コラム(ブランディング)

ブランディング 2026年8月7日

採用サイト『1日の流れ』、先輩を「目標」に変えるコンテンツに

商談後に、ホッとする若手社員

採用サイトの『1日の流れ』は、こなし仕事になっている採用サイトがほとんど。しかもこれは、大きな損失に。

時刻と業務内容を並べるだけでは、就活者が本当に知りたい『この会社で働くとは、どういうことか』には、何も答えられていません。しかし、1日のながれに感情を映し込む工夫を加えると、先輩は就活者の『目標』に変わっていきます。たとえば、上司に呼ばれた時どう感じるか・・・。

先輩の心の動きまで伝えると、就活者の心も動きはじめるのです。同じ人物の、同じ1日でも、聞き方ひとつでここまで変わります。

平田弘幸

執筆した人:平田弘幸

株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。


本記事で分かること

「1日の流れ」を"こなし仕事"でなく、就活者の心を動かすコンテンツに変える考え方と具体的な方法をお伝えします。一般的な社員インタビューとの違い、そのまま使える質問例、聞き出した言葉を活かす際の注意点まで解説。


 

なぜ『1日の流れ』は”こなし仕事”になりがちなのか

多くの採用サイトの『1日の流れ』は、「9:00 出社/9:30 朝礼/10:00 業務開始……」という、時刻表のような状態のものがほとんど。

それだと、コンテンツをただ「載せた」だけで、就活者には先輩たちの魅力が何も伝わっていません。

なぜこうなるのか。理由は単純です。『1日の流れ』は、時刻とやることさえ埋めれば形になってしまうから。写真を撮って、社員に聞き取りをして、時系列に並べる。工数の割に「効果が出ている実感」が薄いため、後回しにされ、結局テンプレートの穴埋め作業になっているのです。

しかし、これは採用における根本的な問題と直結しています。新卒の早期離職理由を調べたエン・ジャパンの調査(企業291社対象)では、要因の1位は「仕事内容のミスマッチ」(57%)でした。学情の調査(新卒本人対象、回答52人)でも、1位は「仕事内容が合わない」(63.5%)で、両者の結論は一致しています。原因は、入社前に「その仕事が実際にどういうものか」が伝わっていない、「先輩たちは日々の仕事をどう感じているかが理解されていない」ことです。

『1日の流れ』は、採用サイトの中でこの溝を埋められる、ほぼ唯一の場所かもしれません。候補者が最も知りたい「働くとはどういうことか」に直接答えられる場所なのに、多くの会社がそこを一番いい加減に扱っている。

あなたの会社にも『1日の流れ』はあるはずです。でもそれは、候補者が本当に知りたい「働くとはどういうことか」に、まだ何も答えていないわけです。


 

差がつくのは「スケジュール」ではなく「心の動き」

一般的な社員インタビューの質問は、「1日の仕事の流れを教えてください」「やりがいを教えてください」「苦労したことは何ですか」程度。最近は、そこにひとこと感想やコメントを添える工夫も見かけます。

でも、逆にそれはやめたほうがいいかもしれません。事務的な時刻表の中に、取ってつけたような一文だけの感情を挟んでも、読み手には”やらされ感”しか伝わらない。薄いひとことは、目標ではなく白々しさを生みます。

必要なのは、ひとことではありません。ひとつの場面を、最初から最後まで、その人自身の言葉で語らせることです。社員インタビューと同じ熱量で、『1日の流れ』を聞き、書く。それくらいの本気度でなければ、就活者の心は動かないのです。

人は、共感できる人より「なりたい自分に近い人」に強く動かされます。業務の説明だけでは、候補者は情報を受け取るだけで終わってしまう。心の動きが見えて初めて、候補者はその先輩に自分を重ね始めます。

たとえば、こんな質問。

  • 出社前、何を考えていますか?
  • 家に帰っても、仕事のことを思い出したりするものですか?
  • 上司に呼ばれた時、まず最初にどんなことを思いますか?
  • 大事な仕事(商談・会議など)、どんな心構えで臨むのですか?

この4つは、それぞれ違う瞬間を狙っています。1日の始まりの心構え、仕事とプライベートの境界線、上下関係の中での感情、プレッシャーの中での姿。どれも、時刻表には絶対に出てこない情報です。


 

心の動きを見せると、先輩は”目標”になる

ほとんどの採用サイトがこのパターン

9:00 出社。朝礼で1日の予定を確認。
午前中 メール対応や資料作成。
午後 既存顧客への訪問や商談実施。
18:00 退勤。

事実を淡々と提示しています。でも、就活者には、まったく響かないでしょう。

心の動きを聞いた例(イメージ)

■午後からの商談商談前に書類をチェックする若手社員
いつも少し緊張する。とくに初めてお会いするお客様のときは、資料を何度も見返して「今日は何を一番伝えたいか」を一言にまとめたメモを持参する。先輩にアドバイスしてもらったメモがドンピシャ。お客様からの質問に即答できた。
商談がうまくいった日の帰り道は、足取りも軽くなる。商談前の自分とは別人のように・・・。

同じ人物の、同じ1日です。違うのは、聞いた質問だけです。

前者を読んだ候補者は「そういう仕事をする会社なんだな」で終わります。後者を読んだ候補者は「自分もできるかもしれない」まで進みます。読み終えた瞬間、その先輩は候補者にとって”情報源”ではなく”目標”になっています。


 

すぐ使える質問リスト

先述の4つの質問を、実際に先輩社員へ聞くときのコツをお伝えします。世間話にしないでください。1日の流れすべてを漏れなく聞くだけではなく、そのなかのどこかのポイント「一瞬」だけを狙って深く掘り下げる。答えが出てきたら、「そのとき、具体的にどう思いましたか」ともう一段深く聞いていきましょう。

答えが返ってきたら、整えすぎないことです。多少不格好でも、本人の言葉のまま使うほうが、心の動きは伝わりやすくなります。

とはいえ、この掘り下げ方は、普通の社員インタビューと同じくらい難しいかもしれません。相手が心を開いてくれる関係と、聞き出す技術の両方が必要だからです。


 

まとめ|あとは、聞くだけ

こなし仕事にしていた『1日の流れ』は、聞き方ひとつで先輩たちが就活者の目標に変わります。まずはこの記事の4つの質問を、今いる先輩社員に聞いてみてください。

応募が減る、配属してもすぐ辞める・・・。原因は根っこでつながっています。「職種ごとのリアルな姿を描けていない」こと。『1日の流れ』は、その根を断つのに一番手をつけやすく、競合に差を付けやすいコンテンツです。

この技法を使って採用サイトをつくり変えた事例は、こちらでご覧いただけます。(②採用ラベル事例:瀬戸海運・島田商会・イモト・JR西日本不動産開発へリンク)

この記事のポイント

課題:『1日の流れ』が”こなし仕事”になり、就活者の心に何も残らない。
原因:時刻表に感情を”添える”程度で終わり、物語として語られていない。
解決策:社員インタビューと同じ熱量で、心の動きに踏み込んだ質問を聞き、本人の言葉のまま伝える。
期待できる結果:先輩が”情報源”から”目標”に変わり、候補者の自分ごと化が進む。


 

よくある質問

Q. 先輩社員が話すのを苦手としている場合はどうすればいいですか?

話せない社員はいません。話すのが苦手=考える時間が長いだけ。相手が話し始めるまで、じっくり待ってあげてください。こちらから誘導するような言葉の投げかけは禁物です。
話しやすい雰囲気の雑談の延長っぽく、1〜2個だけ試してみてください。すべてを一度に聞き出そうとせず、答えやすい質問(たとえば「商談前の準備」)から始めると話しやすくなります。

Q. 写真や動画も必要ですか?

必須ではありませんが写真はあったほうが信頼性は増しますし、表情が見えれば言葉を下支えしてくれます。ただし、優先すべきはあくまで言葉。テキストだけでも、心の動きが伝われば、就活者の目標は作れます。

Q. 複数の先輩に聞くべきですか?それとも1人で十分ですか?

職種ごとに1人ずつが理想です。営業とエンジニアでは「1日の流れ」も「心の動き」も大きく違うため、それぞれの職種の先輩に、それぞれの言葉で語ってもらうことが重要です。

Q. 聞いた内容は誇張してもいいですか?

ぜったいに避けてください。本人の言葉のまま使うか、意味を変えない範囲で読みやすく整える程度に留めましょう。事実と異なる感情やスケジュールを作ってしまうと、入社後のミスマッチにつながり、本末転倒です。さらに、就活者はそんな嘘を見抜くのは朝飯前です。

参考データの出典

– エン・ジャパン「早期離職」実態調査(2025年5月9日)
– 学情「20代転職意識調査」(2026年7月13日)

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