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インナーブランディングとアウターブランディング、どちらが先?順番の正解と失敗しない進め方

 

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

本記事で分かること

インナーブランディングとアウターブランディング、どちらを先に進めるべきか。この問いに対し、本記事では順序の基本原則と、実務での判断基準をわかりやすく解説します。
中小・中堅企業の採用現場で起きがちな「順番ミス」の実例を交えながら、社内の空気づくりがいかにブランドの核となるかを提示。インナーとアウターの違い、順序の判断軸、そして取り組みを始めるための具体的な第一歩まで、実践的に学べます。

インナーとアウター、どっちからやるべき?という迷い

「ブランドを整えたい」「発信を強化したい」―そう考えたとき、必ず出てくるのがこの問いです。

インナーブランディングとアウターブランディング、どちらを先にやるべきか?

多くの企業が、まずアウター(=外向けの発信)に手をつけがちです。
でも、インナー(=社員や社内の共通認識)を置き去りにしたまま発信すると、逆効果になることも。

たとえば、
「あなたのために精一杯働きます」と広告でうたっているお店に入ったら、店員の態度がつっけんどんだった。そんな経験はありませんか?

外で語っていることと、中で実際に起きていることにズレがあると、ブランドへの信頼は一気に冷めてしまいます。

この記事では、

  • 「インナーとアウター、どちらを先にやるべきか」
  • 「順番を誤ると何が起きるのか」
  • 「中小・中堅企業が取るべき、現実的な進め方」

を実例を交えて解説。採用、社内の空気、発信力―すべては「順番」から変わり始めます。

インナーブランディングとアウターブランディングの違いとは?役割と目的を整理

「インナーが社内向けで、アウターが社外向け」
それだけで済ませてしまう説明もありますが、実際はもっと「目的」と「使いどころ」が違います。

 

■ インナーブランディングとは?

社員一人ひとりが、会社やブランドの「らしさ」を理解し、納得し、自分ごととして体現できる状態をつくること。

  • 何をたいせつにしている会社なのか
  • なぜそれをやるのか
  • 自分たちはどこに向かっているのか

こうした価値観や方向性を、トップダウンでもボトムアップでも社内に共有・浸透させる取り組みがインナーブランディングです。

 

■ アウターブランディングとは?

ブランドの価値や姿勢を、社外に向けて発信し、理解・共感してもらうための取り組み。

  • 採用広報
  • SNSやWEBでのブランディング
  • 広告やプロモーション

すべては「自社の魅力」を、ターゲットにどう伝えるか、という設計と運用の話です。

 

■ どちらかではなく、「順序と連動」がカギ

インナーとアウターは、どちらか一方が正解ではありません。中と外をどう連動させるか。そして、どちらを先に整えるべきか。これが成果を分けるポイントです。

結論:インナー → アウターが基本。でも例外もある

原則として、インナーブランディングが先。アウターブランディングはそのあとです。理由はシンプル。中で語れないことを、外で語っても響かないから。

たとえば、自社の強みや価値観を社員が理解していないのに、外に向かって「うちは○○な会社です」と発信しても、どこか薄っぺらく聞こえてしまう。

それどころか、発信内容と実態にズレがあると、信頼を失いかねません。これは採用でも、顧客対応でも、取引でも同じです。

 

でも、すべての企業がインナーから始められるとは限らない

とはいえ、現実には「今すぐ採用を強化したい」「事業を広げたい」というタイミングもあります。そんなときは、アウターを先に走らせながら、インナーを追いつかせるという選択も現実的です。

ただし、この場合は「中と外の整合性」を意識しながら進めることが重要です。発信を始めたあとに、社員が「そんなこと言ってたっけ?」とならないよう、最低限の認識合わせは同時に動かすべきです。

インナーとアウター、どちらか一方では足りない。でも、順序を間違えると、結果がついてこないのはほぼ間違いない。だからまずは、社内での理解と納得をつくるところから始めるのが王道です。

中小企業の採用現場から見えた、順番ミスのリアル

◆ 事例A:社員60名の製造業

ある地方の製造業A社は、慢性的な人手不足に悩んでいました。そこで、まずは“見せ方”から変えようと、採用サイトやパンフレットを刷新。若手社員のインタビューやスタイリッシュなデザインで「挑戦できる職場」と打ち出しました。

結果、応募は増えたものの
入社後の早期離職が相次ぎました。

面談で聞こえてきたのは、
「イメージと実態が違った」
「結局、やることも進め方も前時代的だった」

原因は、インナー=社員の認識や文化が置き去りにされたまま、外向けだけを磨いたこと。社員自身が会社を「挑戦できる場」だと捉えていないのに、それを前面に押し出したことで、ギャップが大きなマイナスになってしまったのです。

 

◆ 事例B:社員40名のIT企業

一方、大都市圏のIT企業B社では、採用を強化する前にインナーから着手しました。

まず社内で「自社のらしさ」を洗い出し、価値観を言語化。その内容を、社員全員が自分の言葉で語れるようにワークショップを重ねました。

その後に始めた採用広報では、社員自身がブランドを自然に語る姿がSNSや説明会で発信されました。結果、応募者の質が上がり、入社後のミスマッチも激減。リファラル採用も増え、社内の雰囲気自体が少しずつポジティブに変わっていきました。

インナー→アウターの順で丁寧に設計したことで、「伝える」だけでなく、「伝わる」採用が実現した例です。

「うちの会社、案外いいかも」という再発見が自信を生む

インナーブランディングに取り組むとき、よくある反応があります。
社員がこう言うんです。

「こんなこと、ちゃんと考えたことなかったけど…」
「うち、意外とちゃんとしてるじゃん」
「これ、もっと発信してもいいかもね」

普段の仕事では埋もれがちな“会社の良さ”を言葉にすると、社員は少し自信を持てるようになります。それは派手な変化ではありませんが、確実に「社内の空気」を変えていきます。

この状態が続くと、

  • 社員が自然と知人を誘うようになり(=リファラル採用)
  • 社外の人にも「なんか感じがいい会社だな」と伝わるようになります

つまり、社員の内側から始まった“ブランドの芯”が、外にじわじわとにじみ出ていく。この状態になれば、アウターブランディングは“盛る”必要がありません。ただ、ありのままを発信するだけで伝わるようになります。

もちろん一度やっただけで終わり、ではありません。定期的に「うちの良いところって何だっけ?」を言語化し直し、共有し、アップデートし続けることで、ブランドは「社員ごとの実感」として根を張っていきます。

ブランディングの順序を見極めるチェックリストと、始め方のステップ

「インナー → アウターが基本」――とはいえ、
すべての会社が一律にそうするべきとは限りません。
いま、自社はどちらを優先すべきか?を見極める、簡易チェックリストを用意しました。

 

インナーから始めた方がいいサイン

  • 社員が自社の強みや価値観をうまく説明できない
  • ブランドスローガンや理念が形だけになっている
  • 採用者から「聞いていた会社と違う」と言われたことがある
  • 社内での情報共有がバラバラ、部門ごとに温度差がある
  • 社員同士で「うちってどんな会社?」という問いに答えが割れる

インターナルブランディング

 

アウターから先行してもよいパターン

  • 直近で採用や事業拡大など、対外発信が急務になっている
  • 社員数が少なく(10〜20名など)、全員で理念を共有できている
  • 既に一定の共通認識があるが、見せ方・伝え方が弱いと感じている

※この場合も、「発信の中身」が社内に共有されていることが前提です。

では、最初の一歩は何か?
まずは社内でこんな問いを投げかけてみてください。

「うちって、どんな会社だと思う?」
「どこが他と違うと思う?」
「それって、他の人にも伝えたいと思える?」

この問いを上司→部下ではなく、全員がフラットに語り合える場にすることが大切です。その言葉のなかに、ブランドの芯が見えてきます。

インナーは理念研修や浸透施策だけではありません。「うちの良さ」を再確認し、社員自身が納得して語れるようになること。それが、ブランドの土台になります。

順序は戦略。ブランディングは社内の空気づくりから

インナーブランディングとアウターブランディング、どちらが先か。
答えはシンプルです。
「中が整っていないのに、外を飾っても意味はない」―むしろ、逆効果になることすらあります。

ある程度の期間、事業を続けてきた会社なら、必ず何かしらの良さがあります。
まずは社員が、
「うちって、突き抜けてはいないけど、案外いい会社かも」
と自然に思えること。

それが、やがて発信になり、人に伝わり、共感を生んでいきます。

ブランドは、刹那的な広告のように「作る」ものではありません。内側からにじみ出る「らしさ」を表現するもの。その一歩目は、派手な施策じゃなくていい。

「うちの良さって、なんだろう?」
「なぜ、うちは顧客から支持されているんだろう?」

その問いを、社員同士で語るところから、すべてが始まります。

 
 

社員の意識と行動が変わる!社内ブランディング成功の進め方とつまずきやすいポイント
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選ばれる会社になる覚悟。大阪の企業にいま必要な、採用ブランディング

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

採用活動において、「らしさをどう伝えるか」は以前にも増して重要になっています。とくに就活の早期化が進むいま、採用サイトや説明会で一度しか会えない学生に、自社の魅力を「一瞬で伝える力」が求められています。本記事では、大阪の企業が持つ強みをどう見せるか、採用ブランディングの考え方と具体的な手法、学生に選ばれる企業になるためのヒントを、事例やエピソードを交えて紹介します。

いまの就活生は、多くを見ない。一期一会の気持ちで相対する必要も。

就活が早期化するなかで、学生たちは数多くの企業を見るように見えて、実際にはほんの一部しか記憶に残していません。大学3年生の秋には、すでに1〜2社の内定を得ている学生も少なくなく、就職活動そのものに「焦り」を感じない人も増えています。

そういった学生が会社説明会に参加するのは、「もっと自分に合う会社があるかもしれない」という感覚からです。つまり、今持っている内定がゴールではなく、比較対象になっているということ。
だからこそ、説明会で出会う一人ひとりに対して、一期一会の覚悟で臨む必要があります。その出会いが、企業にとっても学生にとっても最初で最後になる可能性があるからです。

採用活動とは、数をこなすことではありません。目の前の学生に、自社の魅力や考え方が届くかどうか。その一回ごとの勝負を、きちんと設計し、言葉やコンテンツに落とし込むこと。それが、採用ブランディングの出発点です。

採用ブランディングで「らしさ」を伝えることが、大阪企業の武器になる

就職活動において、学生たちは企業を「条件」だけで選んでいるわけではありません。給与や福利厚生よりも前に、「この会社、なんかいいかも」と感じるかどうか。その直感的な共感や安心感が、エントリーの決め手になることがあるのです。

だからこそ、採用活動において重要なのは、自社の「らしさ」をどう伝えるか。

  • どんな人が働いているのか。
  • どんな雰囲気の職場なのか。
  • 何をたいせつにして、どんな価値観で動いているのか。

そういった情報が、言葉や写真、インタビューやデザインを通じてにじみ出ていく。その一貫した“空気感”が、「この会社なら自分もやっていけそう」と学生に思わせる。それが、採用ブランディングの本質だと私たちは考えています。

会社の魅力がにじみ出るのは、ちょっとした工夫

採用ブランディングというと、大がかりな施策や専門的なノウハウが必要だと思われがちです。けれど実際には、学生の心をつかむのは、ごく身近なリアルな話だったりします。

たとえば、
私たちの会社では上司もイジられます。
入社して間もない若手が、会議中に部長へツッコミを入れたり。それが許される空気があって、むしろ笑いが起きる。この距離の近さや人間くささは、求人票ではなかなか伝わりません。

また、
本町という立地と、早めの退社文化も大きな魅力
17時すぎには仕事が終わって、心斎橋で買い物、堀江でカフェ、難波で映画。仕事も私生活もどちらも大切にできる、そんな働き方のリアルが学生には刺さるのです。

こうした日常のひとコマを、写真やインタビュー、ちょっとした言葉で見せていく。それだけで、「あ、ここ、自分に合いそう」という感覚が生まれます。採用ブランディングとはつまり、無理に盛らず、ありのままの魅力を言葉と設計で伝えることなのです。

「大阪らしさ」が、採用活動の武器に

東京の企業と比べて、大阪の会社はネームバリューや規模で見劣りすると思われがちです。でも、そこにこだわる必要はありません。むしろ今の就活生にとっては、雰囲気や人の良さこそが決め手になることも多いのです。

大阪の企業には、独特の魅力があります。

  • 誰とでもすぐに距離が縮まる文化。
  • ツッコミや冗談が飛び交う会話。
  • 上司と部下の間に上下関係よりも信頼感がある。

こうした雰囲気は、東京の大企業ではなかなか味わえないものです。

さらに、地域とのつながりも大阪企業ならではの強みです。地元のクライアントと10年、15年と付き合い続ける中で生まれる信頼や誇り。そこには、深くてあたたかい仕事があります。

就活生の中には、東京の企業に憧れていたけれど、「この会社の人たち、なんかいいな」と感じて、大阪に残る選択をする人もいます。「会社の人間らしさ」を正しく伝えることは、志望理由そのものを変える力を持っているのです。

採用ブランディングは、結果につながります

私たちはこれまで、大阪を拠点に、さまざまな企業の採用ブランディングを支援してきました。そのなかで感じるのは、「伝え方を変えるだけで、応募者の質も、量も変わる」ということです。

ある企業では、社風や社員の姿が伝わるインタビュー記事を採用サイトに加えただけで、
「説明会に来た時点で会社の雰囲気が分かっていた」
「サイトを見て、ここで働く自分が想像できた」

といった声が増えました。

また別の企業では、「らしさ」を明確に打ち出した採用ページを公開してから、「なんとなく受けた」学生よりも、会社への共感を持った学生のエントリーが増えたのです。

これは偶然ではありません。
採用ブランディングは、オシャレなページを作ることではなく、会社と学生の間に「ちゃんと伝わる接点」をつくること。その接点があるかないかで、結果は確実に変わります。

「伝えたこと」と「実際の姿」が一致するとき、信頼が生まれる

学生たちは、企業の採用サイトをしっかり見ています。そのうえで、会社説明会に参加し、オフィスを訪れ、社員と話しながら、こう思っているのです。
「サイトに書かれていたこと、本当にそうなのかな?」

採用サイトで見た世界と、説明会で感じた空気にズレがなければ、学生の中に信頼が生まれます。逆に、ギャップがあれば、それは“違和感”として残ります。

だからこそ、採用ブランディングで大切なのは、見た目のカッコよさではありません。リアルな魅力を、誤魔化さず、正しく、伝えること。そこにちゃんとした言葉と丁寧な設計があれば、会社は自然と選ばれる存在になります。

採用活動は、もう数で勝負する時代ではありません。大事なのは、「この会社で働きたい」と思ってもらえること。そのために、いまこそ「伝え方を見直すタイミング」です。

「伝え方を変える」ことは、「未来を変える」こと

就活生にとって、最初の出会いは採用サイトであり、そこに書かれた言葉です。
説明会での印象、社員の雰囲気、オフィスの空気感――
それらが採用サイトと“つながって”いるとき、はじめて信頼が生まれ、未来の仲間が動き出します。

会社が持っている「らしさ」や「魅力」を、どう見せていくか。
今の時代、それは採用の成果を左右する真剣な経営判断のひとつです。

フレイバーズは、大阪を拠点に「らしさをカタチにする」採用ブランディングを行っています。
「うちの会社、何をどう伝えたらいいんやろう?」という段階からでも大丈夫です。
まずは一度、お話ししませんか。

 

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求職者が集まらない中小企業。採用ブランディングで定着率まで改善できる

「求人を出しても応募がこない」
「ようやく面接まで進んでも辞退される」・・・

そんな悩みを抱える中小企業が急増しています。人手不足が深刻化するなか、新規事業の立ち上げすら見送らざるを得ないケースも少なくありません。

この状況を打開するカギが、「採用ブランディング」です。
これからの採用は、「人を集める」のではなく、「選ばれる企業になる」ことが本質。そのためには、自社の魅力を明確にし、言葉と形で伝える準備が必要です。

ただし、ここでいうブランディングは、ロゴやデザインを整えることではありません。
たいせつなのは、「なぜ、今いる社員たちはこの会社を選んだのか?」という問いに向き合い、その答えを採用のメッセージに変えていくことです。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

採用に悩む中小企業が「人が集まらない・すぐ辞める」状態から抜け出すには、採用ブランディングが有効です。本記事では、そもそも採用ブランディングとは何か、自社に合った人材を惹きつけるためにどんな工夫が必要なのかを、事例や実践的な視点から解説します。応募数の改善はもちろん、定着率の向上にもつながる“採用の考え方”が身につきます。


 

中小企業の採用ブランディングは“現場の声”から始まる

採用ブランディングで最も信頼できる材料は、すでに会社の中にあります。それは、今働いている社員たちが感じている「この会社の良いところ」です。これを掘り起こし、言語化し、求職者に伝える。それが中小企業にとって最も効果的で、再現性のあるブランディングのやり方です。

重要なのは「再現性」です。いま在籍している社員たちは、何らかの理由でこの会社に定着しています。その理由には、これから入社する人にも響く「共感の種」があるはず。だからこそ、それをうまく言葉に変えて伝えることで、「この会社、なんかいいかも」と感じる人が現れてくれます。

ただし、ここにひとつ大きな課題があります。
それは、経営者が社員に直接ヒアリングしても、本音を引き出すのは難しいということ。どれだけオープンな社風でも、社員はどうしても忖度してしまいます。「ここが良い」「ここは微妙」という本音を引き出すには、第三者の視点やファシリテーションが欠かせません。


 

採用ブランディングは「社内インタビュー」が要だが、外部の聞き手だからこそ引き出せる声も

社員のリアルな声を引き出すには、第三者の存在が欠かせません。社内の人間関係が影響しない「外の人」が話を聞くことで、社員は忖度なしで本音を話しやすくなります。

たとえば、採用ブランディングの一環として外部にヒアリングやインタビューを依頼すれば、社員の言葉から会社の“本当の魅力”が見えてきます。経験ある聞き手であれば、単なる印象論ではなく、言語化されていない価値観や空気感を言葉にしていくことも可能です。

実際、私たちがインタビューを行った中小企業では、こんな声が出てきました。

「正直、最初は待遇よりも人の良さで決めた」
「決め手は社長が面接で家族の話を聞いてくれたこと」
「大企業では味わえない“自分ごと感”があるのが魅力」

こうした言葉は、社長の前ではなかなか出てこないものですが、まさにその企業らしさがにじみ出た「選ばれる理由」です。求職者にとっても強く響くメッセージになります。


 

強みを発見するだけで終わらせない。採用ブランディングは経営者の手で育てるもの

採用ブランディングの図採用ブランディングの図社員の声から見えてくる自社の魅力。
それは、他社にはない「選ばれる理由」の原石です。

たとえば、

「小さい会社だけど、一人ひとりが主役になれる」
「上下関係がフラットで話しやすい雰囲気がある」
「社長が現場に顔を出してくれるのが安心感につながっている」

こうした声は、単なる満足度ではありません。むしろ、「ブランドの種」です。そして、その種をどう育て、どう磨いていくかは、まさに経営者の役割です。

たとえば「距離の近さ」が強みなら、雑談やミニミーティングを制度化して文化として根づかせる。「挑戦できる風土」が評価されているなら、小さなトライを応援する仕組みをつくる。
こうして“良さ”を仕組みに変えることで、社内に根づき、外からも見えるようになっていきます。

採用ブランディングとは、表面的なアピールではなく、内側からにじみ出る魅力を整えて、伝わる形にすること。だからこそ、社員の声を聞くだけでは終わりません。その声に応え、未来につなげていく行動こそが、採用力を本物に変えていくのです。


 

中小企業の採用ブランディング成功事例とその後の課題対応

当社クライアントの中堅企業が採用ブランディングを実施、それまで少なかった応募者数が増加し、採用サイトをリニューアルした翌年には求人枠をすべて充足できるまでになりました。加えて、応募者の質も向上することにもつながり、社風に憧れを持ち、より高いスキルを持った人材を採用できるようになった点も大きな成果でした。こうした実績は、採用ブランディングによって企業の魅力が適切に伝わり、求職者とのマッチングが改善された結果といえます。

成果として見られた変化:

・応募者数の大幅な増加
・採用目標の早期達成
・応募者の質の向上(スキル・志向の両面)

一方で、採用活動の競争が年々厳しくなるなか、新たな課題も浮かび上がります。とくに、大手企業から内定を受けた学生による内定辞退が相次ぐようになり、せっかく確保した優秀な人材の取りこぼしが増えてしまったのです。これは知名度の差や安定志向が背景にあり、中堅企業にとっては乗り越えるべき大きなハードルです。

新たに直面した課題:

・内定辞退の増加(特に大手内定者)
・企業の知名度や安定性への懸念
・入社意思決定への影響

この課題に対応するため、採用サイトの再リニューアルではブランディングをさらに強化。「大手よりも活躍の舞台が大きい」「若手が早くから裁量を持てる」といったメッセージを前面に打ち出し、企業としての価値や成長機会を明確に伝える工夫を施しました。

再リニューアル時に行った施策:

・メッセージ性を強化(活躍機会・裁量の早期付与を訴求)
・求職者視点でのコンテンツ設計
・ブランディング要素の再整理

その結果、内定辞退の割合は減少し一定数の質の高い応募者を安定して確保できる状況に改善しています。このように、採用ブランディングは一度きりではなく、市場環境に合わせて柔軟に進化させていくことが、採用活動を成功に導くカギとなります。

地域で活躍する中小企業の採用と定着 成功事例集(厚生労働省)


 

「続けるブランディング」が、中小企業の採用の質を底上げする

採用ブランディングは、1回やって終わりの「施策」ではありません。
むしろ、“企業文化の育成そのもの”です。日々の仕事と同じように、継続して取り組んでこそ、本当の効果が見えてきます。

せっかく社員の声から「うちの良さ」が見えてきても、それを放置していては意味がありません。まずは、年に1〜2回でもいいので、定期的に社員インタビューや価値観の棚卸しを行う仕組みを作りましょう。
外部のパートナーと一緒に行えば、より客観的な視点で社内の変化を捉えられます。

そして見えてきた魅力は、採用コンテンツに反映していきます。
ホームページや採用ページ、SNS、会社説明会など、あらゆる接点で一貫性を持って伝えることが、「なんとなく応募」ではなく「ここで働きたい」という共感に変わっていきます。

さらに見逃せないのは、ブランディングの効果が“社外”だけにとどまらないこと。
社員が「うちの会社って、意外といいな」と再確認する機会にもなり、エンゲージメントが高まります。結果として離職も防げ、自然と友人や知人にも勧めたくなる。そうしてリファラル採用が生まれ、また新しい“共感できる仲間”が集まってくる。

継続的な採用ブランディングは、単なる採用活動ではありません。
人が集まり、育ち、定着し、つながっていく——中小企業の人材戦略そのものの土台になるのです。


 

「見つけた強み」を育て続ける中小企業が、人から選ばれる

採用に悩む中小企業は少なくありません。でも、その答えは外にはありません。
今いる社員たちが日々感じている「うちの会社、けっこういいじゃん」という実感こそ、最大の武器です。

その声を、外部の視点も借りながら丁寧にすくい上げ、言葉にして伝えていく。
そして経営者がその強みを信じ、育てる姿勢を持ち続けることで、会社は着実に変わっていきます。

「この会社に入れたらいいな」ではなく、
「ここで働きたい」と心から思ってもらえる場所へ。

採用ブランディングは、派手な施策ではなく、日々の積み重ねです。
これまで御社が培ってきた事業と同様、細やかな改善と工夫は、必ず成果を導き出してくれます。
そしてそれは、確実に「選ばれる企業」への道をつくっていく力に。

今、手の中にある小さな強みに気づき、育てていくこと。
そこから、採用も組織も、きっと変わっていきます。

採用サイト制作
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