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オノマトペとは?文章がガラリと変わる、とっておきテク

オノマトペとは?文章がガラリと変わる、とっておきテク

オノマトペとは、「滝がごうごうと流れる」「雨がざあざあ降る」といった、状況をそのまま音で表現した「擬音語」と、「ギクリとする」「シーンとなる」など、ある状態をその音の持つイメージで表現した「擬態語」をひとまとめに指す言葉である。
オノマトペという言葉を聞いたことがない人も、「ぐんぐん」「ぴかぴか」「ふっくら」「きらり」など例を挙げられれば「ああ、あれのことか」とすぐ分かるだろう。それほどオノマトペは私たちの生活になじみ深く浸透しているのだ。

文章を書くときには知らず知らずのうちに使っていることが多いが、そのしくみと効果を知って使えば、より文章がイキイキとしたものになる。ぜひ意識的にオノマトペを使いこなしてみてほしい。

オノマトペの法則

オノマトペの法則

一見無秩序に日本語の世界に散らばっているように思えるオノマトペだが、実はある法則をもとにして体系立ててとらえることができる。

例として、柔らかさや軽さを表現する「ふわ」についてとりあげてみよう。
「ふわ」に「り」をつけると「ふわり」、また「—」を付け加えて「ふわーり」とすると、目の前で物体が動いているような臨場感が出てくる。

「ふわ」を繰り返すと「ふわふわ」→柔らかさが連続して繰り返される感じ。
「っ」をつけて「ふわっ」→瞬間的な軽さを感じ、その印象を深く残す。
「濁点」をつけて「ぶわ」にすると、「ふわ」にあった軽さがなくなり、ごわついてふくらんでいる感じに。「きら」→「ぎら」や「とろ」→「どろ」でも分かるように、濁点がつくと、強さや重さ、悪いイメージ等に結びつくことが分かる。
さらに、ひらがなで書くかカタカナで書くかも、イメージを微妙に左右する。

このように、ひとつの「オノマトペのもと」から、いくつものバリエーションが生み出される。オノマトペを使うとき、「キラリ」がいいのか「キラッ」がいいのか、はたまた「ギラリ」が合うのか「ギラギラ」が合うのか・・・適当に書くのではなく、表現したい状況にピタリとハマるもの、より状況を印象深くする表現に、ぜひこだわって選んでみよう。

オノマトペのある文章、ない文章

オノマトペのある文章、ない文章

オノマトペは状態を感覚的に表す言葉なので、これを使うことで「読む人の感覚に訴える文章」になる。正確性や客観性が求められるような論文やレポートには、あまり向かないと言えるだろう。
逆に、商品やサービスのセールスコピーには向いていると思われる。これを使ったらどんなメリットがあるかを消費者に感覚的に訴えることができれば、強力な武器になるからだ。
たとえば、クレームブリュレを紹介するこんな文章を例に、オノマトペの効果について検証してみよう。

A.オノマトペあり

とろりなめらかなカスタードクリームの上に、ザラメを散らしてこんがり焦がしたクレームブリュレ。表面をスプーンで叩くとコツコツといい音が。カラメルの層をパリリと割ると、ふわふわのクリームとザクザクのカラメルが舌の上でとろけます。

B.オノマトペなし

なめらかなカスタードクリームの上に、ザラメを散らしてきつね色に焦がしたクレームブリュレ。表面をスプーンで叩くと小気味よい硬音がします。カラメルの層にヒビを入れて割ると、軽い口溶けのクリームと硬い食感のカラメルが舌の上でとろけます。

Bでも間違いはないのだが、読みやすさといい、イメージのしやすさといい、食べたくなるのは圧倒的にAではないだろうか。

オノマトペとは?文章がガラリと変わる、とっておきテク、後半は

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あなたのコピーがガラリと変わる、誇張表現の3つの作法

あなたのコピーがガラリと変わる、誇張表現の3つの作法

商品の良さを伝えるコピーづくり。他社よりも優れているのは事実なのに、なかなかそれを伝えることができなくて、四苦八苦しているコピー担当者は多いだろう。
「とてもおいしいです」では食べてもらえず、「ぜひ来てください」では来てもらえない現実に、どう対処していけば良いのだろうか。
その答えとなりうる文章表現のテクニックのひとつが、「誇張表現」である。「それほどまでにすごいのなら、食べてみたい」「行ってみたい」と思わせる、コピーを書く際にはなくてはならない存在だ。
「誇張表現」についてお伝えするなかで、参考になりそうな例もなるべく多く挙げてみたい。コピーの書き方で悩める担当者のお役に立てば幸いだ。

買う気のない人に、つい買わせちゃうコピー

買う気のない人に、つい買わせちゃうコピー

「誇張表現」とは、現実ではありえないような、大げさな表現で伝えること。
あ、今な〜んだと思った人、即刻態度を改めていただきたい。ほうほう、と身を乗り出した人、(もしいたとしたらだが)そうそう、その調子。
それほど誇張表現には劇的な効果がある。あなたもその効果を目の当たりにしたことがきっとあるはずだ。

ある雑貨店で見かけた、海苔の商品POP。買う気も必要もなかったのに、コピーを読んだ瞬間、思わず買い物かごに入れてしまった。その文面がこちら。
「ノリの違う海苔。パンチの効いた味と海苔にあるまじきしなりが生み出す食感に、はまる人が続出するご当地海苔。一度食べるともう他の海苔に浮気できません」
むむ、海苔にあるまじきしなり!?浮気できなくなる?海苔好きの筆者としては、これはもう食べるしかない!と思ってしまった。
これが「食感の良さが特徴です」などと書いてあったら、買い物かごに入れることはなかっただろう。
誇張することをバカにしていると、「つい買わせちゃう」コピーを書くことなんてきっと夢のまた夢なのだ。

誇張することで、読み手にぐっと近くなる

誇張することで、読み手にぐっと近くなる

「誇張表現って、大げさに書き立てて、読み手をあおることでしょう?いやだな、そんなの」というあなた。平坦なコピーであれば誰からもダメ出しされない代わりに、売れることもない。また、読んでおもしろくも何ともない。買いたい気持ちがあって商品の説明を読みに来てくれた人に対して、そんなものを読ませるのは不親切ではないだろうか。
たとえば、下記のような商品コピーがある。

A.
八ヶ岳山麓に佇む高原リゾートです。豊かな自然と、イタリアの有名建築家による建築デザイン、そして地元八ヶ岳の食文化。お子様連れでもくつろげるファミリーリゾートをコンセプトに、さまざまなアクティビティをご用意しています。

B.
日本を代表するデザインホテルはお洒落な宝箱。大波が寄せるプールやブックス&カフェ、鮮やかな高原イタリアンにスパトリートメントなど極上の休日スタイルが。ファミリーも惹きつけるアクティビティの数々に心躍ります。(星野リゾート)

Aは最初から最後まで平坦で優等生的な表現だが、Bは「宝箱」「極上の」「心躍ります」といった誇張的な表現が入っている。そうすることで文章に強弱がつき、商品もイメージしやすくなり、結果的に読み手にフレンドリーになっている。

他にも、グルメリポートで有名な彦摩呂さんの名言も誇張表現である。
「肉汁のナイアガラや〜」なんて笑ってしまうけれど、とんでもない量の肉汁がじゅわ〜っとあふれている画がすぐに思い浮かぶ。誇張表現には、良さを伝えるだけでなく、ラクに読めてコピーを面白くするというメリットもあるのだ。

エレガントに誇張するための3つの作法

エレガントに誇張するための3つの作法

商品を説明するコピーに誇張表現を使うとき、気をつけたいことは3つある。

1つめは、誤解を与えるような誇張はしないこと。
言うまでもないことではあるが事実でないことは書かない。少しの想像や願望が混じってもいけない。事実から発想してオリジナルの表現で書く、これは書き手として最低限のマナーであり、ルールだ。
また、「抜群の」とか「最高の」といった言葉を使う場合には、比較対象となるものがはっきりしていなければならないので気をつけよう。
効果的に、しかも正しく誇張表現をするためには、商品に対する深い知識と愛情が必要不可欠なのだ。

2つめは、誇張するポイントを吟味すること。
誇張表現は正しく用いれば素晴らしい薬だが、誤用すれば毒になる。
ポイントを絞らず全体的に誇張すると、急にうさんくさいコピーになってしまう。その商品の優れた点や、なぜ優れているのか、その理由…。スポットライトを当てたいポイントを絞り、そこに向かってバシッと効かせるようにしたい。

3つめは、決まり文句に頼らないこと。
オリジナルの表現で、できるだけ具体的に誇張することだ。使い古された常套文句では、読み手に「!」と思わせる劇的な効果が得られないからである。

参考のために、良例をいくつか挙げてみたい。

  • もちろん、マグロも申し分なくおいしいのだが、ボラの卵、特に「イル・バカロ」のパスタは、今までの経験を吹き飛ばすぐらいのレベル。
    ——平松玲「ローマでお昼ごはん」より
  • キャップを取ると、磨き込まれた流線型のペン先が現われ、それは見ているだけでも胸が高鳴るほどに美しく、持ち手の裏側にはその曲線によく似合う筆記体で、私のイニシャルYHが彫ってあった。
    ——小川洋子「偶然の祝福」より
  • 今振り返っても、博士が幼い者に向けた愛情の純粋さには、言葉を失う。それはオイラーの公式が不変であるのと同じくらい、永遠の真実である。
    ——小川洋子「博士が愛した数式」より
  • いや、そのトマトは本当においしかったですね。もちろん暑さの盛りで、喉がからからだったということもあるんだろうけど、その自然な香ばしさ、汁気の多さ、さくっとした歯触り、美しい色、どれをとっても、僕がこの生涯で食べた最高のトマトだった。太陽の匂いが芯まで惜しみなくしみ込んでいた。
    ——村上春樹「村上ラヂオ3」より

これらの例は、誇張している部分だけを切り取ると、聞いたことがあるフレーズかもしれない。しかしオリジナリティや具体性は少しも損なわれていない。
なぜかと言えば、対象への観察のきめ細かさ、いかに独自の視点で深く鋭く対象を見ているか、が伝わる文章だからである。
誇張そのものではなく、「誇張されている内容」を大切にすること。そこに気をつければ、大げさに言っても嫌味がなく、受け入れてもらえるコピーができあがる。

誇張の参考表現、例あれこれ

誇張の参考表現、例あれこれ

商品の良さを伝えるセールスコピーでは、誇張表現をうまく使いこなせるかどうかが売上を左右するといっても過言ではない。
特に、避けて通れないのが「最高程度を表す誇張」の表現だ。
「うちの商品がすごいことは確かなんだけど、それを伝える言い方が思いつかない…」
そんな担当者に、手っ取り早く参考にしてもらえそうな広告の例を以下に集めてみた。先に挙げた注意点を念頭におきながら、すごさが伝わる誇張表現のヒントにしてほしい。

《誇張表現の例》

  • メルセデスの思想と情熱が創り上げた、ラグジュアリーSUVの最高峰。(メルセデス・ベンツ)
  • 醸造家が夢見た、心が震えるほどにうまいビール。半世紀の時をかけ、ついに。(サントリー)
  • お茶の贅沢を味わい尽くす、至福の風味。(ロイヤルブルーティー)
  • この上ない、幸せ。この上ない、ヱビス。(サッポロビール)
  • 希少な素材から創られるあらゆるパーツは、すべてが熟練の職人の手作業によって丹念に組み立てられます。 (パーカー)
  • 日本旅館では、宿それぞれに、歴史、伝統、技、美意識、創造力と趣向を凝らして、お客様をお迎えします。無駄のない小さな空間を磨き上げ、おもてなしを随所に散りばめ、細部まで創り上げられた、宿それぞれの独自の世界。(星のや東京)
  • 荘厳ともいえる佇まい、その比類なき響き。演奏者が求める最高レベルの音楽表現を約束します。世界中の偉大なピアニストたちや音楽大学から圧倒的な支持を受ける、スタインウェイのフラグシップモデルです。(スタンウェイ・ジャパン)

人を説得するパワーに満ちた表現とは

人を説得するパワーに満ちた表現とは

「誇張表現」は、比喩のテクニックのひとつである。非常に程度の大きいものに、もとの何かをたとえることで、その程度の大きさを実感をもって伝えるのが誇張表現だ。何と何を結びつけるかは、『書き手は何と何を似ていると思うのか』とほぼ等しい。
自分であがいて「コレとコレ、似ている!」と発見する、そのとき生まれる感動には、人を説得するオリジナリティや鮮度、パワーがあふれている。一方、人まねや使い古された表現は、残念ながらそのパワーが極めて弱い。

どこかから誇張表現をとってきて、自分のコピーに当てこんでみても、うまくいかない理由はそこにある。
人を説得するパワーにあふれたコピーを書くためには、まずは愛情を持って商品を観察し、独自の切り口で、人に伝えたい美点を見いだすこと。そしてそこから受けた感動にそっくりな記憶を、とにかく自分の引き出しの中から探し出すことなのだろう。
的確で独創的なたとえは、読んで楽しく、気持ちがいい。そういうコピーに接すると、筆者などは喜んでお財布の紐を弛めてしまうのである。

残念なキャッチコピーと名作の例、決定的な7つの差

残念なキャッチコピーと名作の例、決定的な7つの差

どんなキャッチコピーが人々の意識にとまり、購買や来店など実際のアクションにつながるのだろう。

残念ながら正解はコレだ、とひとくくりに断定することはできない。あるときは正解でも、また別のシーンでは不正解になることもあるからだ。ただ、他を押しのけて目立とうとするだけのキャッチコピーや、単に商品のメリットを並べ立てるだけのキャッチコピーは、確実に不正解だと言い切ることができる。

このコラムでは、街で見かけた残念なキャッチコピーからダメな部分を学びつつ、名作と言われるキャッチコピーを例に挙げ、心にとどくコピーたちの共通点を探していきたい。
あなたがもし自社製品を売り込むためのコピー作りに頭を悩ませているのであれば、残念なキャッチコピーたちと同じ轍を踏まないよう、参考にしていただければ幸いだ。

飾りすぎたコピーは、信用できない

飾りすぎたコピーは、信用できない

次のコピーを読んでみてほしい。街で見かけたブライダル関連のコピーだ。

『みんなが驚くくらいに輝いて、生涯忘れられない最高に幸せな瞬間を迎えるために。』

一見きれいにまとまっているように思えるが、率直に言って、このコピーが結婚を控えた女性の心に響く可能性は少ないだろう。
分かりやすい問題点は、形容詞や副詞などの「修飾語」が多すぎること。
短い1文の中に、「みんなが驚くくらいに」「生涯忘れられない」「最高に」と、最上級を表す修飾が3つも出てくる。すると、すごすぎて真実味が薄れてしまった。書き手のハイテンションに置いてけぼりにされてしまった受け手は、せっかくのコピーも「そんなわけないでしょ」と聞き流してしまう。

このコピーから形容詞を省いてみると、「輝いて、幸せな瞬間を迎える」。抽象的でありきたりな内容だけが残った。乏しい中身に大げさな形容詞…残念だがそんな売り文句に反応してくれるほど、消費者は甘くはない。

飾っていないけれど心に届く、名作キャッチコピーの例

ではどうしたらよいのか。ポイントは、あいまいになんとなくぼかすのではなく、ハッキリと言い切ること。具体的に言い表す。そういう意味で、キャッチコピーにまず使いたいのは、大げさな修飾語ではなく「動詞」や「名詞」である。動詞や名詞を使うことで、もやもやしていたイメージが具体的に動き出す。自信を持って言い切ったフレーズに、人は「よくぞ言ってくれた」と爽快感さえ感じることがある。

飾っていないけれど心にまっすぐ届く、有名キャッチコピーの例を下記に挙げてみた。どれも動詞できっぱりと言い切ることで力強さが伝わり、背中をどんと押されるような名作だ。

  • あしたのために、いまやろう。(トヨタ)
  • タイは、若いうちに行け。(タイ国際航空)
  • 働いて、強くなる。(リクルート)
  • 諸君。学校を出たら勉強しよう(日本経済新聞)

カタカナ語や難解な言葉は注意が必要

次は電車の吊り広告で見つけたキャッチコピーだ。

『クールにキメるビジネススタイル モテる大人のカジュアルスタイル』

ビジネス服もカジュアル服も両方良いのがありますよ、と言いたいところなのだが、残念ながら今ひとつ頭に入ってこない。カタカナ言葉が多すぎて、読むのが面倒になってしまうのだ。
元々カタカナ語は日本人の概念にないものを表すために便宜的に使用されてきたもの。読解にワンクッションが必要なのは当然だ。ピンポイントで使うのは良いが、使いすぎれば元も子もないことになる。
同じ理由で、何かしらの意図がない限り一般に通用しないような専門用語や難しい漢語などは避けた方が無難だ。

残念なキャッチコピーと名作の例、決定的な7つの差、後半は

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言葉の感度を高めるヒントvol.2「リズムをつかむ」

言葉の感度を高めるヒント

よい文章とわるい文章の違いはいろいろとあるけれど、読んでみて「心地よいリズムが感じられるかどうか」という点も、ひとつの大きなキーポイントだろうと思う。
よい文章は読み手をひとつの確かな流れに乗せて、目的地まで連れて行ってくれる。途中に緩やかな場所、急流が出てくることもあるが、流れが止まったり途中で途切れたりすることはない。流れに乗って読み進むうちに、自然に内容に引き込まれ、難なく書き手の用意したゴールまでたどり着いてしまう。

文章に心地よいリズムが感じられるかどうか。それだけでよい文章ができあがるわけではないが、必要条件ではあるだろう。
このコラムでは、リズムのある文章とはどんなものか具体的に例を挙げながら、どうしたら読み手を引き込むリズムを生み出せるのかについて考えてみたい。

リズムが自然に浮かび上がる文章とは

リズムが自然に浮かび上がる文章とは

言葉のリズムと聞くと、なんとなく「繰り返し」とか「五七調」などを思い浮かべるかもしれない。確かに、繰り返しや五七調はリズムが良い。では文章中にそういった言葉を折り込めば良いのかというと、決してそんな安易な話ではない。
読者に心地よいリズムを感じてもらうためには、まず大前提として、「折り込んだリズムが浮かび上がる文章」でなくてはならない。あっちこっちで文章につまづき、理解するのに頭をひねりながらでは、リズムを味わう余裕などできっこない。つまり、「リズムが浮かび上がる文章」とは、趣旨が明快で分かりやすく、流れるようにスムーズに理解できる文章のことなのだ。
読者がスイスイ理解できる文章、まずこれをクリアすることが第一関門。
…と簡単に言うけれど、第一関門にして難易度の高さは最大級であることも確か。まずは手始めに、下記4点から徹底してみてほしい。

  • 難しい専門用語は使わない
  • 核心をぼやかさない
  • 大切なキーワードは早めに出す
  • 一晩置いて第三者の視点で読み返す

秀逸キャッチコピーに学ぶ言葉のリズム

テンポよく本質を突いた一言は、ふと口ずさんでしまったり、なぜか心に残って忘れない。
リズムを味方につけたキャッチコピーはそういうものだ。
世に優れたキャッチコピーは星の数ほどあるが、そのなかで筆者の好きなものを少し紹介してみたい。

「やがて、いのちに変わるもの」

やがて、いのちに変わるもの

(ミツカン グループビジョン・スローガン 2004年)
この言葉の背景には、人のいのちをつくる食品を扱う企業としての、並々ならぬ決意と責任がはっきりと見えている。それでいて決して押し付けがましくなく、強くやさしく心に響いてくる。「やがて、いのち、かわる、もの…」難しい漢語やカタカナ語は使わず、すべて丸みのある和語でまとめているせいだろうか。
この言葉を五七調という日本人のDNAに刻み込まれたリズムに乗せることによって、老若男女の心にまっすぐ届くキャッチコピーに仕上げた。お見事というほかない。

「恋を何年休んでますか」

恋を何年休んでますか

(伊勢丹 キャンペーン広告キャッチコピー(1989年)、TVドラマタイトル(2001年))
元々は伊勢丹の広告キャッチコピーだったが、後に連続TVドラマのタイトルにもなり、こちらのほうが記憶している人も多いかもしれない。
毎日仕事や家事、育児に奔走している女性たちへ向けて、ストレートな質問を投げかけたキャッチコピー。問いかけられた方は一瞬ギクリ。鏡を見ればボサボサの髪に疲れた表情…ああ、私恋を休んじゃってる!!と身悶えし、伊勢丹に駆け込む(もしくはドラマに感情移入)というわけだ。
このコピーは7文字の繰り返しになっている。五七調の変形というべきか。

どちらのコピーにしても、最短距離でズバリ本質をついている。それでいて平易で誰にでも分かる。それを五七調にまとめたというだけのことなのだ。

古典文学に学ぶ文章のリズム

古典文学に学ぶ文章のリズム

高校生のときに、源氏物語の書き出し部分を暗唱させられたという人は多いのではないだろうか。何度も同じ部分を音読する作業は、当時憂鬱以外の何ものでもなかったが、今思うと言葉の流れの美しさを教えられた貴重な体験だったと思う。今さら耳にタコかとは思うが以下に冒頭部分を抜粋する。

いづれの御時(おほんとき)にか。
女御(にようご)、更衣(かうい)
あまたさぶらひ給ひけるなかに、
いとやんごとなき際(きは)にはあらぬが
すぐれて時めき給ふありけり。

現代語訳
いつの帝の御世でしたでしょうか。
女御や更衣が
大勢お仕えしていらっしゃるなかに
それほどご身分が高いわけではありませんが
ひときわ帝のご寵愛を受けていらっしゃる方がいました。

読めば読むほど、この2文のなかには1音の無駄もないことがわかる。磨き抜かれた美しい日本語は、心地良いリズムで読者を導きながら、頭の中に瞬時に映像を立ちあがらせていく。そのような文章を、自分も書いてみたいものだと思う。

リズムを感じる文章のために、天才じゃなくてもできること

リズムを感じる文章のために、天才じゃなくてもできること

文章を書きあげたら、削れる所はないか探してみよう。削って削って、これ以上1文字も削れないところまで削り込む。それができたら仕上げに、「音読すること」によってさらに文章を磨き上げたい。完璧だと思っても、音読することでリズムの悪いところ、引っかかるところに気がつくことがある。そこは十中八九、文章に過不足があるところだ。
天賦の才を持ち合わせない我々は、そんな地道な努力を怠らないようにしたい。触れれば手が切れるほどに磨き上げることができたら、自ずとそこに読み手を引き込むリズムが生まれてくるのだ。

言葉のリズム感を育てる、絵本の読みきかせ

言葉のリズム感を育てる、絵本の読みきかせ

筆者は息子に絵本を読んでやることを毎晩の日課にしている。
ひと口に絵本といっても、ストーリー性に優れたもの、図鑑もの、仕掛け絵本、キャラクターもの、絵が素晴らしいけれどテキストは正直言って“?”なもの…実にさまざまだ。なかには文章のリズムが受け入れ難い、という絵本がかなりの確率で存在し、それがまたかなりの確率で彼のお気に入りなのだ。トホホ、である。
そういったトホホな絵本はこっそり本棚の奥の方に隠したりしているが、なぜか彼は定期的に探し出してきて持ってくる。タイトルを見た瞬間、筆者のストレス値は通常の2倍程度に跳ね上がる。
しかたがないのでそのつど即興で不要な部分をカットし、順序を入れ替え、言葉を足して読み上げるのだが、意外にこれがよい頭のエクササイズになるのである。
「この一行は絶対に不要だな」「ここには一言説明が必要だろう」…何十回も繰り返して音読するからこそ見えてくる、リズムを狂わせる落とし穴というのがある。それを「落ちるもんか」とかわしつつ、自分も日頃同じような失敗をしていないか省みるのである。
そして読み終えたらそっと奥に隠し、言葉が丁寧に選ばれた絵本を、彼の目につく場所にさりげなく並べている…。

子供を見ていると、ふとしたときに絵本の一節を口ずさんだり、難しい言葉を知っているなと思ったら絵本に出てきた言葉だったり、ということがよくある。子供にとっては絵本も立派な語学の教科書なのだ。
大人も繰り返し音読することで、言葉のリズム感を磨き感度を高める修練になる。
親と子の双方にさまざまなメリットがある絵本の読みきかせ。「もうイイよ!」と迷惑がられるまで、できるだけ多くの絵本を読んでやりたいと思っている。