コラム(採用サイト)
採用サイト 2026年10月7日
勝手に採用サイト診断 第2回|化学メーカー編。「リアル訴求5段階チェック」で覗いてみる

執筆した人:平田弘幸
株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。
本記事で分かること
・ 今回は関西エリアの化学メーカー2社(A社・B社)の採用サイトを、独自の「リアル訴求5段階チェック」で診断しました。
・ A社は社内イベントや行動指針など「風土のリアル」は豊富だが、社員一人ひとりの声(現場のリアル)がゼロという偏り。
・ B社は社員インタビューで「現場のリアル」の芽はあるものの、内容が似通っていて浅く、風土や制度面の裏付けが不足という偏り。
・ どちらも「惜しい」理由は違えど、共通するのは「会社が言いたいこと」と「求職者が知りたい生っぽい情報」の間にズレがあること。
・ 採用サイトを見直す際は、①差別化②パーパスとの接点③現場のリアル④風土のリアル⑤リアルとスペックの総合バランス、の5軸で自社を棚卸ししてみることをおすすめします。
「リアル訴求5段階チェック」のおさらい
当社が採用ブランディング案件で使っている独自フレームです。各軸を◎○△の3段階で評価します。
- 差別化:スペックの列挙にとどまっているか、その会社にしか言えない独自の切り口があるか
- パーパスとの接点:企業理念が制度の羅列で終わっているか、物語として語られているか。さらに、その理念が社員個人の想いとつながる機会(1on1やキャリア面談など)が見えるか
- 現場のリアル:社員の日々の様子が、時刻表のような事実の羅列で終わっているか、感情まで含めて描かれているか
- 風土のリアル:社風の紹介が抽象的な一言で終わっているか、具体的なエピソードや制度として語られているか
- リアルとスペックの総合バランス:サイト全体として、実務情報寄りか、人の生っぽさ寄りか。どちらかに偏りすぎていないか
A社の診断:制度と風土は語れるが、人が見えない
A社は創業から長い歴史を持つ、関西エリアの化学メーカーです。従業員数・資本金の規模感は、いわゆる中堅どころの製造業に位置します。
- ①差別化:○ 自社の生産体制(研究開発から一貫生産までを自社で完結させている点)を明示しており、単なるスペックの列挙ではなく「うちはここまでやっている」という独自の切り口の芽が見えます。ただし、専門領域そのものの説明は依然として実務情報寄りで、他社との違いが一段深く伝わるところまでは届いていません。
- ②パーパスとの接点:△ 「創業者から受け継がれた企業理念がある」という記述はあるものの、その理念の中身自体は採用ページ上に見当たりません。人材に求める姿勢(行動指針)は具体的に言語化されていますが、それが会社の理念や社員個人の想いとどうつながっているのかまでは描かれていません。
- ③現場のリアル:△ もっとも惜しいポイントです。社員インタビューが一件も掲載されておらず、社員の1日の流れや個人の声を知る手がかりがありません。
- ④風土のリアル:◎ 社内イベントや福利厚生制度が、抽象的な一言ではなく具体的な名称・内容で数多く紹介されています。第三者機関からの認定・表彰も複数掲載されており、「楽しそう」「働きやすそう」という雰囲気が伝わりやすい構成です。
- ⑤総合バランス:△〜○ 風土面の情報量は豊富ですが、そこで働く一人ひとりの顔が見えないため、「会社としての制度は充実しているが、実際そこにいる人はどんな人なのか」が最後までわからないまま終わってしまいます。
B社の診断:人の声はあるが、輪郭が薄い
B社もまた、関西エリアで事業展開する化学メーカーです。従業員規模・資本金規模はA社と近く、今回はあえて「体力が近い2社」を選んでいます。
- ①差別化:△〜○ 開発から製造まで自社で一貫して手がけている体制や、複数の事業領域を持つことには触れていますが、化学メーカーとしてはやや一般的な訴求にとどまっている印象です。取引先からの評価に触れる記述もありますが、具体性を欠くため説得力としては弱めです。
- ②パーパスとの接点:○ 企業理念やスローガンが明確に言語化されており、社長メッセージにも一貫したメッセージがあります。理念そのものの発信力はA社より強いといえます。一方で、社員インタビューの回答を見ると、複数の社員が似たような一般論(コミュニケーション能力・好奇心の大切さ等)を語るにとどまっており、理念と個人の言葉が噛み合っているところまでは踏み込めていません。
- ③現場のリアル:○ 複数名の社員インタビューが掲載されており、入社年次・仕事内容・やりがいが紹介されている点はA社より一歩進んでいます。「この仕事に社会的な意義を感じている」といった感情面のコメントも一部見られます。ただし、紹介されている社員が同じ部門に偏っており、1日の流れなど具体的な生活感の描写までは至っていません。
- ④風土のリアル:△ 社風を裏付ける具体的なエピソードや制度紹介がほとんど見当たりません。「働きやすい」といった一言はあっても、それを裏付ける材料に乏しい状態です。
- ⑤総合バランス:△ 個人の声という素材はあるものの、それを支える会社としての情報量(概要・制度・実績)自体が全体的に薄いため、サイト全体として「結局この会社はどんな会社なのか」が輪郭を結びにくい構成になっています。
比較表
| 軸 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| ①差別化 | ○ | △〜○ |
| ②パーパスとの接点 | △ | ○ |
| ③現場のリアル | △ | ○ |
| ④風土のリアル | ◎ | △ |
| ⑤総合バランス | △〜○(風土偏重) | △(情報量不足) |
対照的な2社ですが、共通しているのは「片方の軸は強いのに、もう片方が弱い」という偏りがあることです。
総括:なぜ「生っぽさ」が効くのか
就活生は、企業が発信する自己アピールをそのまま鵜呑みにするほど単純ではありません。むしろ、その企業・その人・その組織でしか語れない「生っぽさ」にこそ引き込まれます。そして、そこで得た生っぽい情報を手がかりに、説明会や面接の場で「本当にそうなのか」を確かめにいきます。
A社のように制度や風土は雄弁に語れても、そこで働く人の顔が見えなければ、求職者は「制度はいいけど、実際どんな人が働いているんだろう」という一番知りたい部分を確かめに行けません。B社のように社員の声を出せていても、それを支える会社としての厚み(差別化・風土・実績)が薄いと、「この人がいい人なのはわかったけど、会社としてはどうなんだろう」という不安が残ります。
「リアルとスペックの総合バランス」という5つ目の軸を置いているのは、この2つが両輪で揃って初めて、求職者が答え合わせをしに来たくなる採用サイトになるからです。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課題 | 採用サイトが「制度・風土は語れるが人が見えない」または「人の声はあるが会社の輪郭が薄い」のどちらかに偏りがち |
| 原因 | 差別化・パーパス・現場・風土・総合バランスという5つの視点を分けて棚卸しできていないため、どこが手薄かに気づきにくい |
| 解決策 | 自社の採用サイトを5軸それぞれで自己採点し、◎○△が偏っている軸から優先的に手を入れる |
| 期待できる結果 | 「制度の説明」と「そこで働く人の顔」が両方そろい、求職者が説明会・面接で答え合わせをしに来たくなる採用サイトに近づく |
FAQ
Q1. 今回比較した2社は、実在する企業ですか?
A. はい、実在する企業を参考にしていますが、本記事では両社とも匿名化しており、社名や所在地などの特定につながる情報は記載していません。
Q2. 5段階評価はどのような基準で判定していますか?
A. 差別化・パーパスとの接点・現場のリアル・風土のリアル・総合バランスの5軸について、それぞれ「スペックの列挙・抽象的な説明にとどまっているか」「具体的なエピソードや個人の言葉として語られているか」という観点で、当社が◎○△の3段階で評価しています。
Q3. 自社の採用サイトを同じ基準で見てもらうことはできますか?
A. 個別のご相談は随時承っております。お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。



