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中小企業のためのWEBサイト改善術:成果へつなげる5ステップ

中小企業にとってWEBサイトは営業や採用などにおいて、知名度の高い大企業よりもずっと重要な役割を果たす「顔」のような存在。しかし、社内に専門のWEB担当者がいない、更新や改善のノウハウが不足しているという理由から、改善が後回しになってしまっているケースも少なくありません。この記事では、「感覚で気づける」ことから始めて、「成果につながる」までの実践的な改善の流れを5つのステップで紹介します。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


 

1. まずは「なんとなく」でOK:感覚的に改善ポイントを挙げてみよう

WEBサイトの改善というと、「データに基づいた分析が必要」「専門家の意見が不可欠」と思われがちですが、最初の一歩はもっとシンプルで構いません。まずは、自分がそのサイトを使って「なんとなく使いづらい」「読みにくい」「迷う」と感じるポイントをリストアップすることから始めましょう。

例としては以下のような視点があります

  • スマホで見たときに文字が小さすぎる
  • メニューの場所がわかりにくい
  • 問い合わせフォームが長すぎて入力する気が失せる
  • 古い情報が載ったままになっている

また、自分ひとりの視点だけでなく、家族や社内の同僚、友人などに「このサイトどう思う?」と見てもらうことも大切です。とくにWEBに詳しくない人の意見は、実際のユーザーに近い視点での気づきを与えてくれるから。
そして、この段階で「自社サイトの目的」を再確認しておくことも重要です。問い合わせを増やしたいのか、採用エントリーを増やしたいのか。目的がはっきりすれば、どこを重点的に見直すべきか、最終目的のためにこの部分はどうあるべきなのか、あるいは重箱の隅を突くような改善は今は必要ないのかが明確になります。

 

2. 仮説を立てて小さく改善:改善案を実行する

改善ポイントが挙がったら、それぞれについて「こうすれば良くなるのでは?」という仮説を立てて、小さく改善してみましょう。完璧なデザインや文章をいきなり作ろうとする必要はありません。大切なのは、スピーディに、そして現実的な範囲で改善を進めることです。

例えば、以下のような施策

  • 問い合わせボタンの色を目立つ色に変える
  • トップページに問い合わせへの導線を明記する
  • スマホ用のフォントサイズを調整する
  • フォームの入力項目を3つに減らす

改善を実施する前には、必ず現在の状態を記録しておきましょう(スクリーンショットやメモなど)。こうしておくことで、後で「改善の前後でどう変わったか」を比較しやすくなります。
CMS(WordPressなど)を使っていれば、ある程度の編集は自社内でも可能です。外部に依頼する場合も、ピンポイントで「ここだけ変えたい」という要望が出せれば、コストも抑えられます。

 

3. Googleアナリティクスで結果をチェックする

改善を行ったら、最低でも2週間〜1ヵ月ほどは様子を見ましょう。そのうえで、Googleアナリティクス(GA4)を使ってアクセス状況を確認します。

見るべきポイントは以下のようなものです

  • セッション数:訪問者数に変化はあるか
  • 平均エンゲージメント時間:サイト内での滞在時間が増えたか
  • 離脱率:特定ページからの離脱が減ったか
  • コンバージョン数:問い合わせや資料請求が増えたか

たとえば「フォームを簡略化したらコンバージョンが増えた」など、仮説に対する結果が数値として見えてきます。もし数字に変化がない場合でも、それは「効果がなかった」という大事な情報です。次の施策を考えるヒントになります。

セッション数
ユーザーがWebサイトに訪問してから離脱するまでの一連の行動を「1セッション」としてカウントします。ページを複数見ても、離脱するまでが1回のセッションとされます。

平均エンゲージメント時間
訪問者がWebサイト上で「実際にアクションをしていた時間」の平均値です。単に滞在しているだけでなく、スクロールやクリックなど、積極的に見ていた時間を示します。

離脱率
ページを最後に見てサイトを離れたユーザーの割合です。特定のページで多ければ、そこに問題がある可能性があります。

コンバージョン数
訪問者がWebサイト上で目的の行動(例:問い合わせフォーム送信、資料請求、購入など)を完了した回数です。

 

4. なぜその結果になったのかを考える

数字を見て終わり、ではありません。最も重要なのは、「なぜその結果になったのか?」を自分なりに考えることです。

たとえば

  • CTAボタンを赤に変えた → クリック率が上がった → ボタンがより目立つようになったから?
  • フォームを短くした → コンバージョン率は変わらなかった → 実は入力項目ではなく、誘導文が問題だった?

このように、うまくいった場合でも、そうでなかった場合でも「仮説と結果のズレ」を見つけて言語化するクセをつけると、次の改善の精度が上がります。
また、成功した施策は再現性のある手法として記録しておきましょう。今後、他のページや別のプロジェクトにも応用できます。

CTA(Call to Action)
WEBサイト上でユーザーに特定の行動を促すボタンやリンク、テキストのこと。たとえば「お問い合わせはこちら」「資料をダウンロード」「無料で試してみる」などがCTAです。ユーザーのアクションを引き出し、コンバージョンにつなげる重要な要素です。

 

5. ヒートマップで「もっと伝わる」改善を

Googleアナリティクスでは「何人が見たか」は分かっても、「どう見たか」はわかりません。そこで活用したいのが、ヒートマップツールです。

ヒートマップを使うと

  • ページ内のどこが注目されているか(クリックやスクロールの位置)
  • どのコンテンツが読まれていないか(すぐにスクロールされている)
  • ユーザーの視線が止まるポイント

などが一目でわかります。
たとえば、「重要な説明文が下の方にあって読まれていない」なら、順番を入れ替えるべきですし、「ボタンの直前で多くのユーザーが離脱している」なら、説明が長すぎるか、信頼感に欠ける表現になっているのかもしれません。
無料で使えるツールもあるので、まずは1〜2ページから導入して、ユーザーの動きを「可視化」することから始めてみてください。

ヒートマップツール(マイクロソフトClarify)

 

よくある失敗例:リニューアルだけして満足してしまう

中小企業のWEB改善でよくある失敗のひとつが、「サイトを一新したことで満足してしまう」ことです。見た目を整え、最新のデザインにしたことで「これで完成」と思ってしまい、その後の検証や改善が行われないケースは少なくありません。
リニューアルはあくまでスタート地点であり、本当に大切なのはその後の数値の変化を見て、仮説を立てて再調整する作業です。新しいデザインが目的を達成しているかどうかは、ユーザーの反応やデータを見なければわかりません。
「作って終わり」にしないためには、公開後の動きを3ヵ月単位で振り返るルールを設けたり、改善のための担当者やWEB改善会議を月1回でも設定することが有効です。

馴れない業務を片手間に実施するのは、時間も労力も想像以上にかかります。

とくに中小企業では担当者が兼任であることがほとんど。調査・実装・検証までをすべて自社で完結させるのは現実的に難しいでしょう。
そうしたときには、一部を外注し、専門家の視点を借りながら自社でできる範囲を進めるという方法が、結果的にもっともコストパフォーマンスが良いやり方になります。
外注=丸投げではなく、「方向性の確認」「改善箇所の優先度づけ」だけでもプロに頼ることで、無駄な工数や迷走を防げます。

 

中小企業が自力でできるWEBサイト改善の進め方

中小企業にとって、WEBサイト改善は「特別な知識」や「高額な外注費」がなくても、感覚的な気づきからスタートし、数値やツールを使って着実に成果へつなげることができます。

重要なのは以下の5ステップを、無理のない範囲で繰り返すこと

  1. まずは感覚的に「使いにくい」と感じる部分を洗い出す
  2. 仮説を立てて小さく改善してみる
  3. Googleアナリティクスで数字の変化をチェック
  4. なぜ変化が起きたのかを自分なりに考察する
  5. ヒートマップでユーザー行動を可視化し、さらに精度の高い改善へ

このように、「感覚 → 実行 → 分析 →再改善」の流れを継続することで、中小企業でも自社WEBサイトを成果につながる営業ツールに進化させることが可能です。
初めから完璧を目指す必要はありません。むしろ「まず動いてみる」ことが、改善への第一歩です。

難解そうなWEBサイトの改善について、ご相談を承ります

3C分析をブランディングに活用するときの注意点

ブランディングの議論が社内で本格化すると、最初にぶつかる壁が「どこから手をつければいいのか分からない」という状態です。そんなとき、ありがちなのがフレームワークを導入して全体像を整理しようとする動き。とくに「3C分析」や「SWOT」など、マーケティングの基本フレームは使いやすさもあって選ばれやすい傾向にあります。

なかでも使われやすいのが「3C分析」です。これは、顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)という3つの要素をクロスさせ、ブランドの価値やポジショニングを論理的に導き出すものです。

便利で説得力があるフレームワークではあるのですが、誤った使い方をすると、かえってブランドの方向性が曖昧になってしまうことも少なくありません。そこで今回は、全社の方向性をプランニングする部門(たとえば経営企画室)の実務担当者が3C分析を実施する際に陥りがちな落とし穴と、注意すべきポイントを整理します。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

 

3C分析とは何か?まずは基本の理解から

3C分析は、3C(Customer、Competitor、Company)をそれぞれ分析したうえで、それらの要素を掛け合わせることで、自社が取るべき戦略やブランドの方向性を導き出す方法です。

例えば以下のような掛け合わせが基本になります:

顧客 × 自社:顧客が求めていて、自社が提供できる価値は何か

自社 × 競合:競合と比較して、自社が勝てる部分はどこか

顧客 × 競合:顧客が重視し、競合が対応しているが、自社が弱い部分は何か

このように、単純な3C分析よりも一歩踏み込み、戦略の優先順位や差別化の方向性を可視化できるのが特徴です。自社の弱い部分は、あまり時間をかけて分析しても意味はありません。むしろ時間をかけるほど、愚痴合戦のような状態になってしまいます。ブランディングは、自社の良い部分を伸ばすことで顧客に力強く訴求することが目的。競合他社と比較して足りていない部分は、思い切っていまは目をつぶっておきましょう。

ブランディングではこの分析を使って、「自社ブランドは誰に、何を、どう届けるのか」という問いへの答えを論理的に構築していきます。

 

3C分析をブランディングに活用する際にありがちな3つの誤解

便利なフレームワークには副作用もあります。とくに次のような3つの誤解は、ブランディングにおける方向性を誤らせる原因になります。

 

誤解1:「顧客視点=機能的ニーズ」だと思い込む

「顧客視点で考えよう」と言いながら、出てくる要素が「安い」「早い」「便利」ばかりでは意味がありません。それは表面的な選定理由であって、ブランドを選ぶ理由ではないからです。

ブランディングで重要なのは、顧客がどんな文脈でブランドを選び、どんな感情で関係を築いていこうとしているか、という視点です。つまり「スペック」ではなく「意味」が問われるということです。

 

誤解2:「競合=同業他社」と決めつける

競合分析というと、つい同じ製品、サービスを扱う他社に目がいきがちです。しかし実際には、顧客の選択肢は同業に限りません。

たとえば、スターバックスにとっての競合はドトールやタリーズだけではなく、コンビニコーヒー、自宅カフェ、さらには「今日はカフェに行かない」という選択肢すら競合になり得ます。

競合の定義が狭すぎると、ブランディングの差別化軸も浅くなってしまうでしょう。

 

誤解3:「自社の強み=過去の実績」だけで考える

「うちはこれが得意」「この分野は負けない」といった自社の強みを語るとき、往々にして過去の実績や現在の技術力に基づいているケースが多く見られます。

しかし、ブランドは未来志向のものです。過去の実績ではなく、これからどんな「価値観」や「ライフスタイル」を象徴していく存在なのか、それを語れなければ、ブランドとしての広がりが生まれません。

もちろん、現在の顧客が自社を選んだ理由を知ることは非常に重要なことですが、その一点だけに強みが集中してしまうとブランディングの範囲を狭めてしまうことになりかねません。

 

実務で押さえるべき4つの注意点

上記の誤解を踏まえたうえで、実際に3C分析をブランディングに活用する際の注意点を具体的に紹介します。

 

① 顧客の「無意識の選択理由」に踏み込め

顧客の選定理由には、本人が意識していない「無意識の価値判断」が数多く含まれています。たとえば、「高いけどなぜかあのブランドを選ぶ」という行動には、価格や性能では測れない「好感」や「信頼感」が影響しています。

ここに踏み込まないまま分析しても、「当たり障りのない差別化」にしかなりません。

ヒント:インタビューやユーザー観察によって、「なぜそれを選ぶのか?」「どうして他と比べて安心感があるのか?」といった問いを深堀りしましょう。

 

② 競合の再定義がブランドの輪郭を決める

競合の捉え方次第で、自社ブランドの意味づけも変わります。「モノとしての競合」ではなく、「体験としての競合」を意識することで、自社ブランドが提供すべき価値が変化します。

たとえば、高級腕時計の競合は他ブランドの時計ではなく、「自分へのご褒美」や「ステータス実感」を得られるすべての行為かもしれません。

ヒント:競合を「同じ問題を解決している他の選択肢」と定義し直してみましょう。

 

③ 自社の強みは「記号」化して語れ

ブランドの強みは、機能や技術力だけではなく、「象徴」としての役割を果たす必要があります。
たとえば「無印良品」は「シンプルな生活の象徴」、「Apple」は「革新性と美意識の象徴」として機能しています。

これらはすべて、技術や商品を超えた「記号的価値」です。

ヒント:「私たちのブランドは、顧客にとって何の象徴か?」という問いをチーム内で共有し、強みの再定義を図りましょう。

 

④ フレームワークに縛られず、「物語」を紡げ

最後に大切なのは、分析の結果をそのまま資料に貼って満足しないことです。

3C分析の目的は、単に整理することではなく、ブランドの「意味」や「物語」を構築するための出発点です。

論理で構築した戦略を、感情で語れるストーリーに翻訳するプロセスが必要です。ブランドとは、最終的には「覚えられる」「共感される」ものとして成立する必要があります。さらに、誰かにそれを伝えたくなる要素、これがめざすべきストーリーです。

 

ブランドは、差別化ではなく「意味化」されるべき

「ブランディング、3C分析」というワードで検索してください。無数のテンプレートや図解が出てきます。しかし、それらを形式的に埋めるだけでは、顧客の心には届きません。

プロジェクトメンバーの役割は、ロジックと感性を橋渡しする視点を持つことです。
そのためには、3C分析を単なる戦略設計の道具としてではなく、「ブランドの意味を考え抜くための補助線」として使う姿勢が求められます。まさに、頭にどれだけ汗をかくことができたかで、ブランディングの成功確率はグッと高くなります。

ブランドは、差別化されるのではなく「意味化」されるもの。
その意味を、顧客・競合・自社という3つのレンズを通して言語化できたとき、ブランディングは初めて本質に近づきます。

マーケティングでよく活用されるフレームワークは便利ですが、使い方を誤れば形だけの戦略に陥ります。とくにブランディングのように抽象度が高く、主観も入りやすい領域では、客観的な視点が欠かせません。だからこそ、必要に応じて専門家の知見を借りることも選択肢に入れるべきです。
外部の視点を取り入れることで、自社では当たり前になっていた価値や強みに改めて気づけることもあります。3C分析を「社内で完結させる作業」ではなく、ブランドを再発見する対話のプロセスとして活用していくことが、ブランディング成功への鍵になります。

フレイバーズでは、コーポレートブランディング、採用ブランディングなどを実施し、結果を出してきた実績があります。かんたんなご質問でも構いません。お問い合わせフォームからコンタクトしてください。

中小製造業の製品ブランディング4手法。「あの会社に頼みたい」を引き出そう。

中小製造業の工場を見下ろす経営者中小企業、とくに製造業では「良いモノを作れば売れる」という考えが根強く残っています。製品の品質やスペックを高めることに全力を注ぐ一方で、「自社の製品が顧客にとって何をもたらすのか」という視点を持つことを忘れてしまいがちです。
しかし、どれだけ高性能な製品でも、顧客がその価値を実感できなければ、選ばれることはありません。本コラムでは中小企業の製品ブランディングをテーマに、なぜ自社製品の「意味」や「価値」を明確に伝えることが重要なのか、そしてそれをどう実践するかについて具体的に解説していきます。製造業の中小企業だからこそできる、本質的なブランディングの方法をお伝えしていきます。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

本記事では、中小製造業が「品質がいいのに選ばれない」という壁を超え、顧客に“あの会社に頼みたい”と思われるためのブランディング手法を4つ紹介します。価格やスペックではなく、自社の価値をしっかり伝え、指名されるブランドになるための考え方と実践例をわかりやすく解説。差別化が難しいと感じている方こそ読んでほしい内容です。


 

なぜ中小企業に製品ブランディングが必要なのか

大企業とは異なり、中小企業は宣伝費や知名度において不利な立場にあります。こうした状況であっても他社製品との差別化を図り、永続的に事業を発展させていかねばなりません。そのためには、製品そのものに「ストーリー」や「信念」を乗せて発信する必要があるのです。
つまり、「何を作っているのか」ではなく、「なぜそれを作るのか」「どんな価値を届けたいのか」という部分を伝えるのが、製品ブランディングの本質です。
製品ブランディングを強化することで、価格競争に巻き込まれるリスクも減らせ、顧客は単なる「モノ」としてではなく、「このブランドだから買いたい」と感じるように。これは中小企業にとって非常に大きな武器となることでしょう。

 

中小企業が陥りがちなブランディングの誤解

ロゴマークのVIを作るデザイナーの手元「ブランディング=おしゃれなロゴやパッケージデザイン」と誤解しているケースが少なくありません。もちろんビジュアル面も重要ですが、それはあくまで表層部分。根本は「自社製品が誰にとってどんな意味を持つのか」を明確にし、それを一貫して伝えることにあります。
また、すべてを完璧に整えようとしてスタートが遅れるのもよくある問題です。中小企業に求められるのは、まず自分たちの強みや思いを素直に言葉にし、それを市場にぶつけてみる行動力です。
短いサイクルでトライ&エラーを繰り返せるのが中小企業の強み。経営者が陣頭指揮をとり、新たな局面を模索することを始めましょう。

 

中小企業が製品ブランディングを始めるためのステップ

ここからは具体的なステップについて見ていきましょう。

 

1.ターゲットを明確にする

訴求するターゲットを誰にするか考える担当者誰に向けて製品を届けたいのかをはっきりさせます。どのような人が自社製品の導入を検討してくれそうか。
年齢、性別、ライフスタイル、価値観など、できるだけ具体的にイメージします。ここでのポイントは、狭くても良いのでターゲットを明確に絞り込むこと。ターゲットを絞り込んだとしても、自社の売上は大企業ほど大きなものでなくても十分なはず。中小企業だからこそ、広く浅くではなく、狭く深くターゲットを絞り込むことが結果的に効果的なものになります。

 

2.自社の「強み」と「想い」を言語化する

他社と比べて自社製品は何が違うのか、なぜそれを作っているのか、なぜ顧客に届けたいのか。これらをシンプルな言葉でまとめることが大切です。特別な表現はいりません。素直な言葉こそが中小企業の強みになります。
また、長く購買してくれている現在の顧客に、「なぜ自社から買ってくれているのか」を聞いてみましょう。その理由がわかれば、まだ見ぬ顧客にも刺さるポイントが浮かび上がってきます。

 

3.ブランドメッセージを設計する

ターゲットに対して、自社製品がどんな価値を提供できるのかを一言で表せるメッセージを作りましょう。このメッセージは、コンタクトポイント(自社が顧客と接する場所、ツール)WEBサイト、SNS、パンフレット、名刺、事務所などすべての発信活動の軸になります。

 

4.一貫した発信を続ける

ブランドメッセージに沿った情報発信を地道に続けることが重要です。SNSなら、製品開発の裏話、スタッフの想い、お客様の声など、できる限りリアルな情報を発信しましょう。事例は、導入を検討している顧客候補の背中を強く押してくれます。すぐに大きな反響を期待してはいけません。粘り強く発信を積み重ねていくと、ある地点から乗数的に影響力を持つことに気づくでしょう。

製造業のブランディング手法、今日から始める5ステップ

 

中小企業ならではの製品ブランディング事例

例えば、地元の素材にこだわった食品メーカーが「地元の美味しさを全国に届けたい」というメッセージを掲げ、農家との共同開発ストーリーを発信し続けた結果、地域ブランドとしての地位を確立した例があります。
また、小さな工房が「一つひとつ手作業で仕上げる丁寧なモノづくり」を前面に出し、量産品との差別化に成功したケースもあります。
いずれも、特別な広告費をかけたわけではなく、「ほかにはない自分たちの強みを正直に伝え続けた」ことが成功要因です。

 

製品ブランディングを継続するために

ブランディングの計画について、社内で検討中製品ブランディングは一度作って終わりではありません。市場や顧客の変化に合わせて、伝え方を見直したり、新たな価値を提案したりする柔軟さも必要です。小回りが利くのは中小企業の大きな強み。大企業にできないスピード感で変化に対応していきましょう。
また、社員全員がブランドの考え方を共有することも大切です。経営者だけが意識しても、現場がバラバラではブランドイメージは伝わりません。社内ミーティングや勉強会を通じて、製品ブランディングに対する共通認識を持つことをおすすめします。

 

中小企業だからこそできる、強力な製品ブランディングを

製品ブランディングは単なるマーケティングテクニックではなく、企業の存在意義そのものを市場に伝える行為です。限られたリソースでも、強いブランドを築くことは可能です。自社の強みと想いを明確にし、それを一貫して発信し続けることで、価格競争に巻き込まれず、ファンを増やすことができます。
今日からできる小さな一歩として、自社の製品について「誰に、どんな価値を、どう伝えたいのか」を整理してみてください。中小企業だからこそできる製品ブランディングで、未来を切り開いていきましょう。

求職者が集まらない中小企業。採用ブランディングで定着率まで改善できる

「求人を出しても応募がこない」
「ようやく面接まで進んでも辞退される」・・・

そんな悩みを抱える中小企業が急増しています。人手不足が深刻化するなか、新規事業の立ち上げすら見送らざるを得ないケースも少なくありません。

この状況を打開するカギが、「採用ブランディング」です。
これからの採用は、「人を集める」のではなく、「選ばれる企業になる」ことが本質。そのためには、自社の魅力を明確にし、言葉と形で伝える準備が必要です。

ただし、ここでいうブランディングは、ロゴやデザインを整えることではありません。
たいせつなのは、「なぜ、今いる社員たちはこの会社を選んだのか?」という問いに向き合い、その答えを採用のメッセージに変えていくことです。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

採用に悩む中小企業が「人が集まらない・すぐ辞める」状態から抜け出すには、採用ブランディングが有効です。本記事では、そもそも採用ブランディングとは何か、自社に合った人材を惹きつけるためにどんな工夫が必要なのかを、事例や実践的な視点から解説します。応募数の改善はもちろん、定着率の向上にもつながる“採用の考え方”が身につきます。


 

中小企業の採用ブランディングは“現場の声”から始まる

採用ブランディングで最も信頼できる材料は、すでに会社の中にあります。それは、今働いている社員たちが感じている「この会社の良いところ」です。これを掘り起こし、言語化し、求職者に伝える。それが中小企業にとって最も効果的で、再現性のあるブランディングのやり方です。

重要なのは「再現性」です。いま在籍している社員たちは、何らかの理由でこの会社に定着しています。その理由には、これから入社する人にも響く「共感の種」があるはず。だからこそ、それをうまく言葉に変えて伝えることで、「この会社、なんかいいかも」と感じる人が現れてくれます。

ただし、ここにひとつ大きな課題があります。
それは、経営者が社員に直接ヒアリングしても、本音を引き出すのは難しいということ。どれだけオープンな社風でも、社員はどうしても忖度してしまいます。「ここが良い」「ここは微妙」という本音を引き出すには、第三者の視点やファシリテーションが欠かせません。


 

採用ブランディングは「社内インタビュー」が要だが、外部の聞き手だからこそ引き出せる声も

社員のリアルな声を引き出すには、第三者の存在が欠かせません。社内の人間関係が影響しない「外の人」が話を聞くことで、社員は忖度なしで本音を話しやすくなります。

たとえば、採用ブランディングの一環として外部にヒアリングやインタビューを依頼すれば、社員の言葉から会社の“本当の魅力”が見えてきます。経験ある聞き手であれば、単なる印象論ではなく、言語化されていない価値観や空気感を言葉にしていくことも可能です。

実際、私たちがインタビューを行った中小企業では、こんな声が出てきました。

「正直、最初は待遇よりも人の良さで決めた」
「決め手は社長が面接で家族の話を聞いてくれたこと」
「大企業では味わえない“自分ごと感”があるのが魅力」

こうした言葉は、社長の前ではなかなか出てこないものですが、まさにその企業らしさがにじみ出た「選ばれる理由」です。求職者にとっても強く響くメッセージになります。


 

強みを発見するだけで終わらせない。採用ブランディングは経営者の手で育てるもの

採用ブランディングの図採用ブランディングの図社員の声から見えてくる自社の魅力。
それは、他社にはない「選ばれる理由」の原石です。

たとえば、

「小さい会社だけど、一人ひとりが主役になれる」
「上下関係がフラットで話しやすい雰囲気がある」
「社長が現場に顔を出してくれるのが安心感につながっている」

こうした声は、単なる満足度ではありません。むしろ、「ブランドの種」です。そして、その種をどう育て、どう磨いていくかは、まさに経営者の役割です。

たとえば「距離の近さ」が強みなら、雑談やミニミーティングを制度化して文化として根づかせる。「挑戦できる風土」が評価されているなら、小さなトライを応援する仕組みをつくる。
こうして“良さ”を仕組みに変えることで、社内に根づき、外からも見えるようになっていきます。

採用ブランディングとは、表面的なアピールではなく、内側からにじみ出る魅力を整えて、伝わる形にすること。だからこそ、社員の声を聞くだけでは終わりません。その声に応え、未来につなげていく行動こそが、採用力を本物に変えていくのです。


 

中小企業の採用ブランディング成功事例とその後の課題対応

当社クライアントの中堅企業が採用ブランディングを実施、それまで少なかった応募者数が増加し、採用サイトをリニューアルした翌年には求人枠をすべて充足できるまでになりました。加えて、応募者の質も向上することにもつながり、社風に憧れを持ち、より高いスキルを持った人材を採用できるようになった点も大きな成果でした。こうした実績は、採用ブランディングによって企業の魅力が適切に伝わり、求職者とのマッチングが改善された結果といえます。

成果として見られた変化:

・応募者数の大幅な増加
・採用目標の早期達成
・応募者の質の向上(スキル・志向の両面)

一方で、採用活動の競争が年々厳しくなるなか、新たな課題も浮かび上がります。とくに、大手企業から内定を受けた学生による内定辞退が相次ぐようになり、せっかく確保した優秀な人材の取りこぼしが増えてしまったのです。これは知名度の差や安定志向が背景にあり、中堅企業にとっては乗り越えるべき大きなハードルです。

新たに直面した課題:

・内定辞退の増加(特に大手内定者)
・企業の知名度や安定性への懸念
・入社意思決定への影響

この課題に対応するため、採用サイトの再リニューアルではブランディングをさらに強化。「大手よりも活躍の舞台が大きい」「若手が早くから裁量を持てる」といったメッセージを前面に打ち出し、企業としての価値や成長機会を明確に伝える工夫を施しました。

再リニューアル時に行った施策:

・メッセージ性を強化(活躍機会・裁量の早期付与を訴求)
・求職者視点でのコンテンツ設計
・ブランディング要素の再整理

その結果、内定辞退の割合は減少し一定数の質の高い応募者を安定して確保できる状況に改善しています。このように、採用ブランディングは一度きりではなく、市場環境に合わせて柔軟に進化させていくことが、採用活動を成功に導くカギとなります。

地域で活躍する中小企業の採用と定着 成功事例集(厚生労働省)


 

「続けるブランディング」が、中小企業の採用の質を底上げする

採用ブランディングは、1回やって終わりの「施策」ではありません。
むしろ、“企業文化の育成そのもの”です。日々の仕事と同じように、継続して取り組んでこそ、本当の効果が見えてきます。

せっかく社員の声から「うちの良さ」が見えてきても、それを放置していては意味がありません。まずは、年に1〜2回でもいいので、定期的に社員インタビューや価値観の棚卸しを行う仕組みを作りましょう。
外部のパートナーと一緒に行えば、より客観的な視点で社内の変化を捉えられます。

そして見えてきた魅力は、採用コンテンツに反映していきます。
ホームページや採用ページ、SNS、会社説明会など、あらゆる接点で一貫性を持って伝えることが、「なんとなく応募」ではなく「ここで働きたい」という共感に変わっていきます。

さらに見逃せないのは、ブランディングの効果が“社外”だけにとどまらないこと。
社員が「うちの会社って、意外といいな」と再確認する機会にもなり、エンゲージメントが高まります。結果として離職も防げ、自然と友人や知人にも勧めたくなる。そうしてリファラル採用が生まれ、また新しい“共感できる仲間”が集まってくる。

継続的な採用ブランディングは、単なる採用活動ではありません。
人が集まり、育ち、定着し、つながっていく——中小企業の人材戦略そのものの土台になるのです。


 

「見つけた強み」を育て続ける中小企業が、人から選ばれる

採用に悩む中小企業は少なくありません。でも、その答えは外にはありません。
今いる社員たちが日々感じている「うちの会社、けっこういいじゃん」という実感こそ、最大の武器です。

その声を、外部の視点も借りながら丁寧にすくい上げ、言葉にして伝えていく。
そして経営者がその強みを信じ、育てる姿勢を持ち続けることで、会社は着実に変わっていきます。

「この会社に入れたらいいな」ではなく、
「ここで働きたい」と心から思ってもらえる場所へ。

採用ブランディングは、派手な施策ではなく、日々の積み重ねです。
これまで御社が培ってきた事業と同様、細やかな改善と工夫は、必ず成果を導き出してくれます。
そしてそれは、確実に「選ばれる企業」への道をつくっていく力に。

今、手の中にある小さな強みに気づき、育てていくこと。
そこから、採用も組織も、きっと変わっていきます。

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中小企業の業績を上向かせる、ブランディングの力

中小企業を対象とした景況調査の結果、値上げができている会社は業績が上向き傾向にあるとのこと(大阪府中小企業家同友会調べ)。わかってはいるものの、顧客が離れてしまうのではといった怖れも含め、値上げに踏み切ることをかんたんに決断できるものではありません。
値上げは、顧客に受け入れざるを得ないなと感じさせるだけの、他社にはない優位性やブランド力を持つ企業にのみ許されるものです。それが中小企業でも持てるのか。そこが経営者すべてが憂慮するポイントでしょう。
今回のコラムは、賃上げや原料費の高騰、燃料費の上昇などによる環境の変化を乗り切るためには、自社の優位性を振り返り、ブランド力を高めなければいけないという主旨になります。うちには目立った優位性などないから・・・と感じた方でも、大丈夫です。業績を改善させ、中長期的に胸を張って事業を進められる体制を作っていきましょう。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

ブランド力が価格決定権を生む

中小といえども、ブランド力がある企業は単に商品やサービスを提供するだけでなく、「この会社だから買いたい」「このブランドなら信頼できる」 という付加価値を顧客に感じさせることができます。これは、価格決定権を企業側が握ることにつながり、値上げをしても顧客が納得しやすくなる要因となります。

では、中小企業がブランド力を高め、「値上げしても選ばれる企業」になるためには、どのような取り組みを行うべきでしょうか?

 

1. 自社の強みを明確に

ブランディングの第一歩は、「自社の強みは何か?」を明確にすること。例えば、以下のような視点で考えてみましょう。

  • 技術力・専門性:他社にはない独自の技術やノウハウ
  • 品質・こだわり:素材や製造工程での工夫
  • 顧客対応:御社が顧客に提供している価値
  • 評価:顧客が他社ではなく、御社から購入している理由
  • ストーリー性:創業の背景や理念、社長・社員の想い

「うちは〇〇だから選ばれている」と言えるポイント。それがブランドの核となります。

 

2. 価格競争からの脱却:付加価値の提供

値上げが難しいのは、「価格以外の差別化ポイントが伝わっていない」からかもしれません。単なる機能やスペックではなく、「顧客にとってのメリット」 を強く打ち出すことで、価格以上の価値を感じてもらえる可能性があります。

例えば、以下のような付加価値を提供できるか検討しましょう。

  • 長期保証やアフターサービスの充実
  • 特定の業界・顧客に特化した専門性の高さ
  • 環境に配慮したエコな製品やSDGsへの取り組み
  • 地域密着型のサポートや関係性の深さ

価格だけでなく、「この会社だからお願いしたい」と感じさせる付加価値を持つことで、値上げを受け入れてもらいやすくなります。

 

3. 一貫性のあるブランドイメージに

ブランドは、一貫したメッセージとビジュアルによって形成されます。マーケティングやブランディングにおいて、最も注意しなければいけないのがこの一貫性です。もし、社内のあちこちで一貫性のないコミュニケーションが社外とやりとりされれば、それだけで発しているメッセージとのさが目につき、信頼は薄らいでしまいます。
一貫性の維持を担うのは経営者。常に社内に対して、ブランドメッセージを伝え、啓蒙していくことが必須条件です。
具体的には、企業ロゴ、Webサイト、SNS、パンフレット、メール対応から発せられるメッセージのすべてが統一されたブランドイメージを持つことです。

  • 視覚的統一:ロゴ、カラー、フォント、デザインの統一
  • メッセージの統一:「何を大切にしている会社か?」が一目で伝わる発信
  • トーン&マナーの統一:顧客対応の言葉遣いや雰囲気の一貫性
  • 社員から発するメッセージ、サービスでの一貫性

「なんとなく安定感がある」「なんとなく安心できる」と思われる企業は、ブランド力がある企業。この「なんとなく」を意図的に作り出すことが重要なのです。

 

4. 顧客との信頼関係を強化する

ブランド力の本質は、顧客との信頼関係にあります。顧客の声に耳を傾け、誠実な対応を続けることで、自然とファンが増え、口コミやリピート購入につながります。

  • 購入後のフォローを徹底する(アフターフォローの連絡やサポート)
  • 顧客の声を活かす(レビューを収集し、改善に活用)
  • リピーターを大切にする(特典やイベントで関係を強化)

「この会社の商品なら間違いない」と思われるようになれば、多少の値上げがあっても顧客は離れません。

 

5. 専門性の高さを訴求する

ブランドの信頼性を確立するために、高い専門性があることは競合他社との差別化ポイントとして重要な要素です。

専門知識や業界の最新情報を発信することによって、顧客候補に「この分野のプロフェッショナル」と認識されやすくなります。

方法は業界によって異なりますが、専門コラムやセミナー、SNSなどを使った情報提供を継続すると、少しずつ注目されるようになります。たとえば加工業、メーカーなどであれば、保有する工作機械の紹介は技術者同士の共通言語であり、その会社にどの程度のレベルがあるかよくわかる指標にもなるでしょう。

ペルソナを設定し、理想的な顧客の分析を行う

ブランディングの成功は、適切なターゲットに向けた訴求が不可欠になります。そのために重要なのが「ペルソナ設定」と「ターゲット分析」。ペルソナとは、理想的な(今まで取引しているなかで、多数を占めるモデルでも可)顧客像を具体的に描いた架空の人物モデルのことで、年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観(自社の事業領域に関する)などを詳細に設定します。

あえてペルソナという「個」に絞り込み、明確にすることで、顧客層のニーズや課題を深く理解し、それに沿ったマーケティング戦略を立てることができるようになります。例えば、ターゲットが忙しいビジネスパーソンであれば、自社製品やサービスを短時間で理解できるコンテンツになど、効果的なアプローチにつながります。

また、ターゲット分析を行うことによって、どの市場に強いニーズがあるのか、どのチャンネルを活用すればリーチしやすいのかも把握できます。SNSの使用傾向や購買行動データを分析し、ターゲットに合わせたメッセージを届けることで、ブランドの認知度と信頼度が向上します。

ペルソナ設定とターゲット分析を適切に行うことで、より効果的なブランディングが可能となり、競争の激しい市場でも差別化されたポジションを築くことができるのです。

ブランド力が中小企業の未来を左右する

値上げを成功させるためには、単に価格を上げるのではなく、顧客に納得感を持たせるブランド力を磨くことが不可欠。これまでお伝えしてきたことをもういちどまとめておきます。

  • 自社の強みを明確にし、付加価値を提供する
  • 一貫性のあるブランドイメージを作る
  • 顧客との信頼関係を深める

このブランディング、大企業ほど実施は容易ではありません。なぜなら、組織が大きい分社内に浸透させるのに時間と手間がかかるから。ただ、現状を考えると値上げに踏み切れているのは、ほとんどが大企業です。彼らはブランディングを意識している、いないに関わらず、これまでに蓄積してきた資産(=顧客からの信頼)があるので値上げができています。

こんどは中小企業でも価格転嫁を含めた値上げを実施するために、価格競争に巻き込まれない戦略に切り替えるために、自社の優位点を振り返ることからはじめる。ブランディングは長期的な投資です。すぐに売上が向上するわけではありませんが、中長期的な視点、つまり自社を継続させようと考えた場合に非常に重要な取り組みになります。少し取り組んで効果が現れないからといって、やめてしまったり、路線を変更してしまったりすることは厳禁です。つねに訴求に一貫性を保ちながら、少しずつ大きな負担にならないような取り組みを積み上げていくイメージを心がけてください。

優位点の見つけ方、ブランディングの進め方については、社内だけで進めるのは自社を知りすぎているために、難しいことがあります。あえて業界に詳しくない外部の目を入れることが課題解決の近道になりますので、お気軽にご相談いただければ、アドバイスをさしあげます。

ブランディングについて

WEB担当者必見。書けないを書けるに変える5つの方法

WEB担当者必見。書けないを書けるに変える5つの方法

プロとしてライティングに携わるライターも書けない(気が向かない)ことはあります。
なぜそうなるのだろうと整理してみると、いくつかのポイントが存在するのです。それはおそらくWEB担当として職務をこなしておられるあなたにも共通するものがあるかもしれません。このコラムでは、私が気づいたいくつかのポイントを挙げながら、解決策が提示していこうと考えています。

コーポレートサイト、ブランドサイトなど自社のオウンドメディアで、成果をあげるためにはコンテンツの充実やコラムの更新がたいせつなのは分かっているが、日々の業務に追われて手付かずの状態が続いてしまう。ターゲットに刺さる良質なコンテンツを書かなければ・・・、などと本で読んだ。そんなことを考えると、よけいに気が重くなりやはり書きたくなくなる。

しかし、なにかきっかけがあると、一気に筆が進むといった経験は誰にもあるはず。
書けない、書きたくない、との差はどこにあるのか。冷静に状況を整理すると、いくつかのポイントがあることに気づきます。止まっていた筆を嘘のように走らせるために、一つずつ状況を整理していきましょう。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。

1.ライティング業務を分解して、それぞれに締め切りを設けよう

ライティング業務を分解して、それぞれに締め切りを設けよう

そもそも人は、目標がないと動くのはむずかしい。サボるわけではないが、そのときに優先順位が高いと判断した案件を優先してしまい、ライティングを「先延ばし」してしまうから。ライティングの完成に明確な期限を設ければ、気になり様は少し変わってくるはずです。

もちろん、ライティングの業務も行う必要があるということが前提ですが、必須となっているのなら、やはり計画立てて進めるべきでしょう。サイトの更新をメインの業務が空いたときでいいと考えておられるのであれば、締め切りはないに等しい。漠然と設定した期限は、簡単に延びる結果に。いくら自分で飴や鞭を準備しても同じことを繰り返すだけでしょう。

書き上げるためには、明確な期限を設けましょう。
明確であることがたいせつで、「~頃」や「月はじめ」といった漠然とした時期はダメです。その期限を守るためには、計画的に進めることが必須になります。終日ライティングに集中できる時間など取れることはないはずですから、①方向性のアイデア出し・決定、②情報・資料収集、③粗構成、④執筆といったステップごとに、目標期限を設けるのです。

設定した日程と項目に、チェックがついていくと少しだけ「やった」感を味わえ、気分も軽くなってきます。
ただ、ひとつ注意点が。
ときに計画通りにものごとは進まないことも多いはず。だからといって、上手くできなかったなどと思わないことです。もちろん、急な仕事で横槍が入ったとしても、目標の計画のことを気にしつつ、どうすればオンタイムに修正できるかを考えるにとどめましょう。あくまで自分にかけるストレスは適度なものに。

2.周りを巻き込んで、書く動機をつくる

周りを巻き込んで、書く動機をつくる

前述したライティング業務の分解のなかで、①方向性のアイデア出し・決定がありました。
おすすめしたいのは、アイデアの段階で同僚や友人などに意見を求めること。もしかすると、「ふ~ん、いいんじゃない」ぐらいの反応しかないかもしれません。でももしかすると、「こっちのほうが良くない?」「これ、加えたらどう?」なんていう、軌道修正やプラスアルファのアイデアをもらえるかもしれません。

それはあなたのアイデアの是非を確認するアクションではなく、共同して良いものを作りあげるために動いているのだという意識をもつこと。そう、意図的にライティングをあなただけの業務ではなく、周りを巻き込んだコンテンツにしてしまうのです。

巻き込まれた仲間は、コンテンツの進捗や出来が気になるし、さらなるアイデアをもらえるかもしれません。そうしてブラッシュアップされていったコンテンツは、きっとターゲットの心をつかむことになるでしょう。
担当のあなたも、周りに意見を求めた経緯から、良い意味でモチベーションも上がらないわけはありません。一人コツコツ、黙々と業務を進めるのではなく、みんなでつくるコンテンツは力強いものになるでしょう。

3.ライティングのためのネタを十分に準備しよう

ライティングのためのネタを十分に準備しよう

アウトプットには、10倍のインプット量が必要だと言われています。
足りない情報をもとに、コンテンツを膨らませるのはむずかしいものです。できないことはないのですが、具体的な表現に至らなかったり、抽象的な表現に終始してしまったりということになりがちです。

どちらかといえば、多くの情報を集めた後に絞り込んでいったほうが、濃密なコンテンツができる可能性は高まります。
たとえば、当社が行っている採用コンテンツの「先輩社員の声」では、つねに1時間強の取材時間をいただきます。決められた質問を繰り返すだけではなく、その先輩がどうすれば輝いて見えるか、就活生たちに格好良く映るかを探りながら、取材を進めていくと、軽く1時間は必要になるのです。
ときに脱線することもありますが、それがきっかけで興味深くなる内容につながったりすることもしばしばで、とにかく先輩に多くを話してもらうことに集中しています。

そこまでネタを集められれば、どう料理するかがシェフの腕の見せどころ。結論へのルートはいくつもありますが、引きが強くなる見せ方を模索することはライティングの醍醐味です。良い素材(ネタ)を集めて、ライティングの面白みを味わってください。

4.何を伝えたいかをイメージしよう

何を伝えたいかをイメージしよう

カメラマンは撮影するときに、写真を通じて何を伝えたいかを考えてから仕事に入ります。おそらく、この点がアマチュアとプロの大きな違いかもしれません。スマホが高機能化したことで、見たものをカンタンに撮れるようになりました。しかも、美しい結果も伴って。ただ、それが人に伝えたいことがあるから撮っているわけではないのです。

ライティングもまったく同じ。
そのコンテンツを通じて、何を読者に伝えたいか。あなたの意思をコンテンツのコンセプト、方向性に据えてください。その意図が読者に伝われば、ターゲットの心を動かすことができるし、伝えたいことが明確にした写真はSNSで共有されることになるでしょう。

いちばんいけないのは、なんとなく。
はっきりとした意図を持てば、相手を動かすことができるし、それを目指すあなたのモチベーションもあがることになります。伝えたいことが定まれば、そのためのデータ、情報も自ずと見えてくるはず。ライティングのスピードも上がるのではないでしょうか。

5.完璧なコンテンツを目指さない

完璧なコンテンツを目指さない

初稿から完璧なコンテンツを目指すことをやめましょう。
WEBのコンテンツは印刷物と違い、修正ができます。完璧なものを目指すがゆえに、気が重くなり、書けなくなってしまう。この悪循環を断ち切ることこそ、書けないあなたを克服するための考え方です。

何を隠そう、このコンテンツもリライトしています。リリースから数年後、読み返してみると、「響かないかもな」と感じる部分があり、大幅に書き換えました。

社内の手続きが面倒・・・ということがあるかもしれませんが、その点はぜひ社内を説得していただきたい。ブラッシュアップした、より良いコンテンツ案を提示すれば、きっと賛同は得られるはずです。
あなたが作り上げたコンテンツをより愛着のあるものにし、かわいがってあげると、それは読者にも伝わります。①完璧主義をやめること、②リリースしたコンテンツを見直すこと、③躊躇なくリライトすること。この3点をしつこく繰り返してみましょう。読者の反応が良くなれば、書くための動機が生まれてきます。

書けないを克服すると、文章の質もアップする

書けない状態を抜け出せれば、文章の質が向上する

30年前までは、多くの人にものごとを伝えようとすると、印刷物や映像メディアしかなかった。自前で製作した印刷物など、影響の及ぶ範囲などたかが知れていました。TVに取り上げられるなど、宝くじに当たるようなものです。しかし、ネットが普及することで誰も知らなかった企業が脚光を浴びることが起きるようになってきたのです。

あなたの所属する企業も、その可能性があるのですから、ぜひ一攫千金(笑)をねらっていただきたい。どの企業にも可能性はありますので、競争は激しくなってきています。しかし筋トレと同じように、ネットはあなたの努力を裏切らない。

私の尊敬する社長は、「毎日少しずつでも改善を重ねられるかどうかが、上手くいくかどうかの分かれ目だ」と言われています。ほんの少しずつでも、工夫をすることがあなたの「書けない」を克服するカギであり、文章のクオリティをアップさせる根源になるはずです。ぜひ、今回ご紹介した5つのヒントを試してみてください。

コラム「コピーライティング」

オウンドメディアで始める、ブランディング戦略

専門家としての知見を掲示すれば、オウンドメディアは成功する

オウンドメディアとは、企業が企画運営を担当する広報メディアのことであり、ウェブサイトはもちろん、ブログ、SNSなどを指します。ネット上ではユーザーにとって有意義なコンテンツが勝利するので、中小企業も大企業を凌駕することも十分にあり得ます。顧客層を拡大したい、狙ったターゲットにメッセージを伝えたいなら、すぐにでも始めるべきツールです。

当社もこのコラムのコンテンツを通じて、何社も新規顧客を獲得してきました。
顧客候補にとって、信頼を得るに足りる内容があれば、製品、サービスに対して引き合いが入ってくることを経験しているからこその考え方、方法論をお伝えしていきます。

オウンドメディアを運営するメリット

1.自社の考え方(価値観)を伝えられる

オウンドメディアを通じてコンテンツを追加していくことで、自社の価値観やストーリー、その分野に対する知見の広さ、実績などを伝えることができます。

たとえば、価値観。オウンドメディアを通じて、ダイレクトに製品・サービスの売り込みをしないほうがいい。ただし、その事業が生まれた背景、実現したい意義(価値観)を伝えることはやっておきたい。あなたの会社の価値観に共感してくれる顧客候補は、コーポレートサイトにある製品・サービスのコンテンツに興味を持ってくれるかもしれない。
その場合、次のようなステップを踏んで語っていくことをおすすめします。これは経営コンサルタントのサイモン・シネックがTEDのなかで提唱した理論で、人はWHY、HOW、WHATの順で話をすると説得されやすいというもの。

A.なぜ、その事業は生まれたのか(WHY)
B.ミッションを実現するために、どのような方法を採っているか(HOW)
C.結果生まれた製品・サービスは顧客にどのような価値をもたらすのか(WHAT)

ゴールデン・サークル理論(YouTube)


 

2.知見の広さを披露し、新規客を集める

その道の専門家集団である企業には、事業に関する幅広く深い知見が集まっています。その情報を知りたい人に向けて、ていねいに説明してあげることで、御社のステータスは上がります。しかも専門家集団ですから、いくらでも説くネタはあるはあずです。
とはいえ、オウンドメディア担当の悩みは、「何を取り上げたらいいか」でしょう。なぜ方向が定まらないか、なぜ筆が進まないのかといえば、聞きたいと考えている人に尋ねていないから。これまでの顧客とのコミュニケーションのなかで交わしたはずの話題を忘れているから。
当社のクライアントに製品サービスの説明文を求めても、興味をそそられる文面は出てこないのに、取材をするといくらでもネタを引き出せるのと同じです。ごく些細なことでもいいのです。必ずそれを求めている人はいるし、それによって御社の専門家としてのステータスは上がるのですから。


 

3.自社ならではの実績を伝え、共感を呼ぶ

たとえば、顧客との程よい距離感を大切にする接客業の場合。
店舗で日々起こる顧客とのコミュニケーションやエピソードを自社の理念に基づいたアレンジで伝えましょう。
サービス業にとって、顧客とのコミュニケーションの質は、生命線ともいうべきものであり、顧客側にも心地よいもてなしをしてくれる店を探しているセグメントが一定数存在します。この関係を取り持ってくれるのが自社運営の嘘偽りのないオウンドメディア。そのサービスを経験したいと思う顧客候補が店のドアを開いてくれるようになります。


 

4.顧客を選べるようになる

自社が得意とする分野に興味を持ってくれる顧客を開拓したいと考えているなら、その分野に関するコンテンツを深く発信していくべきです。これまで見てきたように、業界の一般的な話題ではなく、狭くても自社の得意な部分のコンテンツを発信していくことで、そこに興味を持つ顧客候補がオウンドメディアに集まります。

つまり、オウンドメディアは新規客を選別する集客装置でもあるのです。

当社であれば、ブランデイング、SEO、コピーライティング、WordPressを用いたシステム構築といった分野のコラムを数多く発信していますので、この分野に対する引き合いが集まります。WEB企画制作が主たる事業となっていますが、オウンドメディアで発信している分野を集中させているので、そうなるわけです。それでも、その戦略は成功していると考えています。それが当社の得意分野ですから、受注率も高くなります。


 

5.SEO効果も絶大

Googleは、検索結果の上位表示の条件として「検索者のためになる」こと、「スペシャリストとしての知見」を挙げています。これまで述べてきたように、自社の専門知識や実績をオウンドメディアに蓄積していけば、Googleの評価は必ず上がります。それは自社サイトへの集客へとつながり、まだ見ぬ顧客へのアプローチに強力に貢献してくれるようになります。


 

オウンドメデイアでブランディングを推進

コーポレートサイトのリニューアルを検討されている担当者で、「それならフレイバーズだ」と思ってくれる方は残念ながら一人もいません(既存のクライアントは別)。世の中の同業者も同じ状況にあります。ではなぜ、当社は生き残れているのでしょうか。

コンペで偶然気に入ってもらえた、見積もりが安かった、担当者の食い合わせが悪かった・・・

そんなはずはありません。
自社の優位性をきちんと説明し、そのポイントが担当者の望むものと合致していたからです。ブランディングで策定するブランドアイデンティティを打ち出し、コンペの要件にフィットさせてきたことが理由だと考えています。

知名度の低い中小企業であっても、ブランディング戦略に即したオウンドメディアを運営することで、自社の独自性や魅力を振り返り、伝えることができます。顧客からの共感を集め、ロイヤルティを高める。ブランディング戦略の中核に、オウンドメディアを活用することで、顧客とのコミュニケーションを強化、また顧客候補とのコミュニケーションを行うことになります。コラムやSNSを通じて、顧客との対話を行うことで、顧客のニーズや要望を把握しやすくもなります。より顧客中心のサービス提供にもつながるでしょう。

これらの結果を社内で共有すれば、社員レベルでも顧客への理解が深まることもオウンドメディアを運営するメリットのひとつです。社内外でブランディングの効果を発揮するオウンドメディアは、会社の規模を問わず活用できるツール。ぜひ、社内でも導入の検討、運営の改善を行ってください。

コラム「オウンドメディア」

中小企業のブランディングとは?成功させる5つのメリットと実践方法

中小企業の経営者

コラムの冒頭ではありますが、中小企業こそブランディングの成果が出やすい ── このことを、経営者の方に強く伝えたいと思います。実は「中小企業 ブランディング」の成功は、大企業よりも早く、そして深く実感できるのです。

なぜかといえば、ブランディングは、ロゴや広告のような“外向き”ではなく、社員の意識や行動を変える「内向きの取り組み」が核。この「人を動かす力」が問われる活動こそ、中小企業の規模感に最も適しているのです。
具体的に言うと、ブランディングを進める過程で、ブランドアイデンティティやミッション、理念などを社内に浸透させようとするとき、社内を変えていかないとそれは成功しない。しかし、それをスムーズに進められないのは「人を動かす」ことが容易ではないからです。

中小企業なら、数人~百人ほどの「人を動かす」だけで済みますが、大企業となると千人~数万人規模で浸透させなければなりません。どれほどの労力、時間が必要でしょうか。さらに中小企業であれば、経営者の目の届く範囲に社員はいますが、大企業になると経営者が名前を知らない社員がほとんど。この環境下で、全社員に同じ方向を向かせるのは簡単ではないわけです。

中小企業の経営者であるあなたに、もうひとつ伝えたいことがあります。
御社にも、まだ気づいていない、言葉に落とし込めていないだけで、すでにしっかりした「ブランド」があります。それをフレームワークなどを使って、ていねいに内省し、社内の合意を得ていくプロセスがブランディング。このプロセスを経ることが、次に挙げるメリットを生むのです。

中小企業がブランディングを実施するメリット

1. 認知度の向上

ブランディングは、企業や製品の認知度を向上させるための手段でもあります。正しいブランディング戦略を持つことで、顧客は企業や製品を認識しやすくなり、購買意欲が高まります。とくに中小企業の場合、知名度を上げることは新規顧客を獲得するうえで非常に重要なポイントとなります。

星野リゾートの星野佳路社長が、まだまだ今のような規模でなかったとき、リピーターを徹底的に調査しました。なぜこの旅館に繰り返し来てくれるのか。そこには確固たる理由があるはずで、その理由が分かれば、まだ見ぬ同じ価値観を持つ顧客にも訴求すれば、新規客が増えるはずだと。
星野社長は、経営学の権威が主張する理論を徹底的に実践することで有名なので、おそらくブランディングの理論にどこかで触れられたのだと思います。その結果は、あなたもご存知のとおり。まだ中小企業だった星野リゾートが成長する源泉にもなったのです。


 

2. 競合他社との差別化

競争が激しい市場では、自社の製品やサービスを差別化することが生き残る条件です。ブランディングのプロセスで最初に行うフレームワークはクロス3C。顧客が求める購買条件のひとつを自社だけが持つ優位性で賄えるかを確認する作業(ブルー・オーシャンを見つける)です。他社も同様の優位性を持っているなら、それはレッドオーシャン。血の雨が降る海ですから、消耗戦になってしまいます。体力のない中小企業は、ここで戦ってはいけません。

ブランディングを通じて、企業は独自の優位性に基づく価値提案や個性を表現し、競合他社との差別化を図ることができるようになります。また、顧客にとっても、製品を選ぶ理由が明確になるのです。


 

3. 信頼とロイヤルティの構築

正しいブランディングは、顧客との信頼関係を築く基盤となり得ます。企業が一貫したメッセージや価値観を伝えることで、顧客は安心し、継続的な購買や応援をしてくれるようになります。もちろん、つまみ食いはするかもしれませんが、結局あなたの会社で得ていた満足感を消し去ることはできず、再度顧客として戻ってくるようになります。

ブランディングは、LTV(顧客生涯価値)を多く生み出してくれる顧客が多く現れる可能性を秘めています。言い換えれば、自社を長く継続させるための施策とも言えるのです。


 

4. 成長と展開の支援

あなたは融資を受ける際、金融機関の担当者に自社の強みを胸を張って語っているでしょうか。金融庁は、中小企業への融資について、現状だけを見るのではなく、将来性も含めて勘案するように通達を出しています。
ブランディングを行うことにより、自社の優位性、自社を端的に表現することができるようになり、金融機関の担当者の記憶にも残りやすくなるでしょう。

ブランディングは、企業の成長や発展をサポートする重要な施策。正しいブランディングを推進する企業は、新しい市場や顧客層に訴求しやすくなるのです。


 

5. 社員が考えはじめる社風をつくるきっかけに

フレイバーズがコンサルティングするブランディングは、プロジェクトチームを導きますが、決して答えを教えることはしません。すべてのプロセスでプロジェクトメンバーは、悩み、考え、ときに言い合いをしながら、自ら答えを導き出していきます。

中小企業にありがちなのは、トップの指示を実行するだけになってしまっている組織。経営者であれば、自走してくれる組織に変革しないと、社長が本来やるべき仕事がいつまでたってもできない事態に陥ってしまいます。ブランディングを実行することで得られる副産物として大きいのは、社員が自ら考え動く経験ができることと、視座を高く持てるようになること。
ブランディングは、通常の業務では果たせない社員教育にも寄与してくれるのです。

インターナルブランディングの進め方

中小企業が輝く存在であるために

日本の全労働人口の70%を占める中小企業。日本にとって、この大きな存在である中小企業が元気で輝いていないと、この国の将来は危ういものになってしまいます。
これまでみてきたように、ブランディングは中小企業にとって厳しい市場で成功するために欠かせない要素であり、十分に検討する価値がある施策です。経営者は、今だけを見るのではなく、20年後この会社をどうしたいかを考えるのがほんとうの仕事。今いる社員のために、ぜひブランディングの導入をご検討ください。

中小企業庁「中小企業白書」:第1節 ブランドの構築・維持に向けた取組

社員の意識と行動が変わる!社内ブランディング成功の進め方とつまずきやすいポイント

同じ方向で考えられる社員を育てるのが社内ブランディング

社内ブランディング(インナーブランディング、インターナルブランディング)とは、社内に向けて自社のブランドや理念、ビジョンなどを伝える活動のことで、社員のエンゲージメントや生産性、ブランドイメージを向上させるための活動こと。社内における一体感(全社が同じ目標を持ち、理想の姿の達成に向けて各担当業務を実行)の創出、社員のロイヤリティ向上、競合他社との差別化戦略を実現するために行います。

社内ブランディングの実施は社外向けのブランディングとは異なり、対象が社員(人)となるため、難しい面も多々出てきます。しかし、これを実現しない限り社外向けのブランディングが成功するわけはなく、ブランディングにおいて最も注力すべきことだといえます。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

このコラムでは、「社内ブランディング」の基本とその効果、成功のポイントについてわかりやすく解説しています。社員がブランドを正しく理解・共感することで、行動や意識が変わり、組織全体の一体感やパフォーマンスが向上するという考え方がベースです。具体的な取り組み方や、実施時に注意すべき点も紹介されており、これから社内ブランディングを導入・強化したい企業にとって実践的な内容となっています。

社内ブランディングのプロセス

冒頭で述べたように、社内ブランディングの対象は社員。つまり、自社の社員といえども「人」を動かすことになるので、高圧的に指示を出しても上手くいくことはありません。ステップを踏みながら、実行する雰囲気を醸成することが肝要ともいえます。
社内ブランディングを実行する初期の段階から、社員を巻き込みながら自ら考えていく環境を作っていくことがその後の浸透スピードを左右することになります。

1. 自社の現状を把握する

まず自社の強みや弱み、市場でのポジション、社員の満足度やエンゲージメントなどを調査し、自社の現状を把握します。社内外のステークホルダーからのフィードバックや、社内のデータ分析などを活用して、客観的な情報を収集できれば、その後の方向修正が少なくて済みます。

2. 浸透させるべき企業理念やビジョンの検討

次に、自社が目指すべき理想の姿を言語化して明確にします。この段階では、経営理念やビジョン、ミッション、バリューなどを定義し、社員に伝えたいメッセージを整理します。
また、自社のブランドアイデンティティやブランドパーソナリティなどを設定し、自社の特長や個性、風土などを表現します。

3. 具体的な施策を決定する

目標となる理想の姿を実現するために、どのような施策を実施するかを決定します。社員の理解や共感を得るためのコミュニケーション手法やツールを検討し、実行可能なアクションプランを作成します。
また、施策の効果を測定するためのKPIや評価指標を設定し、定期的にモニタリングやフィードバックを行っていきます。

4. 実行・評価・改善を繰り返す

決定した施策を実行し、その効果や反響を評価し、改善を継続していきます。社内報やイントラネット、社内SNSなどのメディアを活用して、経営理念やビジョンなどを社員に伝えます。社内イベントやワークショップなどを開催して、社員の参加や対話を促すことも併せて行いましょう。

社内ブランディングは、一過性の取り組みではなく、繰り返し繰り返し永遠に実施していかねばならない
ものです。社員のニーズや市場の変化に応じて、社内ブランディングの内容や方法を見直し、改善していくことも出てくるはずです。

社内ブランディングと社外ブランディングの違い

対象

社外向けのブランディング(アウターブランディング、エクスターナルブランディング)は、顧客や消費者など、自社の外にいる人たちに向けて行うブランディング。これに対し、社内ブランディング(インナーブランディング、インターナルブランディング)は、社員やパートナーなど、自社の内部にいる人たちに向けて行うブランディングです。

目的

社外向けのブランディングでは、自社のイメージや魅力を伝えることにより、競合他社との差別化やファンの獲得、売上の増加などを目指します。社内向けのブランディングは、企業の理念やビジョン、価値観を伝えることで、社員のエンゲージメントや生産性、ブランドイメージの向上などを目指します。

手法

社外向けのブランディングでは、ロゴやキャッチコピー、広告、PRといった自社の外に向けてアピールするツールを創造し、浸透させていきます。社内向けでは、社内報や社内ポータルサイト、社内イベント、ワークショップなど、社員とのコミュニケーションに重きをおき、深めることを目的とします。

社内ブランディングのメリット

社内の一体感創出

社内ブランディングによって、社員が自社のビジョンや価値観を共有し、それを自らの行動や考え方に反映させることで、社内に一体感が生まれていきます。これは社員のモチベーションや働きがいを向上させ、組織としての協働や団結が促進することにつながります。

従業員ロイヤリティの向上

社内ブランディングによって、社員が企業に対してたくましい忠誠心を持つように。ロイヤリティの高い社員は、自発的に企業のために最善を尽くし、自社がめざす理想の姿を実現するべく、顧客満足度の向上に直結するようなサービスの提供を心がけます。
また、社員が企業に誇りを持つことになるので、その姿勢が顧客にも伝わり、ブランドイメージの向上にも寄与します。

競合他社との差別化につながる

社内ブランディングによって、社員が自社の製品やサービスを積極的に支持し、外部の人々に推奨することができます。これによって、社員自身が強力なマーケティングツールとなるため、広告やプロモーションに費やすコストを削減しながらも、効果的なブランディングを実現することが可能になります。

社内ブランディングを実施する際の注意点

意外なことかもしれませんが、社内ブランディングでは、社員の価値観や感情を尊重する姿勢が大切です。社員という一人の人間を動かすためには、ていねいなコミュニケーションが成果を左右します。逆に、抵抗勢力(現状維持派)は一定期間放置することも考えてください。徹底的に無視するわけではなく。社内が変わりはじめ、ざわついてくると、抵抗勢力も置き去りになるのは嫌なので、気になってくるものです。その機を見計らって賛同者に変化させます。

社内ブランディングは、一過性の取り組みではありません。継続的に行うことで目的を超えていけるようになります。社内ブランディングの効果や反響を定期的に測りながら、フィードバックや改善案を検討し実践することで、施策の効果を高めていきます。

くわえて、社内外のブランドメッセージは統一しておきます。社内で伝えているメッセージと社外で発信するメッセージが矛盾していては社員の混乱、不信を招くことになります。