「この会社に頼みたい」と指名される存在になることが重要です。本記事では、ブランディングの本質を信頼づくりと捉え、実行を妨げる8つの課題とその突破口を紹介します。限られたリソースの中でも優先すべき進め方、実際の成功事例を通じて、明日から動けるヒントが得られます。

なぜ中小企業にブランディングは必要なのか?

「品質には自信があるが、顧客が広がらない」「価格を叩かれ、疲弊している」
こうした悩みは、もはや業種や地域に関係なく、中小企業に共通したものです。

かつては、地域性や人脈、紹介などが大きな営業資産でした。
今はネットやSNSを使い、買い手が違う選択肢にすぐ手を伸ばせる時代に。

市場はすでに「いい商品を作れば売れる」から、「いい会社に見えなければ選ばれない」へと変化しており、戦い方も変えなければいけなくなっているのです。

 

価格ではなく「会社」で選ばれる時代

モノの機能や価格だけでの差別化がどんどん難しくなっています。
たとえばA社もB社も同じ品質の部品を作っているとしたら、選ばれる理由は何になるでしょう?

最終的に顧客が判断するのは、
「この会社なら安心できる」「この人なら話が通じる」「ここに頼んでおけば間違いない」
といった、信頼ができるかどうか。

この「信頼」を見える化し、伝えるための仕組みこそが、ブランディングです。

 

ブランディングは「広告」ではなく「信頼づくり」

よくある誤解に、「ブランディング=かっこいいロゴや洗練されたパンフレット」というイメージがあります。
確かにそれらもツールの一つですが、本質はそこではありません。

中小企業にとってのブランディングとは、

  • 「なぜ自社が選ばれているのか」を明確にする
  • 顧客・社員・取引先に一貫して伝える
  • その結果、「あの会社に頼みたい」と指名される状態をつくる

という、信頼される仕組みづくりです。

 

「小さい会社」だからこそできるブランディングがある

大企業のように大規模な広告を打てなくても、中小企業には顔の見える関係性や意思決定の速さといった武器があります。
だからこそ、背伸びをする必要はありません。重要なのは、自社が既存の顧客から選ばれている「らしさ」を理解し、それを顧客との接点に一貫して正しく表現することです。

その積み重ねが「信頼される会社」、「覚えてもらえる会社」への第一歩になるのです。

第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組(中小企業庁「中小企業白書2022年版」)

中小企業が直面するブランディングの8つの課題

「ブランディングが大切なのはわかる。でも、現実にはなかなか進められない」
そう感じている中小企業はとても多い。
実際、ブランディングがうまく進められない企業には、いくつかの共通した課題があります。

ここでは、そのなかでも特に多くの現場で見られる8つの典型的な課題を紹介します。

 

人・時間・予算、すべてが足りない

多くの中小企業では、日々の業務に追われてブランディングにかけられるリソースが限られています。
「やらなきゃとは思っているけど、後回しになる」
そんな状況が続けば、当然ながら他社との差は広がっていくばかりです。

 

担当者がいない、兼務で進まない

社内に専任の担当者がいない、もしくはマーケティングと兼務になっていて手が回らない。これもよくあるケースです。
施策の検討、実行、効果測定などを1人で抱えてしまい、結局なにも進まないという悪循環に陥ってしまうのです。

 

ブランドが経営者の頭の中にしかない

「うちの良さはちゃんと伝わってるはず」と思っていても、それが社内で言語化・共有されていない企業がほとんど。結果として、社員によってお客様への説明がバラバラになったり、営業トークが噛み合わなかったりすることに。

 

差別化の軸が曖昧

「品質に自信があります」「真面目にやってます」
こうしたアピールは、実は多くの会社が同じことを言っています。本当の意味での差別化は、「お客様が自社をどう見ているか」に目を向けないと見えてきません。

 

顧客の声を吸い上げられていない

自社の強みは、実はお客様の中にあります。
「どうしてうちを選んだのか?」「他に検討していた会社との違いは?」
こうした声を聞かずに進めるブランディングは、空回りしやすくなります。

 

「ロゴを変える」だけで終わってしまう

ブランディングを始めようとして、まずロゴを刷新した。ここで止まってしまうケースも。
デザインは重要ですが、それだけではブランドにはなりません。考え方、行動、伝え方のすべてに一貫性があってこそ、ブランドとして成立します。

 

情報発信に一貫性がない

会社案内、営業トーク、SNS投稿、Webサイト・・・
それぞれの言葉やトーンに一貫性がなければ、会社の印象はバラバラになります。せっかく良いことを発信しても、伝わり方にブレがあると信頼につながりにくくなります。

 

成果がすぐに見えず、続けにくい

「ブランディングをやってみたけど、効果が見えない」
そんな声があることも事実。
短期的な反応が得られにくいぶん、優先順位が下がりがちですが、長期的な信頼や選ばれ方に確実に効いてくるのがブランディングの本質です。

 

ここまで紹介した8つの課題は、どれも中小企業の現場で実際に起きているものです。
厳しいことを言うようですが、結局のところできていないのは、経営者に覚悟がないだけ。

ブランディングは、一夜で結果が出るものではありません。だからこそ、「やる」と決めて動き出す覚悟が必要です。この覚悟があるかどうかで、次の一手の重みが変わります。

さらに、経営者がブランディングに本気で向き合っている姿勢が見えれば、社内の見方も変わってきます。周囲の真剣度も、そこからようやく動き始めるのです。
次のセクションから、限られたリソースでも実践できる進め方のキモをお伝えしましょう。

限られたリソースでも実行できる、ブランディングの優先順位

では、覚悟を決めたその先で、何から手をつけるべきか。
全部を一度にやる必要はありません。ブランディングは、順番を間違えなければ必ず形になります。

ここでは、実際に多くの企業が成果を出している、限られたリソースでも始められる優先順位で対応するブランディング施策を紹介します。

ここでは、今すぐ着手できて、効果につながりやすい3つの優先施策を紹介します。

 

優先1:既存顧客の声を集める

ブランディングのスタート地点は、自分たちの強みを知ること。
そのための一番確実な方法が、「なぜうちを選んだのか?」を顧客に直接聞くことです。

  • 他社と迷った点は?
  • 決め手は何だったか?
  • 使ってみて感じた価値は?
  • 当社と継続して取引している理由は?

これらの答えのなかに、自社が伝えるべき「選ばれる理由」が詰まっています。社内で考えるより、お客様の視点こそがリアルなブランドの核になります。

 

優先2:「らしさ」を言語化する

①顧客へのヒアリング(自社の良いところの認識):社内に「うちもいい会社じゃん!」という認識が生まれる→②優位点を言語化→③コンタクトポイントでのメッセージ反映→ブランド=社風の図式が強固になり新たな優位点がさらに生まれていくことに→①へ戻る集めた声をもとに、「自社らしさ」や「選ばれる理由」を言語化します。難しく考える必要はありません。キーワードや短いフレーズでもかまいません。
例:

  • 堅実なのに、フットワークは軽い。レスポンスが早い
  • 技術力よりも「相談しやすさ」で選ばれている
  • 自分ごとのように、一緒に悩んでくれる
  • 地域の困りごとを、断らずに引き受けてきた

こうした言葉をまとめ、会社として何を大事にしているかを社内外に共有することで、ブランドの芯ができます。タグライン、会社紹介文、営業トークなどに落とし込むことで、ブレない軸になります。

 

優先3:伝える手段に一貫性を持たせる

最後に、その「らしさ」を伝える手段(WEBサイト、営業資料、SNSなど)に統一感を持たせるステップです。顧客とのコンタクトポイント(接点)での統一感ですので、営業職の姿勢やオフィスの雰囲気も含まれます。

  • トーンや言葉づかいを揃える
  • デザインや写真に統一感を出す
  • お客様が接するすべての場所に「らしさ」をにじませる

これをやるだけで、「この会社、ちゃんとしてるな」「なんか印象に残るな」という効果が自然に生まれます。一貫性は、安心感につながります。
たとえば、上記の「フットワークが軽い」「相談しやすさ」に一貫性を持たせるには、電話をかけたときの聞く姿勢に包容力が感じられたり、営業資料がていねいに説明されていたり。営業ツールも理解しづらい部分がアップデートされて、わかりやすくなっていく、ということも「選ばれている理由」を具現化することにつながります。

このアクションが社内に定着していけば、社風がブランドそのものになり、よりいっそう選ばれている理由は強固なものになっていきます。

 

少ないリソースでも、まずは「なぜ選ばれているか」を知り、それを伝える準備をするだけで、十分に強いブランドの土台に。

次は、実際にこうしたアプローチで変化を生んだ企業の例を紹介します。

事例:商品力だけでなく「想い」で選ばれるようになった町工場

ここでは、仮想の中小企業を例にして、「選ばれる理由を言語化し、伝え方を整える」ことで成果が出たブランディングの進め方を紹介します。

 

ある町工場の転機

東大阪市で機械部品の加工を行っているB社。高度な加工技術には定評があり、納期対応や仕上がりにも自信がありました。しかし、取引先の引き合いは年々減り、価格競争に巻き込まれ、「結局、安いところに流れてしまう」という状況に悩んでいました。

 

「なぜ選ばれてきたのか?」を聞いてみた

転機となったのは、経営者が既存顧客にヒアリングを始めたこと。
「なぜうちを選んでくれているのか?」と率直に聞いてみると、返ってきたのは意外な声です。

  「図面がなくても相談に乗ってくれるのが助かる」
  「担当の佐藤さんが、技術用語をかみ砕いて説明してくれる」
  「うちは他の業者に断られた案件ばかりだけど、あなたのところは断らなかった」

これらの声をもとに、自社の強みを「断らない相談力」と定義。メッセージとして、「図面がなくても、話せばわかる加工屋です」と明文化しました。

 

発信と営業資料に一貫性を持たせた

その言葉をベースに、会社案内や営業資料、WEBサイト、SNSでの発信内容を刷新。担当者の対応も、営業全体で「相談される会社を目指す」という軸に揃えていきました。
すると、営業先での第一印象が明らかに変わり、「ホームページを見て問い合わせました」という引き合いが月に2〜3件ペースで来るように。紹介の連鎖も生まれ、価格よりも対応力を評価される商談が増えていきました。

 

技術だけでなく、「考え方」が伝わるようになった

B社の強みはもともとあった技術力ですが、それ以上に伝わったのは「困っている相手を見捨てない姿勢」。これが、顧客にとっての安心感となり、信頼となり、「指名される会社」につながっていったのです。

 

このように、ブランディングは新しい施策を考え出すことではありません。大切なのは、「なぜ選ばれているのか」を言語化し、それを一貫して伝えること。それだけでも、会社の印象と選ばれ方は確実に変わっていくのです。

ブランディングは、今いる顧客との関係を深めることから始まる

新規顧客を追いかけるのは、営業として当然の動きです。でも、ブランディングにおいて最も大きな力を発揮してくれるのは、今すでに自社を選んでくれている顧客。

彼らのなかにこそ、自社の価値があり、他社との違いがあり、次の顧客へのヒントがあります。

 

「紹介したくなる会社」になれているか?

紹介が生まれる会社と、生まれない会社には明確な差があります。それは単にサービスの質や価格ではなく、その会社を好きかどうか。その会社を説明するときにストーリーがあるかどうかです。

人は、ストーリーのあるものを人に話したくなりますね。会社の考え方や姿勢が明確で、それがスタッフや営業にも行き届いていれば、自然と「なんか、この会社いいよね」が伝播していきます。

 

選ばれる理由は、自分たちのなかにある

競合を見て「どう違うか」を考える前に、自社が「なぜ選ばれてきたのか」を見つめ直すことのほうが大切です。そこに気づき、言葉にして、社員と共有できれば、会社全体が同じ方向を向けるのです。

それが、「ブランド」として外ににじみ出ていきます。

 

これまでに積み上げてきた信頼がブランドの価値

特別なキャンペーンも、広告予算も、必ずしも必要ではありません。
「うちの良さってなんだろう?」と問い直し、
「それが伝わっているか?」を見直すだけで、十分にブランディングは始められます。

そしてそれは、どんな中小企業にもできることでもあるのです。

選ばれる会社には、明確な理由がある

これからブランディングをはじめる方にとって、ブランディングは難しそうな印象があるかもしれません。でも、本当の意味でのブランディングとは、自社の「らしさ」や「考え方」を明確にし、それを信頼できる形で伝えること。

ですから、それは大きな会社だけができることではないのです。むしろ、顔が見え、声が届く中小企業こそ、深くて強いブランドをつくることができるかもしれません。

選ばれる会社には、理由がある。
それは、価格でもデザインでもなく、「この会社と仕事がしたい」と思わせる、信頼と一貫性の積み重ねがもたらすものです。

今いる顧客の声を聞いてみてください。そこに、すでに選ばれている理由がきっとあります。まずはそれを知り、言葉にし、ほかの誰かにまっすぐに伝えていきましょう。

リソースがないのは、どこも同じ。違いが出るのは、「覚悟を決めて動くかどうか」。小さな会社が選ばれる会社になるには、理由をつくるしかありません。その一歩を、今ここから始めてください。

 

ブランディングに対する壁の高さは、少し低くなったでしょうか。

フレイバーズでは、中小企業のブランディング支援に特化したサービスを提供しています。私たちが大切にしているのは、経営者の想い、会社の社風を掘り起こし、伝わるかたちに整えること。かっこよさよりも、らしさと実効性を重視したブランディングを支援しています。

「ブランディングは、大きな投資や長期間が必要そう・・・」そう感じている方もおられるかもしれません。
でもご安心ください。私たちは、短期(約3ヵ月)で方向性を定め、標準で半年ほどで自走できる体制構築を支援しています。
あとは社内で無理なく続けられるよう、必要な仕組みやツールも整備します。

費用については、事業規模や支援範囲に応じて最適なプランをご提案しています。
まずはお気軽にご相談ください。貴社にとって「ちょうどいいブランディング」を一緒に考えましょう。

  • 顧客ヒアリングを通じた「選ばれる理由」の発掘
  • 言語化・ブランドメッセージの設計
  • 営業資料やWEB、SNSなど発信の一貫性づくり
  • 社内への浸透まで見据えた並走型の支援

「相談だけでもいいかな?」
そんな段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

中小企業のブランディング完全ガイド
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インナーブランディングとアウターブランディング、どちらが先?順番の正解と失敗しない進め方

 

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

本記事で分かること

インナーブランディングとアウターブランディング、どちらを先に進めるべきか。この問いに対し、本記事では順序の基本原則と、実務での判断基準をわかりやすく解説します。
中小・中堅企業の採用現場で起きがちな「順番ミス」の実例を交えながら、社内の空気づくりがいかにブランドの核となるかを提示。インナーとアウターの違い、順序の判断軸、そして取り組みを始めるための具体的な第一歩まで、実践的に学べます。

インナーとアウター、どっちからやるべき?という迷い

「ブランドを整えたい」「発信を強化したい」―そう考えたとき、必ず出てくるのがこの問いです。

インナーブランディングとアウターブランディング、どちらを先にやるべきか?

多くの企業が、まずアウター(=外向けの発信)に手をつけがちです。
でも、インナー(=社員や社内の共通認識)を置き去りにしたまま発信すると、逆効果になることも。

たとえば、
「あなたのために精一杯働きます」と広告でうたっているお店に入ったら、店員の態度がつっけんどんだった。そんな経験はありませんか?

外で語っていることと、中で実際に起きていることにズレがあると、ブランドへの信頼は一気に冷めてしまいます。

この記事では、

  • 「インナーとアウター、どちらを先にやるべきか」
  • 「順番を誤ると何が起きるのか」
  • 「中小・中堅企業が取るべき、現実的な進め方」

を実例を交えて解説。採用、社内の空気、発信力―すべては「順番」から変わり始めます。

インナーブランディングとアウターブランディングの違いとは?役割と目的を整理

「インナーが社内向けで、アウターが社外向け」
それだけで済ませてしまう説明もありますが、実際はもっと「目的」と「使いどころ」が違います。

 

■ インナーブランディングとは?

社員一人ひとりが、会社やブランドの「らしさ」を理解し、納得し、自分ごととして体現できる状態をつくること。

  • 何をたいせつにしている会社なのか
  • なぜそれをやるのか
  • 自分たちはどこに向かっているのか

こうした価値観や方向性を、トップダウンでもボトムアップでも社内に共有・浸透させる取り組みがインナーブランディングです。

 

■ アウターブランディングとは?

ブランドの価値や姿勢を、社外に向けて発信し、理解・共感してもらうための取り組み。

  • 採用広報
  • SNSやWEBでのブランディング
  • 広告やプロモーション

すべては「自社の魅力」を、ターゲットにどう伝えるか、という設計と運用の話です。

 

■ どちらかではなく、「順序と連動」がカギ

インナーとアウターは、どちらか一方が正解ではありません。中と外をどう連動させるか。そして、どちらを先に整えるべきか。これが成果を分けるポイントです。

結論:インナー → アウターが基本。でも例外もある

原則として、インナーブランディングが先。アウターブランディングはそのあとです。理由はシンプル。中で語れないことを、外で語っても響かないから。

たとえば、自社の強みや価値観を社員が理解していないのに、外に向かって「うちは○○な会社です」と発信しても、どこか薄っぺらく聞こえてしまう。

それどころか、発信内容と実態にズレがあると、信頼を失いかねません。これは採用でも、顧客対応でも、取引でも同じです。

 

でも、すべての企業がインナーから始められるとは限らない

とはいえ、現実には「今すぐ採用を強化したい」「事業を広げたい」というタイミングもあります。そんなときは、アウターを先に走らせながら、インナーを追いつかせるという選択も現実的です。

ただし、この場合は「中と外の整合性」を意識しながら進めることが重要です。発信を始めたあとに、社員が「そんなこと言ってたっけ?」とならないよう、最低限の認識合わせは同時に動かすべきです。

インナーとアウター、どちらか一方では足りない。でも、順序を間違えると、結果がついてこないのはほぼ間違いない。だからまずは、社内での理解と納得をつくるところから始めるのが王道です。

中小企業の採用現場から見えた、順番ミスのリアル

◆ 事例A:社員60名の製造業

ある地方の製造業A社は、慢性的な人手不足に悩んでいました。そこで、まずは“見せ方”から変えようと、採用サイトやパンフレットを刷新。若手社員のインタビューやスタイリッシュなデザインで「挑戦できる職場」と打ち出しました。

結果、応募は増えたものの
入社後の早期離職が相次ぎました。

面談で聞こえてきたのは、
「イメージと実態が違った」
「結局、やることも進め方も前時代的だった」

原因は、インナー=社員の認識や文化が置き去りにされたまま、外向けだけを磨いたこと。社員自身が会社を「挑戦できる場」だと捉えていないのに、それを前面に押し出したことで、ギャップが大きなマイナスになってしまったのです。

 

◆ 事例B:社員40名のIT企業

一方、大都市圏のIT企業B社では、採用を強化する前にインナーから着手しました。

まず社内で「自社のらしさ」を洗い出し、価値観を言語化。その内容を、社員全員が自分の言葉で語れるようにワークショップを重ねました。

その後に始めた採用広報では、社員自身がブランドを自然に語る姿がSNSや説明会で発信されました。結果、応募者の質が上がり、入社後のミスマッチも激減。リファラル採用も増え、社内の雰囲気自体が少しずつポジティブに変わっていきました。

インナー→アウターの順で丁寧に設計したことで、「伝える」だけでなく、「伝わる」採用が実現した例です。

「うちの会社、案外いいかも」という再発見が自信を生む

インナーブランディングに取り組むとき、よくある反応があります。
社員がこう言うんです。

「こんなこと、ちゃんと考えたことなかったけど…」
「うち、意外とちゃんとしてるじゃん」
「これ、もっと発信してもいいかもね」

普段の仕事では埋もれがちな“会社の良さ”を言葉にすると、社員は少し自信を持てるようになります。それは派手な変化ではありませんが、確実に「社内の空気」を変えていきます。

この状態が続くと、

  • 社員が自然と知人を誘うようになり(=リファラル採用)
  • 社外の人にも「なんか感じがいい会社だな」と伝わるようになります

つまり、社員の内側から始まった“ブランドの芯”が、外にじわじわとにじみ出ていく。この状態になれば、アウターブランディングは“盛る”必要がありません。ただ、ありのままを発信するだけで伝わるようになります。

もちろん一度やっただけで終わり、ではありません。定期的に「うちの良いところって何だっけ?」を言語化し直し、共有し、アップデートし続けることで、ブランドは「社員ごとの実感」として根を張っていきます。

ブランディングの順序を見極めるチェックリストと、始め方のステップ

「インナー → アウターが基本」――とはいえ、
すべての会社が一律にそうするべきとは限りません。
いま、自社はどちらを優先すべきか?を見極める、簡易チェックリストを用意しました。

 

インナーから始めた方がいいサイン

  • 社員が自社の強みや価値観をうまく説明できない
  • ブランドスローガンや理念が形だけになっている
  • 採用者から「聞いていた会社と違う」と言われたことがある
  • 社内での情報共有がバラバラ、部門ごとに温度差がある
  • 社員同士で「うちってどんな会社?」という問いに答えが割れる

インターナルブランディング

 

アウターから先行してもよいパターン

  • 直近で採用や事業拡大など、対外発信が急務になっている
  • 社員数が少なく(10〜20名など)、全員で理念を共有できている
  • 既に一定の共通認識があるが、見せ方・伝え方が弱いと感じている

※この場合も、「発信の中身」が社内に共有されていることが前提です。

では、最初の一歩は何か?
まずは社内でこんな問いを投げかけてみてください。

「うちって、どんな会社だと思う?」
「どこが他と違うと思う?」
「それって、他の人にも伝えたいと思える?」

この問いを上司→部下ではなく、全員がフラットに語り合える場にすることが大切です。その言葉のなかに、ブランドの芯が見えてきます。

インナーは理念研修や浸透施策だけではありません。「うちの良さ」を再確認し、社員自身が納得して語れるようになること。それが、ブランドの土台になります。

順序は戦略。ブランディングは社内の空気づくりから

インナーブランディングとアウターブランディング、どちらが先か。
答えはシンプルです。
「中が整っていないのに、外を飾っても意味はない」―むしろ、逆効果になることすらあります。

ある程度の期間、事業を続けてきた会社なら、必ず何かしらの良さがあります。
まずは社員が、
「うちって、突き抜けてはいないけど、案外いい会社かも」
と自然に思えること。

それが、やがて発信になり、人に伝わり、共感を生んでいきます。

ブランドは、刹那的な広告のように「作る」ものではありません。内側からにじみ出る「らしさ」を表現するもの。その一歩目は、派手な施策じゃなくていい。

「うちの良さって、なんだろう?」
「なぜ、うちは顧客から支持されているんだろう?」

その問いを、社員同士で語るところから、すべてが始まります。

 
 

社員の意識と行動が変わる!社内ブランディング成功の進め方とつまずきやすいポイント
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選ばれる会社になる覚悟。大阪の企業にいま必要な、採用ブランディング

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

採用活動において、「らしさをどう伝えるか」は以前にも増して重要になっています。とくに就活の早期化が進むいま、採用サイトや説明会で一度しか会えない学生に、自社の魅力を「一瞬で伝える力」が求められています。本記事では、大阪の企業が持つ強みをどう見せるか、採用ブランディングの考え方と具体的な手法、学生に選ばれる企業になるためのヒントを、事例やエピソードを交えて紹介します。

いまの就活生は、多くを見ない。一期一会の気持ちで相対する必要も。

就活が早期化するなかで、学生たちは数多くの企業を見るように見えて、実際にはほんの一部しか記憶に残していません。大学3年生の秋には、すでに1〜2社の内定を得ている学生も少なくなく、就職活動そのものに「焦り」を感じない人も増えています。

そういった学生が会社説明会に参加するのは、「もっと自分に合う会社があるかもしれない」という感覚からです。つまり、今持っている内定がゴールではなく、比較対象になっているということ。
だからこそ、説明会で出会う一人ひとりに対して、一期一会の覚悟で臨む必要があります。その出会いが、企業にとっても学生にとっても最初で最後になる可能性があるからです。

採用活動とは、数をこなすことではありません。目の前の学生に、自社の魅力や考え方が届くかどうか。その一回ごとの勝負を、きちんと設計し、言葉やコンテンツに落とし込むこと。それが、採用ブランディングの出発点です。

採用ブランディングで「らしさ」を伝えることが、大阪企業の武器になる

就職活動において、学生たちは企業を「条件」だけで選んでいるわけではありません。給与や福利厚生よりも前に、「この会社、なんかいいかも」と感じるかどうか。その直感的な共感や安心感が、エントリーの決め手になることがあるのです。

だからこそ、採用活動において重要なのは、自社の「らしさ」をどう伝えるか。

  • どんな人が働いているのか。
  • どんな雰囲気の職場なのか。
  • 何をたいせつにして、どんな価値観で動いているのか。

そういった情報が、言葉や写真、インタビューやデザインを通じてにじみ出ていく。その一貫した“空気感”が、「この会社なら自分もやっていけそう」と学生に思わせる。それが、採用ブランディングの本質だと私たちは考えています。

会社の魅力がにじみ出るのは、ちょっとした工夫

採用ブランディングというと、大がかりな施策や専門的なノウハウが必要だと思われがちです。けれど実際には、学生の心をつかむのは、ごく身近なリアルな話だったりします。

たとえば、
私たちの会社では上司もイジられます。
入社して間もない若手が、会議中に部長へツッコミを入れたり。それが許される空気があって、むしろ笑いが起きる。この距離の近さや人間くささは、求人票ではなかなか伝わりません。

また、
本町という立地と、早めの退社文化も大きな魅力
17時すぎには仕事が終わって、心斎橋で買い物、堀江でカフェ、難波で映画。仕事も私生活もどちらも大切にできる、そんな働き方のリアルが学生には刺さるのです。

こうした日常のひとコマを、写真やインタビュー、ちょっとした言葉で見せていく。それだけで、「あ、ここ、自分に合いそう」という感覚が生まれます。採用ブランディングとはつまり、無理に盛らず、ありのままの魅力を言葉と設計で伝えることなのです。

「大阪らしさ」が、採用活動の武器に

東京の企業と比べて、大阪の会社はネームバリューや規模で見劣りすると思われがちです。でも、そこにこだわる必要はありません。むしろ今の就活生にとっては、雰囲気や人の良さこそが決め手になることも多いのです。

大阪の企業には、独特の魅力があります。

  • 誰とでもすぐに距離が縮まる文化。
  • ツッコミや冗談が飛び交う会話。
  • 上司と部下の間に上下関係よりも信頼感がある。

こうした雰囲気は、東京の大企業ではなかなか味わえないものです。

さらに、地域とのつながりも大阪企業ならではの強みです。地元のクライアントと10年、15年と付き合い続ける中で生まれる信頼や誇り。そこには、深くてあたたかい仕事があります。

就活生の中には、東京の企業に憧れていたけれど、「この会社の人たち、なんかいいな」と感じて、大阪に残る選択をする人もいます。「会社の人間らしさ」を正しく伝えることは、志望理由そのものを変える力を持っているのです。

採用ブランディングは、結果につながります

私たちはこれまで、大阪を拠点に、さまざまな企業の採用ブランディングを支援してきました。そのなかで感じるのは、「伝え方を変えるだけで、応募者の質も、量も変わる」ということです。

ある企業では、社風や社員の姿が伝わるインタビュー記事を採用サイトに加えただけで、
「説明会に来た時点で会社の雰囲気が分かっていた」
「サイトを見て、ここで働く自分が想像できた」

といった声が増えました。

また別の企業では、「らしさ」を明確に打ち出した採用ページを公開してから、「なんとなく受けた」学生よりも、会社への共感を持った学生のエントリーが増えたのです。

これは偶然ではありません。
採用ブランディングは、オシャレなページを作ることではなく、会社と学生の間に「ちゃんと伝わる接点」をつくること。その接点があるかないかで、結果は確実に変わります。

「伝えたこと」と「実際の姿」が一致するとき、信頼が生まれる

学生たちは、企業の採用サイトをしっかり見ています。そのうえで、会社説明会に参加し、オフィスを訪れ、社員と話しながら、こう思っているのです。
「サイトに書かれていたこと、本当にそうなのかな?」

採用サイトで見た世界と、説明会で感じた空気にズレがなければ、学生の中に信頼が生まれます。逆に、ギャップがあれば、それは“違和感”として残ります。

だからこそ、採用ブランディングで大切なのは、見た目のカッコよさではありません。リアルな魅力を、誤魔化さず、正しく、伝えること。そこにちゃんとした言葉と丁寧な設計があれば、会社は自然と選ばれる存在になります。

採用活動は、もう数で勝負する時代ではありません。大事なのは、「この会社で働きたい」と思ってもらえること。そのために、いまこそ「伝え方を見直すタイミング」です。

「伝え方を変える」ことは、「未来を変える」こと

就活生にとって、最初の出会いは採用サイトであり、そこに書かれた言葉です。
説明会での印象、社員の雰囲気、オフィスの空気感――
それらが採用サイトと“つながって”いるとき、はじめて信頼が生まれ、未来の仲間が動き出します。

会社が持っている「らしさ」や「魅力」を、どう見せていくか。
今の時代、それは採用の成果を左右する真剣な経営判断のひとつです。

フレイバーズは、大阪を拠点に「らしさをカタチにする」採用ブランディングを行っています。
「うちの会社、何をどう伝えたらいいんやろう?」という段階からでも大丈夫です。
まずは一度、お話ししませんか。

 

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営業に効くBtoBブランディング。指名・信頼・単価を引き上げる仕組みとは

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

BtoB企業が「この会社なら任せられる」と思われるには信頼が不可欠。そのための5つの実践視点を解説します。①優位性の明確化、②顧客中心のコミュニケーション、③一貫性あるブランド体験、④自社らしいストーリー、⑤デジタル可視性の最適化──これらを実践することで、他社と差がつくブランド構築が可能になります。

BtoBブランディングが機能していない会社に共通する3つの営業課題

BtoB営業の現場では、日々多くの努力が積み重ねられています。
しかし、いくらがんばっても思うように新規開拓が進まず、手応えを感じられない。そんな状況に悩まれている企業も少なくありません。

実は、そうした企業にはいくつかの共通点があります。
ここでは、新規営業がうまくいかない会社にありがちな3つの課題を挙げてみましょう。

 

1. 価格で比較されて終わる

どれだけ丁寧に提案しても、最終的に価格だけで判断されてしまう。
そんな経験はありませんか?

提案の中身よりも、数字の大小だけで他社と比べられてしまう場合、顧客にとっては「どこから買っても同じ」に見えている可能性があります。

 

2. 決裁者にたどり着けない

営業担当者とはスムーズに会話ができても、なかなか決裁者のもとに話が届かないというケースも多いのではないでしょうか。

稟議の途中で止まってしまう、上司にうまく説明してもらえない。
この背景には、「この会社に任せて大丈夫」という信頼感が社内で共有されていない、つまりブランドが社内に届いていないという課題が潜んでいます。

 

3. 提案の内容が埋もれてしまう

自社なりの強みや工夫を盛り込んだ提案なのに、「他社とあまり変わらないですね」と言われてしまうことはありませんか?

それは提案そのものではなく、会社全体としての見え方がぼやけているのかもしれません。
「この会社なら任せたい」と思っていただくには、提案書の中身だけでなく、その背後にある企業としての価値・印象が大きく影響します。

営業が成果を出すためには、商談の現場だけでなく、その前段階でどれだけ信頼を得られているかが大きく関わっています。

このような悩みを抱える企業こそ、いま一度「ブランディング」という視点を取り入れてみることで、
営業活動そのものが大きく変わる可能性があります。

なぜBtoBブランディングが営業に効くのか?

営業活動は、単に商品のスペックや価格を伝えるだけでは成果につながりません。とくにBtoBの場合、信頼や組織的な意思決定が大きく影響します。
ここで重要になるのが、「企業としての見え方」、つまりBtoBブランディングです。

BtoBブランディングは、企業の認知や印象、安心感を通して、営業活動のあらゆる局面に影響を与えます。なぜ営業にブランディングが必要なのか、3つの理由から見ていきましょう。

 

1. 覚えてもらえる企業は、自分たちの「価値の源泉」を伝えている

中小企業や無名ブランドの場合、どれだけ頑張っても大企業のように広く知られることは簡単ではありません。広告費をかけられるわけでもなく、メディアに露出する機会も限られています。

しかし、それは不利というより、「見せ方次第」の話です。

たとえば、これまで取引してきた顧客がなぜ自社を選び、なぜ継続して付き合ってくれているのか。
その納得感のある理由や信頼の背景を、丁寧に見せるだけでも十分なブランドになります。

「この分野に強い」「対応が早い」「人が信頼できる」・・・
現場では当たり前と思っていたことが、実はブランドの核になります。知られていることよりも、“なぜ選ばれているか”を言語化し、表に出すことが大切なのです。

結果として、それが見込み客の記憶に残り、商談での第一印象にもつながります。

 

2. 信頼される企業は、決裁者が動いてくれる

営業現場でよくあるのが、「提案内容には手応えがあるのに、なぜか止まってしまう」という状況です。担当者の反応は悪くない。それなのに、最終的に失注してしまう。この原因の多くは、決裁者にうまく伝わっていないという点にあります。

そしてもう一つ、大きな壁になるのが「知らない会社だから不安」という心理です。

どれだけ合理的な提案でも、社内で話が通るためには、相手企業に対する安心感や信頼感が必要になります。ここで効いてくるのが、BtoBブランディングの力です。

たとえば、

  • 実績ページに取引先の社名が明記されている
  • 導入事例に具体的な成果が載っている
  • 会社の理念や姿勢が明文化されている
  • トップメッセージが掲載されている

といった情報が整っていれば、提案を受け取る側も「この会社に任せても問題ない」と思いやすくなります。それはつまり、稟議が通りやすくなる状態を自ら作っているということです。

営業だけで到達できない階層に対しても、ブランドが後押ししてくれる。
BtoBブランディングは、そうした「営業の届かない場所」に信頼を運ぶツールとして機能するのです。

 

3. 単価を守れる企業は、価値で勝負している

BtoBの営業現場では、「最後は価格で決まる」と感じている方も多いのではないでしょうか。とくに競合が多い業界や、製品やサービスに大きな違いが見えにくい分野では、つい価格で勝負するしかない状況に追い込まれがちです。

しかし、毎回のように値引きや価格調整を求められていては、利益を確保するどころか、営業のモチベーションも保てなくなってしまいます。

そこで必要になるのが、価格以外の「選ばれ続ける理由」を確立すること。
それこそが、ブランディングの役割です。

  • この会社は、提案のクオリティが高い
  • 導入後のサポートが手厚い
  • 担当者が信頼できる
  • 長期的な付き合いができそう

こうした“なんとなくの安心感”や“誠実な印象”が積み重なることで、顧客は「少し高くても、この会社にお願いしたい」と感じるようになります。

つまり、BtoBブランディングによって企業の“価値”が伝わっていれば、価格が主な判断軸になりにくくなるのです。

単価を守れる企業とは、あらかじめ「この会社には価格以上の価値がある」と認識されている企業。それを実現するのが、日々の営業活動に並走するブランドの力なのです。

営業を強くするブランディング施策5選

ここまでお伝えしてきたように、BtoBブランディングは営業活動を支える土台になります。では実際に、営業の現場で効果を発揮するブランディング施策にはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、取り組みやすく、かつ成果に直結しやすい5つの施策をご紹介します。

 

1. 提案資料に一貫性を持たせる

提案書や営業資料は、単なる説明のための道具ではありません。そこには会社の考え方やスタンスがにじみ出ます。だからこそ、色使いやフォント、言葉のトーン、構成のリズムなどを整えることで、営業担当者が発するメッセージに説得力が加わります。

また、部署や担当者ごとに資料の見せ方がバラバラだと、お客様にとっては一貫性のない会社に映ってしまいます。

ブランドとしての印象を統一するには、提案資料から整えることが第一歩です。

 

2. 導入事例を営業の「武器」に変える

営業トークの中で、最も説得力を持つのが「他社での成功事例」です。
お客様と同じ業界や規模、課題を持っていた企業が、どのように導入し、どんな成果を得たのか。このようなストーリーは、共感と安心を生み出します。

単に「〇〇社に導入されています」と表記するのではなく、背景・課題・解決策・結果の流れが伝わるような形式にすることで、営業の現場でも活用しやすくなります。

すでにある取引の中に、営業に効く事例のタネが眠っていないか、ぜひ見直してみてください。

 

3. 営業とWebサイトの連動を強化する

Webサイトが「名刺代わり」で止まっていませんか?近年では、商談前にほとんどのお客様がサイトをチェックしています。その際、サービス内容が分かりにくかったり、雰囲気に一貫性がなかったりすると、せっかくの営業活動が台無しになってしまいます。

理想的なのは、営業資料とWebサイトの内容やトーンが自然につながっている状態です。たとえば、提案書で紹介した導入事例を、サイト上でもすぐに確認できるようにしておくと、信頼感が増します。

営業とWebサイトは別々ではなく、一体で動くブランド接点と考えることが重要です。

 

4. SNSで会社の中身を見せる

BtoB企業であっても、SNSは十分に活用できます。とくに、決裁者層が利用しているLinkedInや、企業の「中の人」としての発信がしやすいXなどは、企業の考え方や姿勢を伝えるのに適した場です。

サービスの話をするだけでなく、社員の取り組みや価値観、日々の業務の様子などを発信することで、
企業としての温度感や人柄が伝わります。

情報があふれる今の時代だからこそ、中小企業の“人間らしさ”がブランドになることもあります。

 

5. 展示会やイベントで印象を残す工夫を

展示会やリアルイベントは、お客様と直接会える貴重な場です。しかし、名刺交換だけで終わってしまえば、ほとんど印象に残りません。

大切なのは、短時間でも「この会社、なんかいいな」と思ってもらえる工夫をすることです。
たとえば、

  • 配布資料にストーリーや実績を載せる
  • ブースのメッセージやカラーにブランドトーンを反映させる
  • フォローアップメールや小冊子で記憶をつなぐ

展示会は商談の入り口であると同時に、「ブランドを感じてもらう場」でもあります。

このような小さな取り組みを積み重ねることで、営業活動はよりスムーズになり、無理な売り込みをしなくても選ばれる状態がつくれていきます。

次のセクションでは、実際にBtoBブランディングに取り組んだ企業が、営業成果をどう変えたのかをご紹介します。

事例:ブランディング導入で営業が変わった会社

ここでは、実際にBtoBブランディングに取り組むことで営業成果を向上させた3つの企業の例をご紹介します。いずれも、営業がつらいと感じていた企業が、ブランディングによって状況を変えていったケースです。

 

1. ITサービス企業:営業資料を見直して指名数が倍増

社員数30名ほどのITサービス企業では、受託開発の提案営業に課題を抱えていました。
サービスそのものに強みはあるものの、競合と比較されると「特徴が伝わりづらい」と言われ、なかなか受注につながらない日々が続いていたそうです。

そこで取り組んだのが、提案資料の見直しと一貫したブランドトーンの整備です。
過去の成功事例を構造化し、自社の得意領域を明確にしたうえで、提案書の構成や表現を統一しました。あわせて、営業メンバー向けのトークガイドも整備しました。

その結果、指名での問い合わせが以前の2倍に増え、営業担当者からも「説明がしやすくなった」「価格を下げずに提案できるようになった」との声が上がっています。

 

2. 製造業の部品メーカー:Webと営業連携で単価アップ

創業40年の部品メーカーでは、長年の実績はあるものの、新規開拓が難航していました。
商談ではいつも「まずは見積もりを」と言われ、価格競争になってしまうことが悩みの種でした。

そこで始めたのが、導入事例の再編集とWebサイトの構成改善です。これまで対面営業だけで語っていた事例を、業界別・課題別に整理し、写真やインタビュー形式でWebに掲載。営業資料とも連動させることで、商談前から価値が伝わるように設計しました。

導入後は、「他社と何が違うのかが分かりやすい」と言われる機会が増え、最終的には平均受注単価が約1.3倍に上がったそうです。

 

3. SaaS系スタートアップ:SNSと営業トークの一貫性で商談率アップ

立ち上げ5年目のSaaSスタートアップは、知名度不足による営業難に悩んでいました。
メール営業や電話フォローを繰り返しても、商談に至らないことが多く、受注までのリードタイムも長い状態でした。

その課題を受けて、会社の思想やカルチャーを発信するSNS運用を開始。社長・営業・マーケが連携し、LinkedInで実名投稿を続けることで、企業としての「顔」が見えるようにしました。加えて、提案資料やWebのメッセージも統一し、営業トークに一貫性を持たせました。

結果として、商談時の信頼構築が早まり、決裁者との面談率が上昇。営業プロセス全体が短縮され、受注スピードも向上しました。

このように、BtoBブランディングの施策は、決して大がかりなものでなくても効果があります。大切なのは、自社の強みを言語化し、一貫性を持って伝えること。それによって、営業はよりラクに、より戦略的に成果を出せるようになるのです。

営業を強くしたいなら、ブランディングを見直すことから

営業がうまくいかない原因を、営業力や個人の努力にだけ求めていないでしょうか。
実際には、もっと根本的な課題「企業としての見え方が整っていない」ことが、新規開拓のつまずきや、価格競争から抜け出せない要因になっているケースが少なくありません。

ブランディングというと、大企業のもの、高額な広告戦略というイメージを持たれることもあります。
ですが、BtoBの現場においてはむしろ、中小企業こそブランディングが効きます。

  • 知名度がなくても、選ばれている理由を伝える
  • 規模が小さくても、信頼される情報設計をする
  • 価格で勝負しなくても、価値で選ばれる状態をつくる

これらはすべて、ブランディングの力で実現可能です。

  • 営業をもっと前に進めたい。
  • 単価を落とさずに受注したい。
  • 資料を整えたいけど、何から手をつけるべきか分からない。

そんなときこそ、営業とブランディングをつなぐ設計を見直してみませんか?

 

ご相談・ご支援について

フレイバーズでは、BtoB企業のブランディング支援を通じて、営業成果につながる実践的な改善を多数ご支援しています。

  • 営業資料・提案書の見直し
  • Webサイトと営業活動の連動設計
  • 事例コンテンツの編集と活用支援
  • SNSや展示会での印象戦略設計

など、企業ごとに最適な取り組みをご提案しています。

営業がつらい。だけど、売れる会社にしたい。そのための第一歩として、ぜひお気軽にご相談ください。

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インターナルブランディング社内浸透の極意。社員が自分ゴト化する5つの問い

「インターナルブランディング(社内浸透)の本質は、社員一人ひとりのなかにあるということ」

インターナルブランディングや社内浸透に取り組む企業が増えるなか、ロゴやスローガンをただ社内外に刷り込むだけでは真の共感は生まれません。

まず問うべきは、
「自社のめざす姿(ブランドステートメント)は、社員たちが大切にしている価値観とどう重なるのか?」

これこそがインターナルブランディング/社内浸透のスタートラインです。
本コラムでは、社員たちが自分自身の「芯」と会社のあるべき姿をつなぎ、自分ゴトとしてブランドを育むための第一歩を具体的にご紹介します。

中小企業白書・第3節 中小企業における経営理念・ビジョンの浸透

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

社員一人ひとりの価値観とブランドステートメントをつなげ、「自分ごと化」してブランドを育むための5つの問いを紹介します。①価値観の言語化、②ステートメントへの共感、③日常業務への落とし込み、④成功体験の共有、⑤行動につなげる進歩設計──これらを継続することで、ブランドが社内に自然と浸透していくプロセスがわかります。

 

1.自分が大切にしている価値観は何か?

インターナルブランディング/社内浸透の取り組みを始める前に最初に問いたいのが、「自分が大切にしている価値観は何か?」というシンプルだけれど深い問いです。なぜこれが重要かというと、どれだけ会社が美しいビジョンやステートメントを掲げても、社員一人ひとりが自分の「芯」と結びつかなければ、真の共感にはつながらないからです。

まずは個人ワークとして、自身のキャリアや日常で「これぞ自分らしい」と感じた瞬間を3つピックアップしてもらいましょう。

たとえば、

「チームをまとめるときに、みんなの意見を丁寧に拾い上げること」
「締め切り前の忙しさを逆手に取って、効率的な進め方を編み出すこと」

など、自分が熱中し、誇りを感じた体験を書き出します。それらを眺めながら、共通するキーワードを抽出する。これが、自身の大切にしている価値観(=芯)を言語化するプロセスです。

次に、そのキーワードをペアシェア(2人1組で互いの考えを共有する手法)で持ち寄ります。相手の価値観を聞くことで「自分にはなかった視点」や「思いがけず重なる部分」に気づき、対話を通じて互いの理解を深めます。このフェーズは、単なるワークショップではなく、インターナルブランディングを社内に浸透させるための「対話の起点」になります。

こうして浮かび上がった「自分の芯」は、後の「ブランドステートメントを自分ごと化する」ワークでも大きな役割を果たします。自分の価値観がはっきりすると、自然と「会社の目指す姿」との接点が見えてきて、社内浸透の土台がぐっと強固になるのです。

 

2. ブランドステートメントは自分にどう響くか?

この問いは、「押し付けられた言葉」ではなく、自分自身がステートメントをどう受け止め、腹落ちしたかを確かめるフェーズです。まずは小グループでブランドステートメントを音読し、その響きを体感してみましょう。

それから、それぞれが「響いたキーワード3つ」と「違和感を覚えた言葉1つ」を付箋に書き出し、ホワイトボードに貼り出します。異なる解釈が並ぶことで、ステートメントへの感じ方の多様性が浮かび上がり、お互いの視点を尊重しつつ「本当に伝えたい意図」は何かをすり合わせることができます。このプロセスを経ることで、ステートメントは単なる社内スローガンではなく、一人ひとりの行動指針として内面化されていきます。

また、このワークを円滑に進めるためにはファシリテーターの役割も重要です。発言が偏らないよう、あらかじめタイムボックス(あらかじめ作業時間を区切り、その枠内で集中する手法)を設定し、全員に発言機会を与えましょう。加えて、「正解・不正解」を求める場ではないことを強調し、安心して意見を出せる心理的安全性を担保することが肝要です。

最後に、グループディスカッションで出た気づきは1on1面談などでフォローアップし、個々のフィードバックとして還元することで、ブランドステートメントが日々の業務にしっかり根づいていきます。

 

3. このステートメントを、日々の業務にどう適用できるか?

抽象的なブランドステートメントを具体的な行動に落とし込むためのフェーズです。まずは一人ずつ5分間で「自分の担当業務×ステートメント」のアイデアを紙やオンラインに書き出し、その後チームでシェアします。

具体例:業務改善に取り組む

  • 「すべての瞬間に、意味を。」を体現するには、小さな無駄を見つけて排除し、意義ある仕事時間を増やすことも有効です。
  • 各自が「ここを改善すれば、お客様やチームの体験がもっとスムーズになる」プロセスを1つ挙げてみる。
  • 例)申請フローの承認ステップを2段階から1段階に削減する、定例報告のフォーマットを統一して手戻りを減らす、など。

アイデアが出そろったら、付箋やリストで可視化し、投票やシンプルな評価基準(実現しやすさ/インパクト)で試験運用したい案を2~3を選定。選ばれた改善策は、次週の1on1やチームミーティングで「いつ・誰が・どう試すか」をコミットし、実践および振り返りを行うことで、ステートメントが「自分ごと」として根づいていきます。

 

4. 過去の成功体験で、このブランドらしさを感じた瞬間は?

この問いは、実際の経験に立ち返ることで「ブランドらしさ」の具体像を肌感覚でつかむフェーズです。まずは3分間で、社内外問わず自分が関わったプロジェクトや日常業務のなかから、「あのとき、この会社の価値観が発揮された」と感じた成功体験を一つ選んでメモにまとめます。

その後、ペアもしくは小グループで順にストーリーテリング。話し手は「何が起きたか」「どの言動や判断がらしさを生んだか」を語り、聞き手は深掘りの質問をしてエッセンスを引き出します。

最後に、ホワイトボードやオンライン付箋に「らしさを支えた要素」を図示し、チームで共有。こうして言語化・可視化された実例集が、社内のナレッジベースとなり、新たな施策や日々の判断の参考になります。

 

5. 自分がこのブランドを体現するための、具体的な次の一歩は何か?

この問いでは、ワークを“振り返り”で終わらせず、必ず「行動」につなげることを狙います。まずは各自が一歩踏み出せる“小さなアクション”を考え、書き出しましょう。

例としては、

  • 来週のミーティング冒頭で、ブランドステートメントに沿った発言を必ず1回行う
  • 日報や報告書で「すべての瞬間に、意味を。」を意識したコメントを1つ以上入れる
  • 社内チャットで、同僚が体現したブランドらしさを見つけたら称賛メッセージを送る

次に、上長との1on1で「いつまでに何を行うか」をコミットし、カレンダーに予定を入れます。さらに、月次ミーティングやチームチェックイン(定例会議の冒頭で、各メンバーが進捗や気づきを1~2分で共有し、状況把握と心理的安全性を高める時間)で「実践できたか」「何を学んだか」を3分間で共有する場を定期化。これにより、個人 → チーム → 全社へとアクションが連鎖し、PDCAサイクルを回しながら「インターナルブランディング」が日常業務として定着していきます。

 

インターナルブランディング社内浸透の極意

 

内発的動機が出発点

社員一人ひとりが自分の“芯”を言語化し、「会社のビジョンとどう重なるか」を自分ごととして捉えることが、真の社内浸透(インターナルブランディング)を生み出す。

 

5つの問いで腹落ちを促す

  1. 私が大切にしている価値観は何か?
  2. 会社のビジョン(ブランドステートメント)は私にとってどう響くか?
  3. このステートメントを、日々の業務にどう適用できるか?
  4. 過去の成功体験で、このブランドらしさを感じた瞬間は?
  5. 私がこのブランドを体現するための、具体的な次の一歩は何か?

 

ワークの設計ポイント

  • 対話と振り返り(ペアシェア/小グループで感想共有)
  • 具体化→コミット(アイデア出し→行動計画)
  • フォローアップ(1on1・チームチェックインで進捗&学びをシェア)

 

日常業務へ落とし込む

業務改善やミーティング発言、チャットでの称賛など、小さなアクションを積み重ねることで、「すべての瞬間に、意味を」というブランドステートメントが日々の行動指針となる。

これらを継続的に回し続けることで、「ブランドは社内で育つ」という状態をつくり、「インターナルブランディング」による真の社内浸透が実現します。

インターナルブランディングは、一度ワークを回しただけでは成果は見えにくく、むしろ時間をかけて何度も実践し続けることこそが真の力になります。継続的な対話とフィードバックのサイクルを回しながら、社員一人ひとりの共感が少しずつ深まり、その積み重ねがやがて揺るぎない強いブランドを築き上げ、ひいては良い会社づくりにつながっていくのです。

インターナルブランディング

中小企業がAIを使い、経費ゼロでブランディング

中小企業のブランディング完全ガイド|AIで始める実践法

 

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

景気が不透明な時代に、中小企業がコストを抑えながら「選ばれるブランド」になるための5つの実践視点を紹介します。①ポジショニング設定、②ペルソナ設定、③ストーリー構築、④トーン&スタイル、⑤一貫した接点設計に加え、ChatGPTやCanvaなど無料AIツールの活用法も解説。テンプレート付きで、すぐに着手できる実務ガイドです。

 

景気が不透明ないま、中小企業にこそ必要なのは「ブランド力」

「安うしときまっせ」では、もう勝てない。
大阪産業局が2025年4月に行った景況調査では、今後景気が「伸びる」と見ている企業はわずか19.9%。
一方で「横ばい」が約半数、「悪くなる」と答えた企業も4社に1社。
つまり多くの中小企業が、「先行きの見通しが立たない」状況に置かれています。

そんななかで求められるのは、「安さ頼み」から抜け出すこと。
限られた資源の中でもしっかり選ばれる会社=「ブランド」のある会社になることです。

本記事では、大阪の中小企業がいまある手持ち資源で始められるブランディングについて、ChatGPTなどの無料ツールも活用しながら、わかりやすく解説します。
今日からでもすぐに取り組めるよう、テンプレートやチェックリストも用意しました。

 

なぜいま、中小企業にブランディングが必要なのか?

「うちは金ないから、宣伝なんてやってられへん」・・・ブランディングなら、やる価値はあります。
ブランディングと聞いて、「それは大企業の話」「うちは普通の町工場やから」と思ったことはありませんか?
でも実は、中小企業こそ「ブランド」をつくるべきなのです。

なぜか?

中小企業は広告費も、マンパワーも限られている。知名度だって、たかだかしれている。
だからこそ、新規の顧客候補に「この会社、信頼できるかも」「なんかええ感じやな」と思われる理由=ブランドがなければ、価格勝負になってしまうから。

ブランドは、毎日のやり取りの「にじみ」からできている

誤解されがちですが、ブランドはロゴやキャッチコピーを据え、きれいなWEBサイトをつくることではありません。

  • 初めての問い合わせにどう返すか
  • 商品やサービスにどんな言葉を添えるか
  • 社員さんたちがどんな態度で顧客と接するか
  • WEBサイトやSNSの言葉づかいはどうか

こうした「日々のコンタクトポイント(接点)※」での積み重ねが、「あの会社、なんか好きやな」という印象=ブランドになっていきます。

つまり、大きな予算をかけなくても、意識と工夫でブランドはつくれる。

ここから先は、そんなブランドをどうやって「自社らしく」つくるかを、5つの視点とAIツールを交えながら紹介していきます。

※コンタクトポイント
顧客と自社が接するあらゆる接点のこと。たとえば、電話対応、WEBサイト、会社案内、SNS、請求書、名刺、事務所など。目にふれる・声を聞く・接する場面はすべて「ブランドの顔」になるという考え方です。

 

自社ブランドをつくる5つの視点【テンプレート付き】

「うちらしさ」を言葉と形にするための軸は、次の5つ。
この章では、それぞれを簡単なテンプレート付きで紹介していきます。紙でもPCでも、形にしながら読み進めてください。

 

① ポジショニング(立ち位置)

うちは何屋で、誰にとって、どう役立つのか?

【テンプレート】
「うちは ○○向けに、△△を通じて、□□な価値を届けている会社です」

例:
「うちは飲食店向けに、手間のかからない業務用食材を通じて、“日替わりメニューが楽に決まる”という価値を届けている会社です」

 

② ペルソナ(顧客のキャラクター)

誰に選ばれたいのか?“一人に絞る”勇気を持とう

【テンプレート】
名前:_____さん(年齢)
職業・役職:__________________
抱えている悩み・課題は?____________
うちの商品・サービスでどう変わる?________

※実在の顧客を思い浮かべて書くと、リアルに思い描けるようになります。見落としがちですが、とてもたいせつなテンプレートで、どんな施策を考えるときも、ペルソナの◯◯さんなら、どう感じてくれるだろうと立ち返ることが、アイデアがブレないようになります。

 

③ ブランドストーリー(なぜ、この会社をやっているのか)

会社の原点に「らしさ」が詰まっている

【テンプレート】
「最初は○○だった。でも、△△な経験をきっかけに□□を目指すようになった」

例:
「最初は町の電気屋だった。でも、大手量販店の進出で経営が厳しくなり、“近所のお年寄りの困りごとを解決する店”として舵を切った」

 

④ トーン&スタイル(伝え方)

言葉・デザインに「らしさ」を込める

  • かっちり丁寧?
  • 親しみやすくフレンドリー?
  • 熱意あふれる情熱タイプ?
  • 職人肌の寡黙系?

SNS、チラシ、WEBサイトなど、すべてのコンタクトポイントで「同じ雰囲気」が感じられるように統一します。

【チェック】
□ 自社の言葉づかいは決まっているか?
□ 社名・商品名・キャッチコピーに統一感があるか?
□ フォントや色、デザインに一貫性があるか?

 

⑤ コンタクトポイント(接点)

お客さんと接する「あらゆる場面」がブランドをつくる

  • 電話応対
  • 見積書・請求書
  • 商品に添えるメッセージ
  • WEBサイトやLINE公式アカウントのトーク画面
  • 事務所の雰囲気

これらすべてが「ブランドの顔」になる場面です。
だからこそ、1つひとつを「うちらしい」に整えていきましょう。

マーケティングやブランディングで重要なのが、「一貫性を保つ」ということ。ある施策では◯◯と伝え、別の施策では△△となっている。これでは社内外で、どれがほんとうの姿なのかがわからなくなってしまいます。
中小企業に限らず、大企業でさえ、この一貫性を保つことは難しく、せっかくの施策が効果を発揮できないのです。

 

無料ツールとAIでコストゼロでもできる!中小企業のブランディング実践法

「うちには専門のデザイナーも、コピーライターもおらへん」
でも大丈夫。今の時代、無料のAIツールやテンプレアプリを使えば、「自社らしさ」は十分カタチにできます。

ここでは、ChatGPTやCanvaなど、誰でも使えるツールを例に、具体的な使い方を紹介します。

 

ChatGPTでつくる「キャッチコピー」と「ブランドメッセージ」

例:タグライン(短いひとこと)を考える

【プロンプト(指示)例】
「中小企業向けに業務効率化をサポートしている会社のキャッチコピーを5つ考えてください。“信頼感”と“親しみやすさ”が伝わるように」

→ 例として出てくるのはこんな感じ:

  • 「明日も安心、うちが支える」
  • 「小さな会社に、大きなチカラを」
  • 「業務のムダ、今日で終わり」

そのなかから、「うちらしい」ものを選ぶか、ちょっと変えて使うだけ、と言いたいところですが、バクっとChatGPTに投げても、「うちらしい」ものは出てきません。これまで考えてきた自社の背景や、顧客にとってのメリット、自社が実践していること、ペルソナなどをヒントに、ていねいに尋ねてみましょう。

ChatGPT

 

Canvaでつくる「統一感のある見た目」

Canvaは、無料で使えるデザインツール。ロゴや名刺、チラシ、SNS画像などがテンプレから簡単に作れます。

【活用TIPS】

  • ブランドカラーを1〜2色決めて、すべてに反映
  • フォント(文字の形)を固定してブレない印象に
  • 無料テンプレから「それっぽく見える」デザインを流用

→ プロじゃなくても、「きっちりしてる会社やな」という印象をつくれます。

Canva

そのほか使える無料ツールも紹介

用途 ツール名 特徴
ロゴ作成 Looka / LogoMakr クリックだけで簡単に生成
フォント選定 Google Fonts 日本語もOK、無料で商用利用可
カラーパレット Coolors ブランドカラーに悩んだときの味方
顧客管理 Notion / Google スプレッドシート 情報を整理して顧客対応の精度UP

ポイントは、「完璧じゃなくてええ。揃ってることがたいせつ」
たとえ手作りでも、言葉と見ため、発信のトーンに一貫性があれば、それが「信頼感」に変わる。
誰もが最初は素人。だからこそ、揃えることを最優先にして、できることから始めましょう。

 

中小企業からよくある質問とその答え【ブランディングQ&A】

Q. ブランディングって、ほんまに売上に直結するん?

すぐに売上にはつながらないかもしれません。
でも、他社との違いをはっきり伝えられるようになれば、「比較されにくくなる」「問い合わせの質が上がる」「値引きせんでも契約になる」という変化がじわじわ起きてきます。ブランディングは、長い期間をかけて取り組んでいくもの。じっくり腰をすえていきましょう。

 

Q. 社員に伝えても、ピンときてない感じが・・・。

ブランドは社長がひとりで考えた方針を「浸透させる」よりも、一緒につくるほうが早いんです。
全員が同じテンプレートを使って、ポジショニングやペルソナを出し合うだけでも、意識がガラッと変わります。

 

Q. 外注せず、自社だけでやっても大丈夫なん?

大丈夫、大丈夫。むしろ最初は「自社の言葉」で考えることに意義があります。もうこれ以上は無理やってなったときに、外部のブレーンに、「これがうちらの軸ですねん」と渡せば、話しは早いし、ブレずに進められるでしょう。

 

今日からできる!中小企業のためのブランディングチェックリスト

「よし、ブランディングやろう」と思っても、いきなり全部やろうとすると手が止まりがち。
まずはこの3つだけでいい。「15分でできる第一歩」をここにまとめました。

ステップ①:自社の「ポジショニング」を1文で書いてみる
「うちは誰に、何を、どうやって届けているのか?」
この1文があるだけで、SNSでも営業でも言葉がブレにくくなります。

【例文テンプレート】

うちは〇〇業界向けに、△△を通じて、□□な価値を届けている会社です。

→ 書いたものをスタッフと共有すれば、認識のズレをなくす会話のきっかけにもなります。

ステップ②:ChatGPTでキャッチコピーやブランド文を出してみる
「いいフレーズが浮かばへん・・・」そんな時の補助輪がAIです。
たとえばこんなふうに入力してみてください👇

【入力例】
「高齢者向けの配食サービスをしている会社のキャッチコピーを考えて。安心感と親しみやすさを出してほしい」

→ 5案くらい出てくるので、そこからピンとくるものを選ぶ or 組み合わせて使うだけ。
「考えすぎて止まる」時間をなくせます。

ステップ③:ホームページ・SNS・名刺を見直してみる
「伝えたいこと、伝わってるか?」を確認するだけでも効果あり。

【確認ポイント】

  • トーン(言葉づかい)は揃っているか?
  • 色やフォントは会社の印象に合っているか?
  • 「誰向けか」がハッキリ伝わる内容になっているか?

→ 小さな修正だけでも、「ちゃんとしてる会社やな」という印象に変わります。

まずは1つだけでもやってみてください。
完璧を目指すのはやめましょう。
上記の3つのうち、「一番手をつけやすそうなもの」から始めてみてください。
それだけで、あなたの会社は「ただの中小企業から、選ばれる会社」に一歩近づきます。

ブランディング

 

安売りせずに選ばれる中小企業になるために、今すぐできること

「ブランド」と聞くと、どこか遠い話に思えるかもしれません。

でも実際にブランドをつくっているのは、毎日の一言、ちょっとした気づかい、スタッフとの会話。
つまり、今のあなたの仕事そのものです。

完璧なロゴも、高価な広告もいりません。
「うちらしさ」を言葉にして、伝えるだけで、お客さんの見る目は変わります。

中小企業だからこそ、「ブランド」で逆転できる。
知名度がない。人手が足りない。予算に限りがある。
だからこそ、伝え方を整えるだけで、強い武器になる。

「この会社、なんか好きやな」
「ちょっと話を聞いてみたい」
そんなふうに選ばれる会社は、派手なことをしてるわけじゃない。
「軸」があって、「ちゃんと伝えてる」だけなんです。

フレイバーズは、そんな中小企業の「らしさ探し」に本気で向き合います。

  • 自社で考える時間がない
  • 社内で話し合っても、なかなか言語化できない
  • 社長ひとりで抱えてしまっている

そんなときこそ、お声がけください。
プロの視点で「御社らしさ、こういうことですね」とヒアリングを重ね、良いところ、他社と差別化できるポイントを整理していきます。

事業を良くするために必要なのは、①正しい方法を見つけること、②どうすれば最短で到達できるかを考えること、③改善しながら、突き進むこと、だと言われます。
その「正しい方法」を一緒に悩んで、一緒に笑って、あなたの会社だけのブランドという形でご提示できれば最高の仕事だと考えています。迷ったときは、ぜひ当社にお問い合わせください。

B2B企業のブランディング

BtoB企業のためのブランディング入門|差別化と信頼を生む実践ガイド

BtoB企業のブランディング

BtoB企業にとって、ブランディングは「信頼される取引先」になるための戦略です。

単に製品やサービスを提供するだけでは、他社との差別化は難しくなっています。BtoB企業がブランディングに取り組むべき最大の理由は、「この会社なら任せられる」と顧客に思わせる“信頼”を築くこと。その信頼は、価格やスペックではなく、ブランドとしての一貫した姿勢・価値・ストーリーから生まれます。

このコラムでは、BtoB企業が信頼されるブランドになるために押さえるべき5つの視点——
① 他社にはない優位性の明確化、② 顧客中心のコミュニケーション、③ 一貫性のあるブランド体験、④ 自社らしいストーリーテリング、⑤ デジタルでの可視性の最適化——について、実践的な視点で解説していきます。


 

ブランドの差別化

市場での競争は、国内の競合ばかりではなく、海外勢も加勢し、激化するばかり。あらゆる製品やサービスが加速度的にコモディティ化しています。顧客の購買に関してもその状況は同じで、どれを選べば良いのか分かりづらいといった市場にもなっているのです。

おそらく、そのような市場で生き残っていくために、あなたはブランディングについて調べてみようと考えたはずです。ブランディングのオーソドックスな手法のひとつを大上段に振りかぶって言うならば、「独自の価値を提供できること」です。ただ、「独自の価値なんてものが自社にあるのだろうか」と感じたかも知れません。

あなたがイメージした独自の価値とは、「世の中にない唯一無二のもの」でしょう。そこに少し誤解があります。世界的に活動している企業であれば、「世の中にない価値」が必要かもしれません。しかし御社の守備範囲が、地方、県内なのであれば、そのエリア内において、しかも競合が提供できていない価値で十分なのです。
たとえば、競合に比べて顧客サービスのクオリティが高いであるとか、納品までのスピードが早いであるとか、小口配送ができるといった切り口。要は、いま取引してくれている顧客が御社を選んでいる理由のなかから、他社ができていないことを見つければいいのです。

しかもその現在の顧客が御社と取引を続けている理由は、御社内ではあたりまえのことになっているはず。あたりまえのことは、ごくふつうのことなので、今まで顧みることはなかったわけです。しかしそこに、御社が生き残れている理由が隠れているとしたらどうでしょう?
それをきちんと整理して明確にして訴求すれば、現在は競合と取引している顧客でも、御社に魅力を感じてくれる可能性はないでしょうか。

ブランドが確立されていない企業の課題は、①自社と取引している顧客がなぜ御社を選んでいるのか調査できていない、②その結果、自社の価値が明らかになっていない、③全社で共有できていない、④顧客候補に訴求できていないことが挙げられます。これらを推進していかない限り、ブランディングによる商機の拡大を見込むことはできません。

製品ブランディング


 

顧客中心のアプローチ

冒頭でお伝えしたように、ブランディングに取り組む目的を顧客と「信頼できるパートナーとしての地位を築く」ために行う
のであれば、考え方を顧客を真ん中に置いたアプローチに変えなければいけません。各部門の利益を優先してしまうような取り組みになっていては、顧客に向けた訴求ができなくなるからです。
とはいえ、今までそのようなことに取り組んだことがなければ、それが会社中心なのか、顧客中心なのかもわからないかもしれません。外部の意見が取り込めるような体制を整えることも検討してください。


 

1.市場ニーズの把握が、ブランディングの第一歩

自社の強みや提供価値を正しく伝えるには、まず市場や顧客のニーズを把握していることが前提です。ところが、多くの企業ではブランドが曖昧なまま事業を展開しており、市場調査が十分でないケースが少なくありません。現在の顧客とマッチしているからといって、それが市場全体にも通用するとは限らず、ニーズのズレが原因で新規の取引が広がらないこともあります。ブランド戦略を設計する前に、市場が求めていることと自社の強みが合致しているかを客観的に見極める必要があります。


 

2.ブランド体験を設計する

顧客が「この会社と取引すると、どんな価値を得られるのか」をリアルに想像できる仕掛けを用意することが、BtoBブランディングでは重要です。たとえば、対応スピードの速さが強みなら、問い合わせに即時対応する仕組みを見せることで、信頼感を与えられます。専門性が武器であれば、業界に特化した事例やナレッジをWeb上に掲載し、知見の深さを体感させましょう。
「体験できるブランド価値」があることで、単なる約束ではなく、実感として御社の強みが伝わります。


 

3.提供価値は、社内外で一貫して伝える

既存顧客がなぜ自社を選んでいるのか。その理由を明確にし、それを軸に提供価値を訴求することが、ブランド構築の要になります。この価値が社内で共有されていないと、担当者によって対応が変わったり、資料ごとにメッセージがぶれたりして、顧客に不信感を与えてしまいます。
重要なのは、社内全体で同じ価値基準を持ち、その価値を言語化して社外に一貫して伝えること。既存顧客が感じているメリットは、まだ接点のない見込み顧客にとっても、同じように刺さる可能性が高いのです。


 

体験の一貫性が、ブランドの信頼をつくる

ブランド体験とは、顧客が御社に接触したすべての場面で感じる「品質」「価格」「納期対応」「サポート体制」「コミュニケーション」「デザインや表現」などの総体です。重要なのは、どの接点においても「その会社らしさ」が一貫して伝わっていること。
たとえば既存顧客が「対応の丁寧さ」や「スピード感」に価値を感じているなら、そこを中心に体験の設計を強化すべきです。
以下では、ブランド体験を構成する各要素について、それぞれどのように一貫性を保つべきかを解説していきます。。


 

1.品質と価格の“理由”を明確にする

製品やサービスのスペック、価格帯が購買判断において重要なのは言うまでもありません。しかし、大切なのは「なぜそのスペックと価格で選ばれているのか」を正しく理解し、伝えることです。
たとえば、競合と比べて機能は平均的でも「壊れにくく長持ちする」と評価されているなら、耐久性がブランド価値の核となります。逆に、価格が割高でも「専門サポートが手厚い」と感じられていれば、その支援体制が差別化ポイントです。
自社のポジションを客観的にとらえ、選ばれている理由を軸に強化していくことが、ブランド育成の要になります。


 

2.納期の価値は、状況によって変わる

BtoB取引において納期は重要な判断軸のひとつですが、それが常に最優先とは限りません。たとえば、ある工作機械でしか実現できない加工があるなら、多少の納期の遅さよりも性能や精度が優先されます。逆に、どの製品でも代替できる市場であれば、短納期は大きな競争優位になります。
つまり、自社の製品・サービスが「納期で選ばれるものなのか」「機能や専門性で選ばれるものなのか」を見極め、適切なメッセージとして訴求すべきです。納期は単なるスピードの話ではなく、ブランド価値の一部として戦略的に扱うべき指標です。


 

3.すべての接点が、ブランドを語っている

顧客とのコミュニケーションは、広告やパンフレットだけでなく、製品マニュアル、Webサイト、営業メール、問い合わせ窓口など、あらゆる接点で行われています。だからこそ、それぞれがバラバラではなく、同じトーンと価値観で統一されている必要があります。
たとえば「スピーディーな対応」を打ち出している企業が、実際の問い合わせ対応で何日も返信を放置していれば、ブランドの信頼は一瞬で崩れます。
BtoBにおいては、こうした“体験のギャップ”が長期的な取引機会を損なう原因になり得ます。社内でブランドの軸を明文化し、どの部門でも一貫した対応ができる体制づくりが不可欠です。


 

4.サポート体験は、信頼を築く最後の砦

製品やサービスを使ううえで課題に直面したとき、顧客はサポート窓口の対応から企業姿勢を見ています。特に使用方法が複雑な製品であれば、サポートの質が継続利用の意思決定に直結します。
このとき大切なのは、マニュアル的な回答ではなく、「自社らしい姿勢」が伝わること。スピーディーさ、丁寧さ、専門性など、ブランドが掲げる価値と一致していなければ、他の接点で築いた信頼が損なわれる可能性があります。
だからこそ、サポート対応もブランディングの一環として位置づけ、営業・マーケ・CSなどすべての部門でブランドの軸を共有し、一貫した顧客体験を提供することが求められます。


 

5.ブランドに“物語”があるBtoB企業は、記憶に残る

BtoBの意思決定においても、企業の背景や価値観に共感できるかどうかは、取引を左右する要素になります。
たとえば「なぜこの市場に参入したのか」「どんな課題を解決しようとしたのか」「どのような技術や発想で乗り越えてきたのか」。そうしたストーリーは、製品やサービスにリアルな説得力を持たせ、顧客の納得感や信頼を後押しします。
Webサイトや会社案内、導入事例、トップインタビューなどを通じて、自社の背景と価値観を一貫したトーンで伝えることが、BtoBブランドにおけるストーリーテリングの本質です。


 

6.BtoBこそ、デジタル上で“見つかる”力が武器になる

営業力の強い一部の大手企業を除けば、BtoB企業が市場で存在感を持つには、オンラインでのプレゼンス強化が不可欠です。多くの購買担当者や技術者は、まずインターネットで情報収集を始めます。その段階で自社の製品や技術が検索にヒットしなければ、そもそも選択肢に入ることすらできません。
そのため、SEOに強い専門性の高いコンテンツを継続的に発信し、検索エンジン上での可視性を高めることが、BtoBの新規営業活動においても非常に有効です。たとえば技術解説、導入事例、比較資料、FAQなど、ターゲットが業務の中で必要とする情報を揃えることが、信頼構築と問い合わせ増加に直結します。
特定分野における知見を体系化し、網羅的な情報発信を続けることで、顧客候補を引き寄せる“磁場”をオンライン上に築くことができます。

ブランド構築の戦略的ステップ


 

BtoB企業にこそ、戦略的なブランディングが必要だ

中小企業庁の2022年調査では、BtoB企業の約3社に1社がブランド構築に取り組んでいるとされています。BtoC企業ほどの割合ではないものの、ブランディングが“BtoC特有のもの”という固定観念は、すでに崩れ始めています。

中小企業白書「第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組」

実際には、取引先からの信頼を得るためにも、競合と差別化するためにも、自社の価値を明確に伝えるブランド戦略は不可欠です。
製品やサービスそのものの機能だけで勝負する時代ではなく、「なぜこの会社と取引したいのか」が問われる今、ブランディングは受注機会の最大化にも、長期的な関係構築にも直結します。
BtoBだからこそ、合理性と独自性を両立させたブランド設計が求められています。

中小企業向けブランディング手法|成功事例と実践ステップ

 

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

1. なぜ今、中小企業にブランディングが必要なのか?

中小企業にこそ、今「ブランディング手法」が必要とされる理由は明確です。価格競争に巻き込まれ、広告では資本力のある大企業に勝てない――そんな中で選ばれるには、「なぜこの会社なのか」という理由をユーザーに示す必要があります。

製品やサービスだけで差がつきにくい時代。鍵になるのが「ブランド」です。中小企業は経営者の思いや理念を反映しやすく、意思決定も速いため、ブランドの核を定めれば一貫した発信が可能になります。

その価値観を社内に浸透させ、外部にもぶれないメッセージを発信できれば、価格競争から抜け出し、独自のブランド価値で選ばれる企業になれます。

2. よくある誤解:ブランディング=ロゴやデザインではない

よくある誤解のひとつが、「ブランディング=ロゴやデザイン」だという考えです。実際、「ブランディング手法に取り組みたい」と言いながら、まずロゴの刷新やWebサイトのリニューアルから始める経営者は少なくありません。

もちろん見た目は大事ですが、それだけでは本質に届きません。ブランディングの中核は、自社の「らしさ」を明確にし、それを社員と顧客の両方に一貫して伝えること。存在意義、価値観、顧客との関係性――それらを言語化し、日々の行動に落とし込んでこそ、ブランディング手法は機能します。

ロゴやデザインは、その「軸」を支えるツールにすぎません。土台が曖昧なまま見た目だけ整えても、顧客の心には響きません。

3. 中小企業が今すぐ取り入れるべき3つの実践的ブランディング手法

3-1. コアバリューの明文化と社内共有

ブランディング手法の第一歩は、「自社が何のために存在するのか」「どんな価値を大切にしているのか」を明確にすること、つまり“コアバリュー”の明文化です。これを曖昧にしたまま発信を始めても、他社と変わらない言葉が並ぶだけで、顧客の記憶には残りません。

重要なのは、経営者が納得できる言葉で定義すること。そして、それを社員全員に共有すること。社長だけが理解していても意味がありません。現場のスタッフ一人ひとりがその価値観を理解し、行動の軸として使えるようになってはじめて、顧客との接点に一貫性が生まれ、ブランドが育ちはじめます。

 

3-2. ブランディング手法の核心:ペルソナ設計とターゲットメッセージの明確化

「当社は幅広いお客様に対応できます」と言ってしまう企業ほど、結局は誰の心にも残りません。中小企業だからこそ、特定の顧客層に刺さる“ブランディング手法”が必要です。

そのための第一歩が、理想的な顧客像(=ペルソナ)の明確化です。年齢や職業だけでなく、「どんな悩みを持っているのか」「何を重視して選ぶのか」といった感情や価値観まで具体的に描きましょう。

そして、その人に向けて、どんな言葉で、どんなメッセージを伝えるかを決めることで、発信の軸がブレなくなります。

難しく考える必要はありません。今いるお客様の中から典型的な一人を象徴的に設定するだけでも十分です。

結果として、「これは自分のための商品・サービスだ」と感じる瞬間が増え、ブランドへの信頼が自然に積み重なっていきます。

 

3-3. 顧客体験を活かすブランディング手法:CXをブランド資産に変える

商品やサービスの品質だけでなく、問い合わせ対応や納品、アフターフォローといった“顧客体験(CX)”全体をブランディング手法に組み込むことが、いまや不可欠です。

たとえば、返答の速さ、スタッフの振る舞い、トラブル時の対応――こうした小さな接点こそが、ブランドの印象を決定づけます。一貫して「自社らしさ」を伝えられるかどうかで、顧客はリピートするか、他社に乗り換えるかを判断します。

このCXを社内で言語化し、マニュアル化して共有すれば、誰が対応してもブランド品質がブレなくなります。属人化を防ぎ、ブランディングの効果を持続・拡大するための重要な手法です。

4. 成功事例:地方の中小企業がブランディングで勝ち残ったケース

事例①:老舗の製造業が若者を惹きつけるブランドに変貌

創業70年の金属加工会社は、技術力はあるのに、価格競争に疲弊していた。社長が「職人の誇りと、モノづくりの美学」を軸にブランド再構築を決意。

製品にストーリー性を持たせ、SNSで発信。さらに若手社員を「語り部」としてメディアに登場させた結果、新卒採用が過去最多を記録し、地元紙で話題に。新規顧客も開拓できるようになり、価格ではなく「想い」で選ばれる企業へとシフトしはじめています。

 

事例②:地域密着型の工務店がリブランディングで単価アップ

低価格帯リフォームで顧客を集めていた工務店は、やはり利益が出ず経営は苦しい状態に。そこで「家族の人生に寄り添う家づくり」を掲げ、ペルソナを40代共働き夫婦に設定。

施工中のフォロー体制やアフターサポートの流れを再構築し、全社員が「家守り」という共通の意識を持つよう教育を強化。その結果、受注単価は1.8倍に。紹介顧客も増え、広告費を抑えられる結果に。

 

事例③:地場の印刷会社がBtoB特化のブランドで受注拡大

下請け中心の体質から脱却したいと考えていた中規模の印刷会社が、「中小企業の広報を支援する印刷会社」というブランドポジションを明確に打ち出しました。

販促提案やデザインディレクションも含めた「提案型営業」に切り替え、業種ごとの専用パッケージを整備。下請けからの脱却が進み、顧客単価は2.3倍に上昇。さらに、新たな次の一手を検討中。

経済産業省「ミラサポ」ブランディング事例

5. 今すぐ始めるためのステップとポイント

ステップ①:社内対話で「自社らしさ」を言語化する

ワークショップ形式で、社員から「この会社の好きなところ」「誇れる点」を集めてみましょう。経営者の視点と現場の声を重ねることで、リアルでブレないコアバリューが見えてきます。

 

ステップ②:コンタクトポイント(顧客との接点)ごとに「一貫性」があるか点検

営業・接客・WEB・SNS・アフターサポートなど、顧客とのあらゆる接点を洗い出し、「言っていることと、やっていることが一致しているか」を確認。ここにズレがあると、ブランドは育ちません。

 

ステップ③:必要に応じて外部の力を借りる

ブランディングは専門的な視点も必要です。言語化やデザイン、マーケティング戦略などは、プロの支援を受けることで、スピードも精度も上がります。一方で、経営者自身が軸を持ち続けることも最大のポイントです。

信頼の積み重ねが、すべてのブランディング手法の起点になる

選ぶ理由のあるブランドへの図ブランドとは「約束」です。そして、その約束を日々の顧客接点で守り抜くことこそが、ブランディングの核心です。

もう一つ忘れてはならないのが、すでに自社を選んでくれている顧客の存在。なぜ選ばれているのか、どんな点に共感されているのかを見直すことは、自社の「らしさ」――つまりブランドの核を掘り起こす手がかりになります。

普段あたり前にやっている行動や文化の中に、実は強力なブランディング手法のヒントが眠っています。それを言語化し、軸として定着・発信することが、信頼を積み上げ、他社と差別化されたブランドを築く最短ルートです。

まずは、今いる顧客に「自社の魅力は何か?」を聞くことから始めてみてください。

ブランディング
ブランディングに関するコラム

ブランディングの手法で、よくある質問(Q&A)

Q. ブランディングに取り組むと、売上はすぐに伸びますか?

A. 短期的な売上増よりも「選ばれる理由」を積み重ねていくなかで、価格競争に巻き込まれない受注や、リピート率の向上につながるのがブランディングの本質です。ブランディングは売れ続けるしくみをつくることと称されます。今まで培ってきた売上の土壌はすぐにできたものではないはず。長い目で考えてください。

Q. 社内の理解が薄い場合、どう進めればいいですか?

A. 小さな成功体験を共有することが効果的です。例えば「SNSで反応があった」「お客様から共感の声をもらった」といった具体例をもとに、社員の共感と行動を少しずつ引き出していきましょう。
経営者がブレないこと。その本気度を社内に常に共有すること。ことあるごとに言葉にして伝え続けることが徐々に社内からの賛同を得るための方法です。

Q. 競合が多い業界で差別化は本当に可能?

A. 可能です。「何を売るか」より「なぜ売るのか」「どう売るのか」でブランドは差別化できます。競合が価格で勝負しているなら、そこから外れた独自の土俵をつくるのがブランディングの強みです。

ブランディング手法を徹底解説。会社を成長させる4つの実践例

ブランディングの進捗をチェックするスタッフ

「ブランディング手法」は、競合との差別化や顧客との信頼構築に欠かせない重要なマーケティング戦略です。本記事では、ビジネス成果に直結する4つの主要手法をわかりやすく解説します。
ブランディングという「売れ続けるしくみ」を作り上げるプロセスで、顧客の心をつかみ、ロイヤリティを生み出しましょう。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


 

ブランディング手法①:差別化戦略とは?

競争が激化する現代の市場では、新しい製品やサービスであってもすぐに模倣され、コモディティ化してしまうリスクがあります。こうした状況で企業が生き残るためには、「ブランディング手法」としての差別化戦略が不可欠です。単なるスペックや機能だけで勝負する時代は終わり、ブランドとしての独自性が問われています。

差別化戦略とは、競合他社と明確に異なる価値を顧客に提示することで、ブランドの魅力を際立たせるブランディング手法のひとつです。特に、機能や価格以外の軸——たとえば世界観や体験価値、ストーリー性などを通じて「選ばれる理由」を作ることが重要です。

差別化を図るうえでの基本的な考え方としては、以下の2つがポイントです:

1.ブランド独自の価値やストーリーを明確に伝えること
2.顧客の共感やロイヤルティを引き出すコミュニケーション設計

なお、「価格を極端に下げて競合との差をつける」といった施策も差別化の一種ですが、それは「価格戦略」と分類されるため、本記事では取り上げません。


 

他社と差をつけるイメージ戦略による差別化手法

差別化戦略においては、他社と異なる切り口でブランドのイメージを構築することが重要です。これは、ブランディング手法の中でも「イメージ戦略」として分類されるアプローチです。

たとえば、口紅の広告を考えてみましょう。一般的には「つやつや」「ぷるぷる」「かわいい」など、見た目の美しさを前面に押し出すプロモーションが多く見られます。しかし、これを「社会を楽しくするためのアイテム」と再定義すれば、まったく異なる価値訴求が可能になります。

このように、同じ商品でも視点を変えることでブランドの伝え方に差が生まれ、それが差別化につながるのです。この手法は、企業広告やブランドステートメントと親和性が高く、感情的な共鳴を生むブランドづくりに有効です。


 

購買動機をずらす:訴求ポイントの再設計による差別化戦略

差別化戦略を考える際に、競合他社とほぼ同じスペックで「少しだけ優れている点」にフォーカスしても、それは本質的な差別化とは言えません。スペック上の優位性がわずかであれば、ユーザーに響かない可能性が高いのです。

ブランディング手法として有効なのは、訴求ポイントそのものを再定義することです。たとえ同じ性能・同じ価格帯であっても、競合が強調していない別の魅力にフォーカスすることで、まったく違う購買動機を刺激できます。

たとえば、競合が「耐久性」や「性能」を押し出している製品に対して、自社は「使いやすさ」や「デザイン性」を前面に打ち出すという方法です。このように“訴求軸をずらす”ことが、ユーザーの特定セグメントに刺さり、差別化戦略として成立します。


 

ブランディング手法②:感情戦略でブランドロイヤルティを高める

「ブランディング手法」の中でも近年注目されているのが感情戦略です。市場では、製品やサービスのスペックを比較するだけのビジネスライクな意思決定だけでなく、購入者の感情に基づく判断も大きな影響を及ぼしています。なぜなら、最終的な購買決定を下すのは、感情を持つ“人間”だからです。

このような人間の感情に訴えかけるアプローチが、「感情戦略(エモーショナルブランディング)」と呼ばれます。顧客の感情とブランドを結びつけることで、単なる機能的な価値ではなく、共感や信頼といった情緒的な価値を提供できるのです。

たとえば、

・製品開発の裏側にある感動的なストーリー
・ターゲット層の共感を呼ぶキャンペーンやメッセージ設計

といった手法が有効です。

さらに、企業姿勢をブランディングに取り込むことも効果的です。たとえば、「ダイバーシティ推進のために、コストがかかっても既存製品を改良した」という事実を訴求すれば、マイノリティや価値観重視の消費者層に対する強い共感と信頼を生み出すことができます。


 

ブランディング手法③:一貫性の確保でブランド信頼を構築する

ブランディング手法の中で見落とされがちですが、「一貫性の確保」はブランド価値を維持・強化するための極めて重要な戦略です。ブランディング活動を全社的に統一するのは手間がかかりますが、それを怠ると、メッセージのブレが信頼低下につながるリスクがあります。

顧客や社会に対してブランドを訴求する際、すべてのコミュニケーションや行動がブランドの理念や価値観と一致していることが求められます。たとえメッセージが良くても、担当する部署や担当者によって表現が変わってしまえば、その一貫性の欠如によってブランドの印象は弱まってしまいます。

たとえば、広報が運営するコーポレートサイト、営業が担当するSNS、企画部門が制作する製品カタログといったように、発信チャネルごとに担当が分かれている場合、一貫性を保つのはさらに困難になります。ここで必要なのは、以下のような対策です:

・ブランドミッション・ビジョン・バリューを明文化し、全社で共有するブランドガイドラインを作成
・各部署にブランドトーンを教育し、メッセージの統一ルールを設ける
・SNS運用や販促資料など、あらゆるアウトプットにおいて部門間の連携体制を強化

このように、「一貫性のあるブランディング手法」は、顧客との信頼関係を築き、ブランドの認知と評価を長期的に高める土台となります。


 

ブランディング手法④:エンゲージメントの促進で顧客との関係性を深める

たとえば、クラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」は、定期的にファンミーティングを開催し、顧客とブランド担当者が一緒に商品を楽しむ機会を提供しています。担当者がユーザー主催の飲み会に参加するなど、ブランドと顧客が双方向で関わる関係性を築いています。

こうした施策は、単なる消費者を熱心な“ブランド推進者”へと変えるきっかけになります。

ヤッホーブルーイング

■ B2Bの場合:顧客の声をブランド価値に転換
B2B領域でも、製品を利用している顧客の声や活用事例を積極的に取り上げ、成功事例として発信することで、ブランドの信頼性や優位性を強化できます。これは、顧客自身をブランドの担い手として巻き込む代表的なエンゲージメント手法です。

■ SNSとコミュニティ活用でエンゲージメントを拡張
SNSやオンラインコミュニティを活用すれば、顧客との日常的なコミュニケーションが可能になります。ユーザー投稿のシェア、コメントへの返信、共創型キャンペーンなどを通じて、「自分もこのブランドの一部だ」と感じさせる“参加感”を生み出すことができます。

このように、エンゲージメントを促進するブランディング手法は、顧客のロイヤリティや継続購入の可能性を高めるうえで非常に有効です。


 

ブランディングは一朝一夕で完成しない

ここまで紹介したように、複数のブランディング手法を戦略的に組み合わせることで、企業はブランドの独自性を高め、顧客ロイヤリティの向上につなげることができます。ただし、重要なのは、ブランディングとは単なるロゴデザインや広告展開ではなく、顧客との信頼関係を長期的に築く活動であるという本質を理解することです。

では、どれくらいの期間でブランディングが「成功した」と言えるようになるのでしょうか?

実のところ、明確な期間やゴールは存在しません。

・なぜなら、ブランディングは終わりのないプロセスであり、一度始めたら放棄しない限り、継続的に取り組む必要があるからです。
・そして、何をもって「成功」と定義するかも、企業や業種、タイミングによって変わります。
・さらに言えば、誰も正解を持っていないのがブランド戦略の難しさであり、奥深さでもあります。

特にコーポレートブランディングにおいては、企業が存続する限り、そのブランドも生き続けるものです。だからこそ、ブランディングは“やるか・やらないか”ではなく、“どう続けていくか”という視点で考えるべき戦略なのです。