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情報分類にはマジメに取り組むな、のココロ

情報分類にはマジメに取り組むな、のココロ

使いやすいWEBサイトとは、訪問者にストレスを感じさせない。ストレスを感じさせないとは、その人が想像した方法で欲しい情報を手に入れられるということだ。だから使いやすいWEBサイトは、訪問者から感想を言われない。WEB担当者からすれば寂しい限りだが、WEBサイトの運営とはそういうものなのだ。

あるクライアントから質問があった。

情報Aをトップページで掲示しておいた方が良いか、下層ページの正式なカテゴリーに掲示した方が良いか。

これは、情報整理、いわゆる「インフォメーションアーキテクチャ」の課題で、非常に奥深いものだ。四角四面に考えれば、情報はあらかじめカテゴライズした場所にきちんと収めておくべきかもしれない。


あなたは図書館や書店で自分の探している本がどこにあるか分からず、途方に暮れてしまったことはないだろうか?本は、「図書館学」という学問があるほど厳格にカテゴライズされる要素。たとえば、地震に関するものなら自然科学、マーケティングなら社会科学といった具合だ。書店ではビジネス書、マンガなどと、もう少しユーザーに寄った分類をしているから、図書館に比べればまだ迷うことが少ないが。

自分の探している本がどの分野にカテゴライズされているか知らない限り、図書館や書店でそれを見つけることはできないという事実は、私たちが普段行っているWEBサイトの情報分類について良い反面教師になってくれるということでもある。

社内の論理で分類された情報は使えない

あるメーカーのWEBサイト、製品情報セクションをのぞいてみよう。
40年近く事業を営んできたメーカー、製品情報のカテゴライズは、これまで育んできた社内システム、つまり事業部別に行われている。製品Bに興味のあるユーザーがこのWEBサイトでお目当ての製品Bを探し当てるためには、このメーカーにどのような事業部が存在するかをまず知る必要がある。もしその努力を怠れば、WEサイトのどのページに製品Bが潜んでいるかは分からないまま競合メーカーのWEBサイトに流れていくしかない。もしくはヘッダー部にある「サイト内検索」でキーワード検索するしかないのだ。さらに、製品Bは世間一般に使われている言葉ではなく、オリジナリティあふれる独自の名称で掲示されていたとしたら。このユーザーは、おそらく一生製品Bのページを閲覧することはできなくなってしまう。

スーパーマーケットを見本にしよう

情報分類のキモは、「ユーザーにやさしいかどうか」である。社内の事情、独自の製品分類を知らなくても、製品Bのページを一般のユーザーが探し当てることができることが基準なのだ。少々抽象的な言い方になってしまったので、もう少し噛み砕いて言うと、「スーパーマーケットのクロスセル」のように情報分類を行うのだ。クロスセルとは、「ある商品を購入しようとする客に対して、その商品に関連する別の商品を併せて販売しようとすることで、顧客へのプラスアルファ販売を目指す売り方」をいう。

冬場であれば、白菜の棚の横に鍋物のスープが置いてあるような売り方のことだ。今晩は鍋物でもしようかと考えたスーパーの客は、白菜の横に「キムチ鍋の素」や「ゴマ坦々鍋スープ」があると、「そうね、水炊きにしようかと思ってたけど、これもいいわね」と白菜の横に並んでいる、封を開けるだけの鍋スープをつい手にとってしまう。しかもあれこれ考える手間も省けて助かるのである。
もちろん、乾物売り場には「キムチ鍋の素」や「ゴマ坦々鍋スープ」はきちんと分類されて販売されている。スーパーマーケットの野菜売り場の担当者と乾物売り場の担当者が協力しない限りこのクロスセルは成立しない。完全な縦割りで物事を考えていては、顧客満足向上と売り上げ伸張は望めないのだ。

情報分類を柔軟に考えると、ユーザビリティを高められる

ご理解いただけただろうか。情報は、正確無比に分類されたしかるべき場所に掲示されるだけが正しいわけではないということだ。WEBサイトの場合は、スーパーマーケットのようなクロスセルも可能だし、その情報が良く閲覧されるのなら、分類されているカテゴリーに掲示されるだけでなく、より早い階層で掲示しておくこともポイントのひとつだ。たとえば、製品にまつわるデータのような情報が何らかの理由で、閲覧回数が他のコンテンツに比べ多い場合、トップページにそのデータを掲示しておくといったケースが考えられる。

もしくは、通称「かものはし」分類といって、製品CをカテゴリAにもカテゴリBにも属させるやり方だ。学術上「かものはし」は哺乳類であるが、卵を産む。くちばしを持つことから考えると鳥なのか、いや爬虫類からの派生だという説もある。このように、どのカテゴリにも属するようで、属さないようで・・・といったものは、人によって捉え方が異なるので、複数のカテゴリに属させてしまおうという考え方である。

そうすることによって、ある人は製品BをカテゴリAで見つけることができ、ある人はカテゴリBで見つける。柔軟にカテゴライズすることで、WEBサイトを訪れるユーザーすべてが満足できるようになるのである。

情報分類にしっかり取り組むと、社会のためになる

ここで、情報を上手く分類すると、世の中のためになるという例をご紹介しよう。

旧ソビエトの化学者、ドミトリ・メンデレーエフ(1834~1907)は、その頃知られていた65個の元素を原子量、性質などをもとにていねいに小さなカードに書き記して並べ替えたりしながら、特徴を調べていた。彼はそのカードを原子量順に並べていく途中で、7つずつにグルーピングするとこれらの元素の性質が似ていることを発見した。

これが我々が中学生の頃から「水兵リーベ・・・」と暗記した元素の周期律表(1869年)だ。彼はこの周期律表に基づいて、それまで知られていた元素のデータを修正するとともに、未知の元素までその存在を予知してしまったのである。

メンデレーエフは、単に「7つずつ」のアイデアに行き着いただけだ(それだけではないと思う。博士には申し訳ない)。しかし、その情報をどのように取り扱うかによって、どれほど社会の発展のために寄与したか計り知れないほどの発見だったのだ。

WEBサイトの情報分類といえども、多くの訪問者をサポートできるか否かは、あなたのアイデアにかかっているのだ。

情報分類は、WEBサイトの永遠の課題

今まで述べてきたように、情報分類は奥深い。ものの見方によって、情報の捉え方が異なるからだ。あなたの運営するWEBサイトにも、よく考えると情報分類の課題があるはずだ。冒頭で紹介したように、四角四面にだけ考えるのではなく、もっと柔軟に考えればあなたの顧客になるかもしれない訪問者は、得たい情報を容易に得ることができ、あなたの会社を好きになってくれるかもしれない。

この記事に関するご質問やお困りごとのご相談も何なりと。
平田 弘幸
株式会社フレイバーズ代表取締役。セールスライティング担当。好きな言葉は、「一生懸命が得意」

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