作成者別アーカイブ: 平田 弘幸

ブランディング手法:会社を成長させる4つの重要なビジネス戦略

ブランディングの進捗をチェックするスタッフ

ブランディングは、企業や製品、サービスが顧客に自社が優位性を保てる理想の市場、姿で認識してもらうために継続して実施する、いわば「売れ続けるしくみ」を作り上げるプロセス。成功するブランディングは、顧客の心をつかみ、ロイヤリティを生み出します。ここでは、ビジネスの成功を支えるブランディングの手法について、4つの主要なものについてお伝えします。


 

差別化戦略

市場での競争が激化し、新しい分野の製品、サービスでさえ、あっという間にコモディティ化してしまう状況に、あなたはどうすれば勝ち残っていけるか、遠い目をしてしまっていないでしょうか・・・。厳しい市場で勝ち残っていくためには、製品、サービスのスペックだけでは足りないということの証でもあります。そこで差別化を図ることで他社との違いを顧客に訴求する手法が選択されます。

差別化戦略とは、競合他社との違いを明確にすること。取り組むための考え方としては、大きく下記の2点が挙げられます。他社が追随できない価格戦略を行うといった手法も「差別化」ではあるのですが、それは「価格戦略」となるため割愛します。


 

競合他社とは異なる切り口で、イメージ戦略を展開

たとえば、口紅を例にあげると、一般的には「きれい」「つやつや」「ぷるぷる」「かわいい」といった見た目を訴求する広告が目立ちます。しかしこれを「社会を楽しくするためのツール」と捉えなおすと、まったく違った訴求になります。この例は、企業広告に近い印象ですが、ほかにも方法はあるでしょう。


 

購買のきっかけになる訴求ポイントをずらす

競合他社も持つスペックで、ほんの皮一枚だけ自社が秀でているからといって、そこを差別化戦略と定めてしてしまうのは間違っています。
良い差別化戦略は、訴求しようとするポイントが競合他社が推していないこと、しかしそのポイントがあるセグメントにおいて、購買のきっかけになることがあることを突き止めたのであれば、競合他社と同等のスペックでも訴求の仕方次第で差別化になり得ます。


 

感情戦略

市場ではスペック比較だけされてしまうようなビジネスライクな判断がなされるだけではありません。というのも、購買の決断を行うのは幸い感情を持った人間だからです。彼らの判断を促すために人間の感情に訴えかける戦略は大きな武器となりえます。

そもそもブランドは顧客の感情と結びついているといえます。エモーショナルなつながりを築くことで、顧客はブランドにロイヤリティを抱くようになります。たとえば製品開発における感動的なストーリーやターゲットユーザーの共感を呼ぶキャンペーンを展開するといった手法が採られます。

全社的にダイバーシティを目指すなかで、コスト高にはなるが、既存の製品を改良することを決断したといった訴求は、マイノリティの目にとまる可能性が高まります。


 

一貫性の確保

ブランディングを推進するうえで、全社をコントロールすることは骨の折れる作業です。しかし、メッセージを受け取る側からすれば、部門によって、伝える人によって訴求が微妙に違って聞こえると、せっかくの強いメッセージも伝わりづらくなってしまいます。

この一貫性を保つうえで大切なことは、社内外に発するすべてのコミュニケーションと行動がブランドのイメージと一致していること。コミュニケーションの一貫性を保つために、ブランドのミッションやバリューを明確にし、それを全社で徹底的に共有することが必要です。

可能性として考えておくべきは、外部に発信するメディアの担当部門が分かれている場合です。コーポレートサイトは広報部門、SNSは営業部門、カタログは企画部門といったように。この場合、部門間で連携がとれていないと、各部門がそれぞれに工夫をこらしたアウトプットをしてしまい、微妙にズレが生じてしまうことがあります。
こういった事態を避けるために、全社でブランドが訴求すべき全体像を共有することはもちろん、コミュニケーションを担当する部門間の連携を強化する施策を進めていくことが必要です。


 

エンゲージメントの促進

顧客をブランドの育成に関わってもらえるようにすることは、非常に重要な取り組みです。B2Cであれ、B2Bであれ、施策次第では顧客をブランド育成に巻き込むことは可能です。
B2Cであれば、ファンミーティングのようなオフ会を主催し、顧客とブランドホルダーがともに製品を楽しむ。たとえば、ヤッホーブルーイングが定期的に主催するファンミーティング、担当者がファンの飲み会に参加する取り組みは広く知られたものです。
B2Bであっても、製品の使用感や顧客の声を取材して発信することで、そのブランドが持つ優位性を顧客を通じて育成することができます。

ヤッホーブルーイング

ほかにも、SNSなどを活用して顧客とのコミュニケーションを促進し、コミュニティを形成するといったことも、顧客の「参加感」を醸成することにつながあり、ロイヤリティが高まります。


 

ブランドは、一朝一夕でならず

いくつかのブランディング手法を組み合わせることで、企業は独自性を強化でき、顧客のロイヤリティを高めることができます。大切なのは、ブランディングが単なるロゴや広告の打ち出しではなく、顧客との深い関係を築くための戦略だということです。
ただ、それらを成功といえる状態にするには、どれぐらいの時間が必要でしょうか。明確な答えはありません。ひとつには、ブランディングはじっくりと取り組むべき戦略であり、ブランドを放棄しない限り途中でやめることはできないということ。ふたつめは、なにが成功かということを判断することなどできないということ。みっつめは、誰もその答えを知らないということです。
とくにコーポレートブランディングにおいては、会社を解散しないかぎり、その企業ブランドは続いていくわけですから、取り組み自体も永遠に続いていくと考えておくべきです。

デジタル時代のBtoB企業・ブランディング戦略

BtoB企業のブランディング

BtoB企業がブランディングに取り組もうとしたとき念頭に置いておくべきは、ブランディングを行う目的のひとつを「単なる製品やサービスの提供者から、信頼できるパートナーとしての地位を築く」ために行うと明確にしておくということ。それによって、訴求すべきポイント(多くの場合、優位性)や自社の価値の伝え方に差が出てくるということです。

ブランディングを進めるうえで念頭に置いておくべきは、他社にはない優位性、顧客中心のコミュニケーション、一貫性のあるブランド体験の提供、ストーリーの提供、オンラインプレゼンテーションの最適化です。このコラムでは、上記を中心に伝えていきます。


 

ブランドの差別化

市場での競争は、国内の競合ばかりではなく、海外勢も加勢し、激化するばかり。あらゆる製品やサービスが加速度的にコモディティ化しています。顧客の購買に関してもその状況は同じで、どれを選べば良いのか分かりづらいといった市場にもなっているのです。

おそらく、そのような市場で生き残っていくために、あなたはブランディングについて調べてみようと考えたはずです。ブランディングのオーソドックスな手法のひとつを大上段に振りかぶって言うならば、「独自の価値を提供できること」です。ただ、「独自の価値なんてものが自社にあるのだろうか」と感じたかも知れません。

あなたがイメージした独自の価値とは、「世の中にない唯一無二のもの」でしょう。そこに少し誤解があります。世界的に活動している企業であれば、「世の中にない価値」が必要かもしれません。しかし御社の守備範囲が、地方、県内なのであれば、そのエリア内において、しかも競合が提供できていない価値で十分なのです。
たとえば、競合に比べて顧客サービスのクオリティが高いであるとか、納品までのスピードが早いであるとか、小口配送ができるといった切り口。要は、いま取引してくれている顧客が御社を選んでいる理由のなかから、他社ができていないことを見つければいいのです。

しかもその現在の顧客が御社と取引を続けている理由は、御社内ではあたりまえのことになっているはず。あたりまえのことは、ごくふつうのことなので、今まで顧みることはなかったわけです。しかしそこに、御社が生き残れている理由が隠れているとしたらどうでしょう?
それをきちんと整理して明確にして訴求すれば、現在は競合と取引している顧客でも、御社に魅力を感じてくれる可能性はないでしょうか。

ブランドが確立されていない企業の課題は、①自社と取引している顧客がなぜ御社を選んでいるのか調査できていない、②その結果、自社の価値が明らかになっていない、③全社で共有できていない、④顧客候補に訴求できていないことが挙げられます。これらを推進していかない限り、ブランディングによる商機の拡大を見込むことはできません。

製品ブランディング


 

顧客中心のアプローチ

冒頭でお伝えしたように、ブランディングに取り組む目的を顧客と「信頼できるパートナーとしての地位を築く」ために行う
のであれば、考え方を顧客を真ん中に置いたアプローチに変えなければいけません。各部門の利益を優先してしまうような取り組みになっていては、顧客に向けた訴求ができなくなるからです。
とはいえ、今までそのようなことに取り組んだことがなければ、それが会社中心なのか、顧客中心なのかもわからないかもしれません。外部の意見が取り込めるような体制を整えることも検討してください。


 

顧客のニーズ把握

前項で伝えたように、ブランドが確立されていない企業は、市場調査がなされていないことも多く、御社の持ち味が市場にマッチしているかを確かめる術がありません。現在取引している顧客のニーズが御社の狭い独自性にあったとしても、市場全体としてそうではなかった場合、それ以上取引先を増やせないことになります。ブランディングを進めるうえで、市場ニーズの把握は必須といえます。


 

ブランド体験

御社との取引をスタートさせると、どんなことになるのかをイメージしてもらうためのアプローチです。顧客対応が早いことが独自価値なのであれば、問い合わせがあったときに営業時間内であれば、すぐ返事をもらえたり、電話をかけたり。業界での経験値を売りにするのであれば、事例紹介だったり。
御社と取引する価値をウェブ上で、リアルで経験できるようにセッティングしておくことが、もっとも有益な働きかけになります。


 

提供価値の訴求

なぜ既存顧客が自社を選んでいるかを、明確に訴求することが必要です。また、これが自社の生きる道なのだと常に意識し、全社でベクトルを合わせた活動を推進することも忘れてはいけません。担当によって対応の仕方が異なる、回答が違うといった差は、顧客の不信感を招きます。社外に提示する資料によって、表現方法が違っていることも顧客の混乱につながる原因になります。
自社が提供できる顧客のメリットを、自信をもって訴求しましょう。既存客が感じるメリットは、どこかにいる別の顧客候補にとっても必ず価値があることなのです。


 

一貫性のあるブランド体験

ブランド体験とは、顧客がそのブランドに触れた際、経験できる製品やサービスの品質、価格、デリバリー、コミュニケーション、サポート、視覚的要素といったブランドが持つすべての要素を指します。
既存顧客が御社の製品やサービスを購入する理由として挙げたものがあれば、とくにその要素については注力して強化していくべきでしょう。以下、各要素についてご紹介していきます。


 

製品やサービスの品質、価格

文字通り、製品やサービスの仕様、競合他社と比べたレベルと価格のバランスは顧客が購入にあたり、重視するポイントです。業界のなかで群を抜いた製品やサービスなのか、標準的な普及品なのかは問題ではありません。あくまで顧客が購入する理由として、挙げたポジションを意識するべきです。
たとえば、普及的なスペックだが長年使っても壊れにくいという評価なのであれば、耐久性を磨いていくことがブランドを伸長させることにおいて、メインテーマとなるでしょう。


 

デリバリー

製品やサービスの納期です。最近の自動車業界では、発注から半年待ちといったモデルも多くあります。おそらく顧客はこの点については不満を持っていても、半年待ってもそのモデルに乗りたいと考えているわけですから、少なくともデリバリーの良さは問題ではないはずです。
BtoB企業においても、その工作機械でなければ、実現したい成形ができないとなれば、多少の納期の遅さは問題にならないのかもしれません。


 

コミュニケーション

幅広い範囲でブランドホルダーは顧客とコミュニケーションを行います。広告、製品・サービスのパンフレット、梱包箱、マニュアル、SNS、ウェブサイト、メール、サービスステーションなど・・・。そのいずれの場面でも、ブランドとして一貫したメッセージを発することが必要です。
たとえば、インターネットのプロバイダが広告で「快適なネット環境を提供します」と訴求しているにもかかわらず、他社からのプロバイダ切り替えを申し込んだところ、応対した窓口が面倒そうな案内を行っていれば、顧客になろうとしている人は不信感から途中で電話を切ってしまうかもしれません。


 

サポート

人は助けてもらったことをかんたんに忘れる生き物ではありません。困ったからサポート窓口に駆け込んでいるわけですから、そこでわかりやすく丁寧に導いてもらえれば、「もしものとき」を考えると、この会社の製品やサービスを継続して使用するほうがいいと判断します。とくに使用方法が複雑な製品やサービスなら、なおさらです。

このように、顧客と接するいわゆるコンタクトポイントで、ブランドの一貫したメッセージ、印象を提供することが既存客、顧客候補に対して、大きな意味を持ちます。どの部門においても、自社のブランドがなぜ顧客から支持されているのか、これを持続し、新規客に拡大させていくためには、どういったコミュニケーションを採るべきなのかを全社で実行することが肝要です。


 

ストーリーテリング

人は感情を持つ生き物ですので、物語に強く惹かれます。
自社がなぜこの事業に参入したのか、歴史的な経緯、困難を乗り越えて培ってきたノウハウ、画期的な開発秘話などなど。それらのストーリーが現在の製品やサービスにつながっていることは、購買者が御社に信頼を寄せるのに大きな理由になります。
購買者は理念ともいうべき御社の根っこに共感し、その結果生まれた方法論を支持、考え尽くされた製品仕様に納得するという階段を駆け上げってくれるように、じっくりコンテンツを練っていきましょう。


 

デジタルプレゼンスの最適化

BtoB企業だからこそ、オンラインでの存在感を強化する必要があります。強力な営業集団を抱えるキーエンスのようなBtoB企業でない限り、かんたんに市場のあらゆる場面で存在をアピールすることは難しいのが実情です。また、購買企業の担当者も新しい購買先をネットで探すことも多くなっていますので、ネット上で存在感を増すことが非常に大切な戦略でもあるのです。
そのためには、購買担当者や技術者などが参考になるコンテンツを提供することで信頼を得たり、SEO施策を強化し、検索上位を狙う取り組みを実施していくことは、BtoB企業にとっても有益な新規営業になります。

また、自社の得意な分野について、豊富なコンテンツを揃えることは、SEO的にも有利になるとともに、その分野に顧客候補を集められるという効果も生まれます。


 

BtoB企業こそ、ブランディングに取り組むべき

2022年の中小企業庁調査によると、BtoB企業のブランドの構築、維持に向けた取り組みを行っている企業は全体の34%。B2C企業の52.5%には及ばないものの、かなりの割合でブランディングに取り組んでいることがわかります。

中小企業白書「第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組」

BtoB企業であっても、顧客の信頼を勝ち取るために、新規客開拓のために、独自性のあるブランドとして自社を訴求しようと考えているということです。一般的な印象としては、ブランデイングはBtoC企業が熱心に取り組むべきものと考えがちですが、分野が違っても顧客から支持をされることにおいては、基本的なものは変わりません。
ぜひ、一刻も早くブランディングに取り組み、自社ならではの優位性の掘り起こし、適切な訴求に取り組み、長期的な関係の構築を目指してください。

オウンドメディアで始める、ブランディング戦略

専門家としての知見を掲示すれば、オウンドメディアは成功する

オウンドメディアとは、企業が企画運営を担当する広報メディアのことであり、ウェブサイトはもちろん、ブログ、SNSなどを指します。ネット上ではユーザーにとって有意義なコンテンツが勝利するので、中小企業も大企業を凌駕することも十分にあり得ます。顧客層を拡大したい、狙ったターゲットにメッセージを伝えたいなら、すぐにでも始めるべきツールです。

当社もこのコラムのコンテンツを通じて、何社も新規顧客を獲得してきました。
顧客候補にとって、信頼を得るに足りる内容があれば、製品、サービスに対して引き合いが入ってくることを経験しているからこその考え方、方法論をお伝えしていきます。

オウンドメディアを運営するメリット

1.自社の考え方(価値観)を伝えられる

オウンドメディアを通じてコンテンツを追加していくことで、自社の価値観やストーリー、その分野に対する知見の広さ、実績などを伝えることができます。

たとえば、価値観。オウンドメディアを通じて、ダイレクトに製品・サービスの売り込みをしないほうがいい。ただし、その事業が生まれた背景、実現したい意義(価値観)を伝えることはやっておきたい。あなたの会社の価値観に共感してくれる顧客候補は、コーポレートサイトにある製品・サービスのコンテンツに興味を持ってくれるかもしれない。
その場合、次のようなステップを踏んで語っていくことをおすすめします。これは経営コンサルタントのサイモン・シネックがTEDのなかで提唱した理論で、人はWHY、HOW、WHATの順で話をすると説得されやすいというもの。

A.なぜ、その事業は生まれたのか(WHY)
B.ミッションを実現するために、どのような方法を採っているか(HOW)
C.結果生まれた製品・サービスは顧客にどのような価値をもたらすのか(WHAT)

ゴールデン・サークル理論(YouTube)


 

2.知見の広さを披露し、新規客を集める

その道の専門家集団である企業には、事業に関する幅広く深い知見が集まっています。その情報を知りたい人に向けて、ていねいに説明してあげることで、御社のステータスは上がります。しかも専門家集団ですから、いくらでも説くネタはあるはあずです。
とはいえ、オウンドメディア担当の悩みは、「何を取り上げたらいいか」でしょう。なぜ方向が定まらないか、なぜ筆が進まないのかといえば、聞きたいと考えている人に尋ねていないから。これまでの顧客とのコミュニケーションのなかで交わしたはずの話題を忘れているから。
当社のクライアントに製品サービスの説明文を求めても、興味をそそられる文面は出てこないのに、取材をするといくらでもネタを引き出せるのと同じです。ごく些細なことでもいいのです。必ずそれを求めている人はいるし、それによって御社の専門家としてのステータスは上がるのですから。


 

3.自社ならではの実績を伝え、共感を呼ぶ

たとえば、顧客との程よい距離感を大切にする接客業の場合。
店舗で日々起こる顧客とのコミュニケーションやエピソードを自社の理念に基づいたアレンジで伝えましょう。
サービス業にとって、顧客とのコミュニケーションの質は、生命線ともいうべきものであり、顧客側にも心地よいもてなしをしてくれる店を探しているセグメントが一定数存在します。この関係を取り持ってくれるのが自社運営の嘘偽りのないオウンドメディア。そのサービスを経験したいと思う顧客候補が店のドアを開いてくれるようになります。


 

4.顧客を選べるようになる

自社が得意とする分野に興味を持ってくれる顧客を開拓したいと考えているなら、その分野に関するコンテンツを深く発信していくべきです。これまで見てきたように、業界の一般的な話題ではなく、狭くても自社の得意な部分のコンテンツを発信していくことで、そこに興味を持つ顧客候補がオウンドメディアに集まります。

つまり、オウンドメディアは新規客を選別する集客装置でもあるのです。

当社であれば、ブランデイング、SEO、コピーライティング、WordPressを用いたシステム構築といった分野のコラムを数多く発信していますので、この分野に対する引き合いが集まります。WEB企画制作が主たる事業となっていますが、オウンドメディアで発信している分野を集中させているので、そうなるわけです。それでも、その戦略は成功していると考えています。それが当社の得意分野ですから、受注率も高くなります。


 

5.SEO効果も絶大

Googleは、検索結果の上位表示の条件として「検索者のためになる」こと、「スペシャリストとしての知見」を挙げています。これまで述べてきたように、自社の専門知識や実績をオウンドメディアに蓄積していけば、Googleの評価は必ず上がります。それは自社サイトへの集客へとつながり、まだ見ぬ顧客へのアプローチに強力に貢献してくれるようになります。


 

オウンドメデイアでブランディングを推進

コーポレートサイトのリニューアルを検討されている担当者で、「それならフレイバーズだ」と思ってくれる方は残念ながら一人もいません(既存のクライアントは別)。世の中の同業者も同じ状況にあります。ではなぜ、当社は生き残れているのでしょうか。

コンペで偶然気に入ってもらえた、見積もりが安かった、担当者の食い合わせが悪かった・・・

そんなはずはありません。
自社の優位性をきちんと説明し、そのポイントが担当者の望むものと合致していたからです。ブランディングで策定するブランドアイデンティティを打ち出し、コンペの要件にフィットさせてきたことが理由だと考えています。

知名度の低い中小企業であっても、ブランディング戦略に即したオウンドメディアを運営することで、自社の独自性や魅力を振り返り、伝えることができます。顧客からの共感を集め、ロイヤルティを高める。ブランディング戦略の中核に、オウンドメディアを活用することで、顧客とのコミュニケーションを強化、また顧客候補とのコミュニケーションを行うことになります。コラムやSNSを通じて、顧客との対話を行うことで、顧客のニーズや要望を把握しやすくもなります。より顧客中心のサービス提供にもつながるでしょう。

これらの結果を社内で共有すれば、社員レベルでも顧客への理解が深まることもオウンドメディアを運営するメリットのひとつです。社内外でブランディングの効果を発揮するオウンドメディアは、会社の規模を問わず活用できるツール。ぜひ、社内でも導入の検討、運営の改善を行ってください。

コラム「オウンドメディア」

中小企業のブランディング、大きなメリット5つ

中小企業の経営者

コラムの冒頭ではありますが、中小企業の経営者の方々に断言してもいい。ブランディングに取り組めば、中小企業のほうが大企業よりも効果は早く出ます。なぜかといえば、ブランディングは外向けのエクスターナル(アウター)よりも、インターナル(インナー)のほうがたいせつで、インターナルはほぼ「人を動かす」課題を多く含んでいるから。
具体的に言うと、ブランディングを進める過程で、ブランドアイデンティティやミッション、理念などを社内に浸透させようとするとき、社内を変えていかないとそれは成功しない。しかし、それをスムーズに進められないのは「人を動かす」ことが容易ではないからです。

中小企業なら、数人~百人ほどの「人を動かす」だけで済みますが、大企業となると千人~数万人規模で浸透させなければなりません。どれほどの労力、時間が必要でしょうか。さらに中小企業であれば、経営者の目の届く範囲に社員はいますが、大企業になると経営者が名前を知らない社員がほとんど。この環境下で、全社員に同じ方向を向かせるのは簡単ではないわけです。

中小企業の経営者であるあなたに、もうひとつ伝えたいことがあります。
御社にも、まだ気づいていない、言葉に落とし込めていないだけで、すでにしっかりした「ブランド」があります。それをフレームワークなどを使って、ていねいに内省し、社内の合意を得ていくプロセスがブランディング。このプロセスを経ることが、次に挙げるメリットを生むのです。

中小企業がブランディングを実施するメリット

1. 認知度の向上

ブランディングは、企業や製品の認知度を向上させるための手段でもあります。正しいブランディング戦略を持つことで、顧客は企業や製品を認識しやすくなり、購買意欲が高まります。とくに中小企業の場合、知名度を上げることは新規顧客を獲得するうえで非常に重要なポイントとなります。

星野リゾートの星野佳路社長が、まだまだ今のような規模でなかったとき、リピーターを徹底的に調査しました。なぜこの旅館に繰り返し来てくれるのか。そこには確固たる理由があるはずで、その理由が分かれば、まだ見ぬ同じ価値観を持つ顧客にも訴求すれば、新規客が増えるはずだと。
星野社長は、経営学の権威が主張する理論を徹底的に実践することで有名なので、おそらくブランディングの理論にどこかで触れられたのだと思います。その結果は、あなたもご存知のとおり。まだ中小企業だった星野リゾートが成長する源泉にもなったのです。


 

2. 競合他社との差別化

競争が激しい市場では、自社の製品やサービスを差別化することが生き残る条件です。ブランディングのプロセスで最初に行うフレームワークはクロス3C。顧客が求める購買条件のひとつを自社だけが持つ優位性で賄えるかを確認する作業(ブルー・オーシャンを見つける)です。他社も同様の優位性を持っているなら、それはレッドオーシャン。血の雨が降る海ですから、消耗戦になってしまいます。体力のない中小企業は、ここで戦ってはいけません。

ブランディングを通じて、企業は独自の優位性に基づく価値提案や個性を表現し、競合他社との差別化を図ることができるようになります。また、顧客にとっても、製品を選ぶ理由が明確になるのです。


 

3. 信頼とロイヤルティの構築

正しいブランディングは、顧客との信頼関係を築く基盤となり得ます。企業が一貫したメッセージや価値観を伝えることで、顧客は安心し、継続的な購買や応援をしてくれるようになります。もちろん、つまみ食いはするかもしれませんが、結局あなたの会社で得ていた満足感を消し去ることはできず、再度顧客として戻ってくるようになります。

ブランディングは、LTV(顧客生涯価値)を多く生み出してくれる顧客が多く現れる可能性を秘めています。言い換えれば、自社を長く継続させるための施策とも言えるのです。


 

4. 成長と展開の支援

あなたは融資を受ける際、金融機関の担当者に自社の強みを胸を張って語っているでしょうか。金融庁は、中小企業への融資について、現状だけを見るのではなく、将来性も含めて勘案するように通達を出しています。
ブランディングを行うことにより、自社の優位性、自社を端的に表現することができるようになり、金融機関の担当者の記憶にも残りやすくなるでしょう。

ブランディングは、企業の成長や発展をサポートする重要な施策。正しいブランディングを推進する企業は、新しい市場や顧客層に訴求しやすくなるのです。


 

5. 社員が考えはじめる社風をつくるきっかけに

フレイバーズがコンサルティングするブランディングは、プロジェクトチームを導きますが、決して答えを教えることはしません。すべてのプロセスでプロジェクトメンバーは、悩み、考え、ときに言い合いをしながら、自ら答えを導き出していきます。

中小企業にありがちなのは、トップの指示を実行するだけになってしまっている組織。経営者であれば、自走してくれる組織に変革しないと、社長が本来やるべき仕事がいつまでたってもできない事態に陥ってしまいます。ブランディングを実行することで得られる副産物として大きいのは、社員が自ら考え動く経験ができることと、視座を高く持てるようになること。
ブランディングは、通常の業務では果たせない社員教育にも寄与してくれるのです。

インターナルブランディングの進め方

中小企業が輝く存在であるために

日本の全労働人口の70%を占める中小企業。日本にとって、この大きな存在である中小企業が元気で輝いていないと、この国の将来は危ういものになってしまいます。
これまでみてきたように、ブランディングは中小企業にとって厳しい市場で成功するために欠かせない要素であり、十分に検討する価値がある施策です。経営者は、今だけを見るのではなく、20年後この会社をどうしたいかを考えるのがほんとうの仕事。今いる社員のために、ぜひブランディングの導入をご検討ください。

中小企業庁「中小企業白書」:第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組

社内ブランディングを行うメリットと注意すべきポイント4つ

同じ方向で考えられる社員を育てるのが社内ブランディング

社内ブランディング(インナーブランディング、インターナルブランディング)とは、社内に向けて自社のブランドや理念、ビジョンなどを伝える活動のことで、社員のエンゲージメントや生産性、ブランドイメージを向上させるための活動こと。社内における一体感(全社が同じ目標を持ち、理想の姿の達成に向けて各担当業務を実行)の創出、社員のロイヤリティ向上、競合他社との差別化戦略を実現するために行います。

社内ブランディングの実施は社外向けのブランディングとは異なり、対象が社員(人)となるため、難しい面も多々出てきます。しかし、これを実現しない限り社外向けのブランディングが成功するわけはなく、ブランディングにおいて最も注力すべきことだといえます。

社内ブランディングのプロセス

冒頭で述べたように、社内ブランディングの対象は社員。つまり、自社の社員といえども「人」を動かすことになるので、高圧的に指示を出しても上手くいくことはありません。ステップを踏みながら、実行する雰囲気を醸成することが肝要ともいえます。
社内ブランディングを実行する初期の段階から、社員を巻き込みながら自ら考えていく環境を作っていくことがその後の浸透スピードを左右することになります。

1. 自社の現状を把握する

まず自社の強みや弱み、市場でのポジション、社員の満足度やエンゲージメントなどを調査し、自社の現状を把握します。社内外のステークホルダーからのフィードバックや、社内のデータ分析などを活用して、客観的な情報を収集できれば、その後の方向修正が少なくて済みます。

2. 浸透させるべき企業理念やビジョンの検討

次に、自社が目指すべき理想の姿を言語化して明確にします。この段階では、経営理念やビジョン、ミッション、バリューなどを定義し、社員に伝えたいメッセージを整理します。
また、自社のブランドアイデンティティやブランドパーソナリティなどを設定し、自社の特長や個性、風土などを表現します。

3. 具体的な施策を決定する

目標となる理想の姿を実現するために、どのような施策を実施するかを決定します。社員の理解や共感を得るためのコミュニケーション手法やツールを検討し、実行可能なアクションプランを作成します。
また、施策の効果を測定するためのKPIや評価指標を設定し、定期的にモニタリングやフィードバックを行っていきます。

4. 実行・評価・改善を繰り返す

決定した施策を実行し、その効果や反響を評価し、改善を継続していきます。社内報やイントラネット、社内SNSなどのメディアを活用して、経営理念やビジョンなどを社員に伝えます。社内イベントやワークショップなどを開催して、社員の参加や対話を促すことも併せて行いましょう。

社内ブランディングは、一過性の取り組みではなく、繰り返し繰り返し永遠に実施していかねばならない
ものです。社員のニーズや市場の変化に応じて、社内ブランディングの内容や方法を見直し、改善していくことも出てくるはずです。

社内ブランディングと社外ブランディングの違い

対象

社外向けのブランディング(アウターブランディング、エクスターナルブランディング)は、顧客や消費者など、自社の外にいる人たちに向けて行うブランディング。これに対し、社内ブランディング(インナーブランディング、インターナルブランディング)は、社員やパートナーなど、自社の内部にいる人たちに向けて行うブランディングです。

目的

社外向けのブランディングでは、自社のイメージや魅力を伝えることにより、競合他社との差別化やファンの獲得、売上の増加などを目指します。社内向けのブランディングは、企業の理念やビジョン、価値観を伝えることで、社員のエンゲージメントや生産性、ブランドイメージの向上などを目指します。

手法

社外向けのブランディングでは、ロゴやキャッチコピー、広告、PRといった自社の外に向けてアピールするツールを創造し、浸透させていきます。社内向けでは、社内報や社内ポータルサイト、社内イベント、ワークショップなど、社員とのコミュニケーションに重きをおき、深めることを目的とします。

社内ブランディングのメリット

社内の一体感創出

社内ブランディングによって、社員が自社のビジョンや価値観を共有し、それを自らの行動や考え方に反映させることで、社内に一体感が生まれていきます。これは社員のモチベーションや働きがいを向上させ、組織としての協働や団結が促進することにつながります。

従業員ロイヤリティの向上

社内ブランディングによって、社員が企業に対してたくましい忠誠心を持つように。ロイヤリティの高い社員は、自発的に企業のために最善を尽くし、自社がめざす理想の姿を実現するべく、顧客満足度の向上に直結するようなサービスの提供を心がけます。
また、社員が企業に誇りを持つことになるので、その姿勢が顧客にも伝わり、ブランドイメージの向上にも寄与します。

競合他社との差別化につながる

社内ブランディングによって、社員が自社の製品やサービスを積極的に支持し、外部の人々に推奨することができます。これによって、社員自身が強力なマーケティングツールとなるため、広告やプロモーションに費やすコストを削減しながらも、効果的なブランディングを実現することが可能になります。

社内ブランディングを実施する際の注意点

意外なことかもしれませんが、社内ブランディングでは、社員の価値観や感情を尊重する姿勢が大切です。社員という一人の人間を動かすためには、ていねいなコミュニケーションが成果を左右します。逆に、抵抗勢力(現状維持派)は一定期間放置することも考えてください。徹底的に無視するわけではなく。社内が変わりはじめ、ざわついてくると、抵抗勢力も置き去りになるのは嫌なので、気になってくるものです。その機を見計らって賛同者に変化させます。

社内ブランディングは、一過性の取り組みではありません。継続的に行うことで目的を超えていけるようになります。社内ブランディングの効果や反響を定期的に測りながら、フィードバックや改善案を検討し実践することで、施策の効果を高めていきます。

くわえて、社内外のブランドメッセージは統一しておきます。社内で伝えているメッセージと社外で発信するメッセージが矛盾していては社員の混乱、不信を招くことになります。

ブランディングが失敗に終わる理由とは?

リブランドは、顧客との約束

ブランディングとは、企業や商品、サービスの特長や価値を顧客にわかりやすく伝えることで、認知度や好感度を高めていく活動。「売れ続けるしくみ」を創ることと言ってもいいものです。ただ、ブランディングには推進の方法によっては効果が出ないこともあります。
経営陣の大きな期待を背負って始めた活動であるにもかかわらず、労力と費用をかけた割には思い描いた効果が出ない。広告代理店や制作プロダクションが口を開けば「ブランディング」と言いはじめる時代になったのに、失敗も数知れず・・・。

本コラムでは、ブランディングの失敗例やその原因、対策を紹介することで、これからブランディングを始めようとする企業に、成功に近づいてもらおうという意図でお伝えしていきます。

ブランディングの落とし穴

市場調査や分析、クリエイティブにいたるまで、多くの労力をかけたのに失敗するブランディング。活動が上手くいかないポイントとしては、以下のようなものがあります。

ブランドのメッセージが一貫していない

社内にブランドメッセージが周知されておらず、担当者によって顧客への伝え方、行動が異なる場合。同じ商品でも、国や地域によって、ブランディング活動によって得た結果とはニュアンスが異なってしまっていて、顧客を混乱させるばかりか、不信を招いてしまう。

インターナル(社内)ブランディングができていないことによるものです。ブランディングといえども、最後は社員一人ひとりが媒体となって社外にメッセージを伝えていくことになります。社内の体制が構築できていなければ、外向けの活動も上手くはいきません。

ブランドのメッセージが時代に合わない

SDGsの考えが浸透しはじめているなかで、男女を分けてしまうような採用活動をしたり。そういう社員を経営陣が望んでいるからといって、モーレツに働く先輩社員の姿を伝えたり。Z世代から反発を受けるのは容易に想像できますね。

ブランドのメッセージが顧客のニーズに応えない

ひと時代前の家電製品は、ひとつまえのモデルより機能をひとつ加えて販売価格を維持する製品開発が主流でした。そうするとたくさんのボタンが並んだリモコンが生まれ、一回も使われずに寿命を終えるといったことに。売上を上げる、維持するための製品開発なので、顧客のニーズなどとは無縁なのです。

前項の時代に合わないメッセージも同じで、綿密な市場調査を行わず、ブランドホルダー側の身勝手な思い込みが強すぎると、このような結果となってしまいます。

ブランディング失敗の原因と対策

ブランディングの失敗は、いくつかの原因に集約されます。進め方の問題、組織(=人)の問題、知識(=方法論)の問題、社内浸透に関する不徹底の問題などです。

進め方の問題

社内だけでブランディングを進めようとすると、とくに市場分析などの場面で社内の至らない点が数多く挙げられる「グチ大会」に陥り、やっぱりウチはだめだ・・・ということになりがちです。中小企業に多く見られる傾向ですが、今まで生き残ってこられたのには顧客側から意味のある理由があるからです。
会社に対するリスペクトをベースに社外のナビゲーターが導くと、逆に「うちも案外いい会社なのかも」とプロジェクトメンバーが思い直す場面も出てきます。

組織(=人)の問題

ブランディングした結果を社内に浸透させようとすると、必ず人の問題が出てきます。インターナル(社内)ブランディングは、人の問題と言い切っても差し支えないほどです。
この大きな壁をどう乗り越えるかがブランディングを成功に導くかどうかの分岐点ともいえます。この障壁を取り除かなければ、冒頭でお話したような部門、地域によって、人によってブランドメッセージの伝わり方に差が出ることとなります。

知識(=方法論)の問題

ブランデイングに関するそもそもの知識が不足していることによる失敗があります。ブランディングは市場における自社のステータスやターゲット顧客、社風などを絡めて、独自のポジショニングを行っていくプロセスです。これに加えて理想の姿とのギャップを埋めていく作業も含まれます。
こういった各プロセスにおける調査、分析の仕方やまとめ方、経験などが社内だけでは決定的に不足しています。

改善活動をしない

多くの難解なプロセスを経たからといって、必ず正解を導き出しているわけではありません。ブランディングによるクリエイティブがターゲット顧客と上手くコミュニケーションできていないのであれば、調整が必要です。
ターゲット顧客に伝わらない=ブランディングの失敗なわけですから、できるだけスピーディに調査を行い、改善を進めていきたいところです。

ブランディングを失敗させないために

ブランディングが成功するか失敗してしまうかにフォーカスすると、テクニック的な議論になってしまうかもしれません。それより、ブランディングを行うことによって、得られる未来を思い描くことに重きをおいたほうが推進力は生まれるのではないかと感じています。

ブランディングは自社の足元(理念やパーパス、社風をはじめとする各種リソース)を分析することから始め、競合他社との関係性、ターゲット顧客の絞り込みを行うことにより、自社独自のポジションを確立することです。しかしそれだけでは、理想の未来とのギャップが大きすぎて、いつになったら理想に近づけるのかわからない・・・という状況を生むので、中期計画などを立案し、そのギャプをどうやって埋めていくかを行うことが必須なのです。

もしかすると、ブランディングの失敗は、まだ道半ばなだけなのかもしれません。いまいちどこれまでのプロセスを顧みて、自社がどこにいるのかを確認してみることも必要でしょう。

リブランディングとは?その意味と具体例

リブランドは、顧客との約束

リブランディングとは、企業や製品が新たなアイデンティティを構築し、市場において競争優位性を確立する手法のこと。企業が長期的に成功するために必要な戦略のひとつといえます。
リブランディングにおいて成功するためには、市場調査と顧客の理解が不可欠。自社ブランドの本質的な価値を強調し、それを視覚的にわかりやすく伝えるデザインやコミュニケーション戦略を推進することを実施することもリブランディングを推進するうえでは、重要な要素です。

顧客の理解を深めるために

市場調査と分析
顧客のニーズや嗜好を理解するために、しっかりとした市場調査が必要です。競合分析やトレンドの把握も併せておこなってください。

顧客インタビューやフィードバック
顧客と直接対話し、意見を収集することで、彼らの期待や要求をより具体的に把握できます。

データ分析
ウェブやSNSの分析を通じて、顧客の行動パターンや好みを把握しましょう。

ペルソナの作成
代表的な顧客像であるペルソナを作成し、そのペルソナに基づいてブランド戦略を構築します。

社会文化の理解
顧客が生活する社会や文化を理解することで、彼らの価値観や行動に対する深い洞察が得られます。

これらの調査、分析を行うとともに、継続的に顧客の変化を注視していくことを行います。

ブランドの本質的な価値を事例で紹介

ブランドの本質的な価値は、そのブランドが提供する独自のメリットや特長を示しており、顧客がまさに望む価値をその企業でしか満足させられない方法で提供することです。

信頼性と品質
トヨタは「信頼性と耐久性」を強調し、高品質で信頼性のある自動車を提供しています。データ偽装などの問題により、この信頼性は揺らぐことになるが、従来はこれにより、顧客は安心してトヨタの製品を選択できるのです。

創造性とイノベーション
アップルはデザインと革新性に焦点を当てながら、顧客に最新のテクノロジーと洗練された製品を提供し続けています。これにより、顧客にとってアップルは「先進的でスタイリッシュなテクノロジー」の象徴となっています。

社会的責任と持続可能性
パタゴニアは環境への取り組みや社会的な責任を重視。サステナビリティに焦点を当てています。顧客はパタゴニアの製品を購入することで、環境に配慮した選択をしていると自身の選択に誇りさえ感じるのです。

カスタマーエクスペリエンス
ネスプレッソは高品質なコーヒー体験を提供。顧客が簡単ながらも贅沢な方法でコーヒーを楽しむことを可能にしています。ブランドの本質的な価値は、上質なカフェ体験を提供することにあります。

これらの例は、それぞれ異なる本質的な価値を示していますが、共通しているのは顧客に独自かつ魅力的な価値を提供しているということです。

リブランディングは、顧客と新しい約束を結ぶこと

ブランドホルダーがリブランディングにおいて、もっとも重視すべきは顧客にどのような体験を約束するかということ。さらにそれが競合他社が秀でていない価値で実施できるということ。顧客はその本質的な価値に触れることで、その選択に誇りを持ち、間違っていないと確信できることがたいせつなのです。

ブランディングに対する勘違い:デザインだけを変えても意味はない

ブランドは、事業活動そのもの

あなたは、ブランディング=かっこいいキャッチコピーやデザイン、という勘違いをしていないでしょうか?もしそうだとすれば、それは会社にとってもマイナスな状態。この機会にブランディングがほんとうに機能する考え方を理解して、あなたの会社のブランドを理想のかたちにしていきましょう。

世のなかで目にするブランドメッセージは、それぞれたしかにかっこいい。けれど、ああなりたいと、見た目やイメージだけに偏ってしまうのは非常に危険。なぜなら、いくら社外向けに華やかなスローガンを打ち出しても、ブランドを体現している社内の人たちがそれを意識していなければ、ただの絵空ごとになってしまうから。
ニュースで世間を騒がす偽装事件などは、それが空回りしてしまった悪い例の最たるものです。

今回は、ブランディングとは一体どういうことなのか、ブランディングを進めるうえで忘れてはいけないこと、勘違いしてはいけないことについてご紹介します。

ブランド価値を下げてしまうのは、つねに「人」

「信頼できる商品だと思っていたのに」「ずっと使ってきたのに、もう買わない」
せっかくのユーザーをがっかりさせてしまう事件が、後を絶ちません。なぜ、そんなことが起きてしまうのでしょう?

わたしたちブランディングの専門家からすると、企業が常に大切にすべきブランド(=提供する製品・サービスの真の価値。お客さまとの約束でもある)を認識できていないから。
たとえば、ブランドアイデンティティとして「安全な車社会を・・・」を掲げている企業。TV-CMでは家族みんながニコニコと車で出かけるシーンが映し出されているのに、ある日「安全評価基準の結果を偽装していた」というニュースが流れて、ブランドを信じてファミリーカーに選んだユーザーはがっかりどころか憤慨することになってしまうでしょう。

そのような不正が起こってしまうのは、関係者たちが「社内の目標納期に間に合わせるために、評価テストにパスすること」が第一優先になってしまっていたから。そこにお客様の姿はありません。本当なら、第一優先はブランドアイデンティティで掲げている「安全な車社会を・・・」のために「安全な車をつくる」であるはずなのに。
それはすなわち、ブランディングが機能していない、ということを意味します。

変わらない真実。ブランドの価値をおとしめてしまうのは、必ず「人」です。思っていたより、サービスが低くてがっかりするのも、梱包がおおざっぱで運ばれた商品が壊れていたのも、データを偽装して製品の品質がカタログデータに満たないのも、すべて「人」がやっているのです。
このようにブランド価値が下がっている状態のことを、ブランディングでは「ブランドマイナス」と呼んでいます。

なぜ、ブランドマイナスの原因は人なのか?

では、なぜ原因はいつも「人」なのか?
答えは、ブランドを守り支えているのが「人」だから。世のなかのほぼすべてのビジネスは、人が関わっています。
接客業はもちろんのこと、メーカーでいくら機械化が進んでもコントロールするのは人。オンラインショップでもサイトを運営したり商品を発送するのも人です。
そのうちに、100%がAIというビジネスも出てくるかもしれませんが、今のところはあり得ないでしょう。
とにかく、ブランドを実際に動かしているのが「人」である以上、関係者一人ひとりがブランドをどのように捉えて行動するかによって、ブランドマイナスにもブランドプラスにもなり得る。
ブランディングという言葉は、マーケティングの手法のひとつだと捉えられている風潮があるけれど、ブランドってそんなに薄っぺらいものではないのです。

本当のブランディングって何?

それなら、ブランディングでやるべきことは何なのか?
ここまでご紹介したとおり、おしゃれなロゴマークやスローガンを作ることではないことは、おわかりいただけたと思います。外向けへの刺激として、広告表現はもちろん外せないものではありますが、もしあなたの会社のブランディングがそれだけにとどまっているとしたら、そのブランディングは間違いなく失敗に終わります。

ブランディングでもっとも大切なことは、あなたの会社が顧客から支持されているほんとうの理由を見つけ出すこと。競合他社にはない優位性を再認識し、それをより強くできるよう磨いていくことです。さらに、思い描いた理想のかたちとのギャップを将来に向けてどうやって埋めていくかを考えていく作業を怠らないこと。

これらをやってはじめて、ブランディングは機能するのです。

なぜ、ブランディングの勘違いは起きる?

ここは、はっきりと言わせてもらいましょう。
勘違いが起きる原因は、ブランディングの本質を理解していない広告代理店や制作会社が多く存在するからです。
ブランディングのスタート地点で、軽いヒアリングだけを終えて、今までと違うテイストのロゴデザインやキャッチコピー提案から始めようとするなら、そのプロダクションとのお付き合いはお断りするべきです。

彼らがなぜブランディングのプロセスを経ないでそのような提案をしてくるかというと、制作でしか料金を請求しようと考えていないから。早く売り上げを上げたいから、流行りのブランディングという言葉をネタに、制作物を収めようとしているだけなのです。

本当にブランディングという概念を理解しているなら、まずは今あるブランド価値を見つける作業をおこなってから、その価値を反映できるアウトプット手法を考えるはずです。
その背景には、ブランディングという概念がまだ浸透していないことがあるのかもしれませんが、ブランディングの勘違いが大手を振って歩いているように思います。

それと同時に、ブランディングの勘違いについて、今まで大きな声で批判をしてこなかった私たちを含めたブランディングを行っている者の力不足も反省すべきだと感じています。

正しくブランディングしよう

ブランディングは、手間はかかるけれどていねいに実施すれば、あなたの会社の魅力を引き出し、競合他社との差別化に寄与することはもちろん、長く売れ続けるしくみをつくってくれる武器になります。
さらには、社内の風土改革にも確実に貢献してくれる強い味方でもあります。
まずはブランディングに対する理解を深めるために、評価の高い書籍を一冊読み進めましょう。それでも、はっきりわからない・・・という方は①とにかく本通りに自力で進めてみる、②外部の力を借りて、ナビゲートしてもらうのがいいと思います。

アメリカの起業家、マイケル・マスターソンが言っています。
構え!撃て!狙え!
そう。狙いを定める前に、まず撃ってみる。ブランディングも実行あるのみです。

ビギナー向け、ブランドアイデンティティ策定の進め方と注意点

プロジェクトチームがブランディングを進める

ブランドアイデンティティとは、ブランドの本質的な価値を分かりやすい言葉にまとめたもの。ブランドアイデンティティを明確にすることは、ブランドに関わるすべての人に共通認識をもたらします。その結果、ブランドを守り育てる人たちが同じゴールを目指せるようになり、ブランディングの成果も高くなります。

「それなら、作らない手はない。しかし、難しそうだ」という方のために、ブランドアイデンティティ策定のフレームワークとその進め方をご紹介します。外してはいけないポイントや迷ったときの対処方法も参考にしてください。

ブランドアイデンティティ策定の道のり、策定後の活動

進め方をご紹介する前に、ブランディングという活動のなかでブランドアイデンティティがどのような位置づけにあるかを把握しておきましょう。その存在感の大きさを知ることでプロジェクトメンバーの熱意もきっと変わってくるはずです。

ブランディングには8つのステップ(ブランドマネージャー認定協会が推奨)があります。
それを大きく2つに分けると、ブランドの価値を明確化するプロセスと、その価値を伝えていくプロセス。そのちょうど中間点に位置するのがブランドアイデンティティです。ブランド価値というのは、今までの自分たちの歩みのなかに必ず存在するもの。それがあるからこそ顧客から受け入れられてきたわけで、その価値を振り返り再発見することで、ブランドアイデンティティの輪郭がはっきりとしてきます。

そして、自分たちが大切にしてきたブランドの価値を明確化し、それをみんなで共有できる言葉に表す(ブランドアイデンティティ策定)ことができれば、そこからブランディングの活動は大きく加速し始めます。なぜなら、ブランドに関わるすべての人が同じ目標をもって動くことができるから。
それは、今まで個人がそれぞれの心のなかでぼんやりと抱いていたイメージが共通化され、目指すべきゴールに焦点があう瞬間。各人が納得できる言葉にすることで「そうそう、それだ」とチームに連帯感が生まれ、何かが始まりそうな予感さえしてくる。それがブランドアイデンティティ策定の醍醐味なのです。

ブランディング8つのステップ

  1. クロス3C分析(自社の振り返りと強み分析)
  2. セグメンテーション(狙うべき市場を見つける)
  3. ターゲティング(訴求する相手を決める)
  4. ポジショニング(自社が支持される理由を明確化)
  5. ブランドアイデンティティ策定
  6. 具体化(4P/4C分析)
  7. 刺激の設計(ブランド要素とブランド体験)
  8. 目標設定


ブランディングの全体像

1.自社の振り返りと強み分析(クロス3C分析)

ブランディングの全体像がわかったところで、いよいよブランドアイデンティティ策定のための4つのステップをご紹介していきます。

最初のステップは「自社独自の強み」を見つけるということ。競合他社にはなくて、自社だけがお客様の要望や不安に応えられているポイントについて、客観的かつ徹底的に分析することです。
「そんなものはないのでは?」と心配になったあなた、そんなことはありません。意識できていないだけで必ず存在しています。その強みがあるからこそ、今まで会社は存続し、顧客に受け入れられてきたのです。自社や自社が提供している製品・サービスについて、しっかりと振り返ってみてください。

そこで有効な方法となるのが、マーケティングツールの一つ「クロス3C分析」です。クロス3C分析とは、外部環境(競合他社)、内部環境(自社)、顧客環境の3つの要素を分析することで、自社のポジションや競争力を明確にするためのフレームワークです。
これら3つの要素を交差させることで、競合他社が持ち合わせていなくて、自社だけがもつ強みで、なおかつ顧客が求めているもの(=ブルーオーシャン)を見つけ出すことが目的です。

クロス3C分析の各要素とは

・外部環境 (競合他社の強みと弱み)

一般的に「外部環境」とは、自社が直接コントロールはできないが、業績や戦略に大きな影響を及ぼす要因(たとえば、市場の動向や、競合他社の行動、政治経済や技術のトレンドなど)を意味します。しかし、ブランディングにおけるクロス3C分析では、外部環境=競合他社の強みと弱みに絞り込む方が考えやすいでしょう。

・内部環境 (自社の強みと弱み)

内部環境は、自社が直接的にコントロールできる要因を意味します。自社の能力、組織文化、ブランド価値、製品やサービスの特長、従業員のスキルなどが含まれます。内部環境を分析して、自社の強みや弱みを洗い出し、競争優位性を保つためのポイントを把握します。

・顧客環境 (顧客の要望、不安、不満など)

顧客が望んでいることや行動パターン、購買動機、不安や不満など「不」がつく要素を洗い出します。この段階では、まだターゲットとする市場もぼんやりしているかもしれませんが、まずは思いつくままに書き出してみましょう。

クロス3C分析で気をつけたいポイント

・自社の弱みは考えなくてよい

内部環境(自社)について分析するとき、どうしても強みよりも弱みが出てきやすいもの。集められたメンバーがまじめなほど、その傾向は強くなるのかもしれません。ただ、自社や自社製品の弱点に目をむけても、社内のグチ大会になってしまったり本来の強みに目が向かなくなる恐れも。
だから、強みや良いところにフォーカスしてください。もし、出てこなくても、周囲の人たちに聞く、第三者やネットの声を見てみるなど、できるだけ客観的な視点を大切に探してみてください。

・ブルーオーシャンが見つからなくても気にしない

クロス3C分析の結論であるブルーオーシャン(顧客の要望に対して、競合にはなく、自社だけが応えられる強み)が見つからないというケースも、最初の段階ではよくあることです。どうもしっくりくる答えが出ない、競合他社の方が強みが多いかも・・・。
でも、落ち込まないで!ゆったり構えてください。いま会社が存在するということは、それだけ顧客を惹きつける理由があるからです。どうしても答えが見つからないなら、急がずそのまま放置してもOKです。
次のステップを進めていくうちに、必ず見えてくるので慌てる必要はありません。

・自社の強みが競合他社にも当てはまっていないか?

自社だけでなく競合他社も得意としていることなら、それは独自の強みとは言えません。それが顧客が望んでいることだとしたら、それはまさにレッドオーシャン。そこでは戦ってはいけないポイントになります。

・顧客の視点で考えること

自社の特長や優位性を見極める際に欠かせないのは、お客さまの視点に立つこと。実はこれが一番むずかしいポイントです。日常的にお客さまと接することの多い方は別として、間接部門の方にはなかなかイメージしにくいものです。
いったん、頭のなかを真っ白な状態にして、徹底的にお客さまの立場から自社や競合を分析してみることです。

2.セグメンテーション(Segmentation):狙うべき市場を見つける

自社の強みが見えてきたら、ここからはSTP分析の段階。
S:市場の細分化(セグメンテーション)、T:ターゲット層の抽出(ターゲティング)、P:競合との差別化(ポジショニング)の頭文字をとった言葉で、事業戦略やマーケティング戦略で使われるフレームワークのこと。フィリップ・コトラーが提唱した概念です。

STP分析のうち、まずは狙うべき市場(セグメンテーション)を見つけ出す作業です。セグメントとは市場を分けることであり、お客様をどう分類するかを考えること。たとえば、市場全体を年齢や性別、ライフスタイル、興味関心などいくつかの軸を決めてセグメントすることで、自社が狙うべき市場が見えてきます。

セグメンテーションで気をつけたいポイント

・もう一歩、細分化してみる

「市場を分けるといわれても、最初はピンとこない」という人がほとんど。ありがちな迷いとして、セグメンテーションをしたものの市場がぼんやりしている、ということ。

たとえば、自然食品を販売しているブランドがあるとします。その市場を「健康志向が高い人」と「30~40代女性」という2つの軸で分類しました。
自分たちが狙うべき市場は見えてきたものの、なんだかまだぼんやりしている。市場の絞り込みが広すぎると、ターゲットとする顧客の顔が浮かんでこない=どんな生活スタイルで、どんな悩みがあって、どんなことに興味があるのかがイメージできないままになってしまいます。
そんなぼんやり感があるときは、もう一歩踏み込んでみる。アレルギーをもつ子どもに悩んでいるママ、キャリア志向で忙しいだけに体調をくずしがちな女性、などと、もう一歩具体性をもたせることで、ターゲット層の顔を思い浮かべやすくなるのです。

ただし、細分化といっても、あまり絞り込みすぎるのも危険。その結果、マーケットが小さくなりすぎる可能性もあるのでバランスを考えながら軸を見つけていきましょう。

・既存の枠組みにとらわれない

セグメンテーションの成功事例として、ホンダの「スーパーカブ」があります。1959年、ホンダがアメリカ市場へ進出する際にとった有名な戦略。
当時のアメリカでは、ハーレーダビッドソンが約8割のシェアを誇っていたなかで、ホンダが選んだ軸の一つは「バイクに乗らない人」でした。ハーレーのようなワイルドなバイクでブンブンやりたい人ではなく、今はバイクを持っていないけれど日常の便利な足としてバイクを必要とする人。
この狙いは市場ニーズにぴったりはまり、その後ホンダは大きなシェアを獲得することになるのです。

既存のターゲット層ももちろん大切ですが、それ以外に見つけられていない市場やきっかけはないか?そんな視点でとらえてみることも必要です。

・BtoBとBtoCでは軸の取り方が異なる

BtoCの市場に関しては、比較的セグメンテーションしやすいかもしれません。年齢や性別、ライフスタイルといった軸が当てはまりやすいのですが、BtoBの場合は異なる視点が必要です。
主な例としては、業種や産業分野、企業の規模、地理的な位置、ニーズや課題、社風、購買プロセス(意思決定段階など)などが挙げられます。

3.ターゲティング(Targeting): 訴求する相手を決める

市場を細分化できたら、そのセグメントに属する具体的なユーザー層を調べます。顧客の詳細な特性や好みを具体的に思い描くと、ターゲットに合った施策が打ちやすくなるので、戦術もより具体的になり、成功する確率も飛躍的に高まります。

ターゲティングで気をつけたいポイント

・情報収集はしっかりと行う

ここで大切なのは、想像の範囲でターゲット層を決めないこと。社内外からの情報収集はしっかりと行ったうえで、事実にもとづいて組み立てていきましょう。

・市場規模がある程度見込めること

釣り糸を垂らすときは、それなりの数の魚が泳いでいる釣り堀をさがすこと。あまりにもニッチな市場をえらぶと、マーケティングにかけるコストに見合わないという可能性も。かならず市場規模の有効性、市場の将来性を把握したうえでターゲティングを行ってください。

4.ポジショニング(Positioning): 競合との差異化(自社が指示される理由)を明確にする

これまでの経緯をおさらいすると、自社の強みを明確化して、それを訴求すべき市場を定めて、訴求する相手を確認してきました。最後にもうひとつ大切な要素が、誰とどのように戦うのか。お客さまが競合他社と自社を比較したときに、「〇〇だから買いたい」と思ってもらえる基準をはっきりさせることです。

そのためには、まずお客様が購買する理由(Key Buying Factor:KBF)をリストアップします。思いつく理由をいくつでもよいので書き出してみてください。
リストアップができたら、それをカテゴリー分けしてみる。それによって競合他社との差異化を示す軸が見えてきます。
2つの軸をとり、そのマップ上で競合他社2~3社と自社の位置づけを確認することができます(ポジショニングマップ)。

ポジショニングで気をつけたいポイント

・顧客視点で考える

ポジショニングにおいてもっとも大切なことは、お客様の視点で考えること。いつも熱心に仕事に取り組んでいる人ほど自社視点になってしまいがちなので、頭の切り替えが必要かもしれません。
どうしてもイメージできないというときは、実際の売り場に身を置いてみる。ネットなどで顧客のリアルな声をさがす。営業担当者などいつもお客さまと接している人の意見を聞いてみるなど、立場を切り替えるスイッチが必要です。

・競合他社を明確に意識する

当たり前ながら、具体的な会社名をあげて、できるだけ具体的に比較をすることが大切です。競合が分からない場合でも、今の時代、ChatGPTなどいろいろ手を尽くせば何か情報収集はできるはず。ここは踏ん張って、ていねいに進めていきたいところです。

5.ブランドアイデンティティの策定

これまでの4つのステップを振り返りながら、いよいよ自社の強みや差別化ポイントをもとに、ブランドアイデンティティを策定します。
ただ、このプロセスまでくると、プロジェクトメンバーの頭の中にはいくつかのキーワードが浮かんでいるはずです。
逆に、まだぼんやりしている状態なら、これまでのプロセスが消化不良になっているということ。明確になっていないポイントに立ち返り、再考してみてください。

ブランドアイデンティティとは、お客さまに対する約束。ブランドがどれだけ有益な価値を提供し、どのような体験を約束するかを伝えるものです。
伝えたい想いをライティングによって整えていくことになりますが、その際にもお客さまの視点を常に意識するようにしましょう。

ブランドアイデンティティ策定のプロセスが、ブランディングの成果を左右する

自社ブランドが市場で優位性を保つためには、ご紹介したマーケティングのレームワークによって導き出した、ブランドアイデンティティを掲げることが不可欠であることが理解いただけたでしょうか。
そのなかでも重要なのは、メンバーみんなで段階を踏みながら進めていくプロセスそのもの。一人ひとりが頭で汗をかき、ときには意見がぶつかったり前段階に戻ったりしながらも、自社ブランドについて考え抜くことが大切です。そんな時間の経過があってこそ、みんなが納得できるし、ブランドの魅力を再確認できるのです。

ブランディングプロジェクトのメンバーには、次のステップとして、自分たちが導き出したブランドアイデンティティを社内の他のメンバーに伝えていくという大きな役割が待っています。ときには、熱量の異なる人や違う意見をもった人を説得しなければいけない場面もあるでしょう。そのためにも、まずは自分たち主要メンバーの気持ちを一つにしておく必要があります。悩んだり凹んだりという場面があるのは当然のプロセスと受け止め、あきらめずに前へ進んでください。
あなたは自社ブランドの未来を背負っていくという、とてつもなく価値のある仕事をまかされているのですから。