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中小企業がAIを使い、経費ゼロでブランディング

中小企業のブランディング完全ガイド|AIと今ある資源で始める実践法

 

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

 

景気が不透明ないま、中小企業にこそ必要なのは「ブランド力」

「安うしときまっせ」では、もう勝てない。
大阪産業局が2025年4月に行った景況調査では、今後景気が「伸びる」と見ている企業はわずか19.9%。
一方で「横ばい」が約半数、「悪くなる」と答えた企業も4社に1社。
つまり多くの中小企業が、「先行きの見通しが立たない」状況に置かれています。

そんななかで求められるのは、「安さ頼み」から抜け出すこと。
限られた資源の中でもしっかり選ばれる会社=「ブランド」のある会社になることです。

本記事では、大阪の中小企業がいまある手持ち資源で始められるブランディングについて、ChatGPTなどの無料ツールも活用しながら、わかりやすく解説します。
今日からでもすぐに取り組めるよう、テンプレートやチェックリストも用意しました。

 

なぜいま、中小企業にブランディングが必要なのか?

「うちは金ないから、宣伝なんてやってられへん」・・・ブランディングなら、やる価値はあります。
ブランディングと聞いて、「それは大企業の話」「うちは普通の町工場やから」と思ったことはありませんか?
でも実は、中小企業こそ「ブランド」をつくるべきなのです。

なぜか?

中小企業は広告費も、マンパワーも限られている。知名度だって、たかだかしれている。
だからこそ、新規の顧客候補に「この会社、信頼できるかも」「なんかええ感じやな」と思われる理由=ブランドがなければ、価格勝負になってしまうから。

ブランドは、毎日のやり取りの「にじみ」からできている

誤解されがちですが、ブランドはロゴやキャッチコピーを据え、きれいなWEBサイトをつくることではありません。

  • 初めての問い合わせにどう返すか
  • 商品やサービスにどんな言葉を添えるか
  • 社員さんたちがどんな態度で顧客と接するか
  • WEBサイトやSNSの言葉づかいはどうか

こうした「日々のコンタクトポイント(接点)※」での積み重ねが、「あの会社、なんか好きやな」という印象=ブランドになっていきます。

つまり、大きな予算をかけなくても、意識と工夫でブランドはつくれる。

ここから先は、そんなブランドをどうやって「自社らしく」つくるかを、5つの視点とAIツールを交えながら紹介していきます。

※コンタクトポイント
顧客と自社が接するあらゆる接点のこと。たとえば、電話対応、WEBサイト、会社案内、SNS、請求書、名刺、事務所など。目にふれる・声を聞く・接する場面はすべて「ブランドの顔」になるという考え方です。

 

自社ブランドをつくる5つの視点【テンプレート付き】

「うちらしさ」を言葉と形にするための軸は、次の5つ。
この章では、それぞれを簡単なテンプレート付きで紹介していきます。紙でもPCでも、形にしながら読み進めてください。

 

① ポジショニング(立ち位置)

うちは何屋で、誰にとって、どう役立つのか?

【テンプレート】
「うちは ○○向けに、△△を通じて、□□な価値を届けている会社です」

例:
「うちは飲食店向けに、手間のかからない業務用食材を通じて、“日替わりメニューが楽に決まる”という価値を届けている会社です」

 

② ペルソナ(顧客のキャラクター)

誰に選ばれたいのか?“一人に絞る”勇気を持とう

【テンプレート】
名前:_____さん(年齢)
職業・役職:__________________
抱えている悩み・課題は?____________
うちの商品・サービスでどう変わる?________

※実在の顧客を思い浮かべて書くと、リアルに思い描けるようになります。見落としがちですが、とてもたいせつなテンプレートで、どんな施策を考えるときも、ペルソナの◯◯さんなら、どう感じてくれるだろうと立ち返ることが、アイデアがブレないようになります。

 

③ ブランドストーリー(なぜ、この会社をやっているのか)

会社の原点に「らしさ」が詰まっている

【テンプレート】
「最初は○○だった。でも、△△な経験をきっかけに□□を目指すようになった」

例:
「最初は町の電気屋だった。でも、大手量販店の進出で経営が厳しくなり、“近所のお年寄りの困りごとを解決する店”として舵を切った」

 

④ トーン&スタイル(伝え方)

言葉・デザインに「らしさ」を込める

  • かっちり丁寧?
  • 親しみやすくフレンドリー?
  • 熱意あふれる情熱タイプ?
  • 職人肌の寡黙系?

SNS、チラシ、WEBサイトなど、すべてのコンタクトポイントで「同じ雰囲気」が感じられるように統一します。

【チェック】
□ 自社の言葉づかいは決まっているか?
□ 社名・商品名・キャッチコピーに統一感があるか?
□ フォントや色、デザインに一貫性があるか?

 

⑤ コンタクトポイント(接点)

お客さんと接する「あらゆる場面」がブランドをつくる

  • 電話応対
  • 見積書・請求書
  • 商品に添えるメッセージ
  • WEBサイトやLINE公式アカウントのトーク画面
  • 事務所の雰囲気

これらすべてが「ブランドの顔」になる場面です。
だからこそ、1つひとつを「うちらしい」に整えていきましょう。

マーケティングやブランディングで重要なのが、「一貫性を保つ」ということ。ある施策では◯◯と伝え、別の施策では△△となっている。これでは社内外で、どれがほんとうの姿なのかがわからなくなってしまいます。
中小企業に限らず、大企業でさえ、この一貫性を保つことは難しく、せっかくの施策が効果を発揮できないのです。

 

無料ツールとAIでコストゼロでもできる!中小企業のブランディング実践法

「うちには専門のデザイナーも、コピーライターもおらへん」
でも大丈夫。今の時代、無料のAIツールやテンプレアプリを使えば、「自社らしさ」は十分カタチにできます。

ここでは、ChatGPTやCanvaなど、誰でも使えるツールを例に、具体的な使い方を紹介します。

 

ChatGPTでつくる「キャッチコピー」と「ブランドメッセージ」

例:タグライン(短いひとこと)を考える

【プロンプト(指示)例】
「中小企業向けに業務効率化をサポートしている会社のキャッチコピーを5つ考えてください。“信頼感”と“親しみやすさ”が伝わるように」

→ 例として出てくるのはこんな感じ:

  • 「明日も安心、うちが支える」
  • 「小さな会社に、大きなチカラを」
  • 「業務のムダ、今日で終わり」

そのなかから、「うちらしい」ものを選ぶか、ちょっと変えて使うだけ、と言いたいところですが、バクっとChatGPTに投げても、「うちらしい」ものは出てきません。これまで考えてきた自社の背景や、顧客にとってのメリット、自社が実践していること、ペルソナなどをヒントに、ていねいに尋ねてみましょう。

ChatGPT

 

Canvaでつくる「統一感のある見た目」

Canvaは、無料で使えるデザインツール。ロゴや名刺、チラシ、SNS画像などがテンプレから簡単に作れます。

【活用TIPS】

  • ブランドカラーを1〜2色決めて、すべてに反映
  • フォント(文字の形)を固定してブレない印象に
  • 無料テンプレから「それっぽく見える」デザインを流用

→ プロじゃなくても、「きっちりしてる会社やな」という印象をつくれます。

Canva

そのほか使える無料ツールも紹介

用途 ツール名 特徴
ロゴ作成 Looka / LogoMakr クリックだけで簡単に生成
フォント選定 Google Fonts 日本語もOK、無料で商用利用可
カラーパレット Coolors ブランドカラーに悩んだときの味方
顧客管理 Notion / Google スプレッドシート 情報を整理して顧客対応の精度UP

ポイントは、「完璧じゃなくてええ。揃ってることがたいせつ」
たとえ手作りでも、言葉と見ため、発信のトーンに一貫性があれば、それが「信頼感」に変わる。
誰もが最初は素人。だからこそ、揃えることを最優先にして、できることから始めましょう。

 

中小企業からよくある質問とその答え【ブランディングQ&A】

Q. ブランディングって、ほんまに売上に直結するん?

すぐに売上にはつながらないかもしれません。
でも、他社との違いをはっきり伝えられるようになれば、「比較されにくくなる」「問い合わせの質が上がる」「値引きせんでも契約になる」という変化がじわじわ起きてきます。ブランディングは、長い期間をかけて取り組んでいくもの。じっくり腰をすえていきましょう。

 

Q. 社員に伝えても、ピンときてない感じが・・・。

ブランドは社長がひとりで考えた方針を「浸透させる」よりも、一緒につくるほうが早いんです。
全員が同じテンプレートを使って、ポジショニングやペルソナを出し合うだけでも、意識がガラッと変わります。

 

Q. 外注せず、自社だけでやっても大丈夫なん?

大丈夫、大丈夫。むしろ最初は「自社の言葉」で考えることに意義があります。もうこれ以上は無理やってなったときに、外部のブレーンに、「これがうちらの軸ですねん」と渡せば、話しは早いし、ブレずに進められるでしょう。

 

今日からできる!中小企業のためのブランディングチェックリスト

「よし、ブランディングやろう」と思っても、いきなり全部やろうとすると手が止まりがち。
まずはこの3つだけでいい。「15分でできる第一歩」をここにまとめました。

ステップ①:自社の「ポジショニング」を1文で書いてみる
「うちは誰に、何を、どうやって届けているのか?」
この1文があるだけで、SNSでも営業でも言葉がブレにくくなります。

【例文テンプレート】

うちは〇〇業界向けに、△△を通じて、□□な価値を届けている会社です。

→ 書いたものをスタッフと共有すれば、認識のズレをなくす会話のきっかけにもなります。

ステップ②:ChatGPTでキャッチコピーやブランド文を出してみる
「いいフレーズが浮かばへん・・・」そんな時の補助輪がAIです。
たとえばこんなふうに入力してみてください👇

【入力例】
「高齢者向けの配食サービスをしている会社のキャッチコピーを考えて。安心感と親しみやすさを出してほしい」

→ 5案くらい出てくるので、そこからピンとくるものを選ぶ or 組み合わせて使うだけ。
「考えすぎて止まる」時間をなくせます。

ステップ③:ホームページ・SNS・名刺を見直してみる
「伝えたいこと、伝わってるか?」を確認するだけでも効果あり。

【確認ポイント】

  • トーン(言葉づかい)は揃っているか?
  • 色やフォントは会社の印象に合っているか?
  • 「誰向けか」がハッキリ伝わる内容になっているか?

→ 小さな修正だけでも、「ちゃんとしてる会社やな」という印象に変わります。

まずは1つだけでもやってみてください。
完璧を目指すのはやめましょう。
上記の3つのうち、「一番手をつけやすそうなもの」から始めてみてください。
それだけで、あなたの会社は「ただの中小企業から、選ばれる会社」に一歩近づきます。

ブランディング

 

安売りせずに選ばれる中小企業になるために、今すぐできること

「ブランド」と聞くと、どこか遠い話に思えるかもしれません。

でも実際にブランドをつくっているのは、毎日の一言、ちょっとした気づかい、スタッフとの会話。
つまり、今のあなたの仕事そのものです。

完璧なロゴも、高価な広告もいりません。
「うちらしさ」を言葉にして、伝えるだけで、お客さんの見る目は変わります。

中小企業だからこそ、「ブランド」で逆転できる。
知名度がない。人手が足りない。予算に限りがある。
だからこそ、伝え方を整えるだけで、強い武器になる。

「この会社、なんか好きやな」
「ちょっと話を聞いてみたい」
そんなふうに選ばれる会社は、派手なことをしてるわけじゃない。
「軸」があって、「ちゃんと伝えてる」だけなんです。

フレイバーズは、そんな中小企業の「らしさ探し」に本気で向き合います。

  • 自社で考える時間がない
  • 社内で話し合っても、なかなか言語化できない
  • 社長ひとりで抱えてしまっている

そんなときこそ、お声がけください。
プロの視点で「御社らしさ、こういうことですね」とヒアリングを重ね、良いところ、他社と差別化できるポイントを整理していきます。

事業を良くするために必要なのは、①正しい方法を見つけること、②どうすれば最短で到達できるかを考えること、③改善しながら、突き進むこと、だと言われます。
その「正しい方法」を一緒に悩んで、一緒に笑って、あなたの会社だけのブランドという形でご提示できれば最高の仕事だと考えています。迷ったときは、ぜひ当社にお問い合わせください。

B2B企業のブランディング

BtoB企業のためのブランディング入門|差別化と信頼を生む実践ガイド

BtoB企業のブランディング

BtoB企業にとって、ブランディングは“信頼される取引先”になるための戦略です。

単に製品やサービスを提供するだけでは、他社との差別化は難しくなっています。BtoB企業がブランディングに取り組むべき最大の理由は、「この会社なら任せられる」と顧客に思わせる“信頼”を築くこと。その信頼は、価格やスペックではなく、ブランドとしての一貫した姿勢・価値・ストーリーから生まれます。

このコラムでは、BtoB企業が信頼されるブランドになるために押さえるべき5つの視点——
① 他社にはない優位性の明確化、② 顧客中心のコミュニケーション、③ 一貫性のあるブランド体験、④ 自社らしいストーリーテリング、⑤ デジタルでの可視性の最適化——について、実践的な視点で解説していきます。


 

ブランドの差別化

市場での競争は、国内の競合ばかりではなく、海外勢も加勢し、激化するばかり。あらゆる製品やサービスが加速度的にコモディティ化しています。顧客の購買に関してもその状況は同じで、どれを選べば良いのか分かりづらいといった市場にもなっているのです。

おそらく、そのような市場で生き残っていくために、あなたはブランディングについて調べてみようと考えたはずです。ブランディングのオーソドックスな手法のひとつを大上段に振りかぶって言うならば、「独自の価値を提供できること」です。ただ、「独自の価値なんてものが自社にあるのだろうか」と感じたかも知れません。

あなたがイメージした独自の価値とは、「世の中にない唯一無二のもの」でしょう。そこに少し誤解があります。世界的に活動している企業であれば、「世の中にない価値」が必要かもしれません。しかし御社の守備範囲が、地方、県内なのであれば、そのエリア内において、しかも競合が提供できていない価値で十分なのです。
たとえば、競合に比べて顧客サービスのクオリティが高いであるとか、納品までのスピードが早いであるとか、小口配送ができるといった切り口。要は、いま取引してくれている顧客が御社を選んでいる理由のなかから、他社ができていないことを見つければいいのです。

しかもその現在の顧客が御社と取引を続けている理由は、御社内ではあたりまえのことになっているはず。あたりまえのことは、ごくふつうのことなので、今まで顧みることはなかったわけです。しかしそこに、御社が生き残れている理由が隠れているとしたらどうでしょう?
それをきちんと整理して明確にして訴求すれば、現在は競合と取引している顧客でも、御社に魅力を感じてくれる可能性はないでしょうか。

ブランドが確立されていない企業の課題は、①自社と取引している顧客がなぜ御社を選んでいるのか調査できていない、②その結果、自社の価値が明らかになっていない、③全社で共有できていない、④顧客候補に訴求できていないことが挙げられます。これらを推進していかない限り、ブランディングによる商機の拡大を見込むことはできません。

製品ブランディング


 

顧客中心のアプローチ

冒頭でお伝えしたように、ブランディングに取り組む目的を顧客と「信頼できるパートナーとしての地位を築く」ために行う
のであれば、考え方を顧客を真ん中に置いたアプローチに変えなければいけません。各部門の利益を優先してしまうような取り組みになっていては、顧客に向けた訴求ができなくなるからです。
とはいえ、今までそのようなことに取り組んだことがなければ、それが会社中心なのか、顧客中心なのかもわからないかもしれません。外部の意見が取り込めるような体制を整えることも検討してください。


 

1.市場ニーズの把握が、ブランディングの第一歩

自社の強みや提供価値を正しく伝えるには、まず市場や顧客のニーズを把握していることが前提です。ところが、多くの企業ではブランドが曖昧なまま事業を展開しており、市場調査が十分でないケースが少なくありません。現在の顧客とマッチしているからといって、それが市場全体にも通用するとは限らず、ニーズのズレが原因で新規の取引が広がらないこともあります。ブランド戦略を設計する前に、市場が求めていることと自社の強みが合致しているかを客観的に見極める必要があります。


 

2.ブランド体験を設計する

顧客が「この会社と取引すると、どんな価値を得られるのか」をリアルに想像できる仕掛けを用意することが、BtoBブランディングでは重要です。たとえば、対応スピードの速さが強みなら、問い合わせに即時対応する仕組みを見せることで、信頼感を与えられます。専門性が武器であれば、業界に特化した事例やナレッジをWeb上に掲載し、知見の深さを体感させましょう。
「体験できるブランド価値」があることで、単なる約束ではなく、実感として御社の強みが伝わります。


 

3.提供価値は、社内外で一貫して伝える

既存顧客がなぜ自社を選んでいるのか。その理由を明確にし、それを軸に提供価値を訴求することが、ブランド構築の要になります。この価値が社内で共有されていないと、担当者によって対応が変わったり、資料ごとにメッセージがぶれたりして、顧客に不信感を与えてしまいます。
重要なのは、社内全体で同じ価値基準を持ち、その価値を言語化して社外に一貫して伝えること。既存顧客が感じているメリットは、まだ接点のない見込み顧客にとっても、同じように刺さる可能性が高いのです。


 

体験の一貫性が、ブランドの信頼をつくる

ブランド体験とは、顧客が御社に接触したすべての場面で感じる「品質」「価格」「納期対応」「サポート体制」「コミュニケーション」「デザインや表現」などの総体です。重要なのは、どの接点においても「その会社らしさ」が一貫して伝わっていること。
たとえば既存顧客が「対応の丁寧さ」や「スピード感」に価値を感じているなら、そこを中心に体験の設計を強化すべきです。
以下では、ブランド体験を構成する各要素について、それぞれどのように一貫性を保つべきかを解説していきます。。


 

1.品質と価格の“理由”を明確にする

製品やサービスのスペック、価格帯が購買判断において重要なのは言うまでもありません。しかし、大切なのは「なぜそのスペックと価格で選ばれているのか」を正しく理解し、伝えることです。
たとえば、競合と比べて機能は平均的でも「壊れにくく長持ちする」と評価されているなら、耐久性がブランド価値の核となります。逆に、価格が割高でも「専門サポートが手厚い」と感じられていれば、その支援体制が差別化ポイントです。
自社のポジションを客観的にとらえ、選ばれている理由を軸に強化していくことが、ブランド育成の要になります。


 

2.納期の価値は、状況によって変わる

BtoB取引において納期は重要な判断軸のひとつですが、それが常に最優先とは限りません。たとえば、ある工作機械でしか実現できない加工があるなら、多少の納期の遅さよりも性能や精度が優先されます。逆に、どの製品でも代替できる市場であれば、短納期は大きな競争優位になります。
つまり、自社の製品・サービスが「納期で選ばれるものなのか」「機能や専門性で選ばれるものなのか」を見極め、適切なメッセージとして訴求すべきです。納期は単なるスピードの話ではなく、ブランド価値の一部として戦略的に扱うべき指標です。


 

3.すべての接点が、ブランドを語っている

顧客とのコミュニケーションは、広告やパンフレットだけでなく、製品マニュアル、Webサイト、営業メール、問い合わせ窓口など、あらゆる接点で行われています。だからこそ、それぞれがバラバラではなく、同じトーンと価値観で統一されている必要があります。
たとえば「スピーディーな対応」を打ち出している企業が、実際の問い合わせ対応で何日も返信を放置していれば、ブランドの信頼は一瞬で崩れます。
BtoBにおいては、こうした“体験のギャップ”が長期的な取引機会を損なう原因になり得ます。社内でブランドの軸を明文化し、どの部門でも一貫した対応ができる体制づくりが不可欠です。


 

4.サポート体験は、信頼を築く最後の砦

製品やサービスを使ううえで課題に直面したとき、顧客はサポート窓口の対応から企業姿勢を見ています。特に使用方法が複雑な製品であれば、サポートの質が継続利用の意思決定に直結します。
このとき大切なのは、マニュアル的な回答ではなく、「自社らしい姿勢」が伝わること。スピーディーさ、丁寧さ、専門性など、ブランドが掲げる価値と一致していなければ、他の接点で築いた信頼が損なわれる可能性があります。
だからこそ、サポート対応もブランディングの一環として位置づけ、営業・マーケ・CSなどすべての部門でブランドの軸を共有し、一貫した顧客体験を提供することが求められます。


 

5.ブランドに“物語”があるBtoB企業は、記憶に残る

BtoBの意思決定においても、企業の背景や価値観に共感できるかどうかは、取引を左右する要素になります。
たとえば「なぜこの市場に参入したのか」「どんな課題を解決しようとしたのか」「どのような技術や発想で乗り越えてきたのか」。そうしたストーリーは、製品やサービスにリアルな説得力を持たせ、顧客の納得感や信頼を後押しします。
Webサイトや会社案内、導入事例、トップインタビューなどを通じて、自社の背景と価値観を一貫したトーンで伝えることが、BtoBブランドにおけるストーリーテリングの本質です。


 

6.BtoBこそ、デジタル上で“見つかる”力が武器になる

営業力の強い一部の大手企業を除けば、BtoB企業が市場で存在感を持つには、オンラインでのプレゼンス強化が不可欠です。多くの購買担当者や技術者は、まずインターネットで情報収集を始めます。その段階で自社の製品や技術が検索にヒットしなければ、そもそも選択肢に入ることすらできません。
そのため、SEOに強い専門性の高いコンテンツを継続的に発信し、検索エンジン上での可視性を高めることが、BtoBの新規営業活動においても非常に有効です。たとえば技術解説、導入事例、比較資料、FAQなど、ターゲットが業務の中で必要とする情報を揃えることが、信頼構築と問い合わせ増加に直結します。
特定分野における知見を体系化し、網羅的な情報発信を続けることで、顧客候補を引き寄せる“磁場”をオンライン上に築くことができます。

ブランド構築の戦略的ステップ


 

BtoB企業にこそ、戦略的なブランディングが必要だ

中小企業庁の2022年調査では、BtoB企業の約3社に1社がブランド構築に取り組んでいるとされています。BtoC企業ほどの割合ではないものの、ブランディングが“BtoC特有のもの”という固定観念は、すでに崩れ始めています。

中小企業白書「第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組」

実際には、取引先からの信頼を得るためにも、競合と差別化するためにも、自社の価値を明確に伝えるブランド戦略は不可欠です。
製品やサービスそのものの機能だけで勝負する時代ではなく、「なぜこの会社と取引したいのか」が問われる今、ブランディングは受注機会の最大化にも、長期的な関係構築にも直結します。
BtoBだからこそ、合理性と独自性を両立させたブランド設計が求められています。

中小企業向けブランディング手法|成功事例と実践ステップ

 

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

1. なぜ今、中小企業にブランディングが必要なのか?

中小企業にこそ、今「ブランディング手法」が必要とされる理由は明確です。価格競争に巻き込まれ、広告では資本力のある大企業に勝てない――そんな中で選ばれるには、「なぜこの会社なのか」という理由をユーザーに示す必要があります。

製品やサービスだけで差がつきにくい時代。鍵になるのが「ブランド」です。中小企業は経営者の思いや理念を反映しやすく、意思決定も速いため、ブランドの核を定めれば一貫した発信が可能になります。

その価値観を社内に浸透させ、外部にもぶれないメッセージを発信できれば、価格競争から抜け出し、独自のブランド価値で選ばれる企業になれます。

2. よくある誤解:ブランディング=ロゴやデザインではない

よくある誤解のひとつが、「ブランディング=ロゴやデザイン」だという考えです。実際、「ブランディング手法に取り組みたい」と言いながら、まずロゴの刷新やWebサイトのリニューアルから始める経営者は少なくありません。

もちろん見た目は大事ですが、それだけでは本質に届きません。ブランディングの中核は、自社の「らしさ」を明確にし、それを社員と顧客の両方に一貫して伝えること。存在意義、価値観、顧客との関係性――それらを言語化し、日々の行動に落とし込んでこそ、ブランディング手法は機能します。

ロゴやデザインは、その「軸」を支えるツールにすぎません。土台が曖昧なまま見た目だけ整えても、顧客の心には響きません。

3. 中小企業が今すぐ取り入れるべき3つの実践的ブランディング手法

3-1. コアバリューの明文化と社内共有

ブランディング手法の第一歩は、「自社が何のために存在するのか」「どんな価値を大切にしているのか」を明確にすること、つまり“コアバリュー”の明文化です。これを曖昧にしたまま発信を始めても、他社と変わらない言葉が並ぶだけで、顧客の記憶には残りません。

重要なのは、経営者が納得できる言葉で定義すること。そして、それを社員全員に共有すること。社長だけが理解していても意味がありません。現場のスタッフ一人ひとりがその価値観を理解し、行動の軸として使えるようになってはじめて、顧客との接点に一貫性が生まれ、ブランドが育ちはじめます。

 

3-2. ブランディング手法の核心:ペルソナ設計とターゲットメッセージの明確化

「当社は幅広いお客様に対応できます」と言ってしまう企業ほど、結局は誰の心にも残りません。中小企業だからこそ、特定の顧客層に刺さる“ブランディング手法”が必要です。

そのための第一歩が、理想的な顧客像(=ペルソナ)の明確化です。年齢や職業だけでなく、「どんな悩みを持っているのか」「何を重視して選ぶのか」といった感情や価値観まで具体的に描きましょう。

そして、その人に向けて、どんな言葉で、どんなメッセージを伝えるかを決めることで、発信の軸がブレなくなります。

難しく考える必要はありません。今いるお客様の中から典型的な一人を象徴的に設定するだけでも十分です。

結果として、「これは自分のための商品・サービスだ」と感じる瞬間が増え、ブランドへの信頼が自然に積み重なっていきます。

 

3-3. 顧客体験を活かすブランディング手法:CXをブランド資産に変える

商品やサービスの品質だけでなく、問い合わせ対応や納品、アフターフォローといった“顧客体験(CX)”全体をブランディング手法に組み込むことが、いまや不可欠です。

たとえば、返答の速さ、スタッフの振る舞い、トラブル時の対応――こうした小さな接点こそが、ブランドの印象を決定づけます。一貫して「自社らしさ」を伝えられるかどうかで、顧客はリピートするか、他社に乗り換えるかを判断します。

このCXを社内で言語化し、マニュアル化して共有すれば、誰が対応してもブランド品質がブレなくなります。属人化を防ぎ、ブランディングの効果を持続・拡大するための重要な手法です。

4. 成功事例:地方の中小企業がブランディングで勝ち残ったケース

事例①:老舗の製造業が若者を惹きつけるブランドに変貌

創業70年の金属加工会社は、技術力はあるのに、価格競争に疲弊していた。社長が「職人の誇りと、モノづくりの美学」を軸にブランド再構築を決意。

製品にストーリー性を持たせ、SNSで発信。さらに若手社員を「語り部」としてメディアに登場させた結果、新卒採用が過去最多を記録し、地元紙で話題に。新規顧客も開拓できるようになり、価格ではなく「想い」で選ばれる企業へとシフトしはじめています。

 

事例②:地域密着型の工務店がリブランディングで単価アップ

低価格帯リフォームで顧客を集めていた工務店は、やはり利益が出ず経営は苦しい状態に。そこで「家族の人生に寄り添う家づくり」を掲げ、ペルソナを40代共働き夫婦に設定。

施工中のフォロー体制やアフターサポートの流れを再構築し、全社員が「家守り」という共通の意識を持つよう教育を強化。その結果、受注単価は1.8倍に。紹介顧客も増え、広告費を抑えられる結果に。

 

事例③:地場の印刷会社がBtoB特化のブランドで受注拡大

下請け中心の体質から脱却したいと考えていた中規模の印刷会社が、「中小企業の広報を支援する印刷会社」というブランドポジションを明確に打ち出しました。

販促提案やデザインディレクションも含めた「提案型営業」に切り替え、業種ごとの専用パッケージを整備。下請けからの脱却が進み、顧客単価は2.3倍に上昇。さらに、新たな次の一手を検討中。

経済産業省「ミラサポ」ブランディング事例

5. 今すぐ始めるためのステップとポイント

ステップ①:社内対話で「自社らしさ」を言語化する

ワークショップ形式で、社員から「この会社の好きなところ」「誇れる点」を集めてみましょう。経営者の視点と現場の声を重ねることで、リアルでブレないコアバリューが見えてきます。

 

ステップ②:コンタクトポイント(顧客との接点)ごとに「一貫性」があるか点検

営業・接客・WEB・SNS・アフターサポートなど、顧客とのあらゆる接点を洗い出し、「言っていることと、やっていることが一致しているか」を確認。ここにズレがあると、ブランドは育ちません。

 

ステップ③:必要に応じて外部の力を借りる

ブランディングは専門的な視点も必要です。言語化やデザイン、マーケティング戦略などは、プロの支援を受けることで、スピードも精度も上がります。一方で、経営者自身が軸を持ち続けることも最大のポイントです。

信頼の積み重ねが、すべてのブランディング手法の起点になる

選ぶ理由のあるブランドへの図ブランドとは「約束」です。そして、その約束を日々の顧客接点で守り抜くことこそが、ブランディングの核心です。

もう一つ忘れてはならないのが、すでに自社を選んでくれている顧客の存在。なぜ選ばれているのか、どんな点に共感されているのかを見直すことは、自社の「らしさ」――つまりブランドの核を掘り起こす手がかりになります。

普段あたり前にやっている行動や文化の中に、実は強力なブランディング手法のヒントが眠っています。それを言語化し、軸として定着・発信することが、信頼を積み上げ、他社と差別化されたブランドを築く最短ルートです。

まずは、今いる顧客に「自社の魅力は何か?」を聞くことから始めてみてください。

ブランディング
ブランディングに関するコラム

ブランディングの手法で、よくある質問(Q&A)

Q. ブランディングに取り組むと、売上はすぐに伸びますか?

A. 短期的な売上増よりも「選ばれる理由」を積み重ねていくなかで、価格競争に巻き込まれない受注や、リピート率の向上につながるのがブランディングの本質です。ブランディングは売れ続けるしくみをつくることと称されます。今まで培ってきた売上の土壌はすぐにできたものではないはず。長い目で考えてください。

Q. 社内の理解が薄い場合、どう進めればいいですか?

A. 小さな成功体験を共有することが効果的です。例えば「SNSで反応があった」「お客様から共感の声をもらった」といった具体例をもとに、社員の共感と行動を少しずつ引き出していきましょう。
経営者がブレないこと。その本気度を社内に常に共有すること。ことあるごとに言葉にして伝え続けることが徐々に社内からの賛同を得るための方法です。

Q. 競合が多い業界で差別化は本当に可能?

A. 可能です。「何を売るか」より「なぜ売るのか」「どう売るのか」でブランドは差別化できます。競合が価格で勝負しているなら、そこから外れた独自の土俵をつくるのがブランディングの強みです。

ブランディング手法を徹底解説。会社を成長させる4つの実践例

ブランディングの進捗をチェックするスタッフ

「ブランディング手法」は、競合との差別化や顧客との信頼構築に欠かせない重要なマーケティング戦略です。本記事では、ビジネス成果に直結する4つの主要手法をわかりやすく解説します。
ブランディングという「売れ続けるしくみ」を作り上げるプロセスで、顧客の心をつかみ、ロイヤリティを生み出しましょう。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


 

ブランディング手法①:差別化戦略とは?

競争が激化する現代の市場では、新しい製品やサービスであってもすぐに模倣され、コモディティ化してしまうリスクがあります。こうした状況で企業が生き残るためには、「ブランディング手法」としての差別化戦略が不可欠です。単なるスペックや機能だけで勝負する時代は終わり、ブランドとしての独自性が問われています。

差別化戦略とは、競合他社と明確に異なる価値を顧客に提示することで、ブランドの魅力を際立たせるブランディング手法のひとつです。特に、機能や価格以外の軸——たとえば世界観や体験価値、ストーリー性などを通じて「選ばれる理由」を作ることが重要です。

差別化を図るうえでの基本的な考え方としては、以下の2つがポイントです:

1.ブランド独自の価値やストーリーを明確に伝えること
2.顧客の共感やロイヤルティを引き出すコミュニケーション設計

なお、「価格を極端に下げて競合との差をつける」といった施策も差別化の一種ですが、それは「価格戦略」と分類されるため、本記事では取り上げません。


 

他社と差をつけるイメージ戦略による差別化手法

差別化戦略においては、他社と異なる切り口でブランドのイメージを構築することが重要です。これは、ブランディング手法の中でも「イメージ戦略」として分類されるアプローチです。

たとえば、口紅の広告を考えてみましょう。一般的には「つやつや」「ぷるぷる」「かわいい」など、見た目の美しさを前面に押し出すプロモーションが多く見られます。しかし、これを「社会を楽しくするためのアイテム」と再定義すれば、まったく異なる価値訴求が可能になります。

このように、同じ商品でも視点を変えることでブランドの伝え方に差が生まれ、それが差別化につながるのです。この手法は、企業広告やブランドステートメントと親和性が高く、感情的な共鳴を生むブランドづくりに有効です。


 

購買動機をずらす:訴求ポイントの再設計による差別化戦略

差別化戦略を考える際に、競合他社とほぼ同じスペックで「少しだけ優れている点」にフォーカスしても、それは本質的な差別化とは言えません。スペック上の優位性がわずかであれば、ユーザーに響かない可能性が高いのです。

ブランディング手法として有効なのは、訴求ポイントそのものを再定義することです。たとえ同じ性能・同じ価格帯であっても、競合が強調していない別の魅力にフォーカスすることで、まったく違う購買動機を刺激できます。

たとえば、競合が「耐久性」や「性能」を押し出している製品に対して、自社は「使いやすさ」や「デザイン性」を前面に打ち出すという方法です。このように“訴求軸をずらす”ことが、ユーザーの特定セグメントに刺さり、差別化戦略として成立します。


 

ブランディング手法②:感情戦略でブランドロイヤルティを高める

「ブランディング手法」の中でも近年注目されているのが感情戦略です。市場では、製品やサービスのスペックを比較するだけのビジネスライクな意思決定だけでなく、購入者の感情に基づく判断も大きな影響を及ぼしています。なぜなら、最終的な購買決定を下すのは、感情を持つ“人間”だからです。

このような人間の感情に訴えかけるアプローチが、「感情戦略(エモーショナルブランディング)」と呼ばれます。顧客の感情とブランドを結びつけることで、単なる機能的な価値ではなく、共感や信頼といった情緒的な価値を提供できるのです。

たとえば、

・製品開発の裏側にある感動的なストーリー
・ターゲット層の共感を呼ぶキャンペーンやメッセージ設計

といった手法が有効です。

さらに、企業姿勢をブランディングに取り込むことも効果的です。たとえば、「ダイバーシティ推進のために、コストがかかっても既存製品を改良した」という事実を訴求すれば、マイノリティや価値観重視の消費者層に対する強い共感と信頼を生み出すことができます。


 

ブランディング手法③:一貫性の確保でブランド信頼を構築する

ブランディング手法の中で見落とされがちですが、「一貫性の確保」はブランド価値を維持・強化するための極めて重要な戦略です。ブランディング活動を全社的に統一するのは手間がかかりますが、それを怠ると、メッセージのブレが信頼低下につながるリスクがあります。

顧客や社会に対してブランドを訴求する際、すべてのコミュニケーションや行動がブランドの理念や価値観と一致していることが求められます。たとえメッセージが良くても、担当する部署や担当者によって表現が変わってしまえば、その一貫性の欠如によってブランドの印象は弱まってしまいます。

たとえば、広報が運営するコーポレートサイト、営業が担当するSNS、企画部門が制作する製品カタログといったように、発信チャネルごとに担当が分かれている場合、一貫性を保つのはさらに困難になります。ここで必要なのは、以下のような対策です:

・ブランドミッション・ビジョン・バリューを明文化し、全社で共有するブランドガイドラインを作成
・各部署にブランドトーンを教育し、メッセージの統一ルールを設ける
・SNS運用や販促資料など、あらゆるアウトプットにおいて部門間の連携体制を強化

このように、「一貫性のあるブランディング手法」は、顧客との信頼関係を築き、ブランドの認知と評価を長期的に高める土台となります。


 

ブランディング手法④:エンゲージメントの促進で顧客との関係性を深める

たとえば、クラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」は、定期的にファンミーティングを開催し、顧客とブランド担当者が一緒に商品を楽しむ機会を提供しています。担当者がユーザー主催の飲み会に参加するなど、ブランドと顧客が双方向で関わる関係性を築いています。

こうした施策は、単なる消費者を熱心な“ブランド推進者”へと変えるきっかけになります。

ヤッホーブルーイング

■ B2Bの場合:顧客の声をブランド価値に転換
B2B領域でも、製品を利用している顧客の声や活用事例を積極的に取り上げ、成功事例として発信することで、ブランドの信頼性や優位性を強化できます。これは、顧客自身をブランドの担い手として巻き込む代表的なエンゲージメント手法です。

■ SNSとコミュニティ活用でエンゲージメントを拡張
SNSやオンラインコミュニティを活用すれば、顧客との日常的なコミュニケーションが可能になります。ユーザー投稿のシェア、コメントへの返信、共創型キャンペーンなどを通じて、「自分もこのブランドの一部だ」と感じさせる“参加感”を生み出すことができます。

このように、エンゲージメントを促進するブランディング手法は、顧客のロイヤリティや継続購入の可能性を高めるうえで非常に有効です。


 

ブランディングは一朝一夕で完成しない

ここまで紹介したように、複数のブランディング手法を戦略的に組み合わせることで、企業はブランドの独自性を高め、顧客ロイヤリティの向上につなげることができます。ただし、重要なのは、ブランディングとは単なるロゴデザインや広告展開ではなく、顧客との信頼関係を長期的に築く活動であるという本質を理解することです。

では、どれくらいの期間でブランディングが「成功した」と言えるようになるのでしょうか?

実のところ、明確な期間やゴールは存在しません。

・なぜなら、ブランディングは終わりのないプロセスであり、一度始めたら放棄しない限り、継続的に取り組む必要があるからです。
・そして、何をもって「成功」と定義するかも、企業や業種、タイミングによって変わります。
・さらに言えば、誰も正解を持っていないのがブランド戦略の難しさであり、奥深さでもあります。

特にコーポレートブランディングにおいては、企業が存続する限り、そのブランドも生き続けるものです。だからこそ、ブランディングは“やるか・やらないか”ではなく、“どう続けていくか”という視点で考えるべき戦略なのです。

中小企業のためのWEBサイト改善術:成果へつなげる5ステップ

中小企業にとってWEBサイトは営業や採用などにおいて、知名度の高い大企業よりもずっと重要な役割を果たす「顔」のような存在。しかし、社内に専門のWEB担当者がいない、更新や改善のノウハウが不足しているという理由から、改善が後回しになってしまっているケースも少なくありません。この記事では、「感覚で気づける」ことから始めて、「成果につながる」までの実践的な改善の流れを5つのステップで紹介します。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


 

1. まずは「なんとなく」でOK:感覚的に改善ポイントを挙げてみよう

WEBサイトの改善というと、「データに基づいた分析が必要」「専門家の意見が不可欠」と思われがちですが、最初の一歩はもっとシンプルで構いません。まずは、自分がそのサイトを使って「なんとなく使いづらい」「読みにくい」「迷う」と感じるポイントをリストアップすることから始めましょう。

例としては以下のような視点があります

  • スマホで見たときに文字が小さすぎる
  • メニューの場所がわかりにくい
  • 問い合わせフォームが長すぎて入力する気が失せる
  • 古い情報が載ったままになっている

また、自分ひとりの視点だけでなく、家族や社内の同僚、友人などに「このサイトどう思う?」と見てもらうことも大切です。とくにWEBに詳しくない人の意見は、実際のユーザーに近い視点での気づきを与えてくれるから。
そして、この段階で「自社サイトの目的」を再確認しておくことも重要です。問い合わせを増やしたいのか、採用エントリーを増やしたいのか。目的がはっきりすれば、どこを重点的に見直すべきか、最終目的のためにこの部分はどうあるべきなのか、あるいは重箱の隅を突くような改善は今は必要ないのかが明確になります。

 

2. 仮説を立てて小さく改善:改善案を実行する

改善ポイントが挙がったら、それぞれについて「こうすれば良くなるのでは?」という仮説を立てて、小さく改善してみましょう。完璧なデザインや文章をいきなり作ろうとする必要はありません。大切なのは、スピーディに、そして現実的な範囲で改善を進めることです。

例えば、以下のような施策

  • 問い合わせボタンの色を目立つ色に変える
  • トップページに問い合わせへの導線を明記する
  • スマホ用のフォントサイズを調整する
  • フォームの入力項目を3つに減らす

改善を実施する前には、必ず現在の状態を記録しておきましょう(スクリーンショットやメモなど)。こうしておくことで、後で「改善の前後でどう変わったか」を比較しやすくなります。
CMS(WordPressなど)を使っていれば、ある程度の編集は自社内でも可能です。外部に依頼する場合も、ピンポイントで「ここだけ変えたい」という要望が出せれば、コストも抑えられます。

 

3. Googleアナリティクスで結果をチェックする

改善を行ったら、最低でも2週間〜1ヵ月ほどは様子を見ましょう。そのうえで、Googleアナリティクス(GA4)を使ってアクセス状況を確認します。

見るべきポイントは以下のようなものです

  • セッション数:訪問者数に変化はあるか
  • 平均エンゲージメント時間:サイト内での滞在時間が増えたか
  • 離脱率:特定ページからの離脱が減ったか
  • コンバージョン数:問い合わせや資料請求が増えたか

たとえば「フォームを簡略化したらコンバージョンが増えた」など、仮説に対する結果が数値として見えてきます。もし数字に変化がない場合でも、それは「効果がなかった」という大事な情報です。次の施策を考えるヒントになります。

セッション数
ユーザーがWebサイトに訪問してから離脱するまでの一連の行動を「1セッション」としてカウントします。ページを複数見ても、離脱するまでが1回のセッションとされます。

平均エンゲージメント時間
訪問者がWebサイト上で「実際にアクションをしていた時間」の平均値です。単に滞在しているだけでなく、スクロールやクリックなど、積極的に見ていた時間を示します。

離脱率
ページを最後に見てサイトを離れたユーザーの割合です。特定のページで多ければ、そこに問題がある可能性があります。

コンバージョン数
訪問者がWebサイト上で目的の行動(例:問い合わせフォーム送信、資料請求、購入など)を完了した回数です。

 

4. なぜその結果になったのかを考える

数字を見て終わり、ではありません。最も重要なのは、「なぜその結果になったのか?」を自分なりに考えることです。

たとえば

  • CTAボタンを赤に変えた → クリック率が上がった → ボタンがより目立つようになったから?
  • フォームを短くした → コンバージョン率は変わらなかった → 実は入力項目ではなく、誘導文が問題だった?

このように、うまくいった場合でも、そうでなかった場合でも「仮説と結果のズレ」を見つけて言語化するクセをつけると、次の改善の精度が上がります。
また、成功した施策は再現性のある手法として記録しておきましょう。今後、他のページや別のプロジェクトにも応用できます。

CTA(Call to Action)
WEBサイト上でユーザーに特定の行動を促すボタンやリンク、テキストのこと。たとえば「お問い合わせはこちら」「資料をダウンロード」「無料で試してみる」などがCTAです。ユーザーのアクションを引き出し、コンバージョンにつなげる重要な要素です。

 

5. ヒートマップで「もっと伝わる」改善を

Googleアナリティクスでは「何人が見たか」は分かっても、「どう見たか」はわかりません。そこで活用したいのが、ヒートマップツールです。

ヒートマップを使うと

  • ページ内のどこが注目されているか(クリックやスクロールの位置)
  • どのコンテンツが読まれていないか(すぐにスクロールされている)
  • ユーザーの視線が止まるポイント

などが一目でわかります。
たとえば、「重要な説明文が下の方にあって読まれていない」なら、順番を入れ替えるべきですし、「ボタンの直前で多くのユーザーが離脱している」なら、説明が長すぎるか、信頼感に欠ける表現になっているのかもしれません。
無料で使えるツールもあるので、まずは1〜2ページから導入して、ユーザーの動きを「可視化」することから始めてみてください。

ヒートマップツール(マイクロソフトClarify)

 

よくある失敗例:リニューアルだけして満足してしまう

中小企業のWEB改善でよくある失敗のひとつが、「サイトを一新したことで満足してしまう」ことです。見た目を整え、最新のデザインにしたことで「これで完成」と思ってしまい、その後の検証や改善が行われないケースは少なくありません。
リニューアルはあくまでスタート地点であり、本当に大切なのはその後の数値の変化を見て、仮説を立てて再調整する作業です。新しいデザインが目的を達成しているかどうかは、ユーザーの反応やデータを見なければわかりません。
「作って終わり」にしないためには、公開後の動きを3ヵ月単位で振り返るルールを設けたり、改善のための担当者やWEB改善会議を月1回でも設定することが有効です。

馴れない業務を片手間に実施するのは、時間も労力も想像以上にかかります。

とくに中小企業では担当者が兼任であることがほとんど。調査・実装・検証までをすべて自社で完結させるのは現実的に難しいでしょう。
そうしたときには、一部を外注し、専門家の視点を借りながら自社でできる範囲を進めるという方法が、結果的にもっともコストパフォーマンスが良いやり方になります。
外注=丸投げではなく、「方向性の確認」「改善箇所の優先度づけ」だけでもプロに頼ることで、無駄な工数や迷走を防げます。

 

中小企業が自力でできるWEBサイト改善の進め方

中小企業にとって、WEBサイト改善は「特別な知識」や「高額な外注費」がなくても、感覚的な気づきからスタートし、数値やツールを使って着実に成果へつなげることができます。

重要なのは以下の5ステップを、無理のない範囲で繰り返すこと

  1. まずは感覚的に「使いにくい」と感じる部分を洗い出す
  2. 仮説を立てて小さく改善してみる
  3. Googleアナリティクスで数字の変化をチェック
  4. なぜ変化が起きたのかを自分なりに考察する
  5. ヒートマップでユーザー行動を可視化し、さらに精度の高い改善へ

このように、「感覚 → 実行 → 分析 →再改善」の流れを継続することで、中小企業でも自社WEBサイトを成果につながる営業ツールに進化させることが可能です。
初めから完璧を目指す必要はありません。むしろ「まず動いてみる」ことが、改善への第一歩です。

難解そうなWEBサイトの改善について、ご相談を承ります

3C分析をブランディングに活用するときの注意点

ブランディングの議論が社内で本格化すると、最初にぶつかる壁が「どこから手をつければいいのか分からない」という状態です。そんなとき、ありがちなのがフレームワークを導入して全体像を整理しようとする動き。とくに「3C分析」や「SWOT」など、マーケティングの基本フレームは使いやすさもあって選ばれやすい傾向にあります。

なかでも使われやすいのが「3C分析」です。これは、顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)という3つの要素をクロスさせ、ブランドの価値やポジショニングを論理的に導き出すものです。

便利で説得力があるフレームワークではあるのですが、誤った使い方をすると、かえってブランドの方向性が曖昧になってしまうことも少なくありません。そこで今回は、全社の方向性をプランニングする部門(たとえば経営企画室)の実務担当者が3C分析を実施する際に陥りがちな落とし穴と、注意すべきポイントを整理します。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

 

3C分析とは何か?まずは基本の理解から

3C分析は、3C(Customer、Competitor、Company)をそれぞれ分析したうえで、それらの要素を掛け合わせることで、自社が取るべき戦略やブランドの方向性を導き出す方法です。

例えば以下のような掛け合わせが基本になります:

顧客 × 自社:顧客が求めていて、自社が提供できる価値は何か

自社 × 競合:競合と比較して、自社が勝てる部分はどこか

顧客 × 競合:顧客が重視し、競合が対応しているが、自社が弱い部分は何か

このように、単純な3C分析よりも一歩踏み込み、戦略の優先順位や差別化の方向性を可視化できるのが特徴です。自社の弱い部分は、あまり時間をかけて分析しても意味はありません。むしろ時間をかけるほど、愚痴合戦のような状態になってしまいます。ブランディングは、自社の良い部分を伸ばすことで顧客に力強く訴求することが目的。競合他社と比較して足りていない部分は、思い切っていまは目をつぶっておきましょう。

ブランディングではこの分析を使って、「自社ブランドは誰に、何を、どう届けるのか」という問いへの答えを論理的に構築していきます。

 

3C分析をブランディングに活用する際にありがちな3つの誤解

便利なフレームワークには副作用もあります。とくに次のような3つの誤解は、ブランディングにおける方向性を誤らせる原因になります。

 

誤解1:「顧客視点=機能的ニーズ」だと思い込む

「顧客視点で考えよう」と言いながら、出てくる要素が「安い」「早い」「便利」ばかりでは意味がありません。それは表面的な選定理由であって、ブランドを選ぶ理由ではないからです。

ブランディングで重要なのは、顧客がどんな文脈でブランドを選び、どんな感情で関係を築いていこうとしているか、という視点です。つまり「スペック」ではなく「意味」が問われるということです。

 

誤解2:「競合=同業他社」と決めつける

競合分析というと、つい同じ製品、サービスを扱う他社に目がいきがちです。しかし実際には、顧客の選択肢は同業に限りません。

たとえば、スターバックスにとっての競合はドトールやタリーズだけではなく、コンビニコーヒー、自宅カフェ、さらには「今日はカフェに行かない」という選択肢すら競合になり得ます。

競合の定義が狭すぎると、ブランディングの差別化軸も浅くなってしまうでしょう。

 

誤解3:「自社の強み=過去の実績」だけで考える

「うちはこれが得意」「この分野は負けない」といった自社の強みを語るとき、往々にして過去の実績や現在の技術力に基づいているケースが多く見られます。

しかし、ブランドは未来志向のものです。過去の実績ではなく、これからどんな「価値観」や「ライフスタイル」を象徴していく存在なのか、それを語れなければ、ブランドとしての広がりが生まれません。

もちろん、現在の顧客が自社を選んだ理由を知ることは非常に重要なことですが、その一点だけに強みが集中してしまうとブランディングの範囲を狭めてしまうことになりかねません。

 

実務で押さえるべき4つの注意点

上記の誤解を踏まえたうえで、実際に3C分析をブランディングに活用する際の注意点を具体的に紹介します。

 

① 顧客の「無意識の選択理由」に踏み込め

顧客の選定理由には、本人が意識していない「無意識の価値判断」が数多く含まれています。たとえば、「高いけどなぜかあのブランドを選ぶ」という行動には、価格や性能では測れない「好感」や「信頼感」が影響しています。

ここに踏み込まないまま分析しても、「当たり障りのない差別化」にしかなりません。

ヒント:インタビューやユーザー観察によって、「なぜそれを選ぶのか?」「どうして他と比べて安心感があるのか?」といった問いを深堀りしましょう。

 

② 競合の再定義がブランドの輪郭を決める

競合の捉え方次第で、自社ブランドの意味づけも変わります。「モノとしての競合」ではなく、「体験としての競合」を意識することで、自社ブランドが提供すべき価値が変化します。

たとえば、高級腕時計の競合は他ブランドの時計ではなく、「自分へのご褒美」や「ステータス実感」を得られるすべての行為かもしれません。

ヒント:競合を「同じ問題を解決している他の選択肢」と定義し直してみましょう。

 

③ 自社の強みは「記号」化して語れ

ブランドの強みは、機能や技術力だけではなく、「象徴」としての役割を果たす必要があります。
たとえば「無印良品」は「シンプルな生活の象徴」、「Apple」は「革新性と美意識の象徴」として機能しています。

これらはすべて、技術や商品を超えた「記号的価値」です。

ヒント:「私たちのブランドは、顧客にとって何の象徴か?」という問いをチーム内で共有し、強みの再定義を図りましょう。

 

④ フレームワークに縛られず、「物語」を紡げ

最後に大切なのは、分析の結果をそのまま資料に貼って満足しないことです。

3C分析の目的は、単に整理することではなく、ブランドの「意味」や「物語」を構築するための出発点です。

論理で構築した戦略を、感情で語れるストーリーに翻訳するプロセスが必要です。ブランドとは、最終的には「覚えられる」「共感される」ものとして成立する必要があります。さらに、誰かにそれを伝えたくなる要素、これがめざすべきストーリーです。

 

ブランドは、差別化ではなく「意味化」されるべき

「ブランディング、3C分析」というワードで検索してください。無数のテンプレートや図解が出てきます。しかし、それらを形式的に埋めるだけでは、顧客の心には届きません。

プロジェクトメンバーの役割は、ロジックと感性を橋渡しする視点を持つことです。
そのためには、3C分析を単なる戦略設計の道具としてではなく、「ブランドの意味を考え抜くための補助線」として使う姿勢が求められます。まさに、頭にどれだけ汗をかくことができたかで、ブランディングの成功確率はグッと高くなります。

ブランドは、差別化されるのではなく「意味化」されるもの。
その意味を、顧客・競合・自社という3つのレンズを通して言語化できたとき、ブランディングは初めて本質に近づきます。

マーケティングでよく活用されるフレームワークは便利ですが、使い方を誤れば形だけの戦略に陥ります。とくにブランディングのように抽象度が高く、主観も入りやすい領域では、客観的な視点が欠かせません。だからこそ、必要に応じて専門家の知見を借りることも選択肢に入れるべきです。
外部の視点を取り入れることで、自社では当たり前になっていた価値や強みに改めて気づけることもあります。3C分析を「社内で完結させる作業」ではなく、ブランドを再発見する対話のプロセスとして活用していくことが、ブランディング成功への鍵になります。

フレイバーズでは、コーポレートブランディング、採用ブランディングなどを実施し、結果を出してきた実績があります。かんたんなご質問でも構いません。お問い合わせフォームからコンタクトしてください。

中小企業のための製品ブランディング入門

中小企業、とくに製造業では「良いモノを作れば売れる」という考えが根強く残っています。製品の品質やスペックを高めることに全力を注ぐ一方で、「自社の製品が顧客にとって何をもたらすのか」という視点を持つことを忘れてしまいがちです。
しかし、どれだけ高性能な製品でも、顧客がその価値を実感できなければ、選ばれることはありません。本コラムでは中小企業の製品ブランディングをテーマに、なぜ自社製品の「意味」や「価値」を明確に伝えることが重要なのか、そしてそれをどう実践するかについて具体的に解説していきます。製造業の中小企業だからこそできる、本質的なブランディングの方法をお伝えしていきます。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


 

なぜ中小企業に製品ブランディングが必要なのか

大企業とは異なり、中小企業は宣伝費や知名度において不利な立場にあります。こうした状況であっても他社製品との差別化を図り、永続的に事業を発展させていかねばなりません。そのためには、製品そのものに「ストーリー」や「信念」を乗せて発信する必要があるのです。
つまり、「何を作っているのか」ではなく、「なぜそれを作るのか」「どんな価値を届けたいのか」という部分を伝えるのが、製品ブランディングの本質です。
製品ブランディングを強化することで、価格競争に巻き込まれるリスクも減らせ、顧客は単なる「モノ」としてではなく、「このブランドだから買いたい」と感じるように。これは中小企業にとって非常に大きな武器となることでしょう。

 

中小企業が陥りがちなブランディングの誤解

「ブランディング=おしゃれなロゴやパッケージデザイン」と誤解しているケースが少なくありません。もちろんビジュアル面も重要ですが、それはあくまで表層部分。根本は「自社製品が誰にとってどんな意味を持つのか」を明確にし、それを一貫して伝えることにあります。
また、すべてを完璧に整えようとしてスタートが遅れるのもよくある問題です。中小企業に求められるのは、まず自分たちの強みや思いを素直に言葉にし、それを市場にぶつけてみる行動力です。
短いサイクルでトライ&エラーを繰り返せるのが中小企業の強み。経営者が陣頭指揮をとり、新たな局面を模索することを始めましょう。

 

中小企業が製品ブランディングを始めるためのステップ

ここからは具体的なステップについて見ていきましょう。

 

1.ターゲットを明確にする

誰に向けて製品を届けたいのかをはっきりさせます。どのような人が自社製品の導入を検討してくれそうか。
年齢、性別、ライフスタイル、価値観など、できるだけ具体的にイメージします。ここでのポイントは、狭くても良いのでターゲットを明確に絞り込むこと。ターゲットを絞り込んだとしても、自社の売上は大企業ほど大きなものでなくても十分なはず。中小企業だからこそ、広く浅くではなく、狭く深くターゲットを絞り込むことが結果的に効果的なものになります。

 

2.自社の「強み」と「想い」を言語化する

他社と比べて自社製品は何が違うのか、なぜそれを作っているのか、なぜ顧客に届けたいのか。これらをシンプルな言葉でまとめることが大切です。特別な表現はいりません。素直な言葉こそが中小企業の強みになります。
また、長く購買してくれている現在の顧客に、「なぜ自社から買ってくれているのか」を聞いてみましょう。その理由がわかれば、まだ見ぬ顧客にも刺さるポイントが浮かび上がってきます。

 

3.ブランドメッセージを設計する

ターゲットに対して、自社製品がどんな価値を提供できるのかを一言で表せるメッセージを作りましょう。このメッセージは、コンタクトポイント(自社が顧客と接する場所、ツール)WEBサイト、SNS、パンフレット、名刺、事務所などすべての発信活動の軸になります。

 

4.一貫した発信を続ける

ブランドメッセージに沿った情報発信を地道に続けることが重要です。SNSなら、製品開発の裏話、スタッフの想い、お客様の声など、できる限りリアルな情報を発信しましょう。事例は、導入を検討している顧客候補の背中を強く押してくれます。すぐに大きな反響を期待してはいけません。粘り強く発信を積み重ねていくと、ある地点から乗数的に影響力を持つことに気づくでしょう。

 

中小企業ならではの製品ブランディング事例

例えば、地元の素材にこだわった食品メーカーが「地元の美味しさを全国に届けたい」というメッセージを掲げ、農家との共同開発ストーリーを発信し続けた結果、地域ブランドとしての地位を確立した例があります。
また、小さな工房が「一つひとつ手作業で仕上げる丁寧なモノづくり」を前面に出し、量産品との差別化に成功したケースもあります。
いずれも、特別な広告費をかけたわけではなく、「ほかにはない自分たちの強みを正直に伝え続けた」ことが成功要因です。

 

製品ブランディングを継続するために

製品ブランディングは一度作って終わりではありません。市場や顧客の変化に合わせて、伝え方を見直したり、新たな価値を提案したりする柔軟さも必要です。小回りが利くのは中小企業の大きな強み。大企業にできないスピード感で変化に対応していきましょう。
また、社員全員がブランドの考え方を共有することも大切です。経営者だけが意識しても、現場がバラバラではブランドイメージは伝わりません。社内ミーティングや勉強会を通じて、製品ブランディングに対する共通認識を持つことをおすすめします。

 

中小企業だからこそできる、強力な製品ブランディングを

製品ブランディングは単なるマーケティングテクニックではなく、企業の存在意義そのものを市場に伝える行為です。限られたリソースでも、強いブランドを築くことは可能です。自社の強みと想いを明確にし、それを一貫して発信し続けることで、価格競争に巻き込まれず、ファンを増やすことができます。
今日からできる小さな一歩として、自社の製品について「誰に、どんな価値を、どう伝えたいのか」を整理してみてください。中小企業だからこそできる製品ブランディングで、未来を切り開いていきましょう。

中小企業が採用ブランディングで成功するための基本戦略

「求人を出しても応募がこない」
「ようやく面接まで進んでも辞退される」・・・

そんな悩みを抱える中小企業が急増しています。人手不足が深刻化するなか、新規事業の立ち上げすら見送らざるを得ないケースも少なくありません。

この状況を打開するカギが、「採用ブランディング」です。
これからの採用は、「人を集める」のではなく、「選ばれる企業になる」ことが本質。そのためには、自社の魅力を明確にし、言葉と形で伝える準備が必要です。

ただし、ここでいうブランディングは、ロゴやデザインを整えることではありません。
たいせつなのは、「なぜ、今いる社員たちはこの会社を選んだのか?」という問いに向き合い、その答えを採用のメッセージに変えていくことです。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


 

ブランディングは社内の声から生まれる-でも、独りでは掘り出せるものではない

採用ブランディングで最も信頼できる材料は、すでに会社の中にあります。それは、今働いている社員たちが感じている「この会社の良いところ」です。これを掘り起こし、言語化し、求職者に伝える。それが中小企業にとって最も効果的で、再現性のあるブランディングのやり方です。

重要なのは「再現性」です。いま在籍している社員たちは、何らかの理由でこの会社に定着しています。その理由には、これから入社する人にも響く「共感の種」があるはず。だからこそ、それをうまく言葉に変えて伝えることで、「この会社、なんかいいかも」と感じる人が現れてくれます。

ただし、ここにひとつ大きな課題があります。
それは、経営者が社員に直接ヒアリングしても、本音を引き出すのは難しいということ。どれだけオープンな社風でも、社員はどうしても忖度してしまいます。「ここが良い」「ここは微妙」という本音を引き出すには、第三者の視点やファシリテーションが欠かせません。


 

「社外の聞き手」だからこそ、本音が出てくる

社員のリアルな声を引き出すには、第三者の存在が欠かせません。社内の人間関係が影響しない「外の人」が話を聞くことで、社員は忖度なしで本音を話しやすくなります。

たとえば、採用ブランディングの一環として外部にヒアリングやインタビューを依頼すれば、社員の言葉から会社の“本当の魅力”が見えてきます。経験ある聞き手であれば、単なる印象論ではなく、言語化されていない価値観や空気感を言葉にしていくことも可能です。

実際、私たちがインタビューを行った中小企業では、こんな声が出てきました。

「正直、最初は待遇よりも人の良さで決めた」
「決め手は社長が面接で家族の話を聞いてくれたこと」
「大企業では味わえない“自分ごと感”があるのが魅力」

こうした言葉は、社長の前ではなかなか出てこないものですが、まさにその企業らしさがにじみ出た「選ばれる理由」です。求職者にとっても強く響くメッセージになります。


 

「見つけた強み」を育てるのは、経営者の仕事

採用ブランディングの図採用ブランディングの図社員の声から見えてくる自社の魅力。
それは、他社にはない「選ばれる理由」の原石です。

たとえば、

「小さい会社だけど、一人ひとりが主役になれる」
「上下関係がフラットで話しやすい雰囲気がある」
「社長が現場に顔を出してくれるのが安心感につながっている」

こうした声は、単なる満足度ではありません。むしろ、「ブランドの種」です。そして、その種をどう育て、どう磨いていくかは、まさに経営者の役割です。

たとえば「距離の近さ」が強みなら、雑談やミニミーティングを制度化して文化として根づかせる。「挑戦できる風土」が評価されているなら、小さなトライを応援する仕組みをつくる。
こうして“良さ”を仕組みに変えることで、社内に根づき、外からも見えるようになっていきます。

採用ブランディングとは、表面的なアピールではなく、内側からにじみ出る魅力を整えて、伝わる形にすること。だからこそ、社員の声を聞くだけでは終わりません。その声に応え、未来につなげていく行動こそが、採用力を本物に変えていくのです。


 

中堅企業の採用ブランディング成功事例とその後の課題対応

当社クライアントの中堅企業が採用ブランディングを実施、それまで少なかった応募者数が増加し、採用サイトをリニューアルした翌年には求人枠をすべて充足できるまでになりました。加えて、応募者の質も向上することにもつながり、社風に憧れを持ち、より高いスキルを持った人材を採用できるようになった点も大きな成果でした。こうした実績は、採用ブランディングによって企業の魅力が適切に伝わり、求職者とのマッチングが改善された結果といえます。

成果として見られた変化:

・応募者数の大幅な増加
・採用目標の早期達成
・応募者の質の向上(スキル・志向の両面)

一方で、採用活動の競争が年々厳しくなるなか、新たな課題も浮かび上がります。とくに、大手企業から内定を受けた学生による内定辞退が相次ぐようになり、せっかく確保した優秀な人材の取りこぼしが増えてしまったのです。これは知名度の差や安定志向が背景にあり、中堅企業にとっては乗り越えるべき大きなハードルです。

新たに直面した課題:

・内定辞退の増加(特に大手内定者)
・企業の知名度や安定性への懸念
・入社意思決定への影響

この課題に対応するため、採用サイトの再リニューアルではブランディングをさらに強化。「大手よりも活躍の舞台が大きい」「若手が早くから裁量を持てる」といったメッセージを前面に打ち出し、企業としての価値や成長機会を明確に伝える工夫を施しました。

再リニューアル時に行った施策:

・メッセージ性を強化(活躍機会・裁量の早期付与を訴求)
・求職者視点でのコンテンツ設計
・ブランディング要素の再整理

その結果、内定辞退の割合は減少し一定数の質の高い応募者を安定して確保できる状況に改善しています。このように、採用ブランディングは一度きりではなく、市場環境に合わせて柔軟に進化させていくことが、採用活動を成功に導くカギとなります。

地域で活躍する中小企業の採用と定着 成功事例集(厚生労働省)


 

「続けるブランディング」が、採用の質を底上げする

採用ブランディングは、1回やって終わりの「施策」ではありません。
むしろ、“企業文化の育成そのもの”です。日々の仕事と同じように、継続して取り組んでこそ、本当の効果が見えてきます。

せっかく社員の声から「うちの良さ」が見えてきても、それを放置していては意味がありません。まずは、年に1〜2回でもいいので、定期的に社員インタビューや価値観の棚卸しを行う仕組みを作りましょう。
外部のパートナーと一緒に行えば、より客観的な視点で社内の変化を捉えられます。

そして見えてきた魅力は、採用コンテンツに反映していきます。
ホームページや採用ページ、SNS、会社説明会など、あらゆる接点で一貫性を持って伝えることが、「なんとなく応募」ではなく「ここで働きたい」という共感に変わっていきます。

さらに見逃せないのは、ブランディングの効果が“社外”だけにとどまらないこと。
社員が「うちの会社って、意外といいな」と再確認する機会にもなり、エンゲージメントが高まります。結果として離職も防げ、自然と友人や知人にも勧めたくなる。そうしてリファラル採用が生まれ、また新しい“共感できる仲間”が集まってくる。

継続的な採用ブランディングは、単なる採用活動ではありません。
人が集まり、育ち、定着し、つながっていく——中小企業の人材戦略そのものの土台になるのです。


 

「見つけた強み」を育て続ける会社が、人から選ばれる

採用に悩む中小企業は少なくありません。でも、その答えは外にはありません。
今いる社員たちが日々感じている「うちの会社、けっこういいじゃん」という実感こそ、最大の武器です。

その声を、外部の視点も借りながら丁寧にすくい上げ、言葉にして伝えていく。
そして経営者がその強みを信じ、育てる姿勢を持ち続けることで、会社は着実に変わっていきます。

「この会社に入れたらいいな」ではなく、
「ここで働きたい」と心から思ってもらえる場所へ。

採用ブランディングは、派手な施策ではなく、日々の積み重ねです。
けれどそれは、確実に“選ばれる企業”への道をつくっていく力になる。

今、手の中にある小さな強みに気づき、育てていくこと。
そこから、採用も組織も、きっと変わっていきます。

採用サイト制作
採用サイト戦略の立て方

中小企業の業績を上向かせる、ブランディングの力

中小企業を対象とした景況調査の結果、値上げができている会社は業績が上向き傾向にあるとのこと(大阪府中小企業家同友会調べ)。わかってはいるものの、顧客が離れてしまうのではといった怖れも含め、値上げに踏み切ることをかんたんに決断できるものではありません。
値上げは、顧客に受け入れざるを得ないなと感じさせるだけの、他社にはない優位性やブランド力を持つ企業にのみ許されるものです。それが中小企業でも持てるのか。そこが経営者すべてが憂慮するポイントでしょう。
今回のコラムは、賃上げや原料費の高騰、燃料費の上昇などによる環境の変化を乗り切るためには、自社の優位性を振り返り、ブランド力を高めなければいけないという主旨になります。うちには目立った優位性などないから・・・と感じた方でも、大丈夫です。業績を改善させ、中長期的に胸を張って事業を進められる体制を作っていきましょう。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

ブランド力が価格決定権を生む

中小といえども、ブランド力がある企業は単に商品やサービスを提供するだけでなく、「この会社だから買いたい」「このブランドなら信頼できる」 という付加価値を顧客に感じさせることができます。これは、価格決定権を企業側が握ることにつながり、値上げをしても顧客が納得しやすくなる要因となります。

では、中小企業がブランド力を高め、「値上げしても選ばれる企業」になるためには、どのような取り組みを行うべきでしょうか?

 

1. 自社の強みを明確に

ブランディングの第一歩は、「自社の強みは何か?」を明確にすること。例えば、以下のような視点で考えてみましょう。

  • 技術力・専門性:他社にはない独自の技術やノウハウ
  • 品質・こだわり:素材や製造工程での工夫
  • 顧客対応:御社が顧客に提供している価値
  • 評価:顧客が他社ではなく、御社から購入している理由
  • ストーリー性:創業の背景や理念、社長・社員の想い

「うちは〇〇だから選ばれている」と言えるポイント。それがブランドの核となります。

 

2. 価格競争からの脱却:付加価値の提供

値上げが難しいのは、「価格以外の差別化ポイントが伝わっていない」からかもしれません。単なる機能やスペックではなく、「顧客にとってのメリット」 を強く打ち出すことで、価格以上の価値を感じてもらえる可能性があります。

例えば、以下のような付加価値を提供できるか検討しましょう。

  • 長期保証やアフターサービスの充実
  • 特定の業界・顧客に特化した専門性の高さ
  • 環境に配慮したエコな製品やSDGsへの取り組み
  • 地域密着型のサポートや関係性の深さ

価格だけでなく、「この会社だからお願いしたい」と感じさせる付加価値を持つことで、値上げを受け入れてもらいやすくなります。

 

3. 一貫性のあるブランドイメージに

ブランドは、一貫したメッセージとビジュアルによって形成されます。マーケティングやブランディングにおいて、最も注意しなければいけないのがこの一貫性です。もし、社内のあちこちで一貫性のないコミュニケーションが社外とやりとりされれば、それだけで発しているメッセージとのさが目につき、信頼は薄らいでしまいます。
一貫性の維持を担うのは経営者。常に社内に対して、ブランドメッセージを伝え、啓蒙していくことが必須条件です。
具体的には、企業ロゴ、Webサイト、SNS、パンフレット、メール対応から発せられるメッセージのすべてが統一されたブランドイメージを持つことです。

  • 視覚的統一:ロゴ、カラー、フォント、デザインの統一
  • メッセージの統一:「何を大切にしている会社か?」が一目で伝わる発信
  • トーン&マナーの統一:顧客対応の言葉遣いや雰囲気の一貫性
  • 社員から発するメッセージ、サービスでの一貫性

「なんとなく安定感がある」「なんとなく安心できる」と思われる企業は、ブランド力がある企業。この「なんとなく」を意図的に作り出すことが重要なのです。

 

4. 顧客との信頼関係を強化する

ブランド力の本質は、顧客との信頼関係にあります。顧客の声に耳を傾け、誠実な対応を続けることで、自然とファンが増え、口コミやリピート購入につながります。

  • 購入後のフォローを徹底する(アフターフォローの連絡やサポート)
  • 顧客の声を活かす(レビューを収集し、改善に活用)
  • リピーターを大切にする(特典やイベントで関係を強化)

「この会社の商品なら間違いない」と思われるようになれば、多少の値上げがあっても顧客は離れません。

 

5. 専門性の高さを訴求する

ブランドの信頼性を確立するために、高い専門性があることは競合他社との差別化ポイントとして重要な要素です。

専門知識や業界の最新情報を発信することによって、顧客候補に「この分野のプロフェッショナル」と認識されやすくなります。

方法は業界によって異なりますが、専門コラムやセミナー、SNSなどを使った情報提供を継続すると、少しずつ注目されるようになります。たとえば加工業、メーカーなどであれば、保有する工作機械の紹介は技術者同士の共通言語であり、その会社にどの程度のレベルがあるかよくわかる指標にもなるでしょう。

ペルソナを設定し、理想的な顧客の分析を行う

ブランディングの成功は、適切なターゲットに向けた訴求が不可欠になります。そのために重要なのが「ペルソナ設定」と「ターゲット分析」。ペルソナとは、理想的な(今まで取引しているなかで、多数を占めるモデルでも可)顧客像を具体的に描いた架空の人物モデルのことで、年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観(自社の事業領域に関する)などを詳細に設定します。

あえてペルソナという「個」に絞り込み、明確にすることで、顧客層のニーズや課題を深く理解し、それに沿ったマーケティング戦略を立てることができるようになります。例えば、ターゲットが忙しいビジネスパーソンであれば、自社製品やサービスを短時間で理解できるコンテンツになど、効果的なアプローチにつながります。

また、ターゲット分析を行うことによって、どの市場に強いニーズがあるのか、どのチャンネルを活用すればリーチしやすいのかも把握できます。SNSの使用傾向や購買行動データを分析し、ターゲットに合わせたメッセージを届けることで、ブランドの認知度と信頼度が向上します。

ペルソナ設定とターゲット分析を適切に行うことで、より効果的なブランディングが可能となり、競争の激しい市場でも差別化されたポジションを築くことができるのです。

ブランド力が中小企業の未来を左右する

値上げを成功させるためには、単に価格を上げるのではなく、顧客に納得感を持たせるブランド力を磨くことが不可欠。これまでお伝えしてきたことをもういちどまとめておきます。

  • 自社の強みを明確にし、付加価値を提供する
  • 一貫性のあるブランドイメージを作る
  • 顧客との信頼関係を深める

このブランディング、大企業ほど実施は容易ではありません。なぜなら、組織が大きい分社内に浸透させるのに時間と手間がかかるから。ただ、現状を考えると値上げに踏み切れているのは、ほとんどが大企業です。彼らはブランディングを意識している、いないに関わらず、これまでに蓄積してきた資産(=顧客からの信頼)があるので値上げができています。

こんどは中小企業でも価格転嫁を含めた値上げを実施するために、価格競争に巻き込まれない戦略に切り替えるために、自社の優位点を振り返ることからはじめる。ブランディングは長期的な投資です。すぐに売上が向上するわけではありませんが、中長期的な視点、つまり自社を継続させようと考えた場合に非常に重要な取り組みになります。少し取り組んで効果が現れないからといって、やめてしまったり、路線を変更してしまったりすることは厳禁です。つねに訴求に一貫性を保ちながら、少しずつ大きな負担にならないような取り組みを積み上げていくイメージを心がけてください。

優位点の見つけ方、ブランディングの進め方については、社内だけで進めるのは自社を知りすぎているために、難しいことがあります。あえて業界に詳しくない外部の目を入れることが課題解決の近道になりますので、お気軽にご相談いただければ、アドバイスをさしあげます。

ブランディングについて