コラム(WEB制作のポイント)
サイト運営 2025年5月12日
中小企業のためのWEBサイト改善術:成果へつなげる5ステップ
中小企業にとってWEBサイトは営業や採用などにおいて、知名度の高い大企業よりもずっと重要な役割を果たす「顔」のような存在。しかし、社内に専門のWEB担当者がいない、更新や改善のノウハウが不足しているという理由から、改善が後回しになってしまっているケースも少なくありません。この記事では、「感覚で気づける」ことから始めて、「成果につながる」までの実践的な改善の流れを5つのステップで紹介します。
1. まずは「なんとなく」でOK:感覚的に改善ポイントを挙げてみよう
WEBサイトの改善というと、「データに基づいた分析が必要」「専門家の意見が不可欠」と思われがちですが、最初の一歩はもっとシンプルで構いません。まずは、自分がそのサイトを使って「なんとなく使いづらい」「読みにくい」「迷う」と感じるポイントをリストアップすることから始めましょう。
例としては以下のような視点があります
- スマホで見たときに文字が小さすぎる
- メニューの場所がわかりにくい
- 問い合わせフォームが長すぎて入力する気が失せる
- 古い情報が載ったままになっている
また、自分ひとりの視点だけでなく、家族や社内の同僚、友人などに「このサイトどう思う?」と見てもらうことも大切です。とくにWEBに詳しくない人の意見は、実際のユーザーに近い視点での気づきを与えてくれるから。
そして、この段階で「自社サイトの目的」を再確認しておくことも重要です。問い合わせを増やしたいのか、採用エントリーを増やしたいのか。目的がはっきりすれば、どこを重点的に見直すべきか、最終目的のためにこの部分はどうあるべきなのか、あるいは重箱の隅を突くような改善は今は必要ないのかが明確になります。
2. 仮説を立てて小さく改善:改善案を実行する
改善ポイントが挙がったら、それぞれについて「こうすれば良くなるのでは?」という仮説を立てて、小さく改善してみましょう。完璧なデザインや文章をいきなり作ろうとする必要はありません。大切なのは、スピーディに、そして現実的な範囲で改善を進めることです。
例えば、以下のような施策
- 問い合わせボタンの色を目立つ色に変える
- トップページに問い合わせへの導線を明記する
- スマホ用のフォントサイズを調整する
- フォームの入力項目を3つに減らす
改善を実施する前には、必ず現在の状態を記録しておきましょう(スクリーンショットやメモなど)。こうしておくことで、後で「改善の前後でどう変わったか」を比較しやすくなります。
CMS(WordPressなど)を使っていれば、ある程度の編集は自社内でも可能です。外部に依頼する場合も、ピンポイントで「ここだけ変えたい」という要望が出せれば、コストも抑えられます。
3. Googleアナリティクスで結果をチェックする
改善を行ったら、最低でも2週間〜1ヵ月ほどは様子を見ましょう。そのうえで、Googleアナリティクス(GA4)を使ってアクセス状況を確認します。
見るべきポイントは以下のようなものです
- セッション数:訪問者数に変化はあるか
- 平均エンゲージメント時間:サイト内での滞在時間が増えたか
- 離脱率:特定ページからの離脱が減ったか
- コンバージョン数:問い合わせや資料請求が増えたか
たとえば「フォームを簡略化したらコンバージョンが増えた」など、仮説に対する結果が数値として見えてきます。もし数字に変化がない場合でも、それは「効果がなかった」という大事な情報です。次の施策を考えるヒントになります。
※セッション数
ユーザーがWebサイトに訪問してから離脱するまでの一連の行動を「1セッション」としてカウントします。ページを複数見ても、離脱するまでが1回のセッションとされます。
※平均エンゲージメント時間
訪問者がWebサイト上で「実際にアクションをしていた時間」の平均値です。単に滞在しているだけでなく、スクロールやクリックなど、積極的に見ていた時間を示します。
※離脱率
ページを最後に見てサイトを離れたユーザーの割合です。特定のページで多ければ、そこに問題がある可能性があります。
※コンバージョン数
訪問者がWebサイト上で目的の行動(例:問い合わせフォーム送信、資料請求、購入など)を完了した回数です。
4. なぜその結果になったのかを考える
数字を見て終わり、ではありません。最も重要なのは、「なぜその結果になったのか?」を自分なりに考えることです。
たとえば
- CTAボタンを赤に変えた → クリック率が上がった → ボタンがより目立つようになったから?
- フォームを短くした → コンバージョン率は変わらなかった → 実は入力項目ではなく、誘導文が問題だった?
このように、うまくいった場合でも、そうでなかった場合でも「仮説と結果のズレ」を見つけて言語化するクセをつけると、次の改善の精度が上がります。
また、成功した施策は再現性のある手法として記録しておきましょう。今後、他のページや別のプロジェクトにも応用できます。
※CTA(Call to Action)
WEBサイト上でユーザーに特定の行動を促すボタンやリンク、テキストのこと。たとえば「お問い合わせはこちら」「資料をダウンロード」「無料で試してみる」などがCTAです。ユーザーのアクションを引き出し、コンバージョンにつなげる重要な要素です。
5. ヒートマップで「もっと伝わる」改善を
Googleアナリティクスでは「何人が見たか」は分かっても、「どう見たか」はわかりません。そこで活用したいのが、ヒートマップツールです。
ヒートマップを使うと
- ページ内のどこが注目されているか(クリックやスクロールの位置)
- どのコンテンツが読まれていないか(すぐにスクロールされている)
- ユーザーの視線が止まるポイント
などが一目でわかります。
たとえば、「重要な説明文が下の方にあって読まれていない」なら、順番を入れ替えるべきですし、「ボタンの直前で多くのユーザーが離脱している」なら、説明が長すぎるか、信頼感に欠ける表現になっているのかもしれません。
無料で使えるツールもあるので、まずは1〜2ページから導入して、ユーザーの動きを「可視化」することから始めてみてください。
よくある失敗例:リニューアルだけして満足してしまう
中小企業のWEB改善でよくある失敗のひとつが、「サイトを一新したことで満足してしまう」ことです。見た目を整え、最新のデザインにしたことで「これで完成」と思ってしまい、その後の検証や改善が行われないケースは少なくありません。
リニューアルはあくまでスタート地点であり、本当に大切なのはその後の数値の変化を見て、仮説を立てて再調整する作業です。新しいデザインが目的を達成しているかどうかは、ユーザーの反応やデータを見なければわかりません。
「作って終わり」にしないためには、公開後の動きを3ヵ月単位で振り返るルールを設けたり、改善のための担当者やWEB改善会議を月1回でも設定することが有効です。
馴れない業務を片手間に実施するのは、時間も労力も想像以上にかかります。
とくに中小企業では担当者が兼任であることがほとんど。調査・実装・検証までをすべて自社で完結させるのは現実的に難しいでしょう。
そうしたときには、一部を外注し、専門家の視点を借りながら自社でできる範囲を進めるという方法が、結果的にもっともコストパフォーマンスが良いやり方になります。
外注=丸投げではなく、「方向性の確認」「改善箇所の優先度づけ」だけでもプロに頼ることで、無駄な工数や迷走を防げます。
中小企業が自力でできるWEBサイト改善の進め方
中小企業にとって、WEBサイト改善は「特別な知識」や「高額な外注費」がなくても、感覚的な気づきからスタートし、数値やツールを使って着実に成果へつなげることができます。
重要なのは以下の5ステップを、無理のない範囲で繰り返すこと
- まずは感覚的に「使いにくい」と感じる部分を洗い出す
- 仮説を立てて小さく改善してみる
- Googleアナリティクスで数字の変化をチェック
- なぜ変化が起きたのかを自分なりに考察する
- ヒートマップでユーザー行動を可視化し、さらに精度の高い改善へ
このように、「感覚 → 実行 → 分析 →再改善」の流れを継続することで、中小企業でも自社WEBサイトを成果につながる営業ツールに進化させることが可能です。
初めから完璧を目指す必要はありません。むしろ「まず動いてみる」ことが、改善への第一歩です。