コラム(ブランディング)

ブランディング 2026年6月17日

採用コンセプトの作り方|中小企業・中堅企業の採用担当者が今すぐ使える実践ガイド

社内で楽しそうに会話する女性二人何度目の内定辞退だろう、と思いながら電話を切ったことがある方は、少なくないと思います。

「選考中はあんなに熱意を見せていたのに」「うちの何が悪かったのか」。そう考えるうちに、採用そのものが怖くなってくる。採用にかける時間とお金が、どんどん虚しく感じられてくる。

それは、あなたの会社が悪いのではありません。「何を伝えるか」が決まっていないまま、採用活動を続けてきたことが原因である場合がほとんどです。

採用コンセプトとは、「なぜこの会社で働くのか」「どんな人に来てほしいか」をひとことで表した、採用活動の軸になる言葉です。これがないと、求人票も採用サイトも、ちぐはぐなメッセージの寄せ集めになってしまいます。

でも、採用コンセプトを作る過程には、もうひとつの価値があります。

社員に話を聞き、「この会社でどう育ったか」「なぜここでいきいき働けているか」を掘り起こしていくと、若い人の本音に触れられます。自社の文化が、言葉として見えてきます。「この会社には、こういう良さがあったのか」と、改めて気づく瞬間がある。

採用コンセプトを固めることは、会社の未来を考える仕事です。これほど楽しい仕事は、そう多くありません。

この記事では、中小企業・中堅企業の採用担当者・経営者に向けて、採用コンセプトの考え方から、今すぐ着手できる作り方のステップ、そして実際に使える例文まで、一緒に整理していきます。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

「内定辞退が続く」「応募が集まらない」。その原因の多くは、採用の軸になる言葉が決まっていないことにあります。その言葉のことを「採用コンセプト」と呼びます。この記事では、採用コンセプトとは何か、なぜ必要かを整理したうえで、社員の言葉から作り上げる4つのステップを解説します。中小企業・中堅企業向けの例文も掲載しています。読み終えるころには、採用コンセプトを作ることが「こなすべき作業」ではなく「会社の未来を考える仕事」に見えてくるはずです。

採用コンセプトとは何か

採用コンセプトと聞いて、「採用サイトのキャッチコピー」や「会社のスローガン」を思い浮かべる方がいます。それは、採用コンセプトの一部を表現したものではあっても、採用コンセプトそのものではありません。

採用コンセプトとは、「採用活動全体の「軸」になる考え方」です。

「なぜこの会社で働くのか」「この会社に来た人は、どのように成長できるのか」「どんな環境だから、社員がはつらつと働けているのか」。こうした問いへの答えを言語化したものが、採用コンセプトです。

キャッチコピーはその「外側の表現」です。採用コンセプトは「内側の軸」。この順序を間違えると、綺麗な言葉だけ作って、中身が空洞のままになります。

混同されやすいもの 採用コンセプトとの違い
キャッチコピー コンセプトを外向けに表現した言葉。コンセプトが決まって初めて作れる
採用方針 「誰を何人採るか」という計画。コンセプトは”なぜここを選ぶか”の答え
企業理念・ミッション 会社全体の軸。採用コンセプトは、そこで働く人向けの採用版

採用コンセプトが決まると、求人票も採用サイトも、説明会のトークも、面接の評価軸も、すべてが同じ方向を向き始めます。ばらばらだったメッセージに、一本の芯が通る。

採用コンセプトとコピーの関係図

なぜ採用コンセプトがないと、採用が苦しくなるのか

採用コンセプトがない状態でも、採用活動は続けられます。ただ、3つの問題が起きやすくなります。

問題1:採用サイト・求人票・説明会でメッセージがバラバラになる

採用サイトでは「チームワークを大切にする会社」と書いてあるのに、求人票では「成果主義で評価します」と書いてある。説明会では担当者によって全然違うことを話す。求職者はこのズレを敏感に感じとります。「なんかよくわからない会社だな」という印象は、応募の手を止めさせます。

問題2:制作会社や人材エージェントへの発注内容がブレる

採用サイトを外注したとき、「どんな会社に見せたいか」が言語化されていないと、制作会社はそれっぽいものを作るしかありません。完成したサイトを見て「なんか、うちの会社っぽくない」となる。このすれ違いは、採用コンセプトがないと繰り返し起きます。

問題3:面接官の判断軸がなくなる

「この人はうちに合うか?」という問いに、採用コンセプトがあれば軸で答えられます。コンセプトがないと、面接官の感覚に頼るしかなく、判断がバラバラになり、採用ミスマッチの原因になります。

採用ブランディング全体の進め方については、[採用ブランディングの進め方](/blog/recruitment-site/recruitment-branding-guide.html)でくわしく解説しています。

採用コンセプトの作り方 4ステップ

採用コンセプトは、机の前で考えても出てきません。社員の言葉の中にあります。以下の順序で進めてみてください。

採用コンセプト設定の4ステップ

Step1:社員に「しゃべらせてしまう」

最初にやってはいけないことがあります。「どんな会社に見せたいか」から考えることです。

理想の姿を先に決めると、作られた言葉になります。採用コンセプトの素材は、今この会社で働いている社員が「なぜここにいるのか」「何がここを好きなのか」という話の中にあります。

ただし、アンケートや堅いインタビューでは限界があります。「良いところを教えてください」と正面から聞いても、建前しか出てきません。

大切なのは「会話」の雰囲気をつくること。相手がしゃべりたくなる空気の中で、本音が自然と出てきます。以下のような問いかけが、きっかけになりやすいです。

– 「目標にしてる先輩っている?どんなところが好き?」
– 「友だちに自社を紹介するとしたら、何て言う?」
– 「お客さんに言ってもらって、一番うれしかった言葉は?」
– 「やったった!って思えた仕事、ある?」
– 「この会社で、自分が変わったと思う瞬間ってあった?」

最後の問いが特に大切です。「この会社でどう育ったか」「なぜここでいきいきできているか」。その答えの中に、採用コンセプトの核があります。

「社外の目」を入れる理由

社員にとって「当たり前のこと」は、外部の人間には「へぇ、そうなんですか!」となることが多いものです。10年以上続いている取引先との関係の作り方、新人が早くから裁量を持てる理由、失敗したときのチームの動き方。こういった話は、社内では空気のように存在していて、誰も言葉にしません。

外部の視点を持つ人間がいると、社員の「普通」の中に「求職者に刺さる言葉」を見つけることができます。社員の言葉を、社外にも通じる言語に翻訳して整理する。それがこのステップの本当のゴールです。

Step2:「誰に来てほしいか」を決める

集めた言葉を整理したら、次は「誰に届けるか」を明確にします。

「20代の意欲ある方」「チームワークを大事にする人」では絞れていません。どこの会社でも書けるターゲット設定は、メッセージを薄くします。

決めるための視点は2つです。

– 今いる社員で「長く活躍している人」は何を大事にしているか
– 「この人に来てほしかった」という理想の入社者は、どんな価値観を持っていたか

この2点が重なるところに、求めるターゲット像が見えてきます。

ターゲットが絞れると、言葉が変わります。「成長できる環境があります」という言葉も、「入社1年目から担当案件を持てる環境で、お客さんと直接向き合いたい人を求めています」に変わった途端、刺さる人が見えてきます。全方位に伝えようとするメッセージは、結局誰にも届きません。

Step3:採用コンセプトを一文で言語化する

Step1で集めた言葉と、Step2で絞ったターゲット像を合わせて、一文に凝縮します。

採用コンセプトの問いはシンプルです。

「うちの会社で長く働いてきた人は、なぜここを選んだのか?」

この問いへの答えが、採用コンセプトの核になります。

良い採用コンセプトには、3つの条件があります。

  1. 自社にしか言えない具体性がある
  2. ターゲットが「自分のことだ」と感じられる
  3. 採用担当者が面接で迷ったとき、判断の軸になる

よくある失敗パターンと、それを超えた例を見てみます。

失敗パターン なぜ弱いか
「ともに成長できる仲間を求めています」 どこの会社でも言える
「アットホームな環境で挑戦を応援します」 具体性がなく、求職者の頭に何も残らない
「やる気のある方を歓迎します」 やる気のない人を歓迎する会社はない

採用コンセプトには、その会社でしか言えない言葉が必要です。

Step4:全接点に展開する

一文が決まったら、各接点に落とし込みます。

接点 展開方法
採用サイトのキャッチコピー コンセプトをもとにコピーライティング
求人票の冒頭 コンセプトを体現する一段落
会社説明会のオープニング 代表・担当者がコンセプトを自分の言葉で語る
面接の評価軸 コンセプトに共鳴しているかを確認する問いを設計

大切なのは、「コンセプトを作ったら終わり」にしないことです。採用サイトでは伝えているのに、面接では全然違う話をしている。この矛盾が、求職者の不信感につながります。すべての接点で同じメッセージが流れることで、初めて採用ブランドとして機能します。

採用コンセプト 例文と解説

実際にどんな言葉になるか。業種別に例を見てみます。いずれも、「その会社にいる人が言った言葉のように聞こえる」ことが共通しています。

例1:製造業

「技術を磨くことより、技術でお客さんを喜ばせることに、やりがいを感じる人へ」

技術職のなかでも「関係性」を大切にするタイプを絞り込んでいます。この言葉に共感して入社してきた人は、仕事の価値観が合っているため定着率が上がります。

例2:中堅メーカー(営業職)

「数字で評価されるより、お客さんに名前を呼んでもらいたい人を探しています」

ルート営業が多い中堅企業の文化を、そのまま言語化しています。「名前を呼んでもらいたい」という言葉は、求人票には出てこない表現です。だからこそ、刺さる人に刺さります。

例3:サービス業

「うちに入って3年目の社員が、まだここにいる理由を話します」

コンセプトというより、ファクトで語るパターンです。定着率という数字ではなく、「理由」を伝える点がリアルで信頼を生みます。採用サイトのトップに置くと、続きを読みたくなります。

共通点:
どの例も、「社員のリアルな言葉から生まれた感触」があります。採用担当者や経営者が「会社をよく見せよう」として作った言葉ではなく、社員に話を聞くプロセスを経たから出てくる言葉です。

採用コンセプトを固めると、採用は楽しくなる

採用コンセプトを作る作業を、「やらなければならない業務」として捉えてきたとしたら、少し見方を変えてほしいのです。

社員に話を聞くと、意外なことがわかります。「この人、こんなことを大切にしていたんだ」「こんなところに誇りを持っていたんだ」という発見が、次々と出てくる。

若い社員の本音に触れると、会社がどう見えているかがわかります。経営者が気づいていなかった良さを、若い人たちがちゃんと感じていたりする。

そういう作業のなかで、「この会社は、こういう場所だったのか」と腑に落ちる瞬間があります。採用コンセプトが言葉になるのは、その後です。

採用コンセプトを固めることは、採用の効率を上げるためだけの作業ではありません。会社の文化を言語化し、次の世代に受け継ぐための仕事です。会社の未来を考える仕事でもあります。それほどやりがいのある仕事は、なかなかありません。

「採用がうまくいっていない」と感じているなら、まず社員に話を聞いてみてください。採用コンセプトは、そこから始まります。

※採用コンセプトが決まったら、次は採用ブランディング全体の設計へ。

採用ブランディングの進め方

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