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表現力を高める言葉えらび、4つのコツ

きりんそう畑のなかで、はしゃぐカエルのぬいぐるみ

文章による表現は、奥が深い。
もちろんそれがたとえ、少し稚拙な文章であったり単調な表現であっても、内容が伝わらない訳ではない。

ただ、書き手の誰もがどうせ読んでもらうならしっかりと内容を伝えたい、読み手の心のなかに何かを残したい、と願う。

このコラムをサクッと読むだけで今日から表現力が格段にレベルアップするものではないし、筆者も苦手なことを克服するための練習を重ねてきた。しかもまだ毎日悩んでいる。

しかしただひとつ言えるのは、表現力を向上させるのに素質はいらない。トレーニングすれば誰もがある程度までのレベルには到達できる。

このコラムでは、表現力をブラッシュアップさせたいと感じているあなたのために、訓練のヒントになりそうな、使える言葉えらびや表現方法をご紹介していこう。

1.同じ表現でも、言葉を言い換える

新しいスキルと書かれたボード

たとえば、プロジェクトX 風に「・・・とAさんは言った。それに反応して、Bさんは・・・と言った」とストーリーを展開する文章の場合、「言った」の連発になることは避けたい。文章全体の流れはよくても、同じ言葉ばかりが続くと稚拙な印象を与えてしまうからだ。

同じキーワードをたびたび登場させることでSEO効果は確かに高まる。しかし、だからといってSEOのために、読み物としてのクオリティを下げてはいけない。検索上位にランクインしたとしても、コンテンツとしての価値が評価されなければ、最終的には読み手の信頼は得られないからだ。

また、SEOの観点からも類語を使うことには意味がある。Googleは、同じ意味をもつ言葉であれば、「言い換え」として、評価はむしろ加点されるからだ。では、よく使う表現の類語をご紹介しよう。

1-1.「言う」の表現方法

[「○○○」と言っている]
~と述べる/~と語る/~と話す/~と言う/~と伝える/~と物語る/~とつぶやく/~と考えている/~と苦笑する/~と答える/~と応じる/~と振り返る/~と続ける/~と笑う/~という思いがある/など。

1-2.「とても良い」の表現方法

高品質な/興味深い/とっておきの/満足度が高い/上質な/信頼性の高い/待望の/プロ仕様の/本格的な/好評をいただいている/ファンが多い/魅力的な/業界をリードする/格別の/リーディングエッジの/革命をおこす(内容によるが)/至福の/など。

ただ、褒める表現は誇大広告と受け取られないよう十分な注意が必要である。最高の/世界No.1の、といった表現ははっきりとした根拠を記載しなければいけない。以下の言葉を使うときにも注意が必要だ。後に続く言葉によっては使ってはいけない場合がある。
極上の/今までにない/他に類を見ない

2.ありふれた表現は避ける

ありふれた表現は避ける

言葉には、旬がある。
世間で流行りはじめた頃やときどき耳にする程度ならよいが、どこでも目にするようになたら要注意だ。使い古された表現、手垢のついた表現は、かえって印象を悪くしてしまう。それが耳障りのいい言葉であればあるほど、嘘くさく聞こえてしまう。

たとえば、

  • 地球にやさしい
  • きめ細やかな配慮
  • 心に寄り添う
  • 顧客ニーズにマッチした
  • 匠の技 など

例として挙げた5つすべてがどこの企業、店舗でも通じる表現だ。
手垢のついた表現のキャッチコピーのあるページのヘッダー部分をライバル会社のヘッダーと入れ替えても、顧客候補は100%気づかない。そのぐらい、あなたの会社と顧客候補との間のコミュニケーションとしては、圧倒的に力が不足している。

要は、読んでくれる人の心に、あなたの会社特有の「何か」が響くかどうかが大切。時には、耳障りの決して良くない、素朴な表現の方が心に残る場合もあるのだ。

3.文末に変化をつける

文末に変化をつける

小学生の作文が幼稚に聞こえる理由のひとつは、文末が単調なことにある。「今日、お父さんと釣りに行きました。僕はあじを3匹釣りました。お父さんは大きな魚を釣りました。」といった具合。大人の文章では、一文がもっと複雑なためそれほど気にしない方が多いが、文章全体の流れが悪くなる。

それを防ぐためには、たとえば「~します。」は3回以上は連続して使わないとか、「~しました。」「しましょう。」や、「~ということ。」「(名詞)~。」と体言止めを加えることで変化をつけよう。

表現力を高める言葉えらび、4つのコツ、後半は

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話のネタに!面白い語源を厳選「あいさつ&食べること編」

語源

普段何気なく使っている言葉の数々。実はそれぞれに奥深いルーツがある。調べてみると思わず「ほほう」「ふむふむ」を連発してしまう面白い語源も数多い。

多すぎて一度には紹介しきれないので、今回はあいさつにまつわる言葉、食べることにまつわる言葉の2分野に特化して、厳選したおもしろ語源をご紹介しよう。

おもしろ語源「あいさつ編」

おもしろ語源「あいさつ編」

ありがとう

まずは基本から。「ありがとう」、一日に何回言っているだろうか。
もともとは「有り難し」、仏の慈悲など、滅多にない貴重なことを言った。命が救われるような奇跡に遭遇した時、目には見えない神や仏に対して感謝する。そんな切実な想いがこもっていたのかなと思う。昔の人に想いを馳せると、「ありがとう」を言うとき少し神聖な気持ちになる。

謝る、詫びる

現代ではどちらも同じ意味に使われている、お詫びの気持ちを伝える動詞だが、実はそれぞれルーツが異なる。「謝る」はもともと「誤る」という言葉から来ているのだそうだ。自分の非を認めるところからの意味の転用で、「まちがえちゃってごめんなさい」ということだろう。

対して「侘びる」のほうは、「わびしい」などのわび。自分の窮状を訴えるところからの意味の転用で、「こんなに私辛いの、だから許して」ということになる。

政治家は「お詫び申し上げます」とは言うけれど「謝ります」とは言わない。自分の非は認めていないということなのかなと、つい勘ぐってしまう。

指切りげんまん

ゆびきり

これは有名な話なのでご存知の方も多いかと思うが、「指切り」はもともと永遠の愛の証として、遊女が小指を切断し客に渡したことに発する。「げんまん」は「拳万」と書き、約束をやぶったら握りこぶしで1万回打つ制裁をあらわしているのだという。そのあとに「針千本飲〜ます」と続いたら、これはもうホラーでしかない。何しろ裁縫針を1000本ですからね。ブルブル・・・。
恐ろしいので筆者は子供と指切りげんまんはしない。

話のネタに!面白い語源を厳選「あいさつ&食べること編」、後半は

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言葉の感度を高めるヒントvol.2「リズムをつかむ」

言葉の感度を高めるヒント

よい文章とわるい文章の違いはいろいろとあるけれど、読んでみて「心地よいリズムが感じられるかどうか」という点も、ひとつの大きなキーポイントだろうと思う。
よい文章は読み手をひとつの確かな流れに乗せて、目的地まで連れて行ってくれる。途中に緩やかな場所、急流が出てくることもあるが、流れが止まったり途中で途切れたりすることはない。流れに乗って読み進むうちに、自然に内容に引き込まれ、難なく書き手の用意したゴールまでたどり着いてしまう。

文章に心地よいリズムが感じられるかどうか。それだけでよい文章ができあがるわけではないが、必要条件ではあるだろう。
このコラムでは、リズムのある文章とはどんなものか具体的に例を挙げながら、どうしたら読み手を引き込むリズムを生み出せるのかについて考えてみたい。

リズムが自然に浮かび上がる文章とは

リズムが自然に浮かび上がる文章とは

言葉のリズムと聞くと、なんとなく「繰り返し」とか「五七調」などを思い浮かべるかもしれない。確かに、繰り返しや五七調はリズムが良い。では文章中にそういった言葉を折り込めば良いのかというと、決してそんな安易な話ではない。
読者に心地よいリズムを感じてもらうためには、まず大前提として、「折り込んだリズムが浮かび上がる文章」でなくてはならない。あっちこっちで文章につまづき、理解するのに頭をひねりながらでは、リズムを味わう余裕などできっこない。つまり、「リズムが浮かび上がる文章」とは、趣旨が明快で分かりやすく、流れるようにスムーズに理解できる文章のことなのだ。
読者がスイスイ理解できる文章、まずこれをクリアすることが第一関門。
…と簡単に言うけれど、第一関門にして難易度の高さは最大級であることも確か。まずは手始めに、下記4点から徹底してみてほしい。

  • 難しい専門用語は使わない
  • 核心をぼやかさない
  • 大切なキーワードは早めに出す
  • 一晩置いて第三者の視点で読み返す

秀逸キャッチコピーに学ぶ言葉のリズム

テンポよく本質を突いた一言は、ふと口ずさんでしまったり、なぜか心に残って忘れない。
リズムを味方につけたキャッチコピーはそういうものだ。
世に優れたキャッチコピーは星の数ほどあるが、そのなかで筆者の好きなものを少し紹介してみたい。

「やがて、いのちに変わるもの」

やがて、いのちに変わるもの

(ミツカン グループビジョン・スローガン 2004年)
この言葉の背景には、人のいのちをつくる食品を扱う企業としての、並々ならぬ決意と責任がはっきりと見えている。それでいて決して押し付けがましくなく、強くやさしく心に響いてくる。「やがて、いのち、かわる、もの…」難しい漢語やカタカナ語は使わず、すべて丸みのある和語でまとめているせいだろうか。
この言葉を五七調という日本人のDNAに刻み込まれたリズムに乗せることによって、老若男女の心にまっすぐ届くキャッチコピーに仕上げた。お見事というほかない。

「恋を何年休んでますか」

恋を何年休んでますか

(伊勢丹 キャンペーン広告キャッチコピー(1989年)、TVドラマタイトル(2001年))
元々は伊勢丹の広告キャッチコピーだったが、後に連続TVドラマのタイトルにもなり、こちらのほうが記憶している人も多いかもしれない。
毎日仕事や家事、育児に奔走している女性たちへ向けて、ストレートな質問を投げかけたキャッチコピー。問いかけられた方は一瞬ギクリ。鏡を見ればボサボサの髪に疲れた表情…ああ、私恋を休んじゃってる!!と身悶えし、伊勢丹に駆け込む(もしくはドラマに感情移入)というわけだ。
このコピーは7文字の繰り返しになっている。五七調の変形というべきか。

どちらのコピーにしても、最短距離でズバリ本質をついている。それでいて平易で誰にでも分かる。それを五七調にまとめたというだけのことなのだ。

古典文学に学ぶ文章のリズム

古典文学に学ぶ文章のリズム

高校生のときに、源氏物語の書き出し部分を暗唱させられたという人は多いのではないだろうか。何度も同じ部分を音読する作業は、当時憂鬱以外の何ものでもなかったが、今思うと言葉の流れの美しさを教えられた貴重な体験だったと思う。今さら耳にタコかとは思うが以下に冒頭部分を抜粋する。

いづれの御時(おほんとき)にか。
女御(にようご)、更衣(かうい)
あまたさぶらひ給ひけるなかに、
いとやんごとなき際(きは)にはあらぬが
すぐれて時めき給ふありけり。

現代語訳
いつの帝の御世でしたでしょうか。
女御や更衣が
大勢お仕えしていらっしゃるなかに
それほどご身分が高いわけではありませんが
ひときわ帝のご寵愛を受けていらっしゃる方がいました。

読めば読むほど、この2文のなかには1音の無駄もないことがわかる。磨き抜かれた美しい日本語は、心地良いリズムで読者を導きながら、頭の中に瞬時に映像を立ちあがらせていく。そのような文章を、自分も書いてみたいものだと思う。

リズムを感じる文章のために、天才じゃなくてもできること

リズムを感じる文章のために、天才じゃなくてもできること

文章を書きあげたら、削れる所はないか探してみよう。削って削って、これ以上1文字も削れないところまで削り込む。それができたら仕上げに、「音読すること」によってさらに文章を磨き上げたい。完璧だと思っても、音読することでリズムの悪いところ、引っかかるところに気がつくことがある。そこは十中八九、文章に過不足があるところだ。
天賦の才を持ち合わせない我々は、そんな地道な努力を怠らないようにしたい。触れれば手が切れるほどに磨き上げることができたら、自ずとそこに読み手を引き込むリズムが生まれてくるのだ。

言葉のリズム感を育てる、絵本の読みきかせ

言葉のリズム感を育てる、絵本の読みきかせ

筆者は息子に絵本を読んでやることを毎晩の日課にしている。
ひと口に絵本といっても、ストーリー性に優れたもの、図鑑もの、仕掛け絵本、キャラクターもの、絵が素晴らしいけれどテキストは正直言って“?”なもの…実にさまざまだ。なかには文章のリズムが受け入れ難い、という絵本がかなりの確率で存在し、それがまたかなりの確率で彼のお気に入りなのだ。トホホ、である。
そういったトホホな絵本はこっそり本棚の奥の方に隠したりしているが、なぜか彼は定期的に探し出してきて持ってくる。タイトルを見た瞬間、筆者のストレス値は通常の2倍程度に跳ね上がる。
しかたがないのでそのつど即興で不要な部分をカットし、順序を入れ替え、言葉を足して読み上げるのだが、意外にこれがよい頭のエクササイズになるのである。
「この一行は絶対に不要だな」「ここには一言説明が必要だろう」…何十回も繰り返して音読するからこそ見えてくる、リズムを狂わせる落とし穴というのがある。それを「落ちるもんか」とかわしつつ、自分も日頃同じような失敗をしていないか省みるのである。
そして読み終えたらそっと奥に隠し、言葉が丁寧に選ばれた絵本を、彼の目につく場所にさりげなく並べている…。

子供を見ていると、ふとしたときに絵本の一節を口ずさんだり、難しい言葉を知っているなと思ったら絵本に出てきた言葉だったり、ということがよくある。子供にとっては絵本も立派な語学の教科書なのだ。
大人も繰り返し音読することで、言葉のリズム感を磨き感度を高める修練になる。
親と子の双方にさまざまなメリットがある絵本の読みきかせ。「もうイイよ!」と迷惑がられるまで、できるだけ多くの絵本を読んでやりたいと思っている。

言葉の感度を高めるヒントvol.1「似合いの服を探せ!」

言葉の感度を高めるヒント

『どうすればもっと伝わるか、ぐっと深く読み手の心に刺さる言葉は何なのか?』
ビジネスであれ趣味であれ、文章に真剣に携わる人ならいつだって頭の片隅にある命題だ。

文章を書く、とは「頭の中にぼんやりと存在しているメッセージにきちんとした形を与え、誰の目にもハッキリと見えるようにする」行為だ。妥協して似合わない服を着せてしまえば、メッセージがきちんと伝わらないどころか、間違って伝わってしまうこともある。読む人には服しか見えていないのだから当然だ。

「イマイチ似合わないけれど、間違ってはないから、まあいいか」
 → 奥歯にモノが挟まったような、伝わりづらい残念な文章に。
「この子にはこの服しかない!完璧なコーディネートだ!!」
 → 言いたいことの本質がはっきりと描き出された、読み手のこころに届く文章に。

ではどうしたらぴったりの服を見つけてあげられるか?それには、たくさんの言葉を自分の引き出しにしまうこと、頭のなかにたくさんの引き出しを持っておくことだ。
このコラムでは、あなたも引き出しにしまっておきたくなる、言葉に関する小ネタを提供していきたい。

伝えたい思いにぴったりの服(言葉)を着せるということ

伝えたい思いにぴったりの服(言葉)を着せる

まずは「言葉が似合う、似合わないってどういうこと?」という人のために、少し解説してみたい。
たとえば、次の2文を比べてみよう。

A「次々にいろんなことが起こって、まるでジェットコースターみたいだった」
B「次々にいろんなことが起こって、まるでメリーゴーランドみたいだった」

両方とも遊園地の遊具に例えた同じような内容に思えるが、Aは、ジェットコースターのスピード感やスリリングな感じが連想される。Bは楽しそうな感じや浮遊感、次に何が起こるかワクワクして、はしゃいでいるようなイメージが浮かんでくる。
文章力を磨きたいなら、この違いに鈍感ではいけない。Aを使うか、Bを使うかによって読み手に与えるイメージは大きく異なってくる。

言葉の持つニュアンスの違いに敏感になろう

言葉の持つニュアンスの違いに敏感に

このように、同じような言葉でもニュアンスが異なる言葉は山のようにある。
基本的な動詞を例に挙げれば、
「見る」→見つめる、見据える、眺める、見入る、のぞき込む、睨む、一瞥する…
「話す」→語る、言う、述べる、喋る、口に出す、ブツブツ、ペラペラ、トークする…
等々、数え上げればきりがない。

これら一つひとつの言葉が持つバックグラウンドや、醸し出す佇まいが全体の文章を下支えすることによって、文章の質の高さがつくられる。
ひとつ言葉を選んだら、本当にその言葉がこの場面に最もふさわしいのかをもう一度問いかけてみてほしい。もっとふさわしい言葉があるんじゃないか?そんな視点でいつも検証する姿勢を忘れないことだ。
たくさんの候補の中から、「これだ!!」と思える言葉を見つけられたら大成功だ。そんな推敲を経てできあがった文章は、もとの文章に比べ完成度、オリジナリティ、何よりも伝わり方が飛躍的にアップしていることだろう。

言葉をグルーピングすると規則性が見えてくる

言葉をグルーピングする

突然ニュアンスに敏感になれと言われても、今まで気にしたこともなかった人にはハードルが高いかもしれない。
実は言葉が醸し出すニュアンスには、ある程度の規則性がある。ざっくりとではあるが知っておくと、言葉の引き出しを増やすときのよい目印になるかもしれない。

和語(日本古来のことば)
→やさしいイメージ、やわらかいイメージ
例:いきる、いのち、こころ、むすぶ、おもう、あやしい、うつくしい、いわう

漢語(中国から伝わった言葉)
→難しいイメージ、かたいイメージ
例:生命、精神、締結、概念、認識、懐疑、華美、祝福

外来語(カタカナ言葉)
→軽いイメージ、オシャレなイメージ、最先端なイメージ
例:グローバル、ストーリー、ストレス、ルール、ケース

たとえば気軽に読んでほしいカジュアルな文章に、漢字熟語を入れすぎると堅苦しくなってしまう。ファッションに関する内容ならカタカナ語を適度に入れることで、より華やかな世界観を膨らませることができる。

言葉はそれぞれ世界観を持っていて、それはその言葉がどのようにしてでき上がったかによって異なる。それが言葉のバックグラウンドだ。言葉はその背後に、驚くほど広い世界を連れているのだと思う。気になる言葉があれば語源や成り立ちなど調べてみると面白い。

言葉のバックグラウンドまで見据えながら、適切な場所に適切な言葉が選択できると、自由自在に文章のイメージを操れるようになる。いつの間にか、文章を考えるのが楽しくて仕方なくなっているはずだ。

辞書は大切な友達、文章を書くときはいつも傍らに

辞書は大切な友達

文章を書くとき、傍らに辞書を置いている人はどのくらいいるだろうか。
名文家として知られた井上ひさしは、作文教室に辞書を持ってこなかった人に対して、「関ヶ原の合戦に刀や槍をおいて丸腰で駆けつけるようなものだ」と説いたという。

複雑で繊細な日本語を正確に操ろうと思えば、どうしても辞書は欠かせない。迷ったときや行き詰まったとき、暗い道に灯りを掲げ、あなたの手を引いて「こっちだよ」と教えてくれる。とても博学で、何でも教えてくれる親切な友達なのだ。ぜひいつも傍らにおいて、親友になろう。

辞書ならwebでいくらでも引けるよ、とあなたは反論するかもしれない。しかし、webと紙媒体では調べるプロセスに決定的な違いがある。
Webの場合は、入力した言葉に関する情報だけが画面に表示される。調べようとしている言葉以外の情報は意識しなければ入ってこない。対して紙媒体の場合は、調べたい言葉に行き着くまでにページを何ページかめくり、前後の言葉にも目を走らせている。このとき、音が似ている言葉や意味が似ている言葉も自然に目に入ってくるのだ。
欲しい情報にダイレクトに行き着けるというのは、便利な反面味気ないもの。一見関連がなさそうな言葉が、行き詰まっていた文章に活路を開いてくれることもある。似た言葉をできるだけ多く自分の引き出しに収集する修練にもなり、一石二鳥なのだ。

読めばハマる辞書の世界

読めばハマる辞書の世界

時間が許せば、辞書をまるごと読んでみることをおすすめする。広辞苑や国語辞典のような基本的な辞書以外に、世の中にはさまざまな分野の辞書が存在する。古語辞典、類語辞典やことわざ辞典、大歳時記などはまだ普通の部類で、ファッション辞典、鉱物辞典やキノコ辞典、恐竜辞典等々、専門的なものも星の数ほど。書店や図書館で辞典の書棚をチェックしてみれば、きっと「これ、読んでみたい!」と思える辞書があるはずだ。
興味のある分野や地力を付けたい分野の辞書をまるっと読むことで、自分のなかの知識やボキャブラリーが驚くほど底上げされる。実際、その効能を知った筆者は時々チャレンジしている。

「そんな暇なことできるかー!」というあなた。言っておくが、筆者だって決して暇ではない。正直に言うと途中で寝てしまうこと数回……、それでも効果はしっかり実感できる。
全体的には視線を走らせるだけで十分。アンテナに引っかかった言葉だけしっかり読めばOKなので、気になる辞書があるなら一度トライしてみることをおすすめする。

乱読上等!ジャンルにこだわらず読みまくろう

乱読上等!

言葉の引き出しを増やすために、最低限必要なことがインプットだ。結局読書量を増やすしかないんでしょ、とあなたはふてくされ気味に言うかもしれない。
答えはイエスでもあり、ノーでもある。本を読むことは有効だが、ただ読めば良いわけでもないからだ。
この本に書いてある情報が「欲しい!」と思いながら読まないと、底に大穴が開いた器に水を注ぐのと同じで、入れたそばからダダ漏れなのだ。時間だけかけて読み終わったとき、何も残っていないのでは目も当てられない。

本を読むときには自分が「その情報、欲しい!」と心から思える本を選ぶこと。だから小説だろうが雑誌だろうが実用書だろうが、ジャンルは何だって構わない。
心から欲しがっている情報を自分に与えてやることで、砂漠に水が染みこむように文章が頭に入ってくる。
そのようにして楽しみながら文章に親しむなかで、自然と自分のなかの言葉の引き出しが育ってくる。読みたい気持ち、知りたい気持ちに素直になることが、効率よくインプットを増やして引き出しを豊かに育てる、一番の方法ではないだろうか。

筆者おすすめ:あなたの言葉力を強化しよう!「語感辞典」

「美味しい」を伝える表現。食べたくさせる4手法

「美味しい」を伝える表現。食べたくなる4手法

いいビジュアルといいコピーライティングがあれば、食の販促はパーフェクト。

20年ほど前に、百貨店ギフトで大ヒットを飛ばした筆者の親戚の言葉だ。
しかし、味を言葉で伝えなければいけない美味しさの表現は、コピーライティングのなかでも、特に難しいもの。

彼女は、食ギフトの素材を集めるために日本中を飛び回り、貪欲に舌を肥やしていた。美味しいものを見つけ出し、ターゲットに伝えるためには見極める力とそれを的確に表現する力が必要だからだ。

筆者も有名洋菓子店を担当して10年以上になった。
まだまだ彼女に追いつけてはいないが、クライアントのオンラインショップを担当するなかで悪戦苦闘しつつ見つけた、ターゲットを落とす美味しさの表現方法についてご紹介していきたい。

食べる人の視点で美味しさを伝える

食べる人の視点で美味しさを伝える

美味しさを表現しようと力が入りすぎると、独りよがりのコピーになってしまうことがある。

試食できないオンラインショップでターゲットが知りたいのは、自分好みの味なのか?ほんとうに美味しいのか?ということ。
どうしても食べてみたい衝動にかられるかどうか。最初に伝えるべきは、その一点につきる。

そのためには、コピーの主体者は作っている人ではなく、食べる人であるべきだ。ターゲットがその食べ物を口にした瞬間のことを、具体的にイメージさせてあげることが大切なのだ。

たとえば、オンラインショップでよくあるキャッチコピーは、1つめのような表現だ。

1.最高峰パルマ産生ハム。長期熟成14ヶ月!原材料は豚モモ肉、食塩のみ

商品の仕様は分かるが、あまりそそられない。コピーを食べる人の視点に変えてみると、

2.
本場イタリア・パルマの伝統的な塩漬け熟成法で仕上げた、まろやか生ハム。
地元で愛され続ける、長期熟成ならではのとろける旨みと噛むほどに広がる満足感。

生ハムはパルマ産が有名だと知っている人は多い。1.では産地の告知だけで終わっているが、同じ産地の商品を扱う競合も多いはず。もうひとひねり加えることで、商品に対するターゲットの興味をそそりたい。さらに「長期熟成」に関しても、だから○○なのだ、までしっかり伝えたい。

地元民に愛されているとまで言われれば、本場でも支持されているほどなら・・・と、さらに興味がわいてくる。

ただし食に関しては、ぜったいに虚偽の記載があってはならない。内容については、しっかりと事実確認を行うようにしよう。

万人受けする必要はない

万人受けする必要はない

同じものを食べても、美味しいと感動する人もいれば、逆にそうでもないと感じる人もいる。

美味しさの感覚というのは、食習慣や育った環境に影響されて、大きく個人差が出る。味覚が鋭い人、鈍感な人がいるのはそういった理由からだ。

ならば、コピーのターゲットが誰なのかをしっかりと把握しなければならない。訴求したい商品を買ってほしい人は、ジャンクフード好きのOLさんか、料理好きで素材にこだわる奥様か。
万人に受けようなどと考えてしまうと、結局誰にも響かないコピーになってしまうかもしれない。

では、美味しいを表現するための手法を4つ紹介していこう。

1.美味しいを「香り」で表現する

美味しいを「香り」で表現する

私たちが「美味しい」と感じるのは、体のどの部分だろうか?

実は、最も敏感に感じるのは鼻、嗅覚。

風邪をひいて鼻がつまっている時、何を食べても美味しく感じないのは、嗅覚が鈍感になっているからだ。
美味しい香りをたっぷりと吸い込んだときの感動を、イメージできる言葉で表現しよう。

  • カカオの濃厚な香りがあふれだす
  • 口に入れた途端、ふわりと桜が香る
  • 挽き立てコーヒー豆が香り立つ
  • 柑橘フルーツの清涼な香りに目をとじる
  • 芳醇なラム酒が香って、レーズンがじゅわっ
  • ふわりと鼻をくすぐるのは、ヌガーの香ばしさ、モカの誘惑
  • かじったときにハフッとくる、クルミの香ばしさ

「美味しい」を伝える表現。食べたくさせる4手法、後半は

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バナーのキャッチコピー、思わずクリックさせる味付けとは

バナーのキャッチコピー

クリックしたくなるバナーには、不思議な輝きがある。

ポータルサイトの多くの情報の中にあっても、なぜかスッと目に飛び込んできて、気づいたら人差し指が反応している。

もちろん、デザインの力は大きいが、限られたスペースで表現されるコピーの威力はもっと大きい。
心を惹きつけるすぐれたキャッチコピーには、どのような魅力があるかをご紹介しよう。

それは著名なコピーライターが書いた、叙情的なものではなく、我々の心の根っこに響く直球勝負の短文だ。

WEBサイトに表示された瞬間に、ターゲットの心を捉えなければいけないバナーのキャッチコピーは、球種で言うならストレート、それも剛速球がいい。

1.バナーのキャッチコピー:基本編

当たり前のことながら、意外にポイントが押さえられていないバナーは世の中に多いものだ。もしかして?と心配な方はここからチェックしてほしい。

1-1.その先で、どんな情報が得られるかを伝える

バナーをクリックしたがらない

基本的に「人はクリックしたがらない」「文章は読んでくれない」と思った方がよい。

実際にアクセス解析をしてみると、HOMEページの端っこにずらっと並べられたバナーはほとんどがクリックされていないはずだ。

では、どうすればよいのか?それは、街を歩く人の足を止めて、いかに自分の店の中へ呼び込むかに似ている。

暑い夏の日ならば「つめたいビール冷えてます!」という看板があって初めて、「ここは冷えたビールが飲めるんだな」と気づいてもらえる。

最初からその店に行こうと決めているお客さんなら、「冷たいビールがあるだろう」と想像してくれるだろうが、ビールのことが頭の中にない状態なら気づきもしない。

「私は先を急いでいるのだ」という人に対して、「こんなお得なことが待っていますよ」と足を止めさせるのがバナーの役割である。

だから、クリックした先にどんな内容が待っているのか。それをしっかりとイメージさせてあげることは、バナーコピーの基本的な使命である。

ユーザーが得られる情報をきちんと伝えておく

用途・ターゲットを明確にするキャッチコピー

1-2.それが、ユーザーの知りたい内容であること

分かりやすいコピーが書かれていたとしても、それがユーザーにとって興味ある内容でなければ、これもクリックするには至らない。

お酒がまったく飲めない人は「ビール冷えてます」と言われても、「そうですか」で終わってしまう。

有効にチャンスを掴むためには、あなたがクリックしてほしい人は誰なのかを明確に想像すること。しかも、ターゲットが今知りたい情報であること。

「商品一覧」というコピーがあっても、購入を検討している人以外は押してくれない。

たとえば、この春に大学を卒業し一人暮らしを始める女性に、新しいソファを買ってほしいなら、どんなアプローチができるだろう。

コンパクトで座りごこち重視のソファ特集

「商品一覧」よりもはマシだが、まだまだ足りない。

NY一人暮らし女性に学ぶ、ソファのコーディネート
姿勢美人のためのソファ選び

関心のある人には、効くコピーになってきた。
大切なことは、一人暮らしをはじめる女性がこれからの生活に夢を描けるようなコピーでなければならない。

ちなみに、ユーザー視点になっているかをチェックするには、キャッチコピーの前に主語をつけてみると分かりやすい。

  • 「山田家具店の」商品一覧
  • 「山田家具店がお薦めする」コンパクトで座りごこち重視のソファ特集
  • 「ユーザーが」NY一人暮らし女性に学ぶ、ソファのコーディネート
  • 「ユーザーが姿勢美人になる」ためのソファ選び

コンテンツを見てほしいユーザーを特定し、その人たちの目線で欲しい情報を提供する。これはキャッチコピーだけに限らず、コンテンツ制作自体に関わってくる重要なポイントだ。

ユーザー視点で伝える

1-3.コピーは単純明快に。考えさせたらダメ

考えさえたらダメ

バナーを見つけて、クリックするまでの時間は一体どのくらいだろうか?コンマ数秒、もしくはそれに満たないほどの瞬間に、次を見るか見ないかを決めているはずだ。

短い時間のなかで「これ見たい」と思ってもらえるためには、抽象的な表現を避ける。専門用語は使わない。すぐに頭の中でイメージできる言葉を選ぼう。

秀逸なキャッチコピーを作るヒケツ

2.バナーのキャッチコピー:アプローチ編

2-1.問いかける。そして、想像させる

問いかけたり、想像させたり

たとえば、50代半ばの男性が「もし、あなたの寿命をあと10年伸ばせるとしたら、何をやりたいですか?」と聞かれたら、思わず考えてしまうだろう。さらに「一日5分で、血管年齢を若返らせる方法があります」と続くとどうだろう。

キャッチコピーを質問形のメッセージにすることは効果的だ。なぜなら、人間の脳は問いかけられると答えようとする習性があるから。

人は質問されると、その答えを考えようとして、何かしらの結論を出そうとする。そして、自発的に思いついたことは肯定的にとらえる傾向が強い。

「あと10年寿命が伸びるなら、海外旅行に出かけたい」。そう思ったあなたは、憧れていたローマの街並みや大聖堂の見事な天井画を思い描くことだろう。

ちなみに、想像させるというテクニックはプレゼンテーションでも使われる。有名なキング牧師は「私には夢がある」と演説することで、聴衆のイマジネーションを膨らませるスピーチを行った。

2-2.感情に働きかける(オンラインショップ)

感情に働きかける

人は何かを買うとき、「感情」で物を買って、その買い物を「論理」で正当化しようとする。

衝動買いであれ、じっくり比較検討する場合であれ、「どうしてもこれが欲しい」という強い欲求があるからこそ買いたくなる。

オンラインショップのバナーを作るなら、ユーザーの感情を忘れてはいけない。

「完売間近!早い者勝ちの旬ウマとうもろこし」
「さくさくタルト生地に、とろ~りキャラメルのコク」

売り切れる前に買わなくては。食べた瞬間のおいしい感動がイメージされる。

バナーのキャッチコピーは、感情を刺激するような言葉で右脳にアピールすることが大切だ。

2-3.親しみやすい言葉で、大切な友人に話しかけるように

話しかけるように

最後に、忘れてはいけないのが言葉選び。想定するターゲットがいつも使っている表現やキーワードを選ぼう。

バナーに入れるキャッチコピーは、意味を伝えるという役割と同時に、ターゲットの目にとまるかどうかが重要なポイント。人は日頃から気にしているキーワードに対しては、非常に敏感に反応するものだ。

以下に、ポイントをまとめると

  • ターゲットが使う言葉を選ぶ
  • 専門用語は使わない
  • 誰が見ても分かりやすい、平易な言葉に
  • 漢字が続かないように、漢字、ひらがな、カタカナをバランスよく組み合わせる

さらにCTR(クリックスルーレート)をあげるために

クリックさせよう

入念にキャッチコピーを作ってバナーを公開しても、それが必ず成功するとは限らない。本当の勝負はこれからだ。

どの程度クリックされたのか、コンバージョンレートはどれほど上がったか。結果が期待値よりも低ければ、すぐに修正を加えなければならない。

その時になって慌てないために、代案を用意しておこう。

想定されるキーワードや表現方法としての代案、デザイン面での代案など、考え方はいくつかあるが、とにかく「クリックしてもらったなんぼ」の世界。1回目のリリースを終えて満足していてはいけない。

もしくは、2案を同時に公開し、GoogleアナリティクスのAB分析を行うのもひとつの方法だ。

大切なのは、サービス精神

サービス精神

バナーに限らないことだが、キャッチコピー作成やライティングにおいて、一番忘れてはいけないのはサービス精神である。ユーザーの視点に立って、いかに快適に分かりやすく、有益な情報を提供するか。

商品を売りたい、アクセス数を伸ばしたいといった、サイト運営側の視点に立っているうちは何も変わらないだろう。これはサイト運営者にまじめに取り組むWEBマスターやコピーライターが陥りやすいポイントでもある。

バナーの中で最も重要なキャッチコピーだからこそ、ユーザーの心にスッと受け入れられるものが必要だろう。