コラム(WEB制作のポイント)
オウンドメディア 2026年5月19日
採用サイトを改善しても応募が増えない会社が見落としていること
採用サイトを改善しようとして、この記事にたどり着いた方は多いと思います。
求人を出しても応募が来ない。来ても採用につながらない。入社してもすぐに辞めてしまう。そんな状況のなかで、「採用サイトをなんとかしなければ」と動き始めた方が読んでくださっているのではないでしょうか。
その危機感は正しいと思います。そして、改善しようとしている姿勢も正しい。
ただ、改善の効果が出るかどうかは、何から手をつけるかで大きく変わります。この記事では、採用サイトの改善が「なぜうまくいかないのか」という構造的な理由と、「何からどう手をつければいいか」という実践的な順序をお伝えします。

執筆した人:平田弘幸
株式会社フレイバーズ代表取締役。一般社団法人ブランドマネージャー認定協会・認定コンサルタント(インターナルブランディング)、ブランドマネージャー(1級)。大手電機メーカーで国内外の営業、企画を15年間経験した後、フレイバーズ設立。製造業での知見を活かし、中小企業のブランディングに強み。
本記事で分かること
採用サイトを改善しても応募が増えない原因は、デザインより手前にあります。会社目線と求職者目線のズレが生まれる構造的な理由と、社員ヒアリングを起点にした採用コンセプト言語化の実践手順をわかりやすく解説します。
採用市場に、変化が起きつつある
AIの普及によって、採用市場に構造的な変化が起きています。
IT関連企業を中心に、これまで新入社員や若手が担ってきた定型業務——データ入力、書類作成、簡単な分析——をAIが代行できるようになりました。その結果、IT系を筆頭に、事務系の職種全般で採用枠の縮小が進んでいます。小売・営業・飲食など、対人業務が中心の職種は影響が少ないものの、いわゆるオフィスワーク系の採用は今後も縮小傾向が続くとみられています。
実際、3メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)は新卒採用を削減する方向にあり、みずほは事務業務を最大5,000人分削減する方針を打ち出しています。人事担当者を対象にした調査でも、約4割が「AIの活用が進むと新卒採用は減る」と回答しています。
これは何を意味するかというと、大手・IT系への就職を目指していた人たちの受け皿が、以前より少なくなるということです。
中堅企業にとっては、これがチャンスになり得ます。これまで大手・IT系に流れていた人材が、選択肢を広げてくる可能性が高まっています。ただし、チャンスをつかむには準備が必要。就活生がこちらに目を向けたとき、「この会社は自分に関係がある」と思ってもらえる採用サイトになっているかどうか。今のうちに整えておくことが、そのまま採用力の差になっていきます。
採用サイトを改善しようとして、まず何をするか
多くの会社が、採用サイトの改善を「デザインの刷新」から始めます。写真を差し替える。応募フォームを使いやすくする。求人票の文章を書き直す。どれも間違いではありません。ただ、多くの場合これらの改善を重ねても、応募数はさほど変わらない。変わったとしても採用につながらない。
なぜでしょうか。
問題の本質は、サイトのデザインや機能ではなく、もっと手前にあります。**「自社の言葉が、求職者に届いていない」**という構造的な問題です。
「会社目線」と「求職者目線」のズレとは何か
採用サイトに並ぶ言葉を見てみましょう。
風通しのいい職場環境。社員一人ひとりが活躍できるフィールド。チャレンジを歓迎する文化。若手でも裁量を持って仕事ができる。
どれも、その会社のことを表した言葉かもしれません。ただ同時に、どの会社の採用サイトにも書いてある言葉でもあります。でもここに、採用サイト改善の核心がある。自社の強みを「語れている」ことと、求職者に「届いている」ことは、まったく別の話だからです。
具体的に考えてみましょう。
ある会社が「創業25年の安定した基盤があります」と採用サイトに書いたとします。会社側にとっては、長年にわたって積み上げてきた実績と信頼の証です。誇りを持って書いています。
だが求職者がそれを読んで考えることは、こうです。「25年続いた会社で、私はどんなキャリアが積めるんだろう。変化はあるんだろうか。成長できる環境なんだろうか」
「創業25年」という事実は同じでも、会社が伝えたいことと、求職者が受け取ることの間には、大きなズレがあります。
もう一つ例を挙げます。「チームワークを大切にしています」という言葉も、採用サイトでよく見かけます。チームの雰囲気の良さを伝えたいのはわかります。しかし求職者の視点では「個人の意見は通りにくいのかな」「残業が多そう」といった深読みされることも。
これは言葉の選び方の問題だけではありません。求職者が何を不安に思い、何を確かめたくて採用サイトを見ているか、という理解が土台にないまま書かれた言葉は、受け取り手の文脈で勝手に解釈されてしまうのです。
なぜズレが生まれるのか:「内側にいすぎる」という問題
このズレは、経営者や担当者のスキルの問題ではありません。会社全体が「内側にいすぎる」ことで生まれる、構造的なズレです。
そこに至るまでに権限委譲や制度の変更など、社内では多くの苦労があったことはよくわかります。だからこそ、外に伝えたくなる気持ちも当然です。ただ、その苦労の歴史は「会社が経験したこと」であって、「求職者が知りたいこと」とは必ずしも一致しない。
自社のことをよく知っているからこそ、「何が当たり前でないか」が見えなくなります。長年積み上げてきた文化や強みは、社内にいる全員にとって「空気」のようなものです。意識しなくても存在する。だからこそ、外から見た人に何が魅力として映るのか、何が不安として映るのかが、自分たちだけではわかりにくくなってしまうのです。
結果として、採用サイトは「よく知っている自分たちが書いた言葉」で埋まります。正確ではあっても、求職者の文脈には乗らない言葉。これは、採用に真剣に取り組んでいる会社ほど陥りやすい構造でもあります。
ズレを埋める方法:社員ヒアリングと採用コンセプトの言語化
では、どうすれば会社目線と求職者目線のズレを埋められるのでしょうか。
答えは意外なほどシンプル。**社員の言葉を聞く**ことから始めるのが、いちばんの近道です。
社員は、かつて求職者だった人たちです。外から会社を見て、迷って、選んで入社した経験を持っています。「なぜこの会社を選んだのか」「入社前に不安だったことは何か」「入ってみて何が予想外だったか(いい意味でも悪い意味でも)」——こうした問いへの答えの中に、求職者目線の言葉が詰まっています。
複数の社員にヒアリングをすると、ある言葉が繰り返し出てくることに気づきます。「仕事の幅が広い」「自分で考えさせてもらえる」「やったことが形になる速さ」……そういった共通のキーワードが見えてきます。
これが採用コンセプトの核になります。「うちだから」を言葉にする素材です。
採用コンセプトとは、スローガンやキャッチコピーのことではありません。「この会社で働く意味」を一言で表せる軸のことです。この軸が決まると、サイトのトーン、社員インタビューで聞くべき内容、仕事内容の見せ方、社長メッセージの書き方、すべてがスムーズに決まってきます。
詳しくは
「採用サイトをリニューアルしても結果が変わらない会社に共通する失敗とは」
でも解説していますので、合わせてお読みください。
採用サイト改善の正しい順序
採用コンセプトの言語化が先、という考え方を踏まえると、採用サイトの改善には正しい順序があります。
Step 1:採用ターゲットの再定義
「どんな人に来てほしいか」は多くの会社が考えています。しかしもう一歩踏み込んで、「どんな人には来てほしくないか」「いま在籍している社員は、こんな人たち」も言語化することが重要です。ミスマッチの多い採用は、採用担当の工数を食い続けます。ターゲットを絞ることへの不安はあるかもしれませんが、絞った方が応募の質は確実に上がります。
Step 2:採用コンセプトの言語化
社員ヒアリングをもとに「うちだから」を言葉にします。会社の歴史や規模ではなく、「この会社で働く人が共通して感じていること」を抽出してください。これが全体の軸になります。
Step 3:コンテンツの設計
コンセプトが決まれば、コンテンツの方向性も決まります。社員インタビューは「スペックや業務の紹介」ではなく「なぜここで働くか」を語るものにしましょう。仕事内容のページは「業務説明」ではなく「この仕事でしか得られない経験」を伝えるものに。数字や実績は「会社のアピール」ではなく「応募者の不安を消す根拠」として使います。
Step 4:デザインと導線
最後にやることがデザインです。伝えたいことと、届けたい相手が決まれば、デザインは「それを美しく見せる手段」として機能します。デザインを最初に考えると、コンテンツがデザインに引きずられてしまいます。採用サイトで起きている多くの失敗は、この順番が逆になっているケースです。
事例:社員ヒアリングから始めた採用改善
ある中堅企業(社員数120名・製造業)の事例を紹介します。
この会社は採用に長年苦労していました。応募は来るが採用につながらない。内定を出しても辞退される。入社しても1〜2年で離職する。どこから手をつければいいかわからない状態でした。
フレイバーズが最初に提案したのは、採用サイトのリニューアルではありません。先にお伝えしたように、社員へのヒアリングです。
「なぜこの会社を選んだのか」「他に受けていた会社との違いは何だったか」「入社してから驚いたことは何か」を、現場社員・中堅社員・マネージャーと合計8名にインタビューしました。
そこから出てきたのは、会社が採用サイトで語っていた言葉とは全く異なる言葉でした。「自分の提案が翌月には動いている」「年次関係なく、仕事の話で対等に議論できる」「専門性が深まりながら、幅も広がっていく感覚」——そういった言葉が複数の社員から繰り返し出てきました。良いアイデアを形にできるしくみがあるからこそ、若手でも事業を動かせることの現れです。

採用コンセプトは「アイデアを形にするしくみで、仕事を動かす」と定めました。大きな組織ではできない、自分の判断が実際の仕事に直結する環境を、求職者に伝える軸としたのです。
これをもとにコンテンツを再設計しました。社員インタビューは「スペック紹介」から「私がここを選んだ理由」へ。仕事内容のページは「業務フロー説明」から「この仕事でしか得られない判断の経験」へ。数字は「会社の規模アピール」から「担当できる仕事の規模と裁量の根拠」へと変えました。
デザインのリニューアルは最後に行いました。コンセプトと届けたいターゲットが決まっていたので、デザインの方向性もスムーズに決まりました。
結果、リニューアルから6ヵ月後には応募者の志望動機の質が明確に変わりました。「なんとなく良さそうだったから」という応募が減り、「自分で動ける環境を探していた」「提案できる仕事がしたかった」と明確な理由を持った応募者が増えました。採用担当の選考工数も削減され、採用にかける時間が実質的に短くなったのです。
まとめ:チャンスをつかむ準備を、今のうちに
採用サイトの改善は「何を直すか」より、「誰の言葉で語るか」が先です。
会社側の視点で語った強みは、求職者にはなかなか届きません。求職者目線の言葉に翻訳されて初めて、採用サイトは機能し始めます。そのための素材が、社員ヒアリングから生まれる採用コンセプトです。
コンセプトが決まれば、コンテンツが決まります。コンテンツが決まれば、デザインが決まります。改善のすべては、ここから始まります。
そして、採用市場の変化は静かに始まっています。「手を動かして働きたい」「自分の仕事が会社に直結する環境に行きたい」——そう思う人が中堅企業に目を向け始めたとき、「刺さる言葉」で迎えられる採用サイトになっているかどうかが、採用力の差を生みます。
今が、整えるタイミングです。



